参議院選挙総括案
I 参議院選挙をどうたたかったか
(1) 参議院選挙闘争宣言
民主党岡山県連は、第19回参議院選挙を目前にした2001年5月26日、第6回定期大会を開き、次のとおり参議院選挙闘争宣言を採択しました。
巨額の税金をつぎ込んでも一向に回復の兆しを見せないわが国の景気。長引く不況。膨れつづける借金の山。そして、将来への不安。
一部の者の利益しか考えず、国民のためには何も変えてくれない政治に、国民は失望し、あきらめを感じていた。
今度の自民党総裁選挙は、国民が抱いていたそんな政治への諦めから、「何かが変わるのでは?」という一縷の希望の火をともす結果となった。
しかし、この自民党の中での小さな政権交代は、失言を重ね大変な不人気であった政権の顔が、少々自分の言葉で政策を語れる顔へと、表紙が変わったに過ぎない。
さらには、「改革」をお題目のように唱えているが、その具体的な中身については、未だ明かにされていないのが現実である。
小泉内閣に代わっても、自民党の利権政治の本質は全く変わっていない。民主党でなければ、この悪しき政治を打破できないのである。
民主党は、この異常なまでの内閣支持率に怯むことなく、「最良の国、日本の創造」「すべての人に公正であるために」という、改革の理想の旗をかざし、この厳しい参議院選挙を戦わなければならない。
ここ岡山での我々の相手は、自民党利権政治の中枢を担う最大派閥の現職大臣であり、派閥の既得権益を死守するために森前政権から留任した大臣である。
この閉塞した日本の状況を打破し、硬直化した日本のあらゆるシステムを改革できるのは、永田町にあっても普通の人の感覚を忘れていない我々民主党と石田みえ候補だけである。
我々は、真の改革の担い手が誰であり、改革の足を引っ張るのは誰であるのか? 岡山県民に判断のための材料を明確に示し、岡山から日本を変えるための一票を投じてもらおうではないか。
国民は、自分たちの一票の積み重ねが政治に変革を起こせること、政治を「変わるはずのない」ものでなく「変わるかもしれない」「変えることができる」ものなのだということを、近年の政治動向などから経験した。
我々は、その経験による国民の意識変化をチャンスとしてしっかりと掴み、参議院選挙を果敢に戦いぬく覚悟である。
保守王国ここ岡山で我々の擁立する石田みえ候補は、政治を常に身近な暮らしの目線で考え、生活者の政治を実践してきた議員である。石田みえ候補の訴えるキャッチコピー「変わる勇気と代える決断」は、必ず県民の心を揺さぶり、共感を呼び、日本を変える大きな役割を果たすと確信している。
岡山が変われば、日本が変わる。
女性の元気が日本を変える。
我々の手で、日本の政治を変えようではないか。 |
私たちは、参院選を終えた今もこの考え方は、基本的には正しかったと考えます。しかし、現実の結果は惨敗に終わりました。この選挙の中で、いくつかの重要な反省点も指摘されています。その一方で、新しい動きも生まれています。これら一つ一つを厳しく分析する中で、次への展望を切り開きたいと思います。
(2) 県連の取り組み
- 県連内に参・衆候補者選考委員会を設置し、2000年10月1日の第5回臨時大会では、参議院選挙区に石田みえ、衆議院第4区に熊谷裕人、第5区にはたともこを、2001年5月26日の第6回定期大会では、衆議院第2区に田淵雅子を、それぞれ擁立することを確認して、ダブル選挙も想定した選挙準備に入りました。
- 2000年12月14日、県連役員で構成された参議院選挙対策本部を設置しました。
- 各小選挙区総支部ごとに参議院選挙対策本部を設置し、地域における活動の拠点をつくりました。
- 連合岡山との合同企画会議を設置し、県選挙区と比例区の運動について真剣な議論を行い、連携の強化を図りました。
(3) 岡山県選挙区における他党の動向
自民党、共産党、自由連合がそれぞれ公認候補者を擁立しました。一方、自由党は石田みえを、公明党は片山虎之助(自民)をそれぞれ推薦しました。社民党は中央段階の4党選挙協力合意がありましたが、石田推薦に至りませんでした。
II 参議院選挙の結果と総括
(1) 選挙結果
参議院選挙は7月12日(木)公示、29日(日)投開票の日程で行われました。
改選124議席のうち、自民党が65議席、公明党が13議席、保守党が1議席を獲得した結果、連立与党は計79議席となり、非改選議席を合わせて過半数を維持しました。
一方、民主党は46都道府県選挙区で公認・推薦候補者を擁立し、2〜4人区では新潟・広島を除くすべての選挙区で議席を確保しましたが、1人区で2勝25敗(うち民主党公認は全敗)の結果に終わりました。3年前12議席を確保した比例区は8議席にとどまり、非拘束名簿方式への取り組み等について、抜本的な見直しが求められる結果となりました。
しかし、小泉ブームという逆風のなかでも、改選22議席を上回る26議席を獲得し野党第1党として踏ん張れたことは一定の成果であり、次期総選挙勝利と政権交代の実現に向けて、反転攻勢のための橋頭堡は確保できたものと考えます。
(2) 県内の選挙結果データ(「衆」は2000年6月の総選挙結果)
| ☆県選挙区選挙 |
|
| ・投票率 |
55.51%(男 55.07% 女 55.92%) |
| 「衆」 |
62.00%(男 61.39% 女 62.55%) |
| ・ 得票数 |
今回 |
「衆」 |
| 民主党 |
236,612票(28.77%) |
268,667票(28.90%) |
| 自民党 |
501,383票(60.95%) |
561,864票(60.43%) |
| 共産党 |
67,705票( 8.23%) |
88,737票( 9.54%) |
| 自由連 |
16,853票( 2.05%) |
|
| 社民党 |
|
10,477票( 1.13%) |
| 合 計 |
822,553票 |
929,745票 |
| ☆比例代表選挙 |
|
| ・投票率 |
55.51%(男 55.06% 女 55.91%) |
| 「衆」 |
61.97%(男 61.35% 女 62.53%) |
| ・ 得票数 |
今回 |
「衆」 |
|
民主党 |
130,612票(15.81%) |
206,454票(22.18%) |
|
自民党 |
357,413票(43.28%) |
356,476票(38.30%) |
|
公明党 |
158,108票(19.14%) |
154,142票(16.56%) |
|
共産党 |
55,277票( 6.69%) |
84,353票( 9.06%) |
|
社民党 |
39,615票( 4.81%) |
69,895票( 7.51%) |
|
自由党 |
38,002票( 4.60%) |
57,181票( 6.14%) |
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自由連合 |
7,994票( 0.97%) |
2,365票( 0.25%) |
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保守党 |
17,015票( 2.06%) |
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二院クラブ |
8,100票( 0.98%) |
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自由と希望 |
4,329票( 0.52%) |
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新社会党 |
3,805票( 0.46%) |
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|
女性党 |
3,686票( 0.45%) |
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新風 |
845票( 0.10%) |
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合 計 |
825,696票 |
930,866票 |
(3) 成果と反省
- 県内データの分析・
石田みえ候補は、前回は新進党公認候補として、自民党の片山虎之助候補、社会党公認の森暢子候補と三つ巴の選挙戦をたたかい、片山候補25万票、石田候補23万票、森候補15万票という結果でした。今回は、公明党票が片山候補に流れたため、同候補の票が上積みされるのは当然ですが、石田候補は社民党の推薦を得られなかったにもかかわらず、公明党票の部分を完全に補うことが出来ました。
・
この結果は、投票率が予想以上に低かったにもかかわらず得られたものであり、運動の成果といえます。
・ しかし、選挙結果は50万票対23万票という大差であり、「敗北」との厳しい評価をしなければなりません。1名区になったから当選は困難になったという見方は、政権交代を目指す政党が抱いてはならない「あきらめ」です。
・ また比例区の結果は、20万票から13万票に落ちた惨憺たるものです。産別候補は自己完結のたたかいで集票するとのことでしたが、民主党県連として産別以外の候補の運動として何が出来たか、産別候補の運動を当該組織の縦系列に委ねてしまったことが良かったかどうか、分析が必要です。
・
何より重要なことは、民主党県連としての組織力の弱さです。日頃の活動の中で培われた各界各層との十分な繋がりがあれば、小泉ブームの中でも集票活動が出来たはずですが、現実には、そのような集票力はなかったと言わざるを得ません。市民団体、中小企業団体、農業団体、地域の高齢者、サークル、スポーツなどの活動組織等とのかかわりの薄さを反省せざるを得ません。
- 民主党組織の弱さ・
地域の票を掘り起こす上で最も頼りにすべき地方議員の数は、決定的に不足しています。また、協力関係を持ちうる議員とも、連携プレーに向けた信頼関係を築き上げていません。そのため、次期統一地方選挙に向け、公認・推薦の候補者を一人でも多く擁立しなければなりません。また、関係議員との連携を、日常活動を強化する中で、さらに密にしなければなりません。
- 連合岡山との関係・
民主党の応援団である連合岡山とは、合同企画会議を設置し、人員の派遣を含めしっかりとした連携で選挙運動をすすめました。しかし、その歯車が噛み合ったのは選挙直前になってからで、手遅れの感を否めません。また、比例区選挙の取り組みに県選挙区選挙を上乗せする方針について、どの程度効率的に行われたかが、今後の組み立て方を考える課題となります。
- 県連選対の成果と反省・
選対の立ち上がりと充実が、選挙資金と人材の不足により大きく遅れました。その上、本部選対、総支部選対ともにスタッフが絶対的に不足しました。とりわけ経験豊富な人材を責任者として配置することが十分できませんでした。現在の党本部方針では、代表(=衆院予定候補)不在の総支部には交付金がおりませんが、財政問題を早急に解決し、人的資源の確保・育成、地域事務所の維持、日常活動での人間関係作り、そして党活動の活性化を図らなければなりません。
・
事前宣伝活動については、5・6月に本番をカバーする方針を提起しましたが、十分な取り組みができませんでした。
・
女性キャラバン活動は、党本部の方針に同調して早期に開始し、女性有権者の自発的な活動を呼び起こすこととなりました。このことは各総支部活動の活性化に一定の影響を及ぼし、選対の中に若々しい活動的雰囲気を生み出す原動力となりました。
・
選挙運動の中で、参議院選挙闘争宣言で述べた、「利権と派閥」
の大臣VS「真の改革の担い手」の女性という枠組みを、どれだけ意識的に追求したか、又、有権者にどこまで十分に浸透させられたか、反省が必要です。
・ 比例区選挙のたたかい方について、全国を15程度のブロックに分けて地域の候補者を一本化するとの提起も行われています。県連としてもこの問題提起について十分意欲を持って討議し、速やかに3年後に向けた体制の整備を図らなければなりません。
参院選総括について今日まで出された意見
選挙戦略
- 小泉台風の中での選挙戦、自民党との対立軸の打ち出し不十分
- 小泉改革の実態はなかったが、国民の政治・経済・社会に対する閉塞感が改革の大合唱となり、自民に対する投票もさることながら民主党票を取られた。
日常活動
- 国民の信頼に足る民主党との位置付けできず、日常地域活動の弱さ
- 地方議員(公認・推薦)の拡大
- 党本部・県連が出向いての地域対話集会の企画
党組織
- 5つの総支部体制の体制不十分、財政の充実とあわせ専従体制をはじめとする地域事務所の強化
- 党本部・県連・総支部・地域支部・職域支部の相互の意思疎通と連携、地方の意見をもっと反映できるシステムの検討
- 党内の意思統一、バラバラの印象を与えてはいけない、意見対立はあって当然、意見対立を恐れず徹底した議論で克服すべき
財政
- 代表(=衆院候補)不在総支部に交付金がおりない財政の仕組みの見直し
- 現職議員の負担頼りも限界、現在の交付金では専従体制の充実は困難
- 党勢拡大の努力支部にインセンティブをつけるか
- 県連財政の強化
政策
- 改革の中身の違いや、自民党では小泉改革ができないことのアピール不足
- 7つの改革・21の重点政策の小泉改革との違いが分かりにくい(自民との最大の相違はセーフティーネット)
- 選挙制度の見直しに新制度で勝利した自民が乗るか、公職選挙法の矛盾の見直し
選挙対策
- 次期衆院候補の早期擁立
- 統一地方選・各市町村選挙候補の擁立
- 都市部に強いといわれたが今回は逆のところもあり分析が必要
- 比例区での個人名より党名投票の方が多かった結果分析と今後の運動方法
- 団体局の設置、今まで自民を支持していた団体への日常的アプローチ
- 他党対策(社民、自由、公明党等との日常的交流)
- 参院選も常在戦場との意識を持つべき
候補
- 本人を含めた事務所の日常活動不足、具体的日常活動をするための事務所の参謀・スタッフ不足
- 幅広い支持が得られる候補の擁立
連合
- 連合は比例中心で選挙区上乗せの方針、党名投票に連合の果たした役割の客観的評価、闘い方の再検討、全国ブロック重点式
- 連合との関わり、連合の立場も理解したうえで話し合いをすべき
- 連合は最大の応援団であることを再認識すべき、連合との協調は大切に、県レベルだけでなく総支部での対応も可能に、総支部と各地協との関係強化
- 制度要求が産別の押し付けになるとの意見、徹底した話し合いで結論は必ず出せる
- 職域支部の問題
広報・宣伝活動の在り方
- 事前の取り組みを充実すべき
- 宣伝物は数は多かったが適切だったかどうか