2003年1月28日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨


総理の発言は当事者意識のない曖昧なものに終始している

【菅】イラクに対する国連の査察報告が出ました。これについては伊藤英成「次の内閣」大臣から談話を出していただいています。私の感想からすると、イラクが充分に協力をしていないということについては当然ながらきちっと協力させることが重要です。他方、決定的な大量破壊兵器開発の証拠は必ずしも出てきていないということでありますが、さらなる徹底した査察が必要ではないかと思っております。

 この点について総理の発言は、非常に曖昧な発言に終始しています。「続けるなら続けてもいいよ」とか、ほとんど日本の総理大臣としての意思表示がない、単なる第三者的な形でまったく当事者的な発想を持たない言葉になっています。これはまた後ほども申し上げますが、急激に総理の発言があらゆる問題に関して変わってきていると感じています。

 また報道によれば、加藤駐米大使が「米国が武力行使に踏み切った場合は、支持表明をすべきだ」との発言をしたと報じられています。日本では総理大臣が言わないことで重要なことは、大使が言うということになっているのか。先日の私や他の議員からの質問に対して、総理は仮定の問題には答えないと答弁されました。それ自体がはぐらかしであり逃げでありますが、それに対して駐米大使のほうがよりはっきりした意見を言っている。やはり日本の外交というのは、結局は総理まで含めて外務省にシナリオを書いてもらわなければ何も言えない外交だということが、この面でもあらためて明らかになってしまいました。

公共事業受注官庁からの政治献金の規制法案への取り組み。総理は口先だけ。

【菅】公共事業受注企業からの政治献金の規制について、総理が若干前向きな発言をしたという報道が出ております。また山崎幹事長も政治資金の適正化に向けて検討を再開するよう指示をしたということが言われております。すでに民主党は他の野党とともに、公共事業受注者の献金禁止する政治資金規正法等改正案を提出しています。現国会にも継続して存在しているわけですから、総理が前向きだというならばつるしを解いて、まず今国会で最優先課題の一つとして議論をするという姿勢をとることが、本当のやるべきことではないか。このことを強く求めていきたい。

 単に口先だけで前向きなことを言って、国会の行動は野党提案を相変わらずつるしたままにしておく、これはよくあるやり方ですが口先だけの前向き発言というのは許さない。言った以上はそれに伴う行動もとってもらいたい。このことも申し上げておきたいと思います。

青森県知事選は善戦した

【菅】率直に申し上げて大変善戦したと思います。我が党が推薦した横山候補は、青森市では50%を超える得票で現職の木村さんが39%の得票ですから、かなりの差をつけて一番目だった。また八戸市においても現職が44%の得票に対して横山さんは49%とほぼ半分の得票でした。弘前市は若干現職のほうが多いわけでありますが少なくとも青森県における代表的な二つの市では現職を抑えて第一位の得票ということは、ある意味では大きなことでした。

 これはどういうことを意味しているのかというと、私なりに解釈すれば現知事のやり方に対して変えなければならないという思いを持っている県民が比較的大きな都市で多かった。民主党がきちっといまの自民党政権に対するもうひとつの選択肢を出せれば、知事と自民党政権とは同じものではないにしても、現在の政治という意味では同じですから、現在の政治のあり方に対するある意味での不満・批判が横山候補の支持にまわったとすれば、同じ選択肢を提示することで民主党にも充分期待できる。ある意味では青森という民主党にとってもこれまで難しい地域でしたが、ひとつの光明が見えてきた結果だと感じております。

小泉総理は何をやったらいいのか分からなくなってきた

【菅】今朝、参議院の予算委員会を少し傍聴しました。小泉総理が大変慎重な対応で発言されているのが特徴的でしたが、基本的には何を言っているのか政策論的にはほとんど分かりませんでした。つまりは今までは元気の良い言葉で、言葉だけ印象に残るような言い方でそれだけで何か言っておられたような気にさせられてきましたが、今回はそういう元気さもなくなって、ただ言い訳だけで、どういう形でいまの経済を立て直そうとしているのかという発言がまったくない。

 さきほどイラクのことについても申し上げましたが、結局総理は何をやっていいのか分からなくなってきたのではないでしょうか。今日の国会の質疑を聞いてその感を強くしました。

<質疑応答>

2月の訪韓について

【記者】2月9、10日に訪韓の予定でノ・ムヒョン次期大統領とお会いするとのことだが、改めてどのような思いで行かれるのか?

【菅】今、役員室長を中心に関係者との間で具体的に詰めていただいております。いまのところノ・ムヒョン次期大統領との会談が決まっているだけで、それ以外のことはこれから詰めなければなりません。

ノ・ムヒョン次期大統領にお会いしたいと思っていたのは、当然のことながらこれからの日韓関係、とくに北朝鮮という大変難しく、ある意味で非常に緊迫した問題を両国がともに抱えているわけですから、その韓国の次期大統領がどういう考え方でこの問題に対応しようとしておられるのか、一般的には「太陽政策」ということが言われていますが、そういう考え方についてノ・ムヒョン氏自身の言葉でお聞きしたいと思っております。

また多少個人的な興味で申し上げますと、ノ・ムヒョン氏は私の言葉で言えば『草の根のなかから出てきた大統領』という感じでおります。商業高校を出て、独学で弁護士資格をとられ、選挙でも普通の政治家は自分の強い選挙区から繰り返して出るのが通常の行動ですが、あえて厳しい選挙区に移って地域間の固定的な構造を壊すという非常に勇気ある行動をとってきた。それが今回の大統領選挙で多くの国民に支持される、私はひとつの大きなきっかけになっていると思います。そういう草の根から生まれてきた大統領、そして政治行動に大変関心もあり是非話をしてみたい。そういう点からも、直接話をして意見交換をしたいと思っております。

高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる名古屋高裁金沢支部の判決について

【記者】昨日の「もんじゅ」をめぐる名古屋高裁金沢支部の判決についてどう考えるか?

【菅】私は95年に「もんじゅ」の事故があったときに思ったのですが、ナトリウムという金属はきわめて反応性の高い金属で、空気中に置いただけで一瞬にして発火し、水にほうり込んだだけで反応する非常に扱いにくい物質です。私が知る限りではほとんどの国がナトリウムを熱循環に使う型の高速増殖炉の開発や実験をやめていると聞いています。

 判決のあるなしに関わらず、自分たちが失敗したことについて本当に冷静に検証をしようとしているのだろうか。だいたい日本の役所は薬害エイズのことでもそうですが自分たちの失敗について大したことはなかったという形で正当化するところがあります。もちろん技術開発ですから、失敗が一切あってはいけないとは言いませんが、更に研究開発をやったほうがいいのかそれとも国際的に見ても必ずしもうまくいかなかったから日本でやってもうまくいかないとか、冷静に考えて方針を転換するということもあっていいのではないかと一般的に思っていました。

 「動燃」という組織はものすごくプロ集団なので、プロ集団すぎて一般的感覚や常識がやや入りにくい専門家集団すぎるところが元々あり、そういう点で冷静な判断に立っているのか、あまりにプロ集団すぎてこだわりすぎているのではないかという印象を持っていました。

 今回の判決は私の感想と関連しているわけではありませんが、ある意味での見直しの機会を提示したのではないかと思っています。単に裁判の結果が出た出ないを抜きにして、もう一度冷静にこういう「もんじゅ」という特別な型の開発をこれからも続けるのかどうかと再検討するよい機会だと思っています。

今後の知事選での構図

【記者】青森の場合は与野党対決の構図で投票率も高かったが、愛媛では10ポイントくらい低かった。中央で与野党対決をしている時期に地方で相乗り候補で戦った場合、有権者には分かりにくいと思うが与野党対決という形を強く出していくのか?

【菅】私はそういう議論があり、それはそれでひとつの重要な議論だと思います。ただもうひとつ根本の議論が抜けていると思っています。つまりどういう自治体のあり方なのかというところがあった上で、具体的にこの候補者が民主党の考え方に近いとか、自民党はちょっと違う考え方にたって別の候補者が近いとか、結果的に応援する人が別々で政策論争がはっきりした形というのが望ましいと思う。

 どういう自治体のあり方がいいか悪いかという議論を抜きにして、単に一緒にやることが良いとはもちろん言いませんが、他方一緒にやらないことが必要だという話、つまり形だけ対立すればいいのかという話にもなりますから、それは根本の話が抜けていると思います。

 最近の報道によれば北川知事が、知事に立候補するときにはマニフェストを出していこうじゃないか、簡単に言えば政策を出すということですが、あるいはそれに対して政党もしっかりしたものを出せということをおっしゃったそうですが、まさにそういう形で考えていくべきだと思います。我が党もこれは中央レベルでありますが、予算の組替えの中では自治体に対しては個別補助金をやめて包括的補助金にすべきだとか、あるいはもっと長い方向では財源・権限そのものを移すべきだということも言っています。あるいは情報公開の徹底、行政評価の徹底といったことも考えています。

 そういう考え方に立ったできるだけ行政能力のある人物を応援する。そのときに相手は公共事業をもってきて自民党県連にたくさん事業者から献金が来ることにつながる知事候補を応援する。自民党がそういう候補者を応援し、我々がそうでない候補者を応援する。こうなると非常にはっきりしてきます。そういう意味では与野党で別の候補者を立てるのは望ましい形だとは思いますが、基本が必要だと思っています。

警視庁による情報公開開示請求者のビデオ録画問題について

【記者】予算委員会で河村議員が、警視庁が情報公開開示請求に来た人たちをビデオにとっていたという問題を質問していたが、それについての代表の見解は?

【菅】この問題は非常に大きな問題をはらんでいるのではないでしょうか、と河村さん自身も言っていましたし、私もそんな感じがいたします。つまり開示請求に来た人をビデオに撮り、そのビデオはすぐ上にかぶせて消したと言っていますが、一方ではマニュアルを見ると一年間保存しているはずだとそういう指摘もあります。また開示請求しているところに、河村議員の話ではたしか20数名と言っていましたが、他の機関では考えられないくらい大勢の人間が張り付いて管理をしているという話を聞きました。どうしてそんなことが必要なのか、これ以上は推測になりますから何とも言えませんが、いろいろ資料請求に来た人の資料を作るために必要としていたのか、どういうことなのかはっきりしません。

 防衛庁の問題のときに指摘されましたが、どうも日本では情報の開示ということと、情報の開示を請求してきた人を逆に調査をするということが当たり前のようにおこなわれているとすれば事実上、情報開示を求めるということを警戒している、あるいは抑制している、見張っているということになります。このあたりは今後河村議員が更なる調査をしてくれるのではないかと期待しています。

小泉総理の靖国神社参拝を肯定する発言について

【記者】今日の予算委員会の質問で、靖国神社参拝について一部の人(A級戦犯)が気にいらないから参拝しないという考えはないという趣旨のことを言っていたが、それについての代表の考えは?

【菅】そのやりとりを直接聞いていませんので、それについてのコメントとして適当かどうかは別として、今のような答弁をされたとすれば、相変わらず小泉総理ははぐらかしの天才であり、本質をすりかえていると思います。私たちが問題にしているのは、たとえば日中間で国交回復をしたときに、先の戦争について日本国民全体が軍国主義で悪いという位置付けはしないと、つまり当時の軍国主義を主導した間違った指導者のもとで戦争が起きて、中国国民あるいは南北朝鮮の国民、また日本国民自身も大変な被害を被ったという位置付けをお互いが認める中で、二度とそういう間違った軍国主義的な戦争は起こさないと約束したのだと思うのです。

 そういう意味で日本はもともとそういう責任について曖昧にしてきたところもあります。戦前の日本の太平洋戦争や日中戦争に進んだ過程の中で、日本自身がみずからその責任を認めたというのは実は非常に少ないですが、あえて言えば東京裁判の結果そのものは国際的な裁判でいろいろな議論がありますが、少なくとも東京裁判の結果を受け入れたという形で戦争責任を認めたわけです。その象徴がA級戦犯と言われた当時の指導者に対する判決であったわけで、戦後の政府がこの判決を認めることで戦争責任を認めてきたというのが経緯です。靖国神社の問題というのは、そのA級戦犯の人たちが合祀されているところを、現政権の責任者である総理大臣、しかも総理大臣というのは国家の機関ですので、その総理大臣がお参りをするということは、結局戦争責任を認めてきたということと矛盾する、さらに言えば認めてきたことを場合によっては覆すような行動ではないかということになり、そういう行動をとるべきではないという意味で申し上げているわけです。別に気に入らない人がいるからとかいないからとか、個人的な感想で言っているわけではありません。私自身も靖国神社のそばを通ったときに何度かお参りしたことはあります。個人として神社があればお参りをするときにいろいろな人が奉られているということはあまり気にしませんが、少なくとも総理大臣という立場でそういった問題が指摘されているなかで、参拝するというのはその問題に関わる問題として総理大臣という立場で参拝するのはやめたほうがいいと申し上げているのです。

編集/民主党役員室


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