2004年4月27日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅直人代表/定例記者会見要旨

○ 政権交代実現の暁には高速道路無料化を進めて経済発展につなげたい
外遊では野党第一党の考えを十分に伝えてきたい
年金納付状況の回答拒否は閣内不一致
農水省決定に屈することなく諫早干拓問題への取組みは続ける
民主党結党6周年を迎え、目標に向けて一層努力したい

■道路公団民営化法案の衆議院通過を受けて

【代表】先ほど、本会議で道路公団関係の民営化法案が衆議院を通過いたしました。大変残念だと思っております。

総理はわが党の通行料無料化について、受益者負担の原則に反すると言っておりますが、これは全くの誤りです。逆に言えば、高速道路を走っている皆さんは、一般道を走っている皆さんと同じようにガソリン税を払い、車両に対する車諸課税を払っています。つまりは高速道路を使っている人からすれば、通行料を取られることが二重の負担を強いられているわけでありまして、ですからそれは例外としてもともとスタートしている。ですから無料化が原則だということは、法律からも、基本的な考え方からも明らかだ。

しかも無料化にすることのほうが経済的な発展につながる、地域経済の発展につながる。楽市楽座の例を選挙の時には申し上げましたが、関所をなくして楽市楽座にすることが経済的な発展につながる。こういう意味からも、私たちとしても、政権交代が実現した暁には、民営化ということをさらに改めて無料化を進めたいということを申し上げておきたいと思います。

■連休中の外遊日程について

明後日29日から5月9日までの予定で、アメリカ及びヨーロッパを訪れる予定にいたしております。具体的な日程はまた別の機会で申し上げますが、アメリカでは、ニューヨークを訪れ国連関係者にお会いしたい。ヨーロッパでは、ローマのバチカン、スウェーデン、ノルウェー、そしてスペインと、そういう国々でそれぞれの国の、例えばスウェーデンの場合は年金関係、ノルウェーの場合は国連待機軍の関係、スペインの場合は新たな政権ということでそういう関係者とお会いする、こういう予定にしております。

9日までということで連休の間の平日が入りますが、今国会で取り上げられ、当面の課題としても重要な年金や平和問題、イラク問題に直接関わりのある課題を中心とした関係者に会うことにしておりますので、多少連休明けの6日、7日という日程がちょっと心配はありますけれども、基本的にはそういう日本の当面の課題にも深く関わりのあることですから、予定通り最後まで実行したいと思っております。

■年金納付状況の答弁書提出拒否について

今日閣議決定で、わが党城島議員から出された質問主意書に対する答弁書が出てきております。これによれば、わが党が要求した総理を含む閣僚の国民年金などの納付状況について問い合わせたところ、個人に関する情報であり答弁を差し控えたい、総理大臣名で議長宛てにきたいわゆる質問主意書、ここにコピーがありますが、こういう形であります。

つまり総理大臣が閣議決定をして、個人に関する情報で答弁を差し控えたいと言ったということは、極めて大きい意味を持っております。つまりは、公的年金を提案者である総理始め各閣僚が、その自らの納付についてそれを言うことも、個人情報だからそれは公開しないということを決めたと、しかし少なくとも坂口大臣は、自らを含めて昨日の月曜までに報告すると言っていました。まさにこれは内閣不一致であります。

もし坂口大臣がこの閣議の決定にサインしていたとしたら、自ら国会で言っていたことと閣議でのサインということは明らかに矛盾することになります。そういった意味で、まずはこういった公的年金に提案者である閣僚がどのような納付をしていたかということは、個人情報だと言って拒否できる問題なのか、それともこれは公益に関わる問題だとして、当然として開示すべき問題なのか。民主党としては、開示すべき問題だと考えます。

それに重ねて、いま申し上げたように閣僚の中でも、すでに開示し、あるいは開示・公表を約束したその人までもがこれにサインしているとすれば、つまりは本人の中で不一致であるのか、内閣の中で不一致であるのか、いずれかにしても不一致であることだけは間違いない。この答弁書は、国民にとって認められない答弁書だと考えておりまして、わが党としては納得できないという立場で、厳しく取り組んでいきたいと考えております。

■衆議院補欠選挙の結果について

衆議院補選選挙については、他の機会にすでにいろいろ申し上げておりますので、あまり重ねて申し上げません。大変残念な結果でありました。広島は、善戦・健闘と言えると思います。

埼玉については、35%という低投票率の中で、公明党支持者、もっと言えば創価学会の皆さんのほぼすべての票が、当選した候補者の約半分を占めているだろうということを考えますと、自民党候補であっても、自民党支持者よりも公明支持者のほうにたくさん票をもらった議員だということに客観的にはなります。そういった意味で、35%という投票率では、国民の正確な民意を反映できないと思っておりまして、いろいろな形で投票率をもっと引き上げる努力をしていく必要があると考えております。

■列車爆発事故が起きた北朝鮮への援助について

北朝鮮での大きな爆発事故がありました。今日常任幹事会でも、現在拉致議連でのわが党の本部長もしておりますが鳩山前代表から、この問題については党として人道的な援助を行うべきだという指摘がありまして、私もそのように思っております。幹事長が至急その取りまとめをするということで、了承されました。どのような規模にできるかは別として、わが党としても人道的な立場の援助を行いたいと思っております。

■諫早湾の水門解放調査見送り決定について

また今日のニュースの中に、諫早干拓の水門の開放による調査がまた延期、中止されたということがあります。有明海の漁協は、かつては開門に消極的だった漁協も含めて、すべてがいまや開門して徹底的な調査をし、有明海をよみがえらせてほしいという主張をされております。この農林水産省の決定には納得できない。これからもこの問題についてはあきらめることなく取り組んでいきたいと思っております。

私からは以上です。

<質疑応答>

■年金法案の審議状況と与党側の強行姿勢について

【記者】年金審議で、与党側は明日にも委員会採決に踏み切る構えですが、これについてどのようにお考えになっていますか。

また、小泉総理は昨日のテレビの番組の中でも、社会保障協議会を民主党も含めて設けたい、という考えを示しましたが、これについてはどう思いますか。

【代表】まず後者については、わが党の法案の中でも1つの方向性を示した中で、調査会の設置を法案の中に盛り込んでおります。ぜひ総理にも、わが党の法案に賛成をいただいて、その調査会で議論をするということに賛同していただければありがたいなと思っております。

それから、与党が明日の委員会採決ということをいろいろな場で言っているようですが、私が報告を聞いているところで言えば、この重要法案の審議はいろいろ間接的に合わせても二十数時間、野党の質問はまだほんの十数時間ということになっております。まだこの大法案の審議が十分であるとはとても言えない。特にこの未納3兄弟、未納問題の時に総理は、こういうことになるから変えなきゃいけないんですよね、と他人事のように言ってますが、まさにそのことが一元化とストレートにつながっている問題であります。

まさにこの未納問題を含めて、今の政府案には、そうした改革は何一つ含まれていない。新たな問題も含めて、しっかりした審議がもっと必要だ。さらに中央・地方を含めた公聴会をしかるべき時にやるべきだと考えております。自治体からもそういう声が少し聞こえてきておりますが、明日の段階での委員会の採決はもってのほかだと、こんな形で問答無用でいくなら、こちらも最大限の対応をしていきたいと思っております。

【記者】今の年金の関連ですが、与党側が交換条件のように、年金の加入状況や納付状況を民主党『次の内閣』の各担当相もきちんと出すべきだと要求をしていますが、これについての対応をお聞きします。民主党が出した上で、政府側も出せ、というのが正々堂々とした態度だという意見もあると思いますが、いかがでしょうか。

【代表】まず政府・与党が矛盾しています。政府は、閣議決定で小泉総理大臣の公的年金の加入実績は個人としての納付であり、政府としての答弁は差し控えたいとした。つまりは、わが党が出せば出すとは政府は言っていません。政府は、個人情報だから差し控えたいと言っているんです。

政府が個人情報であるから差し控えたいと言っていることについて、我われはおかしいではないかと、わが党がわが党として調査をして、しかるべきときに公開するということは当然だと思っています。しかしそれは、交換条件ではありません。

内閣は内閣として国民に責任があるが、我われは『次の内閣』は持っていますがそれは公的な行政権限を持っているわけではありません。憲法65条を見ていただければ、「行政権は内閣に属する」と書いてあるわけで、残念ながら「行政権は『次の内閣』に属する」とは書いていないわけですから、行政権が属している内閣の閣僚が公開するのは当然のことであって、内閣は、個人情報だから出さない、与党は、野党が出せば出す、といった二枚舌は許さない。私たちが自主的に調べて、自主的にしかるべきときに出すのは当然だ。しかしそれと関係なくまずはこの法案の審議の中で、政府が、閣僚が出すのが、当然の責務であると思っています。

■投票率引き上げ対策について

【記者】投票率についてですが、引き上げる努力をすべきだとおっしゃいましたが、昨日来、議員立法化ということに言及されていますけれども、立法化へ向けての進め方と、そもそも投票率がここまで下がった原因を、野党第一党としてどのように分析されているのか、ご見解を教えてください。

【代表】投票義務制の考え方を、私自身は10年くらい前にいろいろな機会で申し上げてきたところです。基本的には、議院内閣制という制度、選挙として代表を選ぶという制度は、極端に言えば、投票する人が1割とか2割になれば機能しているとは言えないわけです。今でも最低の得票率というものは決まっています。それをクリアしない場合は当選者が出ないということですね。あるいは隣の国の韓国では、住民投票と言いましょうか、平行してやりましたが50%を超えなかったからそれは無効にするとか、いろいろなルールが各国にはあります。

私はやはり投票率が50%を切るような状態というのは、民主主義が健全に機能しているとは言えないと思います。それをなんとか健全に機能させるためには、何らかの、少なくとも投票は権利であると同時に義務であるということを、いろいろな機会に明確にすることが重要であろう。例えば憲法の中に盛り込むとか、他の法律の中に盛り込むとか、また促進するために何をすべきか、これはいろいろ議論があります。

他国の例を、今日も紹介を幾つかしましたが、若干の罰金とか公職への就任の禁止とか、あるいは選挙人名簿からの削除とか、いろいろな事例が出ております。厳しいペナルティを言っているわけではありません。納税が義務であるということとやや似ていて、投票も1つの権利であると同時に義務であるという認識を共有化するための努力は必要だと思っております。

投票率が低い理由はいろいろな見方がありますけれども、私が非常に特徴的だと思ったのは、東ティモールが独立をするときの投票は、まさに身の危険を冒してまで、民兵組織がまだ動いているなかで、投票率が上がらないのではないかといわれているときに、90%を超える投票率がでました。逆にいえば、条件が悪くて厳しい中でもそういう事態もあります。

今回の35%というのは、やはり補欠選挙という性格の中で、残念ながらすべての有権者の中で、一般の総選挙のときよりも、関心が低かったことが1つ原因だろうと。

しかし逆に言えば、そういう関心が低いときに、組織化された公明党の創価学会票が一番効果を発揮する。全有権者の8%で、100人のうちの8人ですから8%ですが、35人のうち8人となれば、これは23%から24%、事実上キャスティングボートどころか、決定権を握っている。こういうやり方が好ましくないわけです。好ましくないというのは、8%の人が投票することが好ましくないのではなくて、全体の100%の中で35%しか投票しない状況が好ましくないのであって、何らかの状況で改まるような手当を考えることが、民主主義を守る上で重要だと考えています。

【記者】関連して、参院選に向けても投票率を上げることが至上命題になると思いますが、民主党としてどのように取り組むおつもりですか。

また、補選の関係で、埼玉8区の木下厚さんはいわゆる鞍替え出馬だったわけですが、今回の落選という結果を受けて、党として鞍替え候補について見直すようなお考えはありますか。

【代表】7月の参院選に向けては、オーソドックスに政権交代へのまさにホップ、ステップ、ジャンプのステップと位置づけて戦っていきたい。政策課題はたくさんありますけれども、特に今出ている年金やイラク問題以外に特に重要視していきたいのは、農業・林業・漁業の再生、さらには、いわゆる三位一体と言われる地方を切り捨てていく今の小泉内閣のやり方を、本来のわが党がいう本当の地方分権を実現する、この大きなプラスした2つの課題があると思っております。

投票率の問題は常にある問題ですが、総選挙とか参議院全体の選挙の場合には、比較的高い、少なくとも補欠選挙に比べれば比較的高いところもありますので、それは全体の中で、より盛り上がった選挙になるように、これはわが党だけでは努力しても不十分ですが、皆さん方の努力を含めてお願いしたいと思っております。

衆議院の補欠選挙で、小選挙区で落選して惜敗で当選した人の鞍替えという問題については、大変悩ましい問題であると従来から思っております。わが党は原則として、もし鞍替えをしなければ、そのときに新たに出た候補者が、場合によってはその次の選挙での公認優先権を持つという考え方に立って対応してきました。今回の結果を踏まえて、今すぐに見直すというこは申し上げませんが、悩ましさがより増したかなと思っています。

■年金法案の参議院での対案提出について

【記者】年金関連ですが、参議院において、対案を出さないという方針を決めたようです。対案を全面に押し出してこれまで審議してきましたので、参議院でも対案を提出してもいいかなと思うのですが、政府案を徹底審議するという考え方もあるのでしょうが、これについてどうお考えでしょうか。

【代表】最終的に党の役員会等で出さないという方針を決めたという認識はまだありません。ただ、2つの理由で出すのが厳しい、あるいは出さないでやったほうがいいのではないかという意見があることは知っております。

1つは、今の政府案の問題点をもっと議論しなくてはいけないので、わが党の案に対するの質疑も重要ではあるけれども、逆にそちらに絞ったらどうかという考え方が1つであります。

それから、衆議院の段階でどうなるかによりますけれども、わが党案が、もうほとんど問答無用の形でやられたときに、それをもう一度出すことが政治的な意味として、意味があるのか。それとも、政権交代したときには我われとしてはこういう考え方だというのは衆議院段階で十分に示せたということで、政府案に絞った議論にしたほうがいいという考え方もあります。そういうことも踏まえまして、最終的には今日ぐらいには固めないといけないと思っておりますが、参議院サイドにそのような意見が強いということは承知しています。

■外遊において期待する成果について

【記者】外遊の関係でお伺いします。非常に長い外遊ですが、今回、アナン事務総長ともお会いになるということですが、野党外交というのは限界があるという認識がありますが、今回の外遊でどのような成果を期待されますか。また国外に対してどのようなメッセージを発信しようとお考えか、お聞かせください。

【代表】アナンさんのケースを例に取りますと、日本に来られたときも、わが党がなぜ自衛隊のイラク派遣に反対し、国連というものに対してどのような意味で重要視しているかということを意見交換をしたことがあります。アナンさんのほうからは、大変理解・共感をもった返事がありました。

そういう意味では、野党第一党というのは、ある局面では政権交代ということも十分に有るということを、相手の皆さんも見ておられるわけですから、そういうことも含めて、日本の野党第一党がどのような考え方をしているかということを伝えることは、そうした意味では大きな意味があるだろうし、そしてわが党としても、そういう主要な方の意見を聞くことが、日本の外交・安全保障に対して、わが党の意見、考え方をまとめる上で大変参考になる、年金制度に関してはもとよりですが、そのように思っています。

■一票の格差是正に向けた民主党の取り組みについて

【記者】参院選の一票の格差の最高裁での違憲判決を受けて、民主党として独自案を出すという話もありましたが、方向転換をされたように受け止めております。この理由と、同じ民主党で衆参で温度差というか、考え方を示すまでにも至らないというような感じの話が参議院からは聞こえてくるのですが、これについて党としてはどのような認識でいらっしゃるのかお聞かせください。

【代表】今日の常任幹事会で、かなり強い意見が何人かの方から出ました。そこで、幹事長を中心に一般的な参議院の選挙制度の検討会以外に、まずこの国会で対案を出すべきという意見が相当出ましたので、出すべきということが実現できるかどうか、かなり絞り込んで衆参で話し合う機会を近々作りたいということが常幹で確認されました。

ですから私の認識としては、十全のものが、もう選挙前ですから、できるできないということはありますが、少なくとも、最高裁が今のままでは違憲だという認識を示している中で、それに対して立法府として、この時点でできるぎりぎりの対案を出すべき努力をさらに続けるべきだと、敢えて言えば出すべきだと考えています。

【記者】先ほど年金審議の話の中で、与党側が採決を強行してきた場合に、最大限の対応をしたいとおっしゃっていましたが、これは閣僚に対する不信任案などを提出することを念頭においているのでしょうか。

【代表】私も二十何年国会におりますから、念頭には、いろいろな場面が走馬灯のように湧き上がってきますが、具体的な戦術について私がいまこの場でどうこう申し上げるのはあまり適切ではないのではないでしょうか。

■民主党結党6周年を迎えて

【記者】今日で、民主党ができて6年だと思うのですが、この6年を振り返っての感想と、また今後の抱負をお願いします。

【代表】6年前の1998年に、現在の民主党が4グループの合併手続の中でスタートいたしました。その時点で、衆議院で92議席、93議席だったでしょうか、野党第1党という立場に改めてなったわけであります。それ以降、幾つかの選挙を経て、現在全体で250という議席になっております。

この6年間の中で、2大政党の一方の野党第一党という形に、国民の皆さんのご支援のおかげでそこまでやってきたと思っております。その責任を噛みしめながら、政権交代可能な日本を作るということがわが党全員の共通の目標でありますので、その実現に向けて一層がんばりたいと思っています。


編集/民主党役員室


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