2004年8月10日 戻るホーム民主党文書目次

民主党第311回常任幹事会決定

第20回参議院議員通常選挙結果について

総合選対本部事務総長 藤井 裕久
  同 事務総長代理 枝野 幸男

二大政党時代を迎えて初の参議院選挙となった第20回参議院議員通常選挙は、6月24日に公示され、7月11日に投票が行われた。民主党は、今次参議院選挙を、昨年の総選挙で築いた足場をもとに、次期総選挙における政権交代を確かなものとするためのステップとなる重要な選挙と位置付け、自民党を上回る改選議席を獲得することを目標に党の総力を挙げて取り組んだ。

その結果、民主党は、公認候補だけで50議席を獲得し、自民党を上回るという目標を達成することができた。また、推薦等候補5議席をあわせると、改選議席38を大きく上回る55議席を獲得する結果となった。さらに、比例区選挙において2,113万票(得票率37.8%)を獲得し、自民党に430万票の大差をつけ、昨年の総選挙に続いて比例第一党の座を得た。

とくに、今回の選挙の主戦場と位置付けた27の一人区において、過半数の議席を獲得することはできなかったものの、推薦等候補を含めて13議席を獲得するとともに、自民党の金城湯池と言われた選挙区において、僅差で敗れはしたものの、自民党との大接戦に持ち込むことができた意義は大変大きい。

この選挙において民主党は、国民世論を背景に、年金法の白紙撤回と自衛隊のイラク多国籍軍参加問題を二大争点と位置付けて政策論争を展開するとともに、国民に対する説明責任すら果たそうとしない、小泉・自公政権の国民無視、国会軽視の姿勢を厳しく追及し、二大政党制の一翼を担う民主党への支持を強く訴えた。これが、政権の実績に対する信任投票の性格が強い参議院選挙において、民主党が小泉・自公政権に対する批判の受け皿となることができた結果だと考えられる。

これによって民主党は、次期総選挙における政権交代の実現に向け、大きく前進することができた。しかし、これはあくまでも、政権交代を実現するという大きな目標に向かう通過点に過ぎず、政権交代という大きな目標を達成するためには克服すべき課題は山積している。事実、自民・公明両党の融合が進むなか、民主党の獲得票数は、両党の合計得票数には及ばなかった。

また今回の選挙結果は、あくまで3年に及ぶ小泉自民党政治への批判票であり、民主党に対する期待票ではあるものの、民主党に対する信任結果ではない。民主党が次の総選挙で政権交代という「ジャンプ」を確実に行うために、これらの事実をしっかりと肝に銘じるとともに、党の足腰をより強く鍛えていくための態勢を構築することが急務である。同時に、国民との対話を重視し、国会内外での活動をより一層活性化していくことが、今後の最大の課題である。

1 候補者擁立について

今次選挙における選挙区の候補者擁立は、自民党を上回る改選議席を獲得するとの目標を達成するため、第1に、定数2名以上の選挙区について、可能な限り選挙区候補者の複数擁立を追求し、北海道、宮城、埼玉、東京、神奈川、静岡、愛知の7選挙区で複数候補者擁立を実現し、取り組みを進めた。第2に、定数1の選挙区については、全ての選挙区に公認・推薦候補者を擁立し、参議院選挙全体の帰趨を左右する選挙と位置付けて、重点的な対策を講ずることとした。

また、比例区選挙については、昨年の総選挙における比例区選挙の得票実績を継承し、得票目標を2,500万票に置いて、比例区候補者25名以上の擁立を目標として取り組みを進め、26名の比例区候補者を擁立した。候補者擁立にあたっては、前回の参議院選挙結果を踏まえ、非拘束名簿方式による比例区選挙に対応して、全国展開型比例区候補者の擁立に加えて、地域ブロック重点型比例区候補者を擁立し、いわゆる「タテヨコ併用型比例区選挙」によって、比例区選挙全体の底上げを図る取り組みを推進した。

2 選挙結果について

(1) 投票率について
第20回参議院議員通常選挙の投票率は、全国平均で選挙区が56.57%、比例区が56.54%となり、前回参議院選挙を若干上回る結果となったが、低投票率を克服するには至らなかった。報道機関によると、低投票率の背景には、小泉政権に批判的な自民党支持層が投票棄権に回った傾向もあると指摘され、政治変化に期待する多くの有権者が投票率を押し上げて、かろうじて前回選挙よりも上回ったものの、結果としては、大幅な投票率アップには至らなかった。インターネットによる選挙運動規制の緩和や、投票方法等の改善を含めて、より多くの有権者に投票参加を促すために、民主党は、引き続き投票率アップをめざして取り組みを進めていく必要がある。

(2) 選挙区における選挙結果
選挙結果は、選挙区では公認31人、推薦5人が当選した。その内、複数定数区(20選挙区)では、公認候補者22人、推薦候補者1名が当選し、その内12人が1位当選を果たした。複数候補擁立選挙区では、東京・神奈川・愛知が2議席を獲得し、他の複数擁立選挙区においても、残念ながら複数当選には至らなかったものの、民主党の選挙区・比例区得票に大きく貢献し、政権交代をめざす民主党の党勢拡大に寄与した。

また1人区(27選挙区)では、公認候補者9人、推薦等候補者4人の計13人が当選を果たし、当選に至らなかった選挙区においても、自民党の金城湯池と言われた選挙区で大接戦に持ち込んだうえでの僅差の惜敗という結果を残し、今後の国政選挙等に向けた大きな足がかりとなった。

逆に自民党は、選挙区選挙において、前回参議院選挙の45勝2敗から34勝13敗へと大きく後退し、これまで伝統的な支持基盤と言われた農村部・郡部地盤ですら、民主党候補者の健闘により、大きく支持を後退させ、大幅な議席減となった。

(3)比例区における選挙結果
比例区選挙では2,113万票(得票率37.8%)を獲得し、19人が当選を果たした。今回の参議院比例区選挙における得票は、前回衆院選の得票率37.4%とほぼ同程度の得票実績を残し、自民党に430万票の大差をつけ、昨年の衆議院総選挙に続いて第1党の座を確保したことは、2大政党制を定着させ、政権交代の基盤をつくるうえでも、大きな成果となった。

3 参議院選挙対策全般について

(1)候補者擁立・選挙態勢
当初から目標としていた全選挙区への候補者擁立を達成することができたが、選挙結果からすれば、より早期に候補者を擁立できていれば、さらに当選可能性が拡大した選挙区は決して少なくない。今後は、選挙対策委員会として、候補者発掘・擁立システムを恒常的に確立し、早期に候補者擁立を完了できるよう取り組みを進めることが一層重要である。

また、選挙態勢については、比例区選挙と連動した連合・各産別の取り組みが、選挙区選挙全体の取り組みを底上げする役割を果たした。しかし国会議員不在県ないし少数県では、依然として地方連合や各産別の支援に全面的に依存する選挙態勢を克服しきれておらず、接戦を勝ち抜いていくための選挙態勢を日常的に準備していくべく本腰を入れた対策が求められている。地域における「足腰」の充実は、依然として民主党の克服されるべき課題として残されている。

全て選挙区において十分な選挙態勢を確立するため、選挙本番以前から、ブロック内各県連及び総合選挙対策本部としてのサポート態勢を補強し、近隣県連からの現職国会議員の応援、衆参秘書会への支援要請等、党として自前の多様な支援形態を準備・検討していく必要がある。

(2) 選挙争点形成について

(1)参議院選挙マニフェストについて
民主党は、年金改革・地域再生・教育・農業再生など、8項目の重点政策及び政権公約を示した「参議院選挙マニフェスト」を発表し、選挙戦をたたかった。

マニフェストについては、参議院選挙が直接に政権選択選挙ではないこともあり、前回衆院選と同様な「マニフェスト選挙」としては焦点化されなかったものの、政権公約を有権者に示して国政選挙をたたかうという民主党の基本姿勢を示し、「マニフェスト=民主党」のイメージを定着させることができた。またマニフェストの重要政策にも掲げた「農林漁業再生プラン」は、自民党の伝統的な支持基盤である農林漁村部等に効果的にアピールする政策となった。

一方で、今回の「参議院選挙マニフェスト」は、基本的に昨年の総選挙時の政権公約を継承しつつ、参議院選挙に向けた検証・補強作業に取り組んだが、短期間での作成を余儀なくされたことから、政策内容の深化・具体化や、各界各層と連携した政権政策づくりなどの課題は、次期衆議院総選挙に向けた大きな宿題として残された。

(2)「年金改革」「多国籍軍参加」争点及び岡田・民主党キャンペーンについて
民主党は、通常国会最終盤の年金改革法の強行採決後も、引き続き自民・公明両党の年金改革法に対する批判を強めるとともに、国会審議すら経ず自衛隊のイラク多国籍軍参加を決定した小泉・自公政権を厳しく追及し続け、今次参議院議挙における争点を「年金法白紙撤回」と「自衛隊のイラク多国籍軍参加問題」を柱に据えて選挙キャンペーンを展開した。

また、「まっすぐに、ひたむきに」政権交代をめざす岡田・民主党イメージを前面に出し、小泉・自公政権との際立った政治姿勢の違いを表現し、小泉自民党政治の対極をなすものとして、選挙キャンペーンの中心に据えてたたかいを進めた。選挙戦本番に移行する段階で、年金法の前提となっていた出生率低下の情報隠しが発覚するとともに、成立した年金法の条文に40ヶ所に及ぶ改正ミスや度重なる社会保険庁の失態などが発覚し、選挙戦が進むにつれて自民・公明両党の年金改革と小泉総理の政治姿勢に対する強い国民の批判が集中し、小泉自民党政治との相違を明確にした政策論争を展開することによって、選挙戦全体の争点設定を有利に進めることができた。

民主党優勢との報道がなされた選挙戦終盤には、危機感を持った自民・公明両党が、激戦区において政党の矩を越えた組織選挙を展開するとともに、場当たり的な政策やわが党に対するネガティブキャンペーンを執拗に繰り返し、巻き返しを図った。しかし、民主党は動ずることなく、最後まで一貫して政策論争を展開することができた。

また、岡田・民主党イメージは、年金改革や小泉総理の政治姿勢に対する明確な対立軸を明示し、民主党に対する期待感を高め、かねてから懸案課題となっていた女性有権者の民主党支持率アップにも一定の効果を発揮した。

その一方で、争点が単純化されたものの、短期間で本番選挙機材作成や、各種メディア対策、各種選挙広告宣伝等を作成せざるを得なかった面は免れず、政党ポスターやマニフェスト作成、一部の選挙機材等について、党内の検討論議が不十分であったものも含まれていたことは反省しなければならない。

(3)比例区選挙について  
比例区選挙においては、2,100万票を獲得し、比例第一党の座を確保したが、あらためて幾つかの課題が浮き彫りになった。

第一の課題は、政党名選挙と個人名選挙の関係である。前回に続いて2回の非拘束名簿方式による選挙経験を経て、政党名得票実績が8割を超えたことは、民主党の比例区選挙が政党名選挙を主体とし、政党名選挙の推進如何が全体的な比例区得票を左右する傾向を顕著に示している。

したがって、比例区選挙における有効な戦略は、民主党イメージを定着・発展させることであり、政党としての選挙キャンペーン展開をより重視していく必要があると考えられる。

第二の課題は、個人名選挙の推進である。前回の参議院比例区選挙を踏まえて、より多様な人材を比例区候補者として擁立し、かつそれを支える支援態勢を構築するために、全国展開型比例区候補者に加え、地域ブロック重点型比例区候補者を擁立し、5名が当選した。前回の参議院比例区選挙では、全体の得票数自体が伸び悩んだとはいえ、産別推薦比例区候補者以外の当選が極めて少なかったことを考えれば、今回の地域ブロック重点型比例区候補者の擁立は、一定の成果を上げたと言える。

しかし、地域ブロックにおける支援態勢が十分に機能しなかったところも見受けられ、個人名得票獲得を最優先とした比例区選対個々の集票力の向上とあわせて、各比例区選対の得票実績等の追跡調査・分析を行い、また地域ブロック重点型候補者支援について十分な検証を行った上で、形式的な支援分担の区分以上に、集票に直結する実質的な支援のあり方を再度検討し直すことが必要である。

4 選挙結果全体の評価について

−「自民党を上回る議席獲得」と政権交代・二大政党制への責任−

今回の参議院選挙を通じて、民主党は改選議席38を上回る議席を獲得し、公認候補者で50議席、推薦候補者を含めて55議席の躍進をかちとり、獲得目標として掲げていた「自民党を上回る議席獲得」を達成した。

この結果は、第一に、年金改革・多国籍軍参加問題に顕著に示された小泉自民党政治に対する有権者の強い怒りによってもたらされたものである。有権者は、その7割が反対している年金法強行成立させ、国会審議すら行うことなく自衛隊のイラク多国籍軍への参加を決めたことに対し、拒否の意思表示を行った。

同時に、小泉首相自身が表明した「小泉政治への信任投票」は、国民無視、国会軽視の姿勢で説明責任すら果たそうとしない、小泉政権自体の政治姿勢に対する有権者の強い批判票を、二大政党効果と相俟って、民主党に集めることができたものと考えられる。その戦略は奏功したとは言え、民主党の前進は小泉自民党政治に対する有権者の怒りに支えられており、本来の意味の民主党に対する有権者の信頼の結果ではないことも、率直に受けとめておかなければならない。

投票結果がもたらしたものの第二の意義は、民主党の議席増により、小泉政権に大きな打撃を与え、かつ衆参選挙を通じて二大政党化が加速され、次の政権交代への確実なステップを踏み出したことである。

事実、参議院選挙以降の小泉政権の支持率は衰退傾向を顕著に示し、自民敗北・民主躍進は、有権者の間に政権交代の現実性を確実に広げている。参議院選挙後の報道機関の調査によれば、民主党による政権交代への支持は、自民党との差を縮め、政党支持率においても、若干ながら民主党が自民党支持率を上回る結果が報道されている。

しかし、それ故にこそ、参議院選挙後の民主党には、国民の期待感をしっかりと受けとめ、政権交代を担う政党としての責任と、政権担当能力の向上を強く要求されている。

したがって今回の参議院選挙結果を踏まえて民主党は、政権交代へのプロセスを早急に準備しなければならない。3年後の次期参議院選挙においては、非改選を含めた与野党逆転を達成するとともに、次期衆議院総選挙において政権交代を実現することこそが、民主党の責任である。

当面の課題は、国政選挙が予定されていない「平時」においても、政権政党をめざす民主党が、二大政党の一翼を担い、その役割を明確に果たし、国民の信頼を得るに足る政治を実践していけるか、否かである。その実践の第一歩は、参議院選挙の最大の争点であった年金制度改革問題を選挙争点のみに終わらせるのではなく、国民の世論を背景に、年金制度抜本改革の早期実現に向けた活動を継続し、党を挙げて取り組んでいくことから開始されなければならない。

5 政権交代の実現に向け、今後取り組むべき課題

(1)国民から信頼される政党へと進化を遂げるための党改革の推進
小泉自民党政治に代わる政権政党として、国民に開かれた、説明責任を果たし、国民から信頼される政党として進化を遂げていくための党改革は焦眉の課題となっている。これまでの党改革の取り組みを継続して、地域基盤強化のための改革、政策立案能力の強化、政治資金を透明化し説明責任を果たす党財政のあり方などの諸課題を、着実に推進しなければならない。

(2)次期衆議院総選挙および次期参議院選挙の候補者の早期擁立
政権交代の正念場を迎える次期衆議院総選挙に向けて、全ての小選挙区で周到な準備の上に、政権交代選挙の態勢を確立するべく、年内の空白選挙区解消をめざし、早急に次期衆議院総選挙候補者擁立作業を進める。また次期参議院選挙に向けて、3年後の与野党逆転達成を担う新人候補者の擁立・支援に積極的に取り組んでいく。

(3)新人候補者ならびに新人議員の日常活動の強化
次期国政選挙をたたかう新人候補者ならびに新人議員の日常的な政治活動を強化していくために、チューター制を活用した新人研修事業や政策研修等を一層強化していかなければならない。また民主党に期待をよせ、民主党候補者として参画する意思を持つ人材を広く募り、育成していくための「民主党政治スクール(仮称)」の設立を展望した準備を進めていく。

(4)党の足腰を鍛えるための地域組織の強化と地方自治体議員の拡大

政権交代を支えるに相応しい地域組織を強化していくために、各総支部及び都道府県連が党の活動拠点としての機能を十分に果たし得るように財政基盤の強化、活動態勢の検討、党員・サポーター拡大など、地域組織の強化を本部主導により実施していく。また地方自治体議員を飛躍的に拡大していくために、全選挙区の候補者擁立・定数複数選挙区における複数候補擁立等を目標として、積極的な候補者発掘・擁立や、地方自治体議員フォーラムの地域における活動強化を進めていく。

(5)各種団体との幅広い交流の促進
各界各層と民主党との幅広い連携と協力関係をより一層拡大し、裾野の広い支持基盤を形成していくために、各種団体・文化諸団体・労働団体・中小企業者、NPO・市民団体等の多様な幅広い交流を積極的に促進していく。


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