2003年4月8日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○イラク情勢:国連が本来の機能を回復できるか、重大な岐路に立っている
○統一地方選:中央集権ではなく、地方主権の政治を実現することが一番の争点だ
○行動的な学者の人などから、『次の内閣』で中小企業担当大臣をやってもらいたい
○15日から民主党代表団として中国を訪問し、16日に胡錦濤国家主席と会談する
○訪中は、両党間の友好関係の進展、北東アジア情勢の意見交換などが目的

イラク情勢:国連が本来の機能を回復できるか、重大な岐路に立っている

【代表】イラク情勢が、非常に軍事的には最終盤を迎えているようですが、今後のイラクについての議論が米欧中心に始まっています。さきほどの次の内閣の中でも、このイラク情勢についての一定の認識を共有化してきたわけですが、とくに国連という場を超えて、米英が武力行使に踏み切った。果たして国連が本来の機能を今後回復できるのか、私は大変重要な岐路に立っていると思っています。

アメリカの立場から言えば、自分たちが血を流して戦ってフセイン体制を崩壊させる、あるいはさせたのだから、自分たちが中心になるという立場を強調しているわけですが、それだけだと、強いところが自分の判断で武力行使に踏み切って、その後自分たちの判断でその地域をコントロールするということになるわけで、やはり国連という一つの国際的な場、これはまさに第一次・第二次世界大戦を経ての一つの人間、国際社会の知恵で生まれたのだというものをもう一度機能させて、その中から国際的なルールに違反したものに対しては、ペナルティを課せられるけれども、そういった国際的なルールの中で物事がおこなわれるのだ、という原則に立ち戻る必要があると思っています。

それだけに、今後の推移はわが国の姿勢も含めて、十分にそういう立場できちんと主張していかなくてはならない。できれば小泉総理にもそういう姿勢でアメリカ・ブッシュ大統領に対して言うべきことを言う外交姿勢をとってもらいたい。

戦争が始まった時点では、最後通告があったのちに支持を表明して、一切それまではそうした考え方を明確にしなかったわけですが、戦争が最終盤にかかっているなかで、そうした姿勢を明確にしたメッセージをアメリカに対して送るということは、同時に国民に対しても国連の機能を回復することを重視するのだというメッセージをきちんと送ってもらいたいし、そう考えていないのなら考えていないと。どういう考えを持っているのか、やはり国民に対する説明責任が、この場でも問われているのではないか。

始まるときも説明しない、ある意味では終わった後のあり方についても説明しないということでは、まさに日本の外交は何一つ存在しないということになりますので、そのところは明確に総理の考え方の表明を求めておきたいと思っております。

統一地方選:中央集権ではなく、地方主権の政治を実現することが一番の争点だ

【代表】統一地方選の前半戦がいよいよ最終盤を迎えています。北海道・東京・神奈川・三重、それぞれ事情が違いますが、その中でわが党推薦あるいはわが党と関係の深い人が当選できるように、最後に全力を挙げたいと思っております。

なかでも北海道は大変な激戦になっておりますけれども、相変わらず自民党がいよいよ、いつもの手というか奥の手で、いろいろ経済界等に直接・間接に圧力をかけるというか、締め付けに入っているようですけれども、これを跳ね除けていく必要がある。

とくに今回の選挙の最大の争点は、私はやはりこれからの自治体と国の関係、つまりは中央集権的な政治から地方主権の政治へ、つまりは中央とのパイプを誇示してその補助金をとって一部ピンハネをするという鈴木宗男流の政治から、それぞれの自治体が自主財源という形に変えていって地方分権、地方主権への政治をそれぞれの地域で実現する。これが一番大きな争点だと思います。

そういう点では北海道の場合は、相変わらず中央の天下り官僚を据えてパイプを競おうという体制でありまして、それに対してわが党推薦候補は、北海道中心のまさに農業という地域的なところから出てきた候補者でありますので、そのところを最後十分に活かしていただければ私は札幌の市民の皆さんにも北海道の皆さんにも支持がいただけると確信しております。私も最終盤、さらに応援に入る予定にしております。

行動的な学者の人などから、『次の内閣』で中小企業担当大臣をやってもらいたい

【代表】先ほど次の内閣の冒頭挨拶でもちょっと触れましたけれども、従来から中小企業について、金融問題とかいろいろな課題について、わが党としても取り組んでまいりました。ただ次の内閣という形で言いますと、中小企業というものが横断的な性格もあるものですから、それだけに特化した担当大臣という形になっておりません。

私はこの問題がいま大変重要で厳しい状況にあることを考えて、中小企業問題に取り組んでいる何人かの学者ともこの間お会いしましたけれども、行動的な学者の人など、議員ではない人に次の内閣の中小企業担当大臣をやってもらったらどうだろうかと考えております。

今日の次の内閣で問題提起をしましたので、政調会長中心にとりまとめていただけると思っていますが、その方向で進めていきたいと考えております。

15日から民主党代表団として中国を訪問し、16日に胡錦濤国家主席と会談する

【代表】中国の新しい体制ができた折りに、私自身を含むわが党の代表団が中国に訪問して、胡錦濤総書記をはじめ、新しい幹部の皆さんと意見交換をしたいという希望を伝えておりました。昨日の段階で中国共産党のほうから連絡がありまして、16日午後であれば時間がとれそうだという連絡がありました。

当初16日の夜から17、18にかけてということを、こちらからいくつかの時間を提示していたのですが、16日昼ということで当初は党首討論があるのではないかと言われた時期であります。そこで昨日、今日と国対や現場の理事の皆さんにご苦労いただいて何とか与野党ご理解をいただいて、16日の午後から中国に行けるような段取りを調整していただいているところです。

ほぼ16日の党首討論は100%決まっていたわけではありませんが、可能性が一番高かったわけですが、一週間後の23日という方向で調整を進めていただいているというように聞いております。そういうことは、与野党皆さんのご理解で変更することができれば16日を軸にしてその前後、国会開会中ですのでそう長い時間は行きませんが、2泊3日程度の日程で中国に民主党代表団として訪問したい。最終的な決定は明日くらいになりますが、いまそういう方向で最終調整をいろいろな方にお願いしているということを申し上げておきます。

<質疑応答>

訪中は、両党間の友好関係の進展、北東アジア情勢の意見交換などが目的

【記者】今回の中国訪問で、どういうテーマを中心に意見交換をしたいと思っていますか?

【代表】第一にはやはり新しい中国共産党、あるいは中国政府の体制ができたわけですから、従来の江択民国家主席とは私も何度か日本、あるいは中国でお会いしましたが、新しく主席になられた胡錦壽さんには以前、東京ではお会いしたことがありますが、改めてそういう主席の立場でお会いするのは初めてですので、そういう意味で初めての会談をおこないたいと思っています。

そのことは同時に、この間進めてきた民主党と中国共産党のこれまでの交流を、さらに深めるという意味も併せて持っていることは言うまでもありません。そういった両党の友好関係の確認なり、更なる進展が第一の目的であります。

第二点としてはやはり、いまイラク情勢など緊迫した問題を抱えていますが、とくにアジアの状況の中で言えば、やはり北朝鮮の状況というのは、わが国にとっても大変大きな課題でありますし、国境を最も長く接している中国にとっても大きな課題であり、また大きなある意味での影響力を持っている国だと理解できます。

そういった意味で、北朝鮮を含む北東アジアの情勢について、是非意見交換をしたいと思っております。それに加えてさらに言えば、いまの問題にも重なるわけですが、日中関係の今後、昨年は日中国交回復30年だったわけですが、冷戦構造が終わって10年、まさに世界の構造が従来の発想、アジアは冷戦が半ばまだ残っているんだという見方もあったわけですが、9・11などを通して、アメリカと中国の関係、更にはアメリカとロシアの関係は、まったく冷戦時代とは異なっております。

いろいろな構造が変わってきております。そういった意味で冷戦後という言葉の更に
『ポスト冷戦後』とでも言うのでしょうか、そういう冷戦後の枠組みを、更にこれから21世紀に向かってどういうアジアにしていくのか、世界にしていくのかという大きな長期的な観点からも、日中関係を軸にして意見交換ができればありがたいなと思っております。

自民党の言う政治資金公開基準金額引き上げは、透明性の向上の流れに逆行している

【記者】今日、河村たかし議員などが政治と金の問題で申し入れをされたということですが、それについての代表のお考えをお聞きしたいのと、自民党のほうで政治資金の問題で公開基準金額を引き上げようということが検討されているようですが、それについての代表のお考えをお聞かせください。

【代表】河村さんはじめ、何人の議員からか、正式な名称はいま手元にありませんが、申し入れがありました。基本的には私も、政治と金の問題を考えるなかで言えば、何とか個人献金を中心にした財政に、政党としても、あるいは個人の政治家としても、そうなることは望ましいという立場で私自身も出来るだけ努力をしてきた一人であります。

そういった点では、来られた皆さんが自ら、いわば企業団体献金を受け取らない、そういう姿勢で臨むということを前提として、党のあり方、あるいはそういた企業団体献金の禁止を求めていこうという姿勢について、私は私なりの理解をしているというということをお伝えいたしました。

同時にこの問題は、岡田幹事長の下で、全国会議員を含む各地方組織の皆さんにも意見を聞く形、アンケートなどをやった中で、一定の改革方針が先だって常任幹事会で決定されました。確かゼネコン何十社でしたか、そこは公共事業の受注が一般的に多いところなので、そこからの献金は控えようということが言われました。

そういった意味で、来られた皆さんもそうした改革は一定の前進だということを認めておられた。さらに将来に向かって、もう一歩もう二歩進めていこうということでありましたので、そういう党内の一つの合意を進めていることも理解をしていただきたいということを申し上げ、そのことは皆さんも理解をされた中で、いま申し上げたように、それで終わりでなくてさらに進めていく努力をして欲しいという申し入れでありました。

もう一点、私のほうからは、個人献金を増やすためには、やはり税額控除方式の導入が必要ではないか。たとえば政治献金に限るかどうか分かりませんが、年間5万円とか10万円までは税額が控除される。つまり皆さんが年間例えば100万円の税金を払っているとすれば、5万円、政党や政治家に寄付しても税金の100万円の内側の5万円が引き抜かれるという税額控除方式が必要ではないか、ということを私から申し上げておきました。

もう一つ、自民党のほうで公開基準金額を引き上げようという話がありますが、政治と金の問題は金額の問題以上に、その透明性が大変重要なわけでありまして、そういう意味ではまったく発想が逆行していると思います。つまりは透明性がなければ、極端に言えば、いくらもらっても何万円以内の人がこれだけ集まったんだと言えば分からないわけですから、そういう点では場合によっては抜け穴をより大きくすることになるわけですから、そういう点で自民党が言っているのは、何と言いましょうか、方法が逆行していると言わざるを得ません。

緊急事態法制は政権担当の試金石、きちっとした対案を国民に提示する

【記者】緊急事態法制についておうかがいします。まもなく党内議論は本格的に始まると思いますが、代表から見て党内議論はなかなか難しい問題だと思うのですが、どういう方向で議論をたたかわせることが期待されるのか、お考えをお聞かせください。

【代表】まずこの問題、とくに昨年の暮れに新しい執行部が出来て、また1月の大会の折りにも私自身も申し上げましたが、逃げないんだと。つまりはわが党のほうから、こういった問題に対しても積極的に議論に臨んでいくというか、そういう姿勢で行こうということを確認してきました。

それに基づいて、わが党の緊急事態法制について、作業を昨年12月に担当大臣である前原さん中心に指示をしてきたわけです。そういった意味で、まず第一の姿勢は、決して私たちが何かこう逃げているということではなくて、逆に真正面からこの重要な課題を取り組んで議論しようという姿勢でいるという、そのことの党内、党外に向かっての姿勢が大変重要だと。またそういう姿勢で臨みたいと思っております。

内容的にはいろいろありますけれども、少なくとも昨年出された政府案というのはあまりにも内容がお粗末でありまして、物事の定義から始まって、ほとんど現在のいろいろな緊急事態で、可能性として最も高い可能性をもったテロ・ゲリラというものに対する対応が、まったく含まれていない。そういった意味でいえば、わが党からこれから順次議論し出されるものは、政府案よりもよりある意味では踏み込んだ、ある意味ではいまの時代に必要な内容である、ということをきちっと党内の議論を踏まえながら、国民の皆さんに理解してもらいたいというのが第二点であります。

第三点は、党内でもこの問題が、わが党が近い将来政権を担い得る政党であるかどうかのある種の試金石になっているという認識が、大変強くそれぞれのなかで皆さんにあるわけであります。ですから、そういう点で大いに議論はしていただきたい、しかしその議論は最終的には何らかの形で党内の合意を形成して、そして国会を通して国民の皆さんに提示していく。

つまりは政権担当の試金石という認識を、党の関係者全員が強く持ってこの議論に臨んでもらいたいし、また臨んでいただけるものと、今の状況を私は見ております。そういった点ではまだまだたくさんの議論があると思いますが、最終的にはいま言った一点二点三点の中で、しっかりしたものを国民の皆さんにきちっと提案できると確信していますし、またそこのことは私の責任だと思っております。

編集/民主党役員室


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