2003年6月24日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○イラク新法:総理答弁は、大量破壊兵器問題など、はっきりしない点が大変多い
国立大学法人化は、従来の文科省の説明とは違い、更なる議論が必要
高速道路無料化の提案に対する扇国土交通大臣の反論は、勝手な勘違いだ
岡山1区からの出馬要請を長男が受け入れたが、しっかり頑張ってもらいたい

■イラク新法:総理答弁は、大量破壊兵器問題など、はっきりしない点が大変多い

【代表】今日、本会議でいわゆるイラク新法の趣旨説明があり、わが党含め、それに対する代表質問がおこなわれました。総理をはじめとする答弁を聞いておりましても、非常にはっきりしないところが大変多いというのが率直な印象であります。

一つはやはり、先の党首討論でも問題になりました、イラクの大量破壊兵器の問題について、総理は、あるんだというか、そのうち見つかる、ということを言っておりますけれども、この問題もいわゆるイラク戦争の、いわば始まりの前提になっているわけでありまして、それでは今月中あるいは来月のある時期までに見つからない場合に、どういうふうに考えるのかということも明らかになっておりません。

それに加えて、戦闘地域と、そうでない地域というものについてどう考えるか、ということについても、必ずしも納得のできる説明というのはありませんでした。私はこの問題は徹底的に議論する上では、45人の特別委員の委員が決まるわけですから、あるいはもう決まっているかもしれません。その委員が、できれば全員でイラクに出かけて、本当にそういう区分が可能なのかどうか、自分たちの目と皮膚でしっかりと感じて、あるいは実態を調べてくるべきだ。少なくともわが党が出した調査団の報告を聞く限り、とてもそんな区分はできない。あるいはアメリカの現地司令官も、ある意味ではまだイラク全土が戦闘地域だと言っているわけですから、それを敢えてそうでないと言うのであれば、そのことに対して審議をする全員が責任を持てる議論をしてもらうためには、現地を見てくるべきではないか、このように感じたところであります。

■国立大学法人化は、従来の文科省の説明とは違い、更なる議論が必要

【代表】もう一点、これは参議院ですけれども、今、文科省の国立大学法人化法案が、一時審議が止まっております。この国立大学法人化の問題は大変根の深い問題でありますが、少なくとも従来文科省が説明していた、いわば独立的な法人になることによって規制が緩和されて、ある意味での自由度が増すといった説明が、実はまったく逆で、きわめて細かい管理をおこなうことを前提として、いろいろな調査というか各大学、各学科、各研究科に調査票が送られていて、それをすべて文科省に出さなければいけない。こういうことをわが党の桜井議員が資料を揃えて取り上げた結果、従来の答弁説明とまったく矛盾していた。

単に矛盾していたということでは済まない、本質的な問題です。つまりは大学というもののあり方について、ある意味で国立大学という形から、もっと自主的判断ができる大学にしようという、そういう説明が、自主的判断どころか、先日確か佐和京都大学教授がある新聞に投稿されていましたが、ソビエト連邦時代のような、そういうコントロールですと言われておりました。まったく逆方向の中身になっておりますから、この点については、場合によってはもっとしっかりとした更なる議論が必要である。

わが党はそれに対する修正の方向も出しているようですが、しっかりとそれをフォローしていきたいと思っております。

■高速道路無料化の提案に対する扇国土交通大臣の反論は、勝手な勘違いだ

【代表】またあわせて道路公団についても、昨日のわが党の長妻議員が出した資料、つまりは道路公団の中での議論についても総裁は否定をしたということでありますけれども、本当にそういう議論をしていないのか、多くの場合、この間出されているいろいろな内部からの情報というのは、比較的正確なものが届けられる場合が多いわけでありますし、現実におこなわれているその後の行動を見ていましても、道路公団の行動は、長妻議員が指摘をしたことと符合しているわけですから、そういう点からも、この問題についても単に否定をしただけで済む問題ではないと考えております。

それに関連して、扇国土交通大臣が何か勘違いの反論をされているようであります。つまりは私が高速道路の無料化について触れたことについて、税をかけるんだ、保有税をかけるんだと、勝手な解釈をされているようであります。

私が申し上げたのは、講演の席ですからこれだけについて申し上げたわけではありませんけれども、いわゆる40兆円の負債については、いろいろな考え方があるということを申し上げて、実はわが党の中で無料化したときのいろいろなシミュレーションを含めて議論は現在進行中であります。

その中には、いまある道路財源、ガソリン税とかありますが、中にはいろいろな所に行ってみますと、高速道路はガラガラなんだけれども、下の国道が混み合ってるからバイパスを作ってくれ、バイパスを作るのは、当然道路財源からできるわけですから、高速道路がちゃんと無料化すればバイパスを作る費用は逆にかからななくなる。

そういう財源も実はかなりあるんですね。一般道の財源も、かなり高速道路をきちんと活用すれば、そういうバイパスなどが不要になる部分もあります。またスイスなどの例を聞きますと、ステッカーを貼る。つまり高速道路を使わない車はステッカーはいらないわけですが、高速道路を使う可能性のある車はステッカーを、乗用車であれば年間1万円で、トラックだともうちょっと高い値段のステッカーを貼っておけば、その車は自由に高速道路に入れる。

そのステッカーを貼っていない車は基本的には入れない。時折、何て言いましょうか、ちょうど駐車違反とかいちいち一台ずつチェックする必要はまったくないわけですから、扇大臣が保有税だと言っているのは、つまりは国土交通省の利権を守るための反論なんです。道路公団の民営化も反対すると同時に、無料化したら公団そのものが道路管理だけになり、いらなくなりますから、そういう道路公団という組織体を最大の天下り先にしている現総裁も、元事務次官でありますけれども、その組織を守るために扇大臣が反論していると思っておりまして、そういうお役人の利益を守るような反論を黙ってさせておく総理にも大きな問題があるということを、重ねて申し上げておきたいと思います。

■岡山1区からの出馬要請を長男が受け入れたが、しっかり頑張ってもらいたい

【代表】岡山1区で私の長男の菅源太郎の公認について、昨日、選対委員会で決定がなされたというご報告をいただきました。もともと岡山のほうから本人に対して、昨年来要請があったわけでありますが、本人としてはかなり固辞をしていたと聞いておりますけれども、最終的には政治に対しては非常に関心の強いところもありましたので、本人がそういう要請を受け入れると決めたということであります。

実はこの地域は岡山市の半分と御津郡というところが加わった選挙区でありまして、御津郡には実は私の本籍と同時に、若干の代々持っていた地所が残っております。山が10町歩くらいあると聞いているんですが、あまりどの山かは分からないのですが、墓がありまして、私の父が生まれた家が昔あったところの屋敷跡もあり、塀と蔵だけは残っておりますが、家は何十年か前に倒しております。

そういう意味では私がそこを相続しておりますので、将来は源太郎が相続する可能性も十分あるわけで、父が亡くなった後そこの墓に入っておりますので、場合によっては私や私の家内もあちらこちらに墓を作っても仕方ありませんから、入るかもしれないとそんなふうに思っております。

墓守に帰るわけではないと思いますが、小さい頃からわりとその現地に行っていたこともあり、ご存知のように私の家内の母親も地域はちょっと違うのですが岡山だということもあって、本人としてはそういう住んだことはないのですが、ある意味で心の故郷のようなところもあったのだと思います。

私が政治家ですから、一般的には二代目という見方をされるのは避けられないかもしれません。しかし私としては、本人がその地域の皆さんから要請を受けて、本人が決断をしたことで、私が例えば同じ選挙区を譲るとか、あるいは私の関わりの、例えば同じ選挙区が分かれたときにその一部を譲るとかそういことではありませんので、これは本人の自主的な判断ということでご理解をいただいて、もちろん私としても岡山1区もこれまで候補者が決まっていなかった空白地域でありますから、しっかりと頑張ってもらいたいと期待しています。

とくに岡山は聞いておりますと、これで五つの選挙区で全員が決まるそうでありまして、1人20代、残り30代だそうであります。全候補者が30代以下、確か29歳が1人いるのではないかと言っていましたが、とにかく30代以下でありましてある意味では60前後の議員と候補者に対して、そういう意味でも岡山全体、期待をしております。

<質疑応答>

■大量破壊兵器の問題で国民をミスリード、場合によっては総理の責任は重大

【記者】冒頭で発言されていましたが、今日の総理の答弁でも非常にはっきりしないことだったと思いますが、とくに先日の予算委員会も含めて、ご意見をお聞かせ下さい。

【代表】冒頭申し上げましたように、一つの政治論、総理そのものの、まさに国民に対する責任として、大量破壊兵器が独裁国やテロ集団に渡っていく、そういう拡散が心配されるので、それを止めるためにアメリカの武力行使はやむを得ないものとして支持すると言って、国民をいわば大量破壊兵器が存在するからそれを拡散させないために支持するんだということを、明確に総理は開戦の時点で言っているわけです。

その大義名分である大量破壊兵器が、イラク・バグダット陥落後2ヶ月経っても見つからないという現状に対して、何一つ総理として、場合によってこのまま見つからなかったら、国民を明らかにミスリードしたことになりますから、この責任は重大であります。

先の党首討論で、他党の党首に対して、フセインが見つかっていないからいなかったということにならないではないかと、笑いを誘う番組ならともかくとして、まともな国会の議論にはまったくなっておりません。ある意味では国民をというか、国会を馬鹿にした説明であります。このことが私はイラクに関して、総理がこの法案に関して国民に説明する場合に、まずきちんと説明しなければいけない第一の問題だと考えております。

それに加えて法案の中身については、これからそれぞれの委員会等でやっていきますが、やはり戦闘地域とそれ以外の地域に区分して、それ以外の地域に出すんだという、この区分が私たちの調査団の報告を聞く限り、そんな区分はできないという重大な事実認識の問題があります。

もし区分ができないとなれば、簡単に言えば、全域が戦闘地域というアメリカの司令官の言葉どおりだということになりますから、法律をつくっても出すところがないということになるわけで、これは先ほど申し上げたように、45人の委員がまず現地に行ってきちっとその実態を、目と耳と皮膚感覚で調べてくるべきだと思っております。

■高速道路無料化提案は、償還の方法も含めて党として何か決めたわけではない

【記者】代表は先ほど高速道路の無料化について触れられましたが、路線バスなどの高速道路を使わない、そういった車に対してお金を取る必要があるのかどうかというご意見ですとか、あるいは無料化した場合に都会に必要以上に車が流入してくるのではないか、という懸念をいくつか聞くことがあります。そういった問題について、現在代表はどのようにお考えか、お聞かせ下さい。

【代表】まず原則を最初に申し上げておきますと、これもご承知だと思いますが、いまこの問題は部門会議の下のプロジェクトのようなところで検討をすでにお願いしております。何度かこの議論を提案した民間人とか、あるいは関係のところを呼んだりして、またいろいろな立場の意見も含めて、議論が進んでいる。まだ結論は出ておりません。

ですから今のことについても、党の方針として無料化を決めたわけではありませんし、また無料化する場合の負債に対してどういう償還をするかということも決めたわけではありません。ただ敢えていま聞かれたことについて、私の個人的な見方を言えば、先ほど申し上げましたが、高速道路を使わない車に負担をさせるということについて、先ほどステッカーという言い方をしましたが、それは高速道路を利用する車についてのみ負担をさせることも十分可能です。

いわゆる料金という一回一回とるということとは違う形で可能です。これは理解していただいているかどうか分かりませんが、一回一回とるのと、そういう年間一回とるのとでは、単に負担の仕方が違うということではなくて、いわゆる料金ゲートはいりませんから、今のように13キロ平均の出入口がアメリカの平均は3キロ平均と聞いていますが、自治体の希望によってもっと沢山の出入口をつくることができる。

あるいはサービスエリアの中に独占されているいろいろなサービスが外にいったん出て、あるいはサービスエリア的なところで、病院をつくろうがあるいはショッピングセンターをつくろうが、内外から入れるわけですから、一般道路と同じような扱いがされる。そういった意味を含めて、料金という形をとらない負担の仕方はいろいろな形がある。

ですから先ほど扇さんが、利用されない車にも負担をさせるのかというのは、それは一方的な一つの曲解であって、そうでないやり方は十分にあるし、そういうことも含めてこれからしっかりした案に練り上げていただきたいと思います。

■長男の出馬は、本人が本人の人生として決断した以上、それを尊重したい

【記者】先ほどのご長男の出馬の件ですが、いろいろな理由で必ずしも悪くないとおっしゃっていましたが、一般的に二世議員は二世議員であって、今後代表が二世議員のことを批判するのはやりにくくなると思いますが、このあたりはどのようにお考えでしょうか。

【代表】一つだけ明確にしておきたいのは、私が例えば長男を、あるいは私の家族を是非候補者にしたいと思って動いたわけではありません。ですから結果的に二世議員、あるいは二世候補者と言われることは、私は政治家ですからそのとおりであります。

ただ私が、そういう意味で積極的にそうしようと思ったわけではありません。ただもうちょっと親という立場で言えば、やはり最近は相撲取りやスポーツ選手も二代目というか二世が多くなっていますが、やはり親のやっていることを見て育つものですから、そういうことに興味を持つということは、率直に言ってあります。

私の家も、本人が生まれた頃から市川房枝さんの選挙などを始めておりまして、ほとんどこの30年間、私の家の会話はそういう中身が大変ウェートが高かったものですから、結果的にはそういうことも含めて本人の関心がそういうものに向かったということであります。

私は実は父がサラリーマンで、それに当初は影響されたのか、技術屋になろうと思ってそういう選択をしたわけですけれども、そういう意味で技術屋の二代目かもしれませんが、一部そういうこともあります。ですからあえて反論するつもりはありませんが、本人が本人の人生として決断した以上は、それを尊重してやりたいと考えております。

■共産党筆坂氏のセクハラ問題での議員辞職は、推測する以上のことはできない

【記者】他党のことになりますが、共産党の筆坂政策委員長がセクハラ問題で議員を辞職するということになりました。セクハラ問題というのは、国会全体で取り組む問題でもありますが、改めてセクハラ問題についてどのようにお考えでしょうか。

【代表】まず筆坂議員の問題については報道で知りました。しかし報道以上の事実関係というか、経緯は私はとくに聞いておりません。ですからそれは、共産党として重大なケースとして辞任をするということであるということは知っておりますけれども、それがそれだけの問題であったのだろうと推測する以上のことはできません。

一般的にセクハラ問題というのは、もちろん女性の権利としてきちっと守られるべきものだと思います。

■岡山は自分の選挙区ではなく、二世が政治の活力を削ぐという批判は当たらない

【記者】二世の問題ですが、一般的な政治の二世批判について、活力を削ぐという批判についてはどのようにお答えしますか。

【代表】日本の政治の中で、私はとくに中選挙区時代に、親がある選挙区で政治家をやっていて、親がたとえば亡くなったり、年をとったときに、そのまま同じ選挙区から次に出る。そうすると後援会もそのまま引き継ぐ。そういう形というものが大変数多く見られて、それがひとつの政治の固定化になったというふうに思っております。

そういう意味では、そういう点での弊害というのは、私はとくに中選挙区時代、小選挙区でもあるかもしれません。つまりそういうウェートが高過ぎるということですね。弊害があるというふうに思っております。ですから一切関わりはないとは言いません。しかしいま申し上げたこととの比較で言えば、まず岡山という所は、私が政治活動、つまり選挙区としたところではまったくありませんし、これまで私自身が選挙をやったところではまったくありません。

そういう意味では、いま申し上げた意味の弊害ということは当てはまらないだろう。一般的には二世ではないかと言えば、親が政治家ですから二世ではありますが…。


編集/民主党役員室


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