2003年1月9日(木) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨


3つの方針

あけましておめでとうございます。この1年間よろしくお願いいたします。今年は元日、皇居にうかがい、4日には岡田幹事長とともに伊勢神宮にお参りをしてまいりました。そのときにも申し上げましたが、3つのことを願ってまいりました。

一つは世界と日本の平和と安全、二つは日本の再生、とくに日本経済の再生、三つめはそのためにも政権交代そして民主党中心の政権をつくること。この3つの実現のために頑張っていきたいと思っております。

ヤミ金融視察について

年末に続いて、いろいろな現場を見て話を聞いていくということで、ヤミ金融の実態について、今日、非常にヤミ金融業者の多いと言われる神田駅周辺に視察にいってきました。ヤミ金融で困っておられる被害者の方々の話、あるいは貸金業協会の話、さらには弁護士さんからの話を聞かせてもらいました。

いろいろな問題点はありますが、背景には今の厳しい経済情勢、雇用情勢があります。ヤミ金融というのは法定上限金利の29.2%、これは民主党が主導して下げた利率ですが、それを超えた利率で貸し出していることは出資法違反として刑事罰の対象になるわけですが、この間、罰金程度でしかおこなわれていない。3年以下の懲役ということになっているわけですから、悪質な業者に対しては警察がきちっと取り締まって裁判にかけるという姿勢が必要ではないか。そうすれば一罰百戒で悪質な業者は一掃できるはずだ、といろいろ話を聞いて感じたところであります。

総理と自民党幹事長は総裁選のことで頭がいっぱい

また年が明けてから、国会が始まる前にもかかわらず、とくに総理や山崎自民党幹事長のほうから9月までの会期延長といったことがテレビなどでも示唆されています。もう小泉総理や山崎幹事長の頭は、CTスキャンで撮れば9月の総裁選でいっぱいなのではないか。国会では、これから経済問題、雇用問題という重大な課題を話し合わなければなりません。そんなときに、頭が総裁選挙でいっぱいで、総裁選挙にとって国会の延長が有利か不利か、総裁選を前提として総裁選に勝つことを目的として物事を考えているような総理や自民党幹事長では、国民のことはそっちのけではないか、このように言わざるを得ません。

イラク問題は徹底した査察が第一

国際情勢も緊迫しています。イラクについて、戦後の復興といった言葉が山崎幹事長から出ています。私はイラク情勢については査察が今、行われているわけです。この査察を徹底しておこなっていく、そのことがまず重要です。アメリカが、この査察をいい加減なところで一方的に打ち切って、軍事行動に入るといったことは認めるべきではない。もしこの1、2ヶ月の期間でも不充分だとなれば、さらに充分な時間をとって徹底的な査察をおこなって、その結果に基づいて次の行動を決めるべきです。

もし自民党あるいは山崎幹事長が言ったように、軍事行動が始まることを前提として復興支援なんてことを言うこと自体が不謹慎というよりも、軍事行動を後押しすると受け止められても仕方がないのではないか。このような姿勢についてはきちっと質してしていきたいと考えております。

後藤議員の離党問題について

後藤茂之議員が離党届けを出して、現在預かりという扱いになっております。基本的には幹事長のところでいろいろ説得をし、慰留に努めておられる。私も数日前、電話で話をしました。残念なことではありますが、慰留ができるかどうかもうしばらく努力をしたい、あるいはしてもらいたいと思っています。

自民党長崎県連幹事長への捜査は、変わらない間違った税金の使い途の証拠

昨年から自民党長崎県連の幹事長がいろいろと捜査を受け、県議を辞任したということが伝わっております。私は、税金の誤った使い途を変えるということが、構造改革の最も大きな柱だと思っています。この長崎県連の場合は、長崎県港湾漁港建設協会というところから、公選法違反の疑いがある寄付を受けていたということですが、まさに諫早湾を抱える長崎県連がそういうことをやっていた。2,400億とも2,500億とも言われる公共事業、誰が見ても無駄な公共事業の税金の使い途が変わらない、その最も大きな理由が自民党県連などに対する献金、そして農水省の天下り、この2つにあるということを私はこれまでも繰り返して申し上げてきました。まさにそれが警察の手によって摘発までされている。

それにもかかわらず総理は一切このことについて反省の言葉を述べようともしない。構造改革という言葉を使う資格はない。税金の使い方を変えないでおいて、政府として何をしようとしているのか、そのように言わざるを得ません。


<質疑応答>

離党問題について

【記者】後藤議員の離党について現在慰留に努めているということだが、昨年の山村議員以来7人目になる。年が明けた今も続いていることについてどのように思うか? また執行部の求心力を回復するにはどのようにしたらよいと考えているか?

【菅】大変残念な展開だと思っています。しかし基本的に野党第一党として選挙によって政権交代を目指すということが私は民主主義の王道であるし、また多くの国民が願っておられることだと思っています。まだ後藤さんの場合は最終的な行き先ははっきりしませんが、場合によっては自民党へということも報道にはありますが、野党から外れて与党入りを目指すというやり方は私は国民の皆さんには理解されないだけではなくて、民主主義の立場から国民の信頼を失う行動で残念に思っています。

民主党として今年は反転攻勢の年で、今日のヤミ金融の問題など山積する課題についても新しい執行部を中心に活発に動き出していますので、次第に求心力は戻ってくる、高まってくると思っております。そういう意味では基本的には求心力が高まってくれば、こうした離党といった動きも出てこないのではないかと思っています。

ヤミ金視察

【記者】ヤミ金視察に関して貸金業者は、民主党が主導して利率を引き下げたことがヤミ金を増やした一因であるということを言っていました。6月にまた法律の見直しが見込まれているが、その点に関しては民主党として、また代表として今後どのように対応していくのか?

【菅】出資法の利率を29.2%に下げたわけですが、いわゆるヤミ金と言われるのは、トイチどころかトサンとかトヨンとか言われるような、つまり10日で3割、10日で4割という、年率にすると1000%を超えるとんでもない利率であります。つまりは出資法の改正前が40%、さらに少し前は107%という時がありましたが、そういった過去の利率の上限をはるかに超えるものが現実のヤミ金融であります。

ですから私は、上限金利を下げたことがヤミ金を蔓延させたというよりも、ひとつにはいまの経済情勢の悪化というものが背景にあって、さらには出資法違反のヤミ金融が、事実上何千社と存在するにも関らず、刑事罰というものがちゃんと決まっていながらその取締りを必ずしも十分にやってこなかった。こういった取り締まり当局の姿勢にも問題があると思っています。上限金利を下げたから悪質なヤミ金がはびこるようになったというふうには、必ずしも私自身は思っておりません。

小泉総理の経済失政による小泉デフレ

【記者】今度の国会で代表が予算委員会の質問に立つということだが、どういう切り口で論戦を挑むつもりか?

【菅】本当ならあまり予告をしないほうがいいんじゃないかと思うのですが、基本的には小泉デフレというものに対して、いま小泉さんがやろうとしていることはデフレを加速することでしかないではないか、このことをきちんと論証していきたいと思っております。つまり小泉さんはデフレや構造改革の意味がよくわかっていない。1年前、私が幹事長時代に予算委員会に立ちまして、『構造改革なくして景気回復なしと言われるが、一体どういう仕組みで構造改革をやれば景気回復が進むのか』と言ったが、結局スローガン以上のことは言われませんでした。その後の1年間を見ていても、不良債権処理というのは不良債権処理そのものが目的ではなくて、不良債権を処理することによって金融機能が回復していろいろなところに資金が流れていく、まさにヤミ金融のようなものではなくてまともな金融業者からお金が流れるようにすることが重要なんです。しかし、小泉総理はたとえば不良債権処理をすること自体が目的になっていて、新しい需要や雇用を喚起したり、あるいはそのために新しい経済の枠組みを広げていくということについては、何も提案らしいものが出ていません。そういったところで小泉さんが総理になってから1年7ヶ月くらいになるわけですが、株価も12,000円台から8,000円台までどんどん下がっているわけで、小泉デフレというものが小泉総理自身の責任であるということを国民の前で明らかにしていきたい。あえて言えば小泉総理が総理大臣である限りはデフレはもっと厳しくなるということを、小泉総理との討論の中できちっと明らかにしていきたいと思っています。

連合や各種団体とのかかわり方

【記者】昨日の連合会長の記者会見で、『野党の存在感が非常に薄い、政治方針の見直しについても政界再編を見ながら考えていきたい』というようなことを発言されているが、今後の連合との関係について代表はどのように考えているか?

【菅】労働組合の旗開きに盛んに出席しているといわれますが、幹事長時代あるいはかつての代表時代に定例的に役割分担をして経済団体、あるいはメディアの関係などいろいろな新年会には出かけています。そういう意味では例年どおりの代表としての行動だと思っています。その上でいまも話に出ましたがいま私たちが最重視しなければいけない政策課題は、雇用拡大につながるような需要拡大策を軸にした日本経済の再生ということで、そのことは労働組合の皆さんの問題意識とも共通しておりますのでそういう会合ではできるだけそのことも挨拶の中で述べるようにしています。

民主党と連合の関係について多少昨年ギクシャクしたところもありましたが、私は民主党がきちっとした政策対応をしていく中でそういう皆さんとも共通の課題をしっかり取り組んでいくことによって、そうした関係も正常化というかよりしっかりした関係になっていくと思っています。もともと政党と労働組合やいろいろな団体というのは、それぞれ役目があるわけですから私は政党としてしっかり仕事をすることがそういう団体とも、よりしっかりした関係になると思ってこれからもそういう考え方で進めていきたいと思っています。

政府・与党からの消費税引き上げ発言について

【記者】政府与党から消費税引き上げについて出てきたが、それについては?

【菅】消費税の引き上げ問題が急にあちこちから声が上がったというその背景をよく見ておかなければならないのではないかと思います。まさに財務省的やり方そのものだと思います。もちろん長期的に日本の税制や財政をどうするかというのは常にある問題ですが、いまの時期にあちこちからそういう声が上がるということは誰かが火を点けてまわっているわけでして、相変わらず役人まかせの税制、財政ということにのった発言以外の何物でもない。塩川さんの発言はそういうふうに私は捉えています。

【記者】中長期的には見直しをするということか?

【菅】年金については、実は厚生大臣も今年末くらいまでには根本的な考え方をと言われています。我が党でもこの問題はどこかの時点で根本的な議論をしなければならないと思います。つまり従来は基礎年金の現在の3分の1の補助を2分の1、さらには全部という考え方に変わっていくわけですが、果たしてそういう考え方で長期的な安定した制度になり得るのかという問題もあります。やや個人的な考え方になりますが、昨年9月の代表選挙の折に、スウェーデン方式ということを私自身の検討課題ということで提案しました。そういったことも考えますと、年金の財源のために消費税を引き上げるという考え方も従来ひとつの考え方であることは承知しておりますが、必ずしもそういう仕組みだけで年金を考えるべきかどうか。別の考え方もあり得るということも含めて、あまり財務省的な手のひらに乗るような議論の仕方をするつもりはない。自ら年金制度のあり方もきちんと根本に立ち戻って議論していく中で、併せて財源についても考えたい。

自由党との今後

【記者】自由党からの統一会派を20日までに結論を出すということだったが、それについての対応と日にちを区切っていることについてどう思うか?

【菅】今日、岡田幹事長と藤井幹事長の間で話し合いがもたれたということで、幹事長から概略ですが報告を受けました。近いうちに私と小沢党首も含めた4人での会合を持とうということでありますが、大筋で言えば小選挙区でのバッティングを避けるということをベースとして、それ以外の問題についてはさらに国会が始まり、あるいはいろいろな状況が進む中で検討していこうということでお二人の話し合いではそういうことが出たと聞いています。そういう意味で、最終的なことは党首同士を交えたところで話したいと思いますが、小選挙区の選挙区調整に入っていけるのではないか、それ以外の問題はいろいろありますが、それはこれから前向きに検討していきたいと思っています。ですから国会が始まるまでということは、ある意味での取り組む段取りの合意がきちんとできれば、次の段階に入っていけると思いますのでそうなる見通しが出てきたことは良かったと思っています。

東京都知事選挙の対応

【記者】都知事選の民主党の対応については?

【菅】知事選で公認という形はほとんどの政党がこれまでの長い間とるケースが少ないですから、公認という言葉にこだわるわけではありませんが、どちらにしても公認ということにはならない。その中で普通に考えますとまず第一には、現職の石原都知事が本当にあと4年間都民のために知事をやろうという意欲を持って実行されるのか、そのことがまだはっきりしていません。つまりは出るからには4年間都知事として都民のために頑張るんだという決意がなければ立候補できないわわけで、果たしてどうされるのかなということが大きな要素と思っています。

民主党としては都連を中心に都議会の皆さんもおられますので、自治体や地方行政のあり方というものを考えながら民主党が目指す自治体運営というものを最も実現できる候補者を見つけて、それを応援していく努力をしなければならないと思っていますが、中心的には現時点ではまだ本部の課題というより都連のほうで検討していただいているところです。

編集/民主党役員室


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