2003年1月16日(木) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨


小泉内閣はデフレ促進内閣

 今日は自民党の党大会がありまして、小泉総理の挨拶も報道を通して聞きました。どうも小泉総理はデフレ抑制ということを中心に、例の絶叫調で言われたということでありますが、言葉の中にデフレ克服という言葉が果たして入っていたのか、入っていなかったという報道もあります。ある意味では当然のことでありまして、政府の見通しは来年度の名目成長率は0.2%マイナス、物価もマイナスという見通しをもともと立てているわけでありまして、これは来年度もデフレが続くということを前提に政府見通しそのものが立っているわけです。つまりはデフレを阻止する内閣ではなくて、デフレ促進内閣であるということを自ら認めているわけですから、言えなかったというのが事実だとすれば、そのほうがある意味では整合性のある態度ではないかと思っています。

 結局のところどういうふうにしてデフレを抑制し、阻止するのか、一切具体的な方向性は示しておりません。かつての石油ショックとか円高のことを言われているようですが、少なくとも石油ショックは大インフレを招いた事件で、デフレのことを言うのであればせめて1930年代の大デフレに対してどういう政策をとられたかということでも言われるのなら分かりますが、石油ショックを例に出してああいう困難なものも解決できたのだから今後も解決できるようなことをいくら言ってみても、まったく方向性が違うのではないかと思っております。

民主党大会での提案

 明後日はわが党の大会ですが、私はその場でデフレを克服して日本経済を立て直す経済再生の一つの考え方を提示したいと考えて、準備を進めているところです。同時に小泉内閣がデフレ促進、デフレ加速内閣であるという認識は私だけではなくて多くのいろいろな立場の人が感じておられることであります。そういった点でデフレ加速小泉内閣を辞めさせて政権交代をしていくという課題は、わが党の課題であるだけではなくて多くの国民の皆さんにとってもそのことを望む空気は現在もかなりありますから、これからますます高まってくると見ております。そういった国民各層の小泉デフレ内閣を交代させたいというエネルギーを、例えば『国民会議』とでも呼ぶような一つの運動のような形にネットワークを結んで、小泉政権を代えていこうという運動の輪を広げていきたいと、そういった提案もあわせて大会の中で申し上げていきたいと思っています。

自民党長崎県連幹事長逮捕事件

 経済政策にも根のところで関係していることですが、自由民主党の長崎県連の幹事長が逮捕されました。結局のところ長崎県連の公共事業に関連した企業から、知事選を巡って献金を受ける、あるいは強要してきたという容疑によるものであります。つまり国民の税金を本当に国民のために使うのか、それとも自由民主党という政党のため、あるいはそれを応援する知事のために使うのか、当然知事や政党のために使うのであればそれにまつわる人にとってはプラスになるかもしれないけれども、国民全体にとっては必ずしもプラスにならない税金の使われ方がすることは誰の目からも明らかであります。

 私はよく口が酸っぱくなるほど例に挙げる長崎県の諫早干拓で2.400億あるいは2.500億と言われる公共事業も、結局のところは自由民主党の県連の寄付や政治家への寄付、さらには農水省の天下り先などを生み出すための巨大な公共事業であり、そのことが国民生活に何一つプラスにならない。あるいは出来上がった干拓地は日本経済に投資効果として何一つプラスを生まないことは、誰の目からも明らかなわけで、そういう点で私は申し上げるのですが、政治の腐敗あるいはピンハネが問題であるのは当たり前ですが、そちらが問題である以上に1億、2億というピンハネ財源を作るために、実は百倍、場合によっては数百倍の税金が無駄に使われている。このことが今の日本経済をこのような低迷状況に長年追い込み、財政赤字がGDPの140%にも達している最大の原因であるということを改めて長崎県連の自民党幹事長逮捕というものが、いわばそれを象徴する事件であるということをとくに申し上げておきたいと思います。

小泉総理の靖国神社参拝について

 形としては突然、総理が14日に靖国神社に参拝されました。民主党はもともとA級戦犯を合祀している靖国神社に総理という立場で参拝することは、戦争責任の問題や政教分離の観点からしても参拝すべきではないという立場をとってまいりました。そういった意味ではこの行動は望ましくない、やるべきではない、このことは民主党として当然ながら改めてきちんと申し上げておかなければなりません。

 しかしそれと同時に申し上げたいのは、総理になるときに8月15日の終戦記念日にどんなことがあっても靖国にお参りするんだと語気を強めて言って、自分で勝手に公約として国民に約束をした。それが8月15日。翌年は4月、そして今年は新年だからお参りをしましたということになっている。いったいこのことは何を意味しているのか。しかも現在北朝鮮がNPT条約を離脱してそれに対して日本は韓国や中国と協力して、もちろんアメリカやロシアも含めて北朝鮮の離脱宣言撤回に向けて働きかけをしなければならないきわめて重要なときに、いわば自分の間違った公約を果たすために姑息にこういうときを選んでお参りをした。いまのうちであれば、中国政府も全人代を前にして新しい総理などが決まっていない、あるいは韓国も次期大統領は決まっているけれど就任式はまだで、就任したり新しい総理が決まったら、少しほとぼりが冷めるころまでには正常化することができるだろうと。いわば小泉総理の個人的な思惑や利害によって国民的な最大の安全保障上の問題である北朝鮮問題に備える国民的な利害を無視した行動というのは、私は一国の総理大臣としてまったく無責任な行動だと申し上げざるを得ないわけです。個利個略のために国民の利益に反する総理大臣という行動に対しては、まさにこういった行動をとる人を総理として認めるわけにはいかない。このことを申し上げておきたいと思います。

<質疑応答>

自由党との選挙協力について

【記者】自由党との選挙協力についての進展状況は?

【菅】おもに岡田幹事長と藤井幹事長との間で話を進めていかれていますが、先ほどの報告によれば明日、小沢さんと藤井さん、つまり党首と幹事長、私と岡田さんの4人で会ってこれまでのやりとりの中でほぼこういう線でというお互い同席して確認できるんじゃないかという状況だと聞いておりまして、その会談によってこの間も申し上げていますが方向性が確認できる見通しになっております。

【記者】その内容はこれまで代表がおっしゃっていた選挙区での候補者調整、それ以降については今後の党内調整、その確認は書面でおこなうのか?

【菅】最初の質問は、私たちはそのように思っています。ですからそれを前提とした話だと思っています。もちろん自由党のほうから更なる希望が出されるかそのことまで事前にどうこうするということはありません。文書で云々というのは、一時期その方がはっきりしていいのではないかという話もありましたが、いまのところそこまでする必要はないのではないかというご意見もありまして、たぶん文書で確認という形にはしないで何らかの形で皆さんへの報告ということになるのではないか。これも併せて明日の会談の中で扱いを決めたいと思っています。

通常国会での追及

【記者】自民党長崎県連の問題も含めて通常国会ではどんな追及をするのか、また公共事業受注企業からの献金の禁止法案については?

【菅】先ほどから申し上げておりますように、政治と金の不祥事であるから取り上げるというスタンスというよりも、もっと本質的な問題として取り上げていきたいと思います。つまりこの間いろいろな機会で申し上げておりますように、日本経済がここまで破綻し財政がここまで破綻した最大の原因は税金の使い方の大きな間違いにある。捻じ曲げられた税金の使い方を止めることができない最大の理由はまさに政治と金、それも政治家だけではなくて官僚の天下りという意味での政治と金、そして政治家が政党に対する献金という形、あるいは賄賂という形の政治と金。この両方の意味で政治と金がそのことをただせない原因になっているということを何度も申し上げてきました。そういった意味では長崎県連のこの事件は、まさにそのことそのものを検察当局も一つの犯罪として立件しようとしているわけですから、大きな観点からしっかりと国会の中でも取り上げ取り組んでいきたいと思っています。

 小泉総理や山崎幹事長は何か他人事のようなコメントをしていますが、実は日本経済の破綻した原因はそこにあるという認識を持たないで、構造改革などという言葉を使ってほしくない。構造改革の最大の構造改革は税金の使い方を変えることにあるわけですから、原因を一切理解できていない総理に構造改革という言葉を使うには失格だということも併せて申し上げたいと思います。

 公共事業受注企業からの献金禁止というのは、我党を含む4野党で法案を提出しており、改めて政調あるいは「次の内閣」の皆さんとも相談して、国会での成立を期していきたいと考えています。こういう事件がはっきりしてくることによって、与党もその法案に反対しにくい状況が生まれてくるのではないかと思っています。

デフレ阻止国民会議について

【記者】デフレ阻止国民会議について、具体的に代表がイメージされている具体的な呼びかけの相手や、運動の取り組みについて教えてください。

【菅】まだ具体的に考えて動いているわけではありません。先ほど申し上げたように、私が理解するところは経済界や労働界にも、あるいは学者の皆さんや知事や首長の中でも、またNPO活動などをやられている皆さんの中でも、いまの小泉総理ではスローガンはあるが構造改革も進まないばかりか、デフレが加速していくという見方をしている方は大変幅広く存在している。しかしその幅広い存在がまだ小泉政権を倒して新しい政権をつくるという形にはなっていないわけで、そういった意味で小泉デフレを阻止するためには小泉内閣を打倒して、先ほどから申し上げているように根本である日本経済の状況を立て直すには、やはり自民党政権ではない政権をつくることが必要だというふうに思っていただける皆さんとの間での連携した運動というものをイメージして、『デフレ阻止国民会議』とでも名づけたらどうだろうかと思っているところです。

 大会が終わりましたら、そういう考え方に基づいてもちろん他の政党と連携することも含めてですが、少し政党の枠を超えた形でいろいろな方と話し合ってみたいと思っているということです。

総理の靖国参拝について

【記者】総理の靖国参拝に関して代表は新年に伊勢神宮を参拝しましたが、もし政権をとった場合政教分離の観点からどういう行動をとるのか?

【菅】私は個人的には靖国神社に参拝したこともあります。そういう意味で一般的に神社にお参りする、あるいは教会などで何らかのセレモニーに出る、あるいはお寺にお参りするのは個人の活動として自由な活動として認められていると思っています。靖国神社を総理が参拝することについて申し上げているのは二つの観点です。

 一つはA級戦犯を合祀している靖国神社に参拝することは、政治的に言えば戦前の戦争を引き起こす責任者として、少なくとも東京裁判によって有罪とされたことをいわば容認する形で日本政府も責任を認めた立場にある人を、肯定的に扱うことが、結果的によく言われるように日本の間違った戦争に対するひとつのけじめをつけたはずのことを、けじめがつかないことになる。

 政教分離の問題は、いろいろな裁判の結果が出ていますが少なくとも行政の機関、つまり総理というのは個人であるのと同時に機関であるので、行政の機関である総理大臣という一つの機関がお参りをして玉串料等を払うことについていろいろな判断がある。私はここはあえて言えば、その部分は恐れがあるので充分注意すべきだという程度で申し上げている。

 例えば私がそういう立場になったら、総理大臣という立場で靖国神社に参拝するということはいたしません。議論になっております無宗教的な国立墓苑をぜひ進めて、そういうところでお参りしたいと思います。残念ながら小泉総理は官房長官の下にそういう諮問機関をつくって中間報告ですが答申が出たはずですが、来年度予算の中にはそういった無宗教の国立墓苑建設の予算は盛り込まれていないと理解していますが、結局みずから蒔いた難しい種によって外交を非常に狭めている結果になっていることを改めて申し上げておきます。

【記者】総理になったら、伊勢神宮には参拝しないということか?また政教分離という観点からはどう説明するのか?

【菅】いま言ったように、別に伊勢神宮にはA級戦犯がまつられているわけではないのでいいのでではないでしょうか。政教分離という意味では気をつけてお参りをする必要があるのではないかということで申し上げた。先日うかがったときも、我々は国会議員という意味での公的な立場ではあるけれど別に行政の機関ではありませんから、しかしひとつのケジメとして個人のお金で玉串料は払ってきました。ですから別に総理大臣が伊勢神宮にお参りするということは、私はその点だけ若干注意すれば問題ないと認識しています。

デフレ阻止国民会議の今後

【記者】先ほどのデフレ阻止国民会議について、今後のイメージとして党内に検討機関のようなものを設けたりはしないのか?

【菅】ちょっと言葉が先に踊っているようですが、私のイメージは先ほど申し上げたとおりで、まだひとつの広い意味での呼びかけにしたいということまでであり、その後どういうふうに進めるかということはまだこれからの問題です。

編集/民主党役員室


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