2003年11月12日(水) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○特別国会を開くにあたっては、質疑が十分にできる日程を確保すべき
麻生大臣の発言には分権的発想もなく、総務大臣としてふさわしくない
特別国会で十分時間をとった質疑を要求しつつ、臨時国会も念頭に置く
マニフェストの内容を一般的な党の政策として受け継いでいくのは当然
年金の問題は、超党派の場をつくって議論すべき
社民党とは国会内での共闘関係はきちっと対応し、静かに見守りたい
戦闘地域でない地域があるという福田官房長官の発言に、根拠はない
基本計画の閣議決定先送りは、説明から意図的に逃げており、問題だ
参議院の役員人事は、来年に向け、最大限力を発揮できる形ができた

■特別国会を開くにあたっては、質疑が十分にできる日程を確保すべき

【代表】衆議院選挙が終わりまして、いろいろ衆議院選挙の間は皆さんにもご苦労をおかけしました。まず、お礼を申し上げておきたいと思います。

いよいよ特別国会が召集されるわけですが、いま与党側は短期間の特別国会にしたいと、極端に言えば議長・副議長はもちろんですが、首班指名だけの特別国会にしたいという趣旨のことを言っているようです。しかし憲法の規定から見てもお分かりになるように、衆議院選挙がおこなわれた後、わざわざ特別国会という名前を付けているのは、その段階で勝とうが負けようが、総辞職を内閣がする。そして首班を改めて新しい国会議員で指名をして、組閣をするということが特別国会の使命であります。

そういった意味では、同じ人物であろうがなかろうが、ある意味では改めて選ばれるわけですから、改めて選ばれた総理として所信表明をするのは当然のことであります。しかも現在はイラクへの自衛隊派遣の問題、さらには選挙前からの道路公団総裁のいわゆるイニシャル発言の問題、さらには一般的に言っても経済の問題やいろいろな道路公団の問題など課題は山積しているわけで、国民が新しく改めて選ばれた小泉総理に聞きたい問題は、このイラクの自衛隊派遣を含めて、大変重要な課題があるわけでして、そういった意味では特別国会を開くにあたっては、そうした問題の質疑が十分にできるような日程を確保すべきだという線で、わが党としては他の野党とともに強く要求していきたいと考えております。

■麻生大臣の発言には分権的発想もなく、総務大臣としてふさわしくない

【代表】今日の中日新聞の記事でありますが、麻生総務大臣が、愛知県知事を始めとする愛知県の関係者に、総選挙でたくさん落としてくれたので陳情を控えめにしたほうがいいですよと言ったという発言があったそうだということが紹介されています。

選挙中もちょうど地方主権担当大臣を田中康夫さんでお願いした折りにも、ある場面で麻生大臣と比較をしたわけですが、分権的発想がまったくない人だと、その時にも私は言っていましたが、まさにそのことを証明するかのような発言であります。

つまりは総務省というのは、分権というものを担当しているという建前になっておりますが、結局は自分の党が負けたところには補助金をやらないと脅しているわけですから、まったく分権とは正反対の立場をそういう場で示したわけでして、ここにも総務大臣として私はこういう発言をすること自体ふさわしくないと思いますし、自民党の分権のマニフェストがいかに中身がないものかというものを、改めてこの発言から強く確認したといいましょうか、そういう思いがいたします。

<質疑応答>

■特別国会で十分時間をとった質疑を要求しつつ、臨時国会も念頭に置く

【記者】特別国会の会期幅に関係してですが、与党側が十分な日数を提示しない場合は、4分の1で臨時国会を要求することもできますが、そういう行動をとる可能性はあるのでしょうか。

【代表】考えとしては十分あります。特別国会というのは、まさに衆議院の選挙が終わったあと開かれることが決められた国会ですが、臨時国会の召集の手続きというものもありますので、いずれにしても11月の中旬ですが、このまま次期通常国会というのは1月中旬ぐらいになるわけですが、新しく総理が選ばれながら実質的な所信表明もそれに対する質疑もないまま2ヶ月以上を費やすということは、国民に対して選挙が終わったら、あとは何も選挙のときに問題になったことも含めて議論をしないという、まさに議院内閣制のある意味では最大の要素、つまり国民の前で議論するということすらできないということは、とても認めることはできません。

ですから特別国会での質疑を要求するということでいきますが、場合によってはそれに並行して進むというか、組み合わせて臨時国会ということも念頭におきながら、まずは特別国会で十分な質疑時間をとった会期幅を要求していきたいと思っております。

■マニフェストの内容を一般的な党の政策として受け継いでいくのは当然

【記者】マニフェストについておうかがいします。国民に対して政権をとった場合の約束という位置付けだったと思いますが、中身的にたとえば法案提出など、いまでも可能な項目があったと思いますが、そうした項目について、具体的にこうしたことは実現していきたい、というのがありますでしょうか。

【代表】マニフェストそのものは、政権公約、つまりは政権を担当するときにこういうことを、こういうことの間に実現しますという約束ですので、政権が残念ながら任されなかった中で、いわゆる政権公約としてのマニフェストは、一応我々のものは政権がとれなかったわけですから、契約が成立しなかった。つまり契約というのは政権をとったらやりますということですから、とったらという条件が満たされなかったわけですから、その時点で契約は成立をいたしませんでした。

もちろん小泉政権公約は政権を維持できたわけですから、当然小泉政権はそこで述べられたことは、国民に対する約束として責任があると思います。

民主党のマニフェストについて今後のあり方ですが、まず一般的な政策として受け継いでいくことは当然ですし、その中で政権という立場ではない中でも、国会に法案を提出したり、そういう形で実現に努力するというそのことも、当然のこととしてやっていきたいと思っています。

ただ何度も言いますように、実現の約束という意味では前提となる政権獲得ができませんでしたので、マニフェストという性格そのものはいったん白紙に戻ったと。あくまで内容的なものとして党の活動に引き継いでいくという位置付けになろうかと思っています。

■年金の問題は、超党派の場をつくって議論すべき

【記者】年金の問題は、おそらく来年の通常国会に政府のほうが案を出してくると思いますが、民主党もかなり具体的なマニフェストをまとめていらっしゃいますが、これを対案として民主党を法案化して出していくというお考えがあるのかどうかということと、消費税についても法案に入れ込んでいくのかということについてお聞きします。

【代表】まだちょっと分かりません。とくに年金の場合は、かなり長期的な課題の新しい制度設計として提案しておりますが、たとえばいつの時点でどの財源をどう上げて、掛け金をどのくらい上げるということについては、選挙中にも申し上げていたように、具体的ないろいろな意味での試算が必要になります。

ですから私たちとしては、民主党の案という意味では、いろいろな形で議論の場にはこれまでどおり提出してきたいと思いますが、それが具体的な法案という形で出すか出さないか、あるいは出せるか出せないかということは、いまの段階ではちょっと言えません。

もともと私は前から申し上げているように、年金のような大きな制度は、与党・野党を超えて私どもが政権をとったときでもそうだったわけですが、国会の中にしっかりとした議論の場を置いて、1年単位、2年単位で考えるのではなくて、20年単位、50年単位で考える、そういう超党派の議論の場をつくるべきだと思いますので、そういう場が作られれば、もちろんわが党として提示していきたいと思っています。

■社民党とは国会内での共闘関係はきちっと対応し、静かに見守りたい

【記者】マニフェストの関係で、次の参議院選でも同じようにマニフェスト的なものを出すのでしょうか。もう一つは社民党との関係ですが、今回の選挙で一定程度の選挙協力はできましたが、いくつかの選挙区では競合するという形になって、今回の選挙結果を迎えたわけですが、これをどう総括されて、今後の関係をどう構築していきたいとお考えかお聞かせください。

【代表】参議院選挙用のマニフェストをどうするかというのは、まだちょっと早いのではないのでしょうか。もちろん衆議院選挙、参議院選挙の違いというのもありますし、今回提出したマニフェストというものが、当然ながら一つの前提となるわけですけれども、それをどういう形にするかというのは、ちょっと今日の段階ではそこまで先回りして考えていませんので、お答えするのは早過ぎると思います。

社民党の問題は、すでに国会運営などでは両党間の幹事長も何らかの意見交換をしているという報告を受けていますので、従来からもそうでしたが、国会内での共闘関係はこれまで同様、あるいはこれまで以上に、きちっと対応していきたいと思っています。

それを超えた問題については、社民党自身の皆さんのいろいろな今後のあり方の議論があるようですので、少しあまりこちらでそれ以上のことをあれこれ言わないほうがいいのかと思っています。静かに状況を見守っていきたいと思います。

■戦闘地域でない地域があるという福田官房長官の発言に、根拠はない

【記者】イラクの問題についておうかがいします。アメリカの司令官が、イラクでの戦闘地域と、非戦闘地域の区別をつけるというのは非常に難しいと言ったことに対して、福田官房長官が、日本の自衛隊は安全なところへ派遣するので心配ないということを言いましたが、そういう状況をどう思われますか。

【代表】まずイラクの状況については、通常国会の折りから、本当にその非戦闘地域というところがあるのか、あるとしたらそれを示してくれと私から言ったら、総理はそんなことは知るわけがないというような答弁が当時あったわけですが、それから4ヶ月が経過しましたが、ますます状況は悪化している。

私が見るところでは、戦争状態に逆戻りしているというのが適切かと思います。そういった意味で現地司令官の発言は、いろいろな報道と重ね合わせてみても当然の判断だろうと思います。それをしきりに福田官房長官が、戦闘地域ではない地域があるんだと言っていますが、ほとんど根拠はありません。

しかも今日の報道の中で、主力部隊を南部に置くにしても、バグダッドにも自衛隊を何人か派遣するということになった場合に、バグダッド自体も戦闘地域ということであると、イラク特措法からして、自衛隊のそういう受け入れ要員も受けないのではないかという議論があって困っているんだという報道がありました。そういうことも考えると、私たちはイラク特措法そのものに反対し、イラク特措法が許しても派遣すべきではないという立場ですから、イラク特措法そのものに照らしても派遣できないのではないか、法律を遵守した形での派遣は不可能ではないかと私は思っております。

ですから私は、ちゃんと国会を開いて、国会の場で、もし福田官房長官が言うようなことが自信を持って言えることならば、国民の前でしっかりと説明する、あるいは我々の質問に答える。一方的に根拠も明らかにしないで区別できるという言い方は、そのまま認めるわけにはいかないというのが当然ではないかと思っています。

■基本計画の閣議決定先送りは、説明から意図的に逃げており、問題だ

【記者】イラク関連で、基本計画の閣議決定を、特別国会の後で方針を固めて、自衛隊を年内にも派遣を考えていると福田官房長官は明言しましたが、基本計画を先送りした上での年内派遣という考え方に対して、どのようにお考えでしょうか。

【代表】昨日も申し上げましたが、まったくけしからん、あるいはまったく国民に対する説明責任を意図的に逃げていると考えています。つまりは基本計画を閣議決定すれば、それを国会に報告する義務があるわけですが、特別国会を短く終えて、それが終った後に閣議決定して出してしまって、その後、自動的な段階で報告ないしは承認ということを考えているとすれば、もう今年中に出すということであれば、まさに説明をすることができないから、しないで強行しようという姿勢で、ある意味では法律を逸脱してといいましょうか、あるいは逃げているというか、そういう形だと思います。そういう対応そのものが私は極めて問題だと思います。

■参議院の役員人事は、来年に向け、最大限力を発揮できる形ができた

【記者】今日、参議院の新しい役員人事が内定したようですが、若干もめたようですが、来年の参議院選挙を睨んで代表はどのようにお考えでしょうか。

【代表】参議院の三役人事というのは、参議院の中で一定の手続きで一つの案を決めて、それを代表が承認するという、わが党の現在のルールではそういう形になっております。最終的には多少の議論があった中で、参議院の皆さんが最終的な形を今日報告に参りましたので、私としては最終的な参議院で決めた案について了承をいたしました。

これから衆参で新しい再度選ばれるであろう小泉政権に対峙するわけですし、来年の参議院選も、もう半年あまりと身近になっていますので、それに向けて最大限力を発揮していただける形ができたのではないかなと思っています。

■イラクへの自衛隊派遣は、総理は今からでも国民に謝って姿勢を変えるべき

【記者】イラク問題に関連して、最近政府首脳の発言が非常に大雑把というか、人を食ったような発言が相次いでおりまして、イラク派遣については交通事故に合うのと同じくらいの確率だみたいなことを言ったり、そういった言語感覚について、代表はどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。

【代表】イラクの問題については、個々の認識と同時に、基本的な政府の方針が事実上ダッチロールをしていると見ております。いま最初にあった話でいえば、もともと危険であるかないか、あるいは法律上で言えば戦闘地域か非戦闘地域かという、いろいろな概念がないまぜになっていて、質疑の中でも申し上げたように、基本的には日本の憲法などの制約を回避するためのフィクションなんですね、非戦闘地域というのは。

概念であって実態ではないということです。しかしそう言ってしまうと自己矛盾を起こすものですから、実態であるかのごとき表現をして、そこで安全か安全でないかと言えないから、交通事故と一緒のようなことを言うと、まさに本質的な矛盾がそういう表現として極めておかしな説得力を持たないといいましょうか、言い逃れの表現になっているということです。

それからもう一つの本質は、政府としてこの法律に基づく派遣が本当にできるのか、あるいはやるべきなのかというところが、私から見るところは深いところで迷いがあると思います。総理はブッシュ大統領に約束したからとにかく行け、ということでやっていますが、現場を預かる自衛隊の関係者、防衛庁の関係者、さらには法律としての判断をする関係者の中で、実態から見ていまのイラク特措法についても、実は出せないのではないかという戸惑いと、小泉総理のメンツというかブッシュ大統領との約束の問題との中でいわば揺れ動いていると見ております。

いずれにしても小泉総理が間違った判断のもとに間違った約束をしてきたわけですから、私としては今からでも遅くはないから国民の皆さんに謝って姿勢を変えるべきだと思います。


編集/民主党役員室


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