2004年3月23日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅直人代表/定例記者会見要旨

○ 暴力の連鎖を引き起こすシャロン政権のヤシン氏殺害に憤りを感じる
政府は外交官殺害事件の不可解な部分を明確にすべき
農林水産の再生プランが参院選の大きな争点

■イスラエル軍によるヤシン殺害事件について

【代表】パレスチナでイスラエル軍によるヤシン氏の殺害という事件が起きております。ヤシン氏は、ハマスを創設し、また同時に精神的指導者と言われているわけです。テロに対するイスラエルの攻撃ということですが、いろいろな国がイスラエル、あるいはパレスチナの平和回復の努力をしてきた中で、シャロン政権は最も強硬な行動をとったということであります。

 こういうイスラエルの行動に対しては、アナン事務総長も国際法に反する行為だと言われていますが、私自身も同じように強く感じています。つまりは、暴力の連鎖をより大きな形で引き起こす、そういう事件だということです。いまイラクにおいても、テロが絶えないわけですが、自爆テロというものがこの数年間非常に拡がった、その原点を探っていくと、どうしてもこのパレスチナの問題に行きつくわけです。そういった意味ではパレスチナ紛争こそ、テロを生み出す一つの源であると言っても言い過ぎではないと思います。

 先日も、あるテレビ番組を見ておりましたら、今から言えば100年近く前からのユダヤ人の入植、第1次大戦さらに第2次大戦、そういう時代の報道がありました。いろいろな歴史がありますけれども、少なくともこの地域の安定を回復する、あるいは平和共存を回復しなければ、テロの源を絶つことはできない。そういう意味では今回の事件は、憎悪に憎悪を、憎しみに憎しみを重ねた事件であって、大変残念に思い、またシャロン政権のやり方に対しては、私自身憤りを感じているところです。

■外交官殺害事件の事実解明について

 先日のサンデープロジェクトを、私は直接見る機会がありませんでしたが、その中で、逢沢外務副大臣が、2人の外交官が殺害された後の日本への報告について、従来政府は、CPAからの報告があったという言い方でありましたが、米軍から直接あったというふうな話をテレビでされたようであります。その番組の中でも指摘されたようでありますが、非常に不可解な部分が多いわけで、この問題はきちっと政府として事実関係を明確にすべきであると、改めて申し上げておきたいと思います。

■農林水産業再生プランについて

 週末、長崎、佐賀、鹿児島と回ってまいりました。いずれも、参議院でいえば一人区の地域でありますし、鹿児島は、まだ参議院候補は決まっておりませんが、衆議院補欠選挙の候補者が決まっており、その竪山さんとハンセンの療養所にも行ってまいりました。

 いろいろな地方を回って、特に農業関係、漁業関係者にそれぞれの地域で会っています。多くの皆さんが、現在までの、あるいは現在の農政や漁業政策に対して、非常に強い不満と不安を持っていることを、毎回強く感じています。民主党として、参院選前までに、農林水産業の再生プラン、さらには農村・山村・漁村の再生プランを出したいと思っています。この参議院選挙では、これからの農林水産業、あるいは農山村の再生を果たせるのは今の自民党の農政なのか、民主党の再生プランなのかという、それがもう一つの大きな争点になってくるだろうと、このように考えております。

 私からは以上です。

<質疑応答>
■民主党の農業再生策について

【記者】代表はこの数ヶ月間参院選一人区の農村部を回ってこられて、不平不満を持っているということを感じておられるとのことでしたが、具体的にどういうところに行ったときに、どのようなことを言われたか、また農業再生プランがまだ固まっていないということは承知で伺いますが、これまでおっしゃっていた農地法の改正や、デカップリング制度などのほかに、このようなことが考えられるのではないかということを、現場を回ってお感じになられたことがありましたら、ご見解をお聞かせください。

【代表】まず現状に対する不満や不安について、例えばこれからはお米も、野菜と同じような扱い方をされることになることについて、米農家を中心に、本当に自分たちはやっていけるのだろうかという不安があります。また、例えば米から大豆に転作をしたときに、出されていた反当り7万円といったような補助金が大幅に切り下げられる、せっかく転作をして国産の大豆を作る、あるいは国産の麦を作るという一部の動きも、それによって採算が合わなくなる、この猫の目農政というものがこういうところにもあります。ですから中長期的に、例えば若い人が戻ってきて、農業を自分たちもやりたいという人が、たとえ家族にいたとしても、親の立場として、よし戻って来いと、十分やれるのだということを、安心して息子たちに言うことができないという意味で、不満・不安が広がっているということです。

 農地について、いまの農林省の方向は、どちらかといえばプロ農家というか、いわゆるたくさんの農地をもった農家を中心に農業を再編しようという傾向が強いわけです。しかし現場を見ておりますと、同じ農家でも二種兼業農家で、ある時期まではサラリーマンの仕事が主で、農業は請け負いなどでやっているのが、逆にある年齢に達すると、サラリーマンを辞めて、まだ元気ですから、農業のほうに逆に同じ人が戻ってくるといったようないろいろな形態があります。そういうことを考えたり、若い人が農地を借りたいという需要も大変ありますので、そういう時の農地利用というものをどうスムーズにしていくのか、そういった中で、単に農地法というだけでなくて、農地利用という問題と、農地法の問題、そういった観点もこれからどうすべきか、議論をしていただいているところです。

 いずれにしても農業を単に産業という意味だけでなく、農村地域の再生という意味からも見ていきたい。少し前に沖縄にも行き、今回五島にも行ってきましたが、島、特に離島においては、簡単に言うと村落が維持できなくなると、結果的にその島は無人島になってしまう。あの尖閣列島も、明治の時代にはカツオの工場があったわけですけれども、その後カツオ工場が撤退した後、誰も住まなくなって、逆にそのことが一種の国境紛争の島になった背景にもあります。そういうことを考えますと、村落の崩壊は、特に島の場合は、領土保全という問題からも、そうした新たな問題が生ずる可能性があるということも、こういうところを回っていてよくわかったわけでありまして、そういう意味も含めて、村落をいかに維持するかということは、安全保障上の観点からも必要だと、そのように考えております。

■テレビ朝日「ニュースステーション」の終了にあたって

【記者】今度の金曜日で、テレビ朝日のニュースステーションが18年間をへて終了ということになるのですが、振り返ってほかのニュース報道に与えた影響あるいは政治に与えた影響などについて感想をお願いします。

【代表】ニュースステーションと言えば、久米宏さんというニュースキャスターのキャラクターが基本になっているわけであります。私が長年、報道をいろいろな場面で見ておりまして、やはりニュース、報道というものを非常に視聴者に対して、わかりやすく、あるいは興味深く伝えられたのではないかと、また久米さんとしての自分自身のある種の感じ方、ある種の思いをその中に盛り込んだ、そういう個性のある報道番組であったことが、多くの視聴者を獲得し続けたのではないかと思います。そういう意味では、端的に言えば、なかなかいい番組だったのではないかなと、そういうふうに受け止めています。

【記者】自由にコメントを述べることによって、報道というより個人の主観を入れているのではないかという評価と、全体的に野党寄りではなかったかという見方があると思うのですが、その辺りについてはどう思われますか。

【代表】客観的にどうだという話は、いろんな立場も人のいろいろな見方があると思いますし、私も私の主観でしか物が言いようがありません。先ほども言いましたように、ある程度久米さんの思いを盛り込んだ番組だったとは思います。そのことが逆に、味気ないニュース番組とは違って、多くの視聴者にわかりやすくいろんなことを伝えたり、興味を喚起したりしたのではないかと思っています。

 与党寄り、野党寄りというのは、この10年間でも与党と野党は相当入り乱れていますから、一概には言えません。そういうことも含めて、久米さん自身のひとつの物事に対する見方、感じ方が番組に反映されていたというのは間違いないと思います。

■女性候補擁立と女性の支持率の関係について

【記者】参院選の候補者に蓮舫さんを決定しました。民主党は従来女性票がなかなか増えないと言われてきましたが、そういう見方の中での、今回の蓮舫さんの立候補表明の位置づけというものをお話しいただければと思います。

【代表】女性の支持が男性の支持に比べてなかなか上がらないということと、女性の候補者を擁立するということは、関連がないわけではありませんが、ただ女性の支持率を上げたいから女性候補という、そういうストレートな関係とは思っていません。やはり、政治の中でも特に日本は女性の国会議員が相対的に他の国に比べて少ないわけです。またわが国でも、他の分野で女性が非常にがんばっている、進出しているのに比べて、国政の分野では特に少ない。できるだけ多くの、比率で言えば将来は3割くらいはと思っておりますが、今よりは高い比率の女性候補者を出したい、良い候補者を出したいということはずっと思っておりました。そういう点では、東京都連で二人の候補者を立てるという方針のなかで、一人は男性の現職候補者が決まっているものですから、もう一人は女性の良い方をということで、私は大変すばらしい候補者を決めていただいたと思っています。

■年金制度改革法案の国会審議について

【記者】年金の話ですが、今日の役員会で、枝野政調会長が民主党案については4月の頭までにまとめたいというお話をされたようですが、代表自身、審議のあり方について民主党案と政府案が同時に審議が始められるべきだとお考えでしょうか。その場合、与党側が一方的に民主党案を待たずに審議を始めた場合の対応について、御所見があればお聞かせください。

【代表】第一にすでに現時点で、小泉総理はマニフェスト違反をしているということを明確に申し上げておかなくてはなりません。つまり昨年の総選挙の「小泉改革宣言」の中では、年金制度の抜本改正を2004年に行うと明記されているわけです。しかし私が聞くところでは、枝野政調会長、額賀政調会長の出た番組で、額賀さんは、今のは当面の改正で抜本改正はこの後にやるのだという主旨のことを話したと、枝野政調会長からそういう報告を受けています。そういった点で、今回の政府提案が、まずマニフェスト違反の中身だということを明確にしておかなくてはなりません。

 その上で、わが党としてはマニフェストに盛り込んだ内容を、もう一段進化させた形で対案を法律の形にして出したいということで、わが党はわが党で、与党のそういうインチキな案ではない、本物の案を準備しております。その案が、どの時点でまとめきれるかということは、わが党独自の努力によっております。同時に言えば、スウェーデンの例でいえば、抜本改革を行う場合には案をそれぞれ持ちながら、場合によっては超党派的な議論を行う、そういう場が必要であるというのが、私自身、衆議院の段階から申し上げているところであります。

 そういった意味で、大きな抜本改革案を議論し、進める上では、当然多少の時間がかかるとはいえ、わが党が案を出して、国会の中で今の目先の案と抜本的な案とがきちっと並んだ中で議論されるほうが、国民の皆さんにとってはわかりやすいだろうと思っております。しかし与党がどういう態度をとられるかはわかりません。いずれにしても与党案が抜本改革案には値しないものだということだけは、わが党が案を出そうが出すまいが、すでにもう自ら認めている、額賀さんの発言の中ですでに認めていることでありますから、そういう位置づけの中で議論を進めていきたいと、こう思っております。

【記者】関連ですが、与党が議論を始めても、それは民主党として審議に応じていくということになるのでしょうか。

【代表】国会の審議の進め方については、いろいろな物事を考えなくてはなりません。先ほど、報道を見ておりますと、わが党の国対委員長が中川自民党国対委員長の発言に対して、おかしいじゃないかということを、半ば抗議をしたという報道も出ております。つまりは、何月何日から年金審議をするという合意はしていないという報告を聞いています。合意したのは、参議院において予算審議がまだ行われているときには、年金改革案といった重要な法案審議には入らないと、そこまでが合意事項でありまして、いついつに入るという合意事項にはなっていないと聞いております。そういうやり方も含めて、やや自民党は、公明党に後ろを突付かれているのでしょうか、わが党が出そうとしている大きな改革案を待たないで、目先の案だけで強行しようとしてきた場合に、わが党がどういう態度を取っていくのか、それはまたそこまで来た段階でまた考えて行動していきたいと、単純に与党案が強引に上程されたときに、それに応じると決めたわけではもちろんありません。

■「民主党年金改革推進本部」設置の意図と進め方について

【記者】今日の常幹で、代表が本部長になって年金の改革本部ができましたけれども、この本部の設置の意図と、これからの進め方について、現時点のお考えをお聞かせください。

【代表】いま申し上げたこととも関連しますが、年金の改革というのは、政策としての立案ということもありますが、すべての国民に関連することですので、いろいろな立場の皆さん、いろいろな組織の皆さんの意見を聞きながら、場合によっては、多くの人たちと共同して、連動して運動を起こしていくということも必要になると思います。そういった意味で、政策とか国会対応は、定常的なNC、政調、あるいは国対が中心となるわけですけれども、いろいろな分野の人たちとの話し合いや、場合によっては共同した国民的な運動については、この本部を中心に取り組んでいきたいと思っています。

 たとえば経団連とか、同友会とか、連合とか、あるいは共済の関係、国民年金の関係、さらにはこの分野の専門家の多くの皆さんのご意見、こういった皆さんとの意見交換なども、本部が立ち上がる中で、しっかり議論をしながら、望ましい年金制度を再構築するという運動をこの本部を中心に考えていきたい。場合によっては、おかしな案が強行されようとした場合には、そこが阻止するための運動の先頭に立つことも十分ありうると、こう考えております。

■小沢代表代行の活動と党内融合について

【記者】参議院選挙が7月に控えており、民主党は前回の衆議院選挙同様、菅代表と小沢代表代行の2枚看板で戦っていくと見られておりますけれども、今年に入ってからも、小沢代表代行は党の会合には年初の常任幹事会以来、出席しているのを見たことがありません。党内に影響力もあり、選挙民にも訴えるべき代表代行が、党の会合にほとんど出席しないという現状について、代表がどのようにお考えになっていらっしゃるかお聞かせください。

【代表】私が代表代行を要請した折にも、小沢さんのほうから、自分はあまり定常的な会合にはこれまでも常時出るということはしてこなかったので、簡単に言うと、そういう形でいいのかという話しもありまして、どうしてもという時には、私なり幹事長のほうからまた要請をしますということで、そのようなことは事前の約束ということで代表代行に就任していただいています。別にこの間のことで、今までの行動が問題だというふうには思っておりません。また必要に応じて、直接にも、いろいろな形でも意見交換もしておりますし、最近では安全保障をめぐる問題では、党内のベテラン、若手の皆さんともいろんな機会に意見交換をされているようですので、自由党と民主党の、合流してもう半年になりますが、いい意味での融合は進んできていると思っております。

■「年金制度改革案」提出の時期について

【記者】年金の話ですが、年金改革の民主党案の提出が当初予定されていたものより1ヶ月近く遅れているかと思うのですが、その理由についてお聞かせください。

【代表】私の理解では、「当初」というスケジュールが決まっていたとは思っておりません。議論をいろいろなところでして、どういう段階でどういう形で出すかということはかなりの幅のある問題です。自民党が出してもらいたいと思っていた時期、あるいは公明党が思っていた時期に比べて、それは少しずれ込んでいたかもしれませんが、民主党があらかじめ決めていた時期がずれ込んだというふうには認識しておりません。

 先程来、申し上げているように、大きな課題でありますし、考え方が原案的に出てきたとはいっても、多くの人々に係わる問題ですから、もう少し丁寧に、いろいろな人との意見交換も必要だろうと、そういうことで、政調会長の枝野さんが、4月中旬頃というふうに言われておりますが、私は決してそれで特に遅れたというふうには思っておりません。

■江角マキコさんの国民年金未加入をめぐる問題について

【記者】昨日、国民年金のCMに出られた江角マキコさんが国民年金に未加入だったという問題が出ましたけれども、社会保険庁もこれに抗議しているということですが、社会保険庁自体の責任も問われると思います。いわゆる未加入問題の象徴のように言われてもいますが、代表自身、もしこれに何かご感想があればお聞かせください。

【代表】私は、このことは大変重大な問題だと思っております。つまり国民の税金を使って社会保険庁が行う、政府の国民に対するコマーシャル、というより注意喚起、国民年金を払うようにという要請のコマーシャルであります。

 当然ながら、国民年金を払わなくてはならない立場にある人がそれに出演するとすれば、その人が払っているかということは、調べるのが当たり前のことです。ちょっと変な例ですが、交通事故撲滅のコマーシャルに大きな交通事故をおこした人が出られるか、薬物中毒違反をやった人が、薬物禁止のコマーシャルに出られるかといえば、当然ながら出るわけにはいかないわけであります。

 それを自らが払っていない人を出したと、それを調査不足であったということ自体が私は責任を問われると。また当事者の江角さんにも、国会に出てきてもらってそのことを聞くべきだと、このことを聞くことが私は逆に本当の意味での国民年金に対する注意を喚起することになると、これを放置することは、私はできない。

 そういう意味では、年金の改革案がどの時点で議論されるにしても、まず入り口ではそのことをやった上でなければ、江角さんの参考人招致でしっかりその事実関係、社会保険庁の責任を含めて、社会保険庁の説明をきちっと聞いた上でなくては、とてもでないけれども、私たちは国民年金を含めて一本化するという大改革案を提示するわけですから、それをないがしろにしたのでは、議論する意味がありませんので、そのことだけは明確に申し上げておきたいと思います。

編集/民主党役員室


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