2006年7月18日(火) 戻るホーム民主党文書目次記者会見目次

小沢一郎代表 定例記者会見要旨

○インドネシア・ジャワ島の地震・津波について
教育基本法 自民党案について
北朝鮮に対する追加的経済制裁について
自衛隊海外派遣恒久法について
参議院選挙1人区行脚について
教育基本法 民主党案について
今後の沖縄政策について
三角形外交について

■インドネシア・ジャワ島の地震・津波について

【代表】 またインドネシアにおいて、大規模な地震・津波で大変な被害が出ていると報道されています。このことにつきまして、心からお見舞い申し上げますと同時に、被災者の復興支援等につき、政府はもとより、私どもとしても微力ながら、そのお手伝いも考えなくてはならないと考えているところです。

<質疑応答>

■教育基本法 自民党案について

【記者】次期国会で議論される予定の教育基本法に関してですが、与党案では第2条に「我が国と郷土を愛する態度を養う」とありますが、これによって国旗掲揚や国歌斉唱が教育現場で強要されるという懸念があり、憲法19条に保障されている「思想と良心の自由」に反するという憲法学者もいます。そのような法案がなぜ提出されるのか、お考えをお聞かせ下さい。

【代表】政治論は抜きにして憲法論として純粋に言えば、直ちに憲法違反ということが、必ずしも多数の憲法解釈ということではないのではないかと思います。そういう解釈をする方もいるのでしょう。そして自民党案で、それが国でもって強制できると、今お話があった文言だけで強制できるということには法律上ならないだろうと思いますが、その学者の方は、事実上そういうことで指導して、強制的な結果を意図しているのではないかというご意見の人ではないでしょうか。ですから法律上に憲法解釈として、それから教育基本法の文言から強制云々というのは、どちらにしろ、ストレートにイコールになるものではないだろうと私は思います。

■北朝鮮に対する追加的経済制裁について

【記者】安倍官房長官が、北朝鮮に対する外為法を基にした追加的な経済制裁も検討したいということを明らかにしましたが、小沢代表は追加的経済制裁に慎重だったと思いますが、このことに関していかがお考えですか。

【代表】「慎重だ」と言っているのはマスコミの報道であり、私は慎重とか何とかということではありません。政府が何か行動を起こす時、特に相手方からすれば不利益を被るような行動、特に外交関係の中でそうしたことをする時には、為政者の態度として、日本国及び日本国民の、それによるプラス・マイナスを、経済的という意味だけではなく政治的に、あらゆる意味できちんと考えた上で行わなければならないと。それを記者の諸君が「慎重に」という表現で使うわけで、私が言うのは何事であれ、その点で、単にその時のムードや思いつきで、どうしても日本はそうなりがちだから、戒めの言葉として言っているだけです。

【記者】小沢代表は外為法による送金や物資の停止などについての賛否はいかがでしょうか。

【代表】外為法で送金停止することがどういうことか分かりますか。例えば第三国を経由したら、どうやって止めるのですか。第三国にまで日本政府の影響を及ぼすことは不可能でしょう。記者の諸君もそうだけど、政府もそうなのですが、よく訳が分からないで様々なことを言っていてはいけないということを私は言っているのです。

 本当に為替を管理するならば、各国全部が行わなければ駄目で、他国を経由したら分からなくなる。だから、そういうことを特に為政者はあらゆることを考えた上で判断しなければならないと私は申し上げている。

 基本的な考え方として、あらゆる話し合いの手段を尽くしても、北朝鮮が挑発的な独善的な行動を止めないということであれば、それはもちろん最終的には制裁も考えていかなければならないが、制裁というときには、いま言ったように、日本一国で行うことでは限度があるということ。そのためには世界全体の共同作業でやらなければ、実際の制裁というのが効果を持たないということ。そういった様々なことをよくよく考えて、その言動をしっかりしなさいと、私は申し上げているのです。

【記者】日本政府は送金停止を有志国連合のような形で、同調してくれる国々と送金の流れを止めようとも考えていますが、そうした有志国連合で行うことについて、どのように思いますか。また、北朝鮮に対する国連決議に国連憲章7条の言及がないことをどのように思いますか。

【代表】 それも同じことです。有志国といっても、どこがやるのか分からないでしょう。有志国に入ってない国を通されたらどうするのですか。つまり効果が、結果として大してないということ。それはそれなりに、参加国が多ければ多いほど、例えば送金しようと思えば手続が回り道なったりするといったことがあるかもしれませんが、現実問題として、全ての主だった国が参加しないと、本当の意味での成果が挙がらないだろうということです。

 国連決議に基づかないと、それが法律違反という問題ではないと思いますが、私は世界の平和問題を考える時に、いま言った強制措置の効果という面でも、また世界全体の平和に対する協調・協働作業という面からしても、世界各国のコンセンサスを得て、すなわち国連ということになりますが、強制力の伴う行為についてはやるべきだと思っています。

■自衛隊海外派遣恒久法について

【記者】自衛隊のイラクからの撤収を受けて、与党の一部には自衛隊の海外派遣を可能にする恒久法を検討する動きがありますが、小沢代表はかねてから恒久法については政府のビジョンが明確でないと話していたと思いますが、恒久法対する見解について改めてお聞かせ下さい。

【代表】恒久法というのは、今までの特措法を、期限を付けないで時限立法ではなく、普通法で出そうという意味ですか? 内容が今のものと同じだとしたら、どちらにしても私は反対です。

 というのは、日本のそうした軍事的な行動については、日本国憲法の解釈をもって、いろいろな問題が戦後から議論されてきたわけですから、その憲法解釈というのをきちんと示さないままに、ただいわゆる手続法的な法律でもって行うということに、結果的にはそうなります。法律だけ作ってしまうというのは、本末転倒、順序が逆だと思います。ただ単に、いちいち法律を作らないでやった方が手間が掛からないでいいということでしょうが、憲法との関連なしに法律を先に作ってしまうことは、本当に法治国家としておかしいのではないでしょうか。私は憲法の解釈・考え方というものを、政府自身が内外にきちんとアピールした上で、それに基づく法律をつくるというのが普通の順序ではないでしょうか。

■参議院選挙1人区行脚について

【記者】1人区行脚を始めて数ヵ月が経ちますが、その中で難しさを感じることはありますか。最初、代表が話していたペースからは少し緩やかな感じがありますが、改めて課題などがありましたら、お聞かせください。

【代表】選挙は何事も簡単じゃない、難しい。それは主権者が主権を行使することに対して、我々が理解を求めるという民主主義の根本の問題ですし、政党にとっては、選挙は広い意味で言えば全てですから。選挙で負けて偉そうなことを言っても何もならない。それは私は、民主主義の基本的な本質だと思っています。だから大変難しいことです。

 しかし毎日でも毎週でも回るという私のメッセージは、それなりに各都道府県において、皆さんが難しい問題に真剣に取り組んでいく上で、非常に役に立っていると思っています。ですから、直接地方に出るのは数としてはまだ目標通りではありませんが、内々のところは、多少の遅れがあっても着実に進んでいると。それは私が出向く時は最終の段階ですから、その意味においては、難しい問題の割には順調に進んでいると思っています。

■教育基本法 民主党案について

【記者】教育基本法ですが、民主党案では、前文で愛国心に触れています。これは強制にはつながらないということでしょうか。

【代表】 民主党案は「涵養する」という表現。これは強制という意味とは違う、むしろ相対する意味を持つ言葉、熟語であろうと思います。いずれにしても心の問題は、政府であれ他の人であれ、その人に強制するのは不可能です。念のため申し上げますが、中国の昔からの文言で「三軍も帥は奪うべし、匹夫(ひっぷ)の志は奪うべからず」という言葉があります。どんなに強力な軍隊の長であっても、力で勝てば、それを討つことはできる。しかし匹夫、つまり個人の志は奪えない、力による強制はできないという有名な文言がありますが、まさに愛国心であれ、何であれ、人間の心は外からの強制でもって、それを左右することはできない。

■今後の沖縄政策について

【記者】代表は19日に普天間基地を視察しましたが、民主党として今後、独自の沖縄政策をどのようなスケジュールで固めていくのでしょうか。

【代表】君の質問が何を意味しているのか分かりませんが、今の仕組みや今のあり方を前提とした特定地域の政策というのは、私はあまり考えていません。それは作って悪いということではありませんが、私はもっと根本のことを常に念頭に置いて、例えばいつも言うように、中央集権的な統治機構を変えなければならない。また基地の問題であれば、日米の安全保障のきちんとした考え方と役割分担をつくらないといけないし、議論しなければならない。そのことなくして個別の問題は解消しない。

 私はそう思いますから、その意味では、基本をきちんと、まず民主党においては考え方を明確にすることが大事だろうと思います。そういうことを大前提にすれば、あとは一番アジアに近いのは沖縄ですし、その特性を生かした様々な振興策が具体的に考えられるのではないかと、私は個別的には思っています。それはあとは担当の人たちが個別論をいろいろ考えていけばいいと思いますが、大元の基本的な考え方を私としては早く確立したいと。その議論をまず明確にしたいと思っています。

■日米中の三角形外交について

【記者】日米中の3カ国間の関係ですが、昨日17日の小沢一郎政治塾の講演で、正三角形、二等辺三角形の議論はくだらないもので、要は「要(かなめ)」のことだと話していましたが、訪中前の民放のテレビ番組では正三角形が望ましいという言い方をされていました。この点について、お聞きします。

【代表】正三角形という言葉を言ったかもしれませんが、しかしそれは二等辺三角形でも正三角形でも、どちらでもいいと。私はそういう問題を私は言っているのではなく、アメリカと中国と日本、そして日本は日本の政治家である以上、日本がきちんと中心として考えていかないといけないと。その意味では中国とアメリカという国とは、もちろん日米関係がその政治的理念、政治体制等々から言って最も大事な関係ですが、昨日も以前も言ったように、中国を除いて今後の日本のあり方、あるいは世界政治を語ることが出来るのか。その現実を無視して、何だかんだ言っても始まらない。政治は現実に国民の生活をきちんと守っていかなければならない。気に入らないからといって、その存在を無視していいという議論は、政治の議論ではない。だからそういう意味で私は、政治家としての政治論としても、また個人的にも、日米と日中の関係をずっとこの何十年大事にしてきました。

 ただ、いまの三者の関係、「三角関係」と日本語で言っても変でしょ(笑)、この三者の関係が成り立っていないというのが私の問題点の指摘です。日中は形式上もいま駄目でしょう、実質はもちろん。日米は形式的には大丈夫だと誰かは言っていますが、私は形はあるが中身がないと考えている。何度も言いますが、「日米同盟」と言って、アメリカのブッシュさんに義理立てて自衛隊まで派遣したけれども、イラクの戦争開始の時にはアメリカは何も言ってきてないのですよ。同盟国かね、それが。戦争が始まってきてからアーミテージ氏が電話で言ってきただけだよ。そんな同盟国あるのか、世界中に。私が与党の幹事長をしていた時も、最初の湾岸戦争は開戦の4時間前に言ってきた。そういった事例をとると、私から言わせれば、とても同盟関係などと言える関係ではない。従属的関係とは言えるかもしれないが、同盟関係とは言えないと私は思う。

編集/民主党役員室


2006年7月18日(火) 戻るホーム民主党文書目次記者会見目次