2003年5月13日(火)19:45〜 戻るホーム記者会見目次

菅代表 緊急記者会見録 (岡田幹事長同席)

(菅代表 冒頭発言)
ご承知のように7時15分から、小泉総理、山崎幹事長、そして中川国対委員長と、私と岡田幹事長と野田国対委員長というメンバーで、両党間の党首会談を開きました。もう既に与党三幹事長と岡田幹事長の間で合意が署名をされていますので、それを踏まえてその確認という位置づけの党首会談でありました。

総理の方から、こういった安全保障の問題について、なかなか長年、与野党間では合意ができないというか、そういうものがタブー視されたところもあったけれども、こういう問題は国民的な合意が望ましいと思っているのだと、そういう点で今回、野党第一党の民主党と与党との間で合意ができたことは画期的だと思うと、民主党の努力にも敬意を表したいと、こういうことを含めて、感謝の言葉がありました。

それに対して私の方も、私どもが提案をした法案を、真正面から受け止めていただいて修正協議を行い、そして合意に至ったことは、大変私たちからしても良かったと思っていると。わが党にとっては、党ができて5年になりますが、当初から、こういうことの必要性は考えておりましたし、こういう外交・安全保障といった問題は、与野党間で共通の部分が相当程度ある中で、意見がたたかわされるのが望ましいと、そういうふうに思っていたけれども、この間はなかなかそうならなかったわけですが、そういう形になったことは、私どもからしても望ましいことだ、という趣旨のことを私から申し上げ、私からもそう受け止めて対応していただいたことに、感謝の言葉を申し上げておきました。

それに加えて、与野党間で既に基本法のことについても、文書上での前向きな合意ができているわけですけれども、私の方から、基本法については、政府提案が望ましいというような見方も一般的にはあるわけだけれども、総理としてこの問題についていかがでしょうかと、少し水を向けました。結論的に言えば、総理の方から、基本法についてその精神はよく分かるという、いわば返事と、同時に山崎幹事長の方から、基本法の必要性は与党として理解し認識している、という言葉も併せて添えられたところであります。そういった意味で、そのことも含めて合意を確認をして、その会談を終えたと、これが先ほどの党首会談のご報告であります。

そういうことを踏まえて、今回の一連の経緯についてもう一言申し上げますと、これも繰り返しになりますが、民主党が98年に結成されて以来、安全保障の問題での議論を積み上げる中で、緊急事態法制の必要性の確認を積み重ねてまいりました。そして1月の党大会でも、この国会開催中のしかるべき時までにわが党の案を出すということを、国民の皆さんに約束をいたしました。

そしてそれぞれの立場、特に前原担当大臣、あるいは政調会長、幹事長、国対委員長、それぞれの関係者にご努力いただきまして、4月30日に法案を提出し、5月6日の趣旨説明から本格的な与野党協議に入り、そして今日こういう形で、わが党の主張を相当程度と言いますか、わが党の主張の大半と言えば少し言い過ぎなのかもしれませんが、その多くを受け入れる修正を勝ち取ることができて、こういう形で合意に達したことは、大変いい結果だったと私は思っております。

特に人権の問題については、当初色々な経緯で、与党側もかたい部分がありましたけれども、最終的には幹事長会談の中で、直接的な表現、さらには1年以内につくることを約束をされている国民保護法制の中への盛り込みなども含めて、この問題がわが党の、内容的にはほぼ要求に近い形で、形式は色々違いますが、取り入れられた。さらには活動の停止という問題を、国会決議によって停止することができるといった修正も取り入れられた。

そういった意味で、全部挙げれば全部になりますけれども、そういう形で、国民がある意味で一番必要性を感じながらも心配しておられる、そういう人権の問題、あるいは行政・政府の暴走を止めることが、国会ができるかという問題の重要なところについて、わが党の要求が修正の形で盛り込まれたことは、国民の皆さんに対しても、わが党の考え方が実現できたという意味で、そういうことを含めてご報告できることを嬉しく思っております。

さらに言えば、いつも民主党のあり方について、色々な不十分さを指摘される部分もあったわけですけれども、ある意味で民主党にとって最も難しいと一般的に言われていた安全保障の問題で、こういう形できちっと対案を出し、しかも一定の、相当の成果を挙げて決着ができたということは、わが党のそういう政策立案の一つの力量が試されていたわけですが、それが相当程度、成果を挙げる形で認識されたのではないかと、このように思っております。

もちろん今日の合意は、私と幹事長と政調会長と前原担当大臣に一任をいただいた中での決定でありますから、最終決定であります。先ほど拡大役員会の皆さんにも報告をし、皆さんからも、良かったという評価をいただきました。

また明日は、次の内閣、さらにはもう一度、全国会議員が参加をする政策懇談会で報告をいたしたいと思っております。明日の委員会、明後日の本会議ということになりますけれども、こうしたきちっとした党内の手続きを踏んでの合意でありますから、全国会議員が一致をした形で修正をされたものについて、一致をして賛成するという行動をとれると、私は確信をいたしておりますし、その方向に向けて、必要な説明はそれぞれの立場で、私からも必要な説明をしかるべき人には直接にもしていきたいと、このように考えております。以上、私からはこの程度にさせていただきます。

Q:確認だが、この問題で党議拘束をかけるのか。

(菅代表)
当然、一般の重要な法案と同じように、党議拘束はかかるものと理解しております。

Q:与野党が協力して大型法案を成立させたのは初めてかもしれないが、その意義については。

(菅代表)
与野党が協力して大型法案といえば、私がすぐに頭に浮かぶのは1998年、わが党が提案した金融再生法を、その時は丸飲みをして、わが党案に賛成をする形で成立をした。そしてそのことが、長銀・日債銀の処理の一つのスキームとなったことがあります。ですからそういう意味では、分野は全然違いますけれども、初めてということではないと思っております。

しかし逆に言えば、安全保障に関する大変重要な基本的な法案について、丸飲みという形ではありませんけれども、わが党の提案を大幅に盛り込む形で、野党第一党と与党の間の合意ができたということは、そういう意味では客観的に見ても一つの大きな出来事であると、私も認識をいたしております。

わが党はもともと安全保障について、かつての55年体制のような意味での、タブー視するとか、何かもう始めから決めつけたようなものの見方をするという姿勢はとってこなかったつもりであります。そういう意味では、新しい時代に対応できる政党として、これまでも取り組んできたつもりですが、この間の経緯では残念ながら、わが党の主張がぎりぎりのところで受け入れられないで、合意ができなかったケースもあったわけです。

しかし今回は、わが党の提案した法案なり修正案について、正面から与党の側も受け止めていただきました。そしてまさに国民の立場、国の立場、社会の立場からして、必要な修正についてはかなり積極的に受け入れるという姿勢で修正協議に応じていただいたと、その結果こういう形になったわけであります。そういう意味では、内容的にも、私どもにとっては100点満点とまでは申し上げませんが、十分に合格点をいただけるところまで、わが党案が受け入れられたと思っておりますし、また安全保障という重要な課題で、特に昨今、イラク情勢・北朝鮮情勢など、わが党ができた時から比べても、よりこういった問題の重要性が高まっている中で合意ができたことは、私も日本の政治の中では一つの画期的な出来事ではないかと、このように考え、また感じております。

Q:民主党から自由党に対して、与党の修正案に賛成して欲しいという要請があったようだが、この事実関係について。

(岡田幹事長)
わが方から、賛成して欲しいという話は、ちょっと私は分かりません。(そういう要請はしていないと?)これから藤井さんに会って中身は説明しますし、われわれも賛成する法案ですから、他の野党に対して賛成してもらいたいというのは一般論として当然でありますし、そういう脈絡の中での話だと思います。

(菅代表)
最終的な合意ができましたので、当然ながら他の問題では野党共闘も数多くと言いますか、一般的にやっているわけですから、幹事長の話もありましたように、他党、特に自由党を含めそれぞれの野党にも合意内容について説明をするというのが、一般的な意味での野党同士、与党同士の礼儀でもあろうということで、それは、これが終わればそういうことをするということを、国対ベースで伝えていただいておりましたので、あるいはそういう国対の議論の中で、色々な見方が出ているのかもしれません。ただ私もそれ以上のことは聞いていませんし、幹事長がこれから特に自由党に対しては説明に行っていただくと、そういうことになっております。

Q:合流問題があるから自由党、ということか。

(菅代表)
少なくとも、合流問題とこの問題について、私は、絡めた形で何かをしているというふうには、聞いてもいませんし、一つひとつ独立した形で進めていただいていると。もちろん内容的に理解をいただいてそれぞれの党が賛成をしていただくことは、それは大変結構なことだと思いますが、必ずしもその問題を私が関連させてお願いしているということはありませんし、たぶん幹事長もそういう意味ではないと。独立した形できちっと説明すべきことはしていくと、こういう姿勢で臨んでいただいていると理解しています。

Q:党議拘束をかけるというが、党内には基本法にこだわっている人もおり、党議拘束に従わない議員が出たらどうするか。

今日の昼間の定例会見でも少し似た質問があったのですが、今回の問題では相当しっかりと議論をして積み重ねてきた中で一任をいただき、私なりの見方で言えば、相当程度、わが党提案に即した形の大幅な修正を勝ち取った結果でありますから、わが党提案を合意し、そして一任をいただいているという経緯からすれば、そうしたいわゆる造反といったものは一人もないと、このように私自身は確信をいたしております。

Q:今回の有事法制をトータルで考えると、自衛隊の活動範囲が拡がるという懸念が、他の野党などからもあるが、法の実際の運用については、どのような考え方で臨むか。

基本的には有事法制、緊急事態法制というのは、そういう緊急事態が起きたときに、一方では的確・迅速に行動できる、しかし一方では超法規的に何か行動を起こして、それが国民の権利をより大きく犯すといったことにならないようにという、そういう側面があるわけです。

中には、有事法制をつくることが戦争につながるといった極端な議論もありますが、それは消防署をつくると火事が拡がるというような議論とやや似ていまして、消防署は火事が起きたときのために消防署を整備するのであって、それは消防署が増えたからといって火事が拡がるわけではないわけですから、もちろんそういう理屈に合わない論理に立つ必要はないわけであります。ただ、物事を決めていけば、それは一定のルールの中で自衛隊の動きについて、従来曖昧であった部分などが、あるいは多少明確になる部分があるかもしれません。

しかし私たちの基本的な姿勢は先ほど申し上げたように、いわゆる超法規的にいざというときに動くことによって、一方で迅速な形での対応が、例えば地震の場合などでは特にそういうことを感じておりますが、できなかった例もありますし、また一方ではそうした人権などを過大に侵害する恐れもあるということを防ぐために、一定のルールをつくるということですから、今言われたようなことにはならないと、このように思っています。

以 上


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