2004年4月21日(水) 戻るホーム記者会見目次

菅直人代表/定例記者会見要旨

○ 政府関係者の自己責任論に責任逃れの隠された意図を感じる
「『非戦闘地域』サマワ」について、しっかりした現状把握と議論をしたい
自民党安倍幹事長はまず自らの疑惑に対して説明責任を果たせ
埼玉、広島、鹿児島の補選勝利で政府の年金改悪法案阻止につなげたい

■イラク邦人人質事件について

【代表】人質解放から、定例の会見としては初めてですので、談話やいろいろな時に発言したことと重なる部分もありますが、そのことからちょっと触れておきたいと思います。今回の合わせて5人の日本人の人質、あるいは拉致された皆さんが無事に帰れたことは本当に良かったと思っています。

 やはりその背景には、イラク国民、特に間に入ってくれたイラクイスラム聖職者協会といわれた皆さんの努力、あるいは現地に派遣した藤田国際局長たちの話を聞きますと、日本にいるイスラム教の関係の方もアンマンやイラクへ戻って、いろいろ努力をされた方もおられたと聞いております。そういう皆さんの努力は、国の中の努力以外で言えば、大変大きかったのではないかと思っております。私たちの民主党の立場からも、そういった皆さんの努力に対して心からのお礼を申し上げます。

 やはりイラクのそういった皆さんを含めて、日本に対して好意を持っておられる人たちがまだまだ多いのだと改めてわかったように思います。そういった意味では、これまでのイラクやイスラム諸国に対して、歴史的にもいろいろな意味で、日本はマイナスのことをやってこなかった、どちらかといえばプラスのことをやってきたという、いい意味での財産が今回の無事の解放につながる背景となったと思っております。

 そういう中で、一斉にといいましょうか、解放される前後から、人質になった皆さんの自己責任ということが大きな話題になっております。私は、一般的に自己責任ということは当然あると思いますし、そのことを自覚することは何をおこなうにも当然重要なことだと思っています。ただ今回の自己責任という議論が、政府関係者あるいは与党関係者から極めて強く出てきたことに、私は大変いぶかしさを感じています。

 つまり山登りをする人が当然危険がある、場合によっては私も時折水に潜りますが、水に潜る人も一定程度の危険がある、そういう意味での自己責任というのは、外国に行くときだけではなくていろいろな場面であるわけです。しかしそのことに関して、人質になった皆さんに対して、政府の関係者、大臣や与党のしかるべき地位にある人が、自己責任を声高に言うということは、私は、極めて意図的な、何らかの隠された意図を感じずにはいられません。つまりは、政府の責任を追及されることを逃げるために自己責任を言っているのであれば、これは全くの筋違いである。

 個人個人が自己責任を持っていることは当然ですが、一方で政府は国民から税金を集めて、一つの機能を果たしているわけです。そういう意味で、政府は政府として国民に対する責任があるわけであります。もし徹底して自己責任ということを言うのであれば、政府というのはいらないということになるわけですから、その政府関係者が自己責任を言うというのは、つまり国民に対する責任を十分に果たしていないという批判を恐れて言っているとしかいいようがありません。

 最近は、フランスのルモンドという新聞や、アメリカのパウエル国務長官も、やはり危険を冒してでも、そういうところに人道的な意味を含めて行くような人があって、一般的にもそういう危険を冒して行くような人がいて社会の進歩があるのだ、という発言をしていますが、当然のことだと思います。

 マスコミの皆さんも、それでは、危険な所だったら行ってはいけないと政府が言ったら、「はいそうですか、では行きません」と大本営の発表以外何も取材ができないことになります。かつて開高健さんという人が、ベトナムのジャングルの中に米軍と一緒に入って最前線の取材をして、弾が行き交う中で書かれたのを読んだことがありますが、まさに自己責任の中で、しかし一人のジャーナリストとして、作家として、それを国民に伝えたい、世の中の人に伝えたい、という使命感を持って行かれたわけであります。特にジャーナリストの皆さんは、政府が「もうイラクへ行ってはいけません」と言ったら、では後は報告はすべて外務省の報告を丸呑みでいくということになるのか。この点については、ジャーナリズムのあり方も問われていると思いますので、特に申し上げておきたいと思います。

■スペイン軍撤退と自衛隊派遣について

 関連しますが、スペイン軍がイラクからの撤退を決めたと、すでに準備作業に入っているという報道であります。当初は、6月末の状況を見て今の状況と変わらなければという言い方でありましたが、もう現時点で、6月末を待っても大きな改善はないという見通しの中で、新たな政権が選挙で公約した方針に則っての撤退ということだと思います。このことは客観的に見れば、米英の方針をいち早く強力に支持してきたヨーロッパの大きな一国が、いわゆる有志連合から離脱したということであり、特にブッシュ政権にとっては大変大きな痛手であるということは、客観的にはまさにその通りではないかと思っております。

 もちろん原則的には、スペインにはスペインの考えがあり、日本には日本の自主的な考えがあってよいわけですが、ただイラクの中で言いますとスペインが駐留していたナジャフの地域も、シーア派の人たちが多く住む地域です。いわゆるスンニトライアングルとは違って、従来は比較的安定していると言われた地域が、この間サドル派と言われるシーア派の過激な皆さんの行動によってかなり軍事衝突というか武力衝突が起きているわけです。サマワはまだ激しい武力衝突という報道はありませんが、少なくともシーア派の多い地域に駐留していたスペイン軍が撤退をするという、状況が改善されないという見通しなり現状認識で、そういう行動をとったわけですが、そのすぐ近くのサマワの状況がこれから改善に向かうのか、もっと悪いほうに向かうのか。もうすでに自衛隊に対するデモや駐留地の近くに対するロケット砲の着弾ということもすでに報道されているわけですから、そういうことは、極めてより厳しい状況に立ち至っていると見るのが当然ではないかと思っております。

 従来から申し上げているように、イラク特措法に基づく「非戦闘地域」という範疇での自衛隊派遣であったわけですが、サマワが今もなお「非戦闘地域」と言えるのかどうか。総理は私との討論ではまだ言えると言っていましたけれども、ますます、総理ですら言えない状況が生まれてくる可能性が強いのではないかと、このように思っております。この点についてのこれからの議論もしっかりと現状を把握しながらやっていきたいと思っております。

■自民党安倍幹事長の疑惑について

 それから、他党のことではありますが、安倍自民党幹事長をめぐる幾つかの疑惑が表に出てきております。幹事長の職柄なのか、それを超えてなのか、安倍幹事長はこれまで民主党の中で何かあるといち早く説明責任を求め、あるいはいろいろな批判、攻撃をされてきた一番の中心人物であります。そういった意味では、他の党、議員に対して説明責任を求める以上は、同じような問題に対して自らの説明責任を果たさなければならない。これは当然のことだと思います。

 今指摘をされていることで言えば、選挙の時の公選はがきで誰が推薦したかという問題は大変重要です。かつて西東京市の市長選挙や、確か三多摩のもうひとつの市の市長選挙でも、推薦を受けていない人の推薦を受けたということで、訴訟になったり、あるいは確か立件されたケースもあったように思います。そういった意味では、少なくとも今の報道によれば、ご本人がOKしていないにもかかわらず京都大学の中西先生の名前を書いた。もし本人が了解していたとすれば、本人も国家公務員法の違反になるわけです。そういった意味で、どういうことなのか、きちっと事実関係を自ら国民に説明する責任がある。自ら、政倫審であっても結構ですし、そうした場を公式な場を使って説明する責任がある。これをやらないでおいて、何一つ自民党幹事長として、他党のことを言っても、それではあなたはどうなるのということで、全くのそうした資格がないと、このことをまず申し上げておきたいと思います。

 また日歯に関連しても多くの逮捕者が出ておりますが、巨額の資金が自民党に流れ、表に出ているだけでも、安倍幹事長を含めて相当のお金が提供されております。例え表に出た金であっても、それが賄賂的な意味合いを持てば、それも賄賂として認定されることもあるわけですし、また裏に回った金があるとすれば、政治資金規正法上の問題も当然生じるわけであります。この点も、安倍幹事長はいくらの金を日歯から受け取ったのか、いくらもらったのか、その上でどういう形できちんと報告したのか、報告していないものは一円もないのか、どういう接待を受けたのか。少なくとも今指摘をされているいろいろな問題と同様のレベルの問題に対して、自らきちっと説明する責任がある。

 この2点について、安倍幹事長に対して、国民の前で説明責任を果たすことを強くこの場を通して求めていきたいと思います。

■衆議院補欠選挙について

 いよいよ25日が迫って参りました。全国3箇所の補欠選挙であります。私も今日もこれから鹿児島に出掛けますが、それぞれ、3度、4度、5度と、顔を出しております。私は今回の衆議院の補欠選挙は、非常にわかりやすい選択を国民の皆さんにお願いしている。その第1は言うまでもありません。今の14年間連続掛け金引き上げ年金改悪法案を認めるか認めないかということであります。

 私の見通しでは、3選挙区と言いたいですが、少なくともわが党が勝ち越すことができれば、自民・公明両党は、いま申し上げた改悪法案を強行採決することは断念せざるを得なくなると思っております。しかし自民党あるいは与党が、過半数を超える当選者を出せば、これなら大丈夫といって、強引にやってくることになるだろう。そういった意味では、埼玉、広島、鹿児島、特にわが党としては埼玉と広島が、十分に勝ちうると言いましょうか接戦になっておりますので、この2つの選挙区の有権者の皆さんがどのような判断をされるか。このことがストレートに年金改悪法案を阻止することができるかどうかにつながってくる。このことを今日朝も埼玉で訴えてきましたけれども、鹿児島、広島でも訴えていきたいと思っております。

 私からは以上です。

<質疑応答>

■与党の重要法案への対応について

【記者】今日になって、与党側は日本道路公団民営化の法案や、裁判員制度の法案など重要法案について、今週中の委員会採決を求め、年金についても大型連休前の採決ということで採決を急ぐ姿勢を示しているようですが、これについて代表はどのようにお考えになりますか。

【代表】この間、それぞれ重要な法案がそれぞれの委員会で議論が始まっているわけですが、私が知る限り、道路の問題についてもわが党の提案もありますし、まだ十分な議論が行われたというところまできているとは理解しておりません。そういった意味では、それぞれ重要な法案ですので、しっかりとした議論をした中で、もちろんある段階で採決になるというのは、議会運営上当然のことですが、何かこうスケジュール的に連休前にすべて押し込んでしまおうという、そういう乱暴なやり方は取るべきではない。それぞれ審議が進んで、賛否はともかくとしても、ある程度の議論が尽されたものについて進めるのはいいけれども連休前に全部あげてしまおうという、そういう党利党略的なやり方で強引にやっていくというのは、好ましくないと思っております。

■小泉政権発足3年への評価について

【記者】小泉政権がこの26日で3年になるのですが、当然評価されないということになるのでしょうが、特にどこがだめであるとか、全体の評価というのはありますか。

【代表】ただ1つですね。私が評価しないのは。何もやらない、ということですね。自分が約束したことをやらないということです。つまりは、構造改革をやらない。民間の企業が業績が良くなったのは、まさに民間の企業の努力によるもので、例えば財政運営をこうしたから民間がよくなったとか、何をしたから良くなったということではないわけで、まさに政府がやるべき努力は、税金が使われている分野について、税金とか年金とかを含めてですが、公的なお金、公的な権限が及んでいる分野での改革がなければいけないわけですが、何も進んでいない。その典型は道路公団であり、財政再建であり、数を上げればきりがありません。

 小泉さんの政治は、言葉で国民に期待感をつないでいく、その場その場の期待感をつないでいく。しかし流れとしてみた限りは、少なくとも国内の政治に関して幾つかの約束をされましたけれども、3年前にですね、これをやりましたと言えるものは、私が知る限り、大きいものでは1つもありません。だから評価しないのです。まさに「やるやる詐欺」だと言っているのはそういうことです。やるぞやるぞと言って、やっていないから「やるやる詐欺」だと言っているのです。

【記者】関連ですが、小泉総理が掲げている郵政民営化の問題で、26日に事務次官級といわれる3名の方が属される郵政民営化の準備室が発足しまして、今日の夕方には経済財政諮問会議で民営化の中間報告案が示されることになっています。今現在進められている小泉首相の郵政民営化に対する取り組み状況について、どのように思われているでしょうか。

【代表】相変わらずうまいですよね。結果は見えています。本格的な改革にはならないでしょう。しかし、やっていますという格好をつけるのがうまいです。道路公団の時もそうでした。道路公団の民営化推進委員会を作りました。あるいはもう私も数を忘れましたが、諮問機関や個人のアドバイザリーグループやいろいろなものを作って、常にやるような形を作って、国民にやるよやるよというような雰囲気を作るのが大変うまい。しかしそれで進んだものは何もありません。総理自らが、道路が1点だったらば、郵政改革は100の重さがあると言われましたが、1の重さの物でさえ、全く逆行した改革で、前進した改革は一歩も進まないで、100の重さのある改革が進むとは思えません。自分の任期がより長く維持できるように、やるぞやるぞというスタイルを作っているだけだと思っています。

■イラク人質事件での費用自己負担の是非について

【記者】先ほど、人質事件に絡んで自己責任のお話をされましたが、チャーター機の費用を請求することを政府は決めましたけれども、その辺りの是非についてはどうお考えですか。

【代表】個々の費用をどうするか、例えば洋服が破れていて、その洋服を新たなものを買って提供したから、それくらいは自分で払ってくれというようなことはあるかもしれません。しかし一般的に言って、先ほど申し上げたように、自己責任の問題と政府の役割という問題をごっちゃにした議論をすること自体が間違っている。どの部分が自己負担であるかないか、それはレストランで食べたときに、政府の関係者が払ったからその分だけは返してくれというのは、それはあるかもしれません。新聞で見る限り、チャーター機の費用というのも、一人分にするともしかすると民間航空とあまり変わらないかもしれませんが。数字が出ているのではですよ。ですから私にはその金額や何かが適切かということまでは判断できません。しかし、何か政府の責任の追及を恐れて、自己責任ということを言い募ることの姿勢が間違っていると、こう申し上げておきます。

■小泉政権発足3年への評価について

【記者】先ほどの小泉政権発足3年の話ですが、敢えて、評価してもいいと思う点があれば教えてください。また、もし点数を付けられるとしたら何点をつけますか。

【代表】評価をするというよりも、客観的に見られているのは、小泉さんという人はそれほど汚いことはやらないだろうという、そういうところは当初から今日まであまり変わっていないというふうには見ています。我われも、多少いろいろな問題点があることは知っていますけれども、比較的そういう意味でお金の問題で汚いことを自らやるということを、この間表に出ている中でいえば、あんまりないというということはあるかもしれません。

 これは冒頭言えばよかったのですが、例えばブッシュ大統領との関係でも、ブッシュさんがぽっと右に行けばぽっとついて行く、ぽっと左に行けばぽっと左について行くんですね。最近の発言を聞いていると、今度は急に国連主導でいくと言い出したわけです。ついこの間までは、アメリカ主導の占領政策に賛成だと、やっぱりアメリカが中心だと言っていて、今度はアメリカが方針を変えたとなると、やっぱり国連なんだと、前から言っていたというようなことを言いそうですけれども、実は何も考えていない。考えているのはただ一つ、ブッシュ大統領の言うとおりやること以外何も考えていないということですから、そういう意味で、もしブッシュ大統領の言うとおりを評価する人は評価するでしょうし、少なくとも日本としての判断の上で、是は是、非は非として対応すべきという人は、小泉総理のそういった面も評価できないと思います。点をつければ、総合点でいえば、まあ30点くらいでしょうか。

■年金法案審議の進め方への民主党の対応について

【記者】年金法案ですが、与党は中央公聴会を開かないで採決するような構えをみせているようですが、そうなった場合党としてどのような対応をされるおつもりでしょうか。

【代表】これまで重要な法案については、中央公聴会のみならず地方公聴会も開いて、地方の関係者の意見も聞くのが一般の慣例になっております。特に年金という問題は、それぞれの業種、世代、地域いろいろなところですべての人が関係する話しですから、当然、中央、地方の公聴会が行われるものと、また行われるべきだと考えております。いくら与党が乱暴なことをやろうといっても、そこまで無視してやるとは私は思っておりません。しかし万万が一、そういうことをやった場合には、私は単に国会内にとどまらず、全国的にもそういうやり方に対してなぜ自分たちの意見を聞かないのかという動きが巻き起こってくると思っています。


編集/民主党役員室


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