2003年8月19日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○道路公団の「改革本部」設置は、言葉は踊っても物事が進まない小泉政治の象徴
民主党と自由党の合併への多くの期待を受け止めて、大きなうねりにしていきたい
小泉総理の言う道州制は、意味内容をしっかり聞かない限り、コメントに値しない
株価の上昇自体は喜ばしいが、景気回復・デフレ状況の回復にはなっていない
訪米の検討をしたが、総合的に判断して今回は見合わせる方向で検討中
分権という方向で国のかたちを変えていくことはマニフェストに盛り込んでいきたい
年金の議論は、長いスパンできちんと将来の姿を示すことが重要

■道路公団の「改革本部」設置は、言葉は踊っても物事が進まない小泉政治の象徴

【代表】夏休みが私にとっては昨日までということで、今日から仕事を再開いたしました。寒いというか冷夏でありまして、そういう意味では冷夏による作物の成長が悪いということで、心配をしております。

二、三点感想めいたことを言いますと、道路公団について改革本部というものが設置されるという報道を拝見しております。あまり詳しい位置付けは分かりませんけれども、屋上屋を重ねるものになるのではないかという批判もありますし、一方では藤井総裁の延命策ではないかといったことも言われております。

いつも言うことですが、本来内閣というものは、総理が任命した閣僚がいるわけでありますから、一つの方向性を出せば、その閣僚を通してその方向を実行させればいいわけでありまして、それにもかかわらず総理の下に民営化推進委員会というものをつくり、公団には公団で新たな改革本部をつくる。小泉政治の言葉は踊っているけれども物事が進まない、まさに象徴のようなやり方ではないかということを申し上げておきたいと思います。

■民主党と自由党の合併への多くの期待を受け止めて、大きなうねりにしていきたい

【代表】民主党は自由党との合併を決めまして、それに向かっていろいろな課題を順次詰めてクリアにしております。選挙についてもいろいろな段階を経ておりますが、それぞれ一人一人の候補者、あるいは候補予定者にとっては一生を懸けた大事でありますから、丁寧に、しかし9月末という一つの目標に向かって、その時期にきちっと間に合う形で進めていきたいし、進めていただいていると報告を受けております。

私と小沢党首は先だっては仙台で一緒に遊説をいたしました。その前にも静岡で、これは以前からの企画に乗った形で二人でシンポジウムをおこなったわけですが、あと当面4回、揃い踏みといいますかそういうものを考えております。

札幌、広島、福岡、そして四国の松山、このくらいの日程をだいたい決めまして、その日程に沿って今月末から来月初めにかけて、それぞれの地域で街頭になるのか、あるいは箱モノというか屋内になるのか、それぞれの地域の皆さんとの相談の中で、計画を立てて全国を回っていきたいと思っております。

もちろん言うまでもないことですが、全国の皆さんからもいろいろな声を聞きながら、この民主党と自由党の合併によって政権の受け皿にふさわしい、新しい民主党ができるんだということを訴えると同時に、多くの皆さんの期待を受け止めて、大きなうねりにしていきたいと考えております。

いろいろと政策的な点では、基本については合併を合意した文書にありますように民主党の政策やマニフェストを新たな民主党の政策マニフェストにするということは決めておりますが、同時にそれぞれ仲間として一緒になることが決まっているわけですから、そういう皆さんの意見をしっかり踏まえながらまた相談すべきところは相談しながら、詰めていきたいと思っております。

<質疑応答>

■小泉総理の言う道州制は、意味内容をしっかり聞かない限り、コメントに値しない

【記者】道州制の関係でお伺いしますが、先週来、小泉首相あるいは竹中大臣が道州制導入に非常に前向きな姿勢を示しております。これについて改革派知事の取り合いというイメージがするのですが、首相のこうした発言について、どのような狙いがあるとお考えでしょうか。正直言って民主党のほうが道州制については前から前向きで、民主党のパクリという言い方も言えるのではないかと思うのですが、その点についていかがでしょうか。

【代表】民主党はいろいろな表現をいま固めつつありますが、分権革命という言い方をしたり、あるいは先の2000年の衆議院選挙では分権連邦国家、まさに道州制のことですが、そういうことを基本の政策に掲げたところであります。そういった意味では、民主党が国のかたちを、分権的な形、ある意味では道州制的な形にしていきたいということは、この間一貫して主張してきたことでありますし、表現をこれから固めますが、何らかの形でマニフェストの、ある意味で一番骨太の柱にになるところだという認識でおります。

そういう点では小泉総理が、三位一体ということはこの間いろいろ言われてきて、その中身はあまりにも貧弱だという批判は私どもがしてまいりました。ここにきて道州制という言葉がやや唐突に小泉首相の口から出たということについては、まだその意味内容をしっかりと聞かない限りは、率直に申し上げてあまりコメントするに値しないのではないかと、小泉総理の多くは言葉はあるけれども内容がないという例が多いわけです。

一番長年言っている郵政事業の民営化でも、300兆円の郵貯簡保の資金を、どのように民営化の中で貸し出していくのか、あるいは運用していくのかということについて、一言も言わない。民営化という言葉だけでいわば済ましているという、とても政策に値しない状況が続いているわけですが、道州制という言葉を実際に実行する上では、とても三位一体なんてものを進めたからといって、道州制に繋がるわけではないわけですから、そういう点ではまだコメントするに値しない状況です。

パクリであるかないかというのは、私たちは当事者でありますから、私たちが提議したのは先の衆議院選挙の折りもそうですし、今回のマニフェストの作成の基本の柱が、表現はいろいろありますが、分権革命にあることはそもそも申し上げていることですので、あえて言えば、私たちが先に掲げたことについて、後追いで何かスローガンだけ出してきて、そういう印象を持っていることは申し上げておきたいと思います。

■株価の上昇自体は喜ばしいが、景気回復・デフレ状況の回復にはなっていない

【記者】日経平均株価が10000円台を回復しましたが、それについてどのように見ていらっしゃいますか。

【代表】株価が上昇したことそのものは傾向としては大変喜ばしいことだと思っております。その上で言えば、小泉政権が誕生した時点では確か14000円ぐらいでありまして、そういう点では10000円は回復したけれども、それで小泉政権下の経済政策が、当初考えていた、あるいは当初小泉総理が構造改革なくして景気回復なしと言われていた意味で、回復しつつあるとは私は見ておりません。

とくに一言申し上げておきますと、GDPの伸びも予想以上であるとか、いろいろな言い方がされております。しかし一番重要なのは、こういう局面、デフレ局面ではデフレの状態がどのようになっているのかというのが一番重要だということを、少なくとも経済がある程度分かっている人はよく分かっているはずです。

名目成長率が、マイナスが続いております。ということはどういうことを意味しているか。例えばマンションを買って2000万円の借金がある。給料も物価も、もし半分になったら借金が半分になってくれればいいのですが、借金は半分になりません。ということは給料と物価、つまりデフレが半分まで来たときには、借金が事実上負担が倍になるということで、それは名目で効いてくる。そして名目のデフレが続く限り、自動的に不良債権は増大し、いわゆるデフレによる個人消費の停滞が続くということをきちっと把握しておかないと、実質成長率がプラスだから名目がマイナスでも関係ないという、まさか竹中さんがそんなことを言うとは私も思いませんでしたが、もう一度経済学の勉強からやり直してもらったほうがいいのではないかと、私が言うのも恐縮ですが、そんなふうに思っております。

そういうことを含めて、現在の株価が上がったこと自体は喜ばしいことでありますが、残念ながら景気回復、あるいはデフレ状況を回復することにはなっていないということは、明確に申し上げておきます。

■訪米の検討をしたが、総合的に判断して今回は見合わせる方向で検討中

【記者】代表の訪米について、一部報道でアメリカの政権幹部・首脳との会談ができないということで訪米とりやめされると言われておりますが、その点についてはいかがでしょうか。

【代表】9月の訪米について検討していたことは事実であります。その中でいろいろな意見があったわけですが、訪米する以上は、できれば大統領や副大統領にとか、いろいろな意見があったのですが、そういうことの可能性も含めて、今日の時点は必ずしもそういうことを実現する上で適切な時期ではないという総合的な判断で、今回は見合わせようという方向で最終的には結論を出したわけではありませんが、そういう方向で検討しています。

■分権という方向で国のかたちを変えていくことは、マニフェストに盛り込んでいきたい

【記者】道州制をマニフェストの柱にすると言いましたが、もう少し具体的にお聞かせ下さい。

【代表】まさに大きな柱として、皆さんにもこれまで言っていますように、強い日本をつくるということ、そして税金をむしゃむしゃ食べるオバケ退治をする、そして三番目の柱として、これはまだ表現は変えるかもしれませんが、現在のところ分権革命という大きな三本の柱をもとに、具体的ないくつかの項目を整理して、最終的には来月末までにはきちっとした形で出そうという段取りにしております。

ですから道州制というのは、先ほどの質問は小泉総理がそういう表現で言われたからどうだということに対して、道州制そのものという表現で盛り込むということを申し上げたのではなくて、従来を含めて、分権改革あるいは分権連邦国家などいろいろ表現をしておりますが、そういう内容的に国のかたちを変えていくということについては、マニフェストが大きな柱として盛り込んでいきたいと考えています。

具体的にどこまで、たとえば日程を3年なら3年に切ってやるということになった時に、どこまでのことを盛り込められるか。それは3年とか4年とかいう時間も含めて、その中で実現可能なところまでどこまで表現するのか、きちっとこれから詰めていきたいと思っています。

たとえば今年の1月には、15兆円のヒモ付き補助金を全部カットして、それをヒモのつかない一括交付金に変えるというのは、これは単年度でもやれるという意味で、ある意味では道州制というか少なくとも分権大改革の第一歩にふさわしい内容の組替えの予算を出したことは、皆さんもご承知のとおりでありますから、たとえばそういう形で組み込んだものをのせることができると判断すれば、大きな第一段を持ちこみたいと思っています。

■社民党との選挙協力は九つの県で固まり、さらに相談を続けている状況

【記者】訪米の話で、ちょうど代表が訪米を検討しておられると思われる時期に、小沢党首との遊説日程がほぼ固まっていると思いますが、アメリカ側の要人とお会いできるかできないというお話とは別に、小沢党首と国内で遊説をするなり、合併のことについてアピールするなりということを優先すべきだという判断があったのかどうかということについてお伺いしたいのと、社民党との選挙協力について、来週ある程度推薦をまとめて出したいということも聞いていますが、いくつかの競合区についてはどのように調整しようと思っているのか、改めてお考えをお聞かせ下さい。

【代表】小沢党首との揃い踏み的遊説計画については、当然ながら9月初めの全体のスケジュールとにらみ合わせて考えてきたところです。そういった意味で先ほど申し上げたように、訪米については、総合的判断の中で今回は見合わせたいということが固まることと並行して、小沢党首とのスケジュールも順次確定しているというのが実情であります。

社民党との選挙協力については、細かい点は赤松選対委員長にお聞きいただきたいと思いますが、私が承知している範囲では、九県においてはバッティングはない形で選挙協力が固まっている。さらにそれに加えて五つになるか六つになるか、十近くになるかの県で、その可能性を含めていま相談をしている状況だと聞いております。

そういった意味で、この時点でどういう数が、県と選挙区の数と、もちろん選挙区の数のほうが県の数のほうの二倍か三倍になるわけですが、それを含めてどのような数字になるかは最終的には私はまだ聞いておりません。

バッティングについては、かつての自由党との議論と社民党との議論がやや違うのは、全国でどうしようという議論になかなか社民党との間ではできておりません。それは社民党のほうが各県単位で物事を決めるので、党本部で全体を勘案して決めることはなかなかとれないので、県ごとに固めていかなければいけないんだと言われているものですから、たとえばいまの九つの県あるいは五つ六つの県が固まったとしても、固まらない県がまだ20とか30とか残るわけですから、それらの県について、社民党のほうがさらに候補者を擁立されるのかどうかという点については、先ほど申し上げたように、全国でどのようにするという話し合いはなかなか難しいと社民党のほうから言われますので、その見通しはそういう理由ではっきりしないと申し上げざるを得ません。

今回やっているところはいくつかの県で調整ができるところについて九つの県でほぼ固まり、あといくつかの県で固まる方向だと、合わせれば20とか30の選挙区ではうまくいけば固まるのではないかという見通しだそうです。

■女性支持率上昇は、合併を契機として民主党の認知度が女性層にも拡がった結果

【記者】最近、朝日新聞の世論調査で細かく見ていきますと、女性支持率が若干上昇傾向にあります。これまで民主党はモテないとされていましたが、モテないと言われていた原因は何だとお考えでしょうか。また逆に上昇のポイントはどこにあるのかとお考えでしょうか。あと小沢政治塾が近くおこなわれますが、小沢党首は来年以降も続けていきたいという意向を示されています。これについては一部に派閥活動と見る向きもありますが、代表はどのようにご覧になっていますでしょうか。

【代表】男性の支持率に比べて女性の支持率がかなり差をつけて低いという傾向が民主党にはかなり続いていましたので、そういった点では朝日の調査が女性の支持率が男性に比べてあまり差がなくなったというデータがあると私も聞いておりますが、大変喜ばしいニュースだと思って、心から喜んでいます。

女性の支持率がこれまで男性の支持率に比べてかなり低かった理由について、逆に言えばいろいろな皆さんにお尋ねしていたところでありますが、これまでいろいろな方の意見などを総合してみますと、やや理屈っぽくて庶民性というか、そういうことに欠けていたのではないか、ですから一部のビジネスマンといったようなタイプには、女性であってもかなり理解されているけれども、主婦層を中心に、民主党というものに対しての理解というか、いわば認知度が結果的に低かったのではないかということを言われております。

また小泉総理と私を比べても、何となく小泉総理のほうが、少し抵抗勢力の脂ぎったオジサンに取り囲まれてかわいそうだというイメージが、だいぶ消えましたがまだかなり強い。それに比べて私のほうがあまりかわいそうに見えなかったのかよく分かりませんが、まあ私が解説しても仕方ありませんが、そういういくつかの理由があったと思います。

女性の支持率が上がってきたというのはとても喜ばしい限りですけれども、民主党のある姿が今回の合併ということを一つの契機として、多くの皆さんが注目していただいたと、そして見てみれば民主党もいろいろな若手がいて頑張っているということが、少しずつ変わってきたのではないか。つまりは民主党というものの中身の認知度が、そういう女性層にも拡がってきている結果がこういう結果になっているのではないかと見ております。

小沢党首の政治塾については、大いにけっこうであるのではないかと思っております。私も一時期そういうものを主催した時期もありますし、かつてさきがけの時代に田中秀征さんがそういう塾をやっておられたこともありますし、いろいろな形で政治家がみずからの責任で政治的な塾を、わが党でもたしか円さんが女性塾というものを開いています。そういう点では大いに若い人、あるいは一般の人を政治にアプローチはしたいけれども、なかなかチャンスがないという人たちにそういう場を提供するということは大いにやっていいし、小沢党首が続けられることは、私は大変いいことではないかと思います。

■年金の議論は、長いスパンできちんと将来の姿を示すことが重要

【記者】年金改革について、財源の問題が議論されています。その中で今日の役員会などでは消費税引上げを財源にすべきではないという議論がありますが、財源をめぐっては、代表はどのようにお考えなのか、お聞かせ下さい。

【代表】役員会で消費税を財源にすべきでないという議論が出た、出ないというのは、私も出ていましたが、必ずしも正確な表現ではありません。役員会というところは個別政策を詰めるわけではありませんので、必ずしもそういうことを役員会で決めたとか、決めなかったとかいうことではありません。

ただ年金の議論はいろいろな形でやっておりまして、私も役員会ではない席ですが、現在の民主党の議論の状態の報告をいただいたところです。年金の話はやり始めると大変複雑でありまして、ここの厚生省が14年度に出した年金制度のあらましという資料がありますので、私も時折勉強しているところですが、やはり基本的な考え方としては、20歳の青年に40年後、あるいは50年後に年金を受け取るときにはこうなるんだということが言えるような、長いスパンできちっと将来の姿を示すことができることが必要だと思っております。

と同時に、現在給付をすでに受けておられる方もたくさんいるわけですから、現在の状態が40年先の状態に向かってどのような変化をしていくかというプロセスを方向づけることが必要だと思います。その中で財源の問題は考えられることでありまして、しかも財源というのは掛け金の問題、あるいは一般会計からの繰り入れ、現在でも基礎年金の1/3はそうなっていますし、一般会計ということは必ずしも消費税であるか法人税であるかということは現時点では区別のない、形のない一般会計でありますが、それを消費税ということに限るとすれば、やはり目的税的な扱い方にするということが前提になりますので、そういういろいろなものがリンクしております。

そういう意味で現在民主党として年金制度のあり方について、そういう40年先の将来、これは将来であるけれども、現実に20歳にとっては自分のことでありますから、40年後にもらうわけですから、そういうことを見通した将来のきちっとした姿と、そして現在のあり方からそれに移行するプロセス、こういう大きな流れを一つの方向としてまとめていきたい。

その中で、ある部分についてマニフェストに盛り込むことができるものがあれば、盛り込みたいと思っております。ただこれは若干私個人の見解でありますが、スウェーデンなどの例では、この年金問題だけは与野党超党派で議論を5〜6年重ねました。途中で政権交代があっても超党派ですから全政党が議論を重ねて、そして成案を得て大改革をおこなった、いまのスウェーデン方式というものが生まれたわけです。

何度も繰り返しますが、年金制度というのは40年、50年という制度設計でありますから、私は個人的には超党派の場でしっかり議論をして、その40年、50年の長さで維持できる制度をつくっていくべきだと考えています。もちろんその方向に向かって、民主党としての考え方はきちっと提案していきたいと思っています。


編集/民主党役員室


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