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民主党平成15年度予算案

民主党『次の内閣』


=8.8兆円の重点投資で、100万人の仕事を生み出す=
〜民主党予算案のポイント〜

1.『潜在需要』を掘り起こす   重点配分額=4.9兆 雇用増=69万人
障害者や高齢者向けのグループホーム1万戸増設計画の推進 7400億
必要とする児童全員が学童保育に入所できる体制の整備 87億
公立小中学校における「30人学級」を今後5年で完全実施 960億
居住空間を倍増、バリアフリーなど高品質な住宅の建設推進 1600億
循環型経済や農業の支援による里地・里山の保全 500億
政府の調達条件となりつつあるISOの中小企業取得を支援 30億

2.『将来不安の解消』を図る    重点配分額=0.9兆 雇用増1万人
患者窓口負担の3割引き上げを凍結 400億
介護保険の国庫負担引き上げによる介護報酬引き上げ 4000億
支援費制度実施に向けて障害者ホームヘルプ事業を拡大 28億
「失業者生活資金貸付制度」の利率引き下げ、償還期間等延長 500億
国立病院を拠点とする小児医療等の救急体制整備 36億
酒、たばこなどの大衆増税は認めない(約3000億の国民負担減)
公共事業、特殊法人向け支出、公務員定数増の凍結等による歳出削減(8.8兆の歳出減)
自動車関連諸税の減税と共に環境税を導入し温暖化を抑制(税収中立)

3.『仕事を生み出す』        重点配分額=2.2兆 雇用増26万人
新たな国民負担無しで雇用保険の財政基盤を安定化 5000億
職業訓練の充実、対象者の拡大など職業能力開発支援制度を創設 5000億
最悪の雇用状況を踏まえ、緊急地域雇用創出事業を拡充 1600億
地域労使で策定している雇用創出プランの支援等 76億
介護労働者の育成のため、高校新卒者の関連資格取得支援 210億
「若者無業」の解消に向け、高校に職業カウンセラー配置 90億

4.『地域の個性を生かす』              (一括交付金額=15兆)
従来の個別零細補助金を原則禁止し、15兆円規模の「一括交付金」を創設する。「一括交付金」は現在ある個別の補助金を統合するものであり、新たな財政需要は生じない。

5.『必要な資金を循環させる』             重点配分額=0.8兆
「セーフティネット保証」など中小企業向け信用補完制度拡充 6000億
DIPファイナンス等の再建途上中小企業向け融資制度を拡充 300億
「目利き」の配置による政府系金融機関審査能力向上 200億
新創業融資制度の拡充等創業・新事業進出等への資金供給円滑化 120億
「シャッター通り」解消に向けた中心市街地活性化推進 280億

【民主党予算案 概要】

1.予算規模
歳入歳出の規模は、政府案と同じ81.8兆、一般歳出も同様の47.6兆

2.税収
○政府の税制改正は行わないこととし、先行減税分1.5兆は見込まない。

○民主党の税制改正案に則り、「ローン利子控除制度」の創設、1.3兆規模の政策減税など約3.3兆の減税を行う。

3.環境税創設
○上記の税制改革の他、約9000億円規模の環境税を創設する。同時に自動車関連諸税の減税を行うことにより、税収中立とする。

○環境税収の使途は、地方の道路整備財源及び新エネルギー開発普及等温暖化防止に有用な分野に優先的に配分する。

○国、地方における道路特定財源制度は廃止する。

4.歳出の見直し
○公共事業の大幅見直し、民主党「特殊法人改革案」に則った特殊法人・独立行政法人等向けの支出の見直し等で8.8兆円の歳出を削減する。

5.雇用と安心を生む分野への重点配分(総額8.8兆・雇用創出100万人)
○上記歳出によって生まれた財源を雇用と安心を生む分野に重点配分する。これによって100万人の仕事を生み出す。

○グループホーム(高齢者・障害者向け)1万戸増設、居住空間倍増・住まいの質向上、「30人学級」の推進など、現在のニーズに合ったサービスを提供し、潜在需要を掘り起こす(配分額=4.9兆・雇用創出=69万人)

○医療費3割負担凍結、介護保険国庫負担拡大、障害者ホームヘルプ事業拡大などに重点配分し、不安を解消する(配分額=0.9兆・雇用創出1万人)

○国民負担増無き雇用保険の財政基盤強化で不安を解消し、職業訓練に重点を置き人材を育成し、働く場としての新たな産業を起こす。若者の無業対策に全力で取り組む(配分額=2.2兆・雇用創出26万人)

○中小企業が、新しいニーズに迅速に取り組めるよう、必要な資金が円滑に調達できる環境を創る。(配分額=0.8兆円)

6.「一括交付金」の創設
○民主党の従来の政策に則り、「一括交付金」を創設する。15兆円規模の裁量可能な資金を地方に渡すことによって、地域の活力を高める。


【民主党 平成15年度予算案 総括表】

  民主党案  民主党案説明
《歳入》
 税収
 
40.5兆
41.8兆
+1.5兆
▲3.3兆
+0.5兆
 
 
政府案税収見込み
政府改正案撤回に伴う増収
民主党減税案実施に伴う減収
環境税導入・自動車重量税暫定税率
廃止による国分税収相殺
 税外収入 4.2兆 政府案見込額(3.6兆)に比べ、0.6兆(国有財産売却収入)増
 特別会計財源繰入 0.7兆 特定財源制度廃止に伴い、揮発油税収の道路特別会計直入分を一般会計に繰入
(政府案に比べ皆増)
 公債金 36.4兆 政府案と同じ

歳入合計

81.8兆 政府案と同じ
《歳出》
 公債費
 
16.8兆
いずれも政府案と同じ
 地方交付税 17.4兆
 一般歳出 47.6兆

歳出合計

81.8兆  

民主党 平成15年度予算案 一般会計 主要経費別内訳

事項 平成15年度
予算額(兆円)
主な事項説明
 一括交付金関係
   町づくり
   教育
   社会保障
   農業・環境
   地域経済
   その他
15.0
3.6
2.4
7.5
1.3
0.1
0.1

公共事業関係補助金の一括交付
教育関係(義務教育費国庫負担金含む)
社会保障関係補助金の一括交付
農業、環境関係補助金の一括交付
雇用、中小企業関係補助金の一括交付
上記に含まれない分野の一括交付
 社会保障関係費 11.7 医療費窓口負担増凍結、雇用保険給付カット凍結、保育所・学童保育拡充一括交付金化で見かけ上減少 等々
 文教・科学振興費 4.6 「30人学級」実施、奨学金の充実、高校生のホームヘルパー資格取得支援 等
一括交付金化で見かけ上減少 等
 国債費 16.8 政府案と同じ
 恩給関係費 1.2 政府案と同じ
 地方交付税交付金 16.4 政府案と同じ
 地方特例交付金 1.0 政府案と同じ
 防衛関係費 5.0 政府案と同じ
 公共事業関係費 1.9 ダム事業の一時凍結等直轄事業
半減一括交付金化で見かけ上減少 等
 経済協力費 0.4 見直し実現まで大幅減
 中小企業対策費 1.4 信用補完制度充実 等
 エネルギー対策費 0.8 エコカー普及国家プラン実施
 食料安定供給関係費 0.2 一括交付金化により見かけ上減少 等
 産投繰入 0.2 政府案と同じ
 その他事項 5.1 警察官増員 等
 予備費 0.4  

合計

81.8  

民主党 平成15年度予算案 一般歳出における政府案との比較
(一括交付金はそれぞれの経費区分に分類し、内数としている)

事項 民主党案(兆円)
政府案(兆円)
A−B
差額カッコ内は増減率
 社会保障関係費 19.3 19.0 +0.3 (+1.5%)
 文教・科学振興費 7.1 6.5 +0.6 (+9.1%)
 恩給関係費 1.2 1.2 0.0
 防衛関係費 5.0 5.0 0.0
 公共事業関係費 6.3 8.1 ▲1.8  (▲22%)
 経済協力費 0.4 0.8 ▲0.4  (▲56%)
 中小企業対策費 1.4 0.2 +1.2 (+714%)
 エネルギー対策費 0.8 0.6 +0.2  (+37%)
 食料安定供給関係費 0.3 0.7 ▲0.4  (▲59%)
 産投繰入 0.2 0.2

0.0

 その他事項 5.5 5.1 +0.4 (+7.4%)
 予備費 0.4 0.4

0.0

合計

47.6 47.6  

【歳入内訳】

●算定のスタート(基準)=政府税収見込み(別紙・注1) 41.8兆
 
●歳入増=政府税制改正の凍結
 
 
+1.5兆
 
●算定のスタート(基準)=政府税収見込み(別紙・注1)
 
 
41.8兆
  内訳:  ローン利子控除制度創設
       住宅譲渡損失繰越控除制度拡充等
       NPO支援税制拡充  
       登録免許税定額手数料化 
       法人税政策減税 
       中小企業減税 
       連結付加税廃止  
       株式譲渡益課税ゼロ税率 
       エンジェル税制拡充 
       中小企業留保金課税廃止  









1兆円程度
確定困難
100億程度
7000億程度
1.1兆
0.2兆
700億程度
1800億程度
確定困難
800億程度
 
●環境税創設=増収
 
 
+0.5兆
  内訳:  環境税収 
        自動車重量税暫定税率廃止

0.9兆
▲0.4兆
 
●税外収入(政府予算案)
 
 
+4.2兆
  内訳:  政府案見込み額 
        国有財産売却収入 

3.6兆
0.6兆
 
●特定財源の一般会計取り込み
 
 
+0.7兆
  内訳: 揮発油税  +0.7兆
 
●国債発行額
 
 
36.4兆
 
●歳入総額
 
 
81.8兆

【歳出削減額内訳】

1.公共事業費(別紙・注2) 3.60兆
一般会計公共事業関係費  8兆971億
  内訳: 一般会計の直接支出額を半減    … ▲0.6兆
       特別会計における事業の大幅見直し … 特会繰入額▲3.0兆
 
2.一括交付金化に伴う削減
 
3.2兆
 民主党「一括交付金案」対象補助金総額(一般会計分) 15兆8443億
    ⇒「一括交付金」化に伴う補助申請事務簡素化、効率的事業執行等で2割減

3.特殊法人等向け支出
 
1.26兆
 民主党「特殊法人改革案」による特殊法人、独立行政法人等支出見直し
       支出見直し対象法人=28法人
(特別会計から支出されているものは、当該特別会計への支出削減もしくは当該特別会計より不要額を一般会計繰入の措置を行う)

4.国家公務員人件費・国会議員歳費削減(別紙・注3)
 
0.1兆程度
 本年予定されている約3000人の定員増の停止、指定職以上の退職金水準の見直し、異動手当見直し、国会議員歳費削減等

5.ODA削減等
 
0.4兆程度
 ODA大綱の見直し及び見直しに沿った予算が実現するまでの間、ODA予算を大幅に削減する。併せて「思いやり予算(人件費を除く)」のゼロベースでの見直しや、防衛庁調達コストの節約にも取り組む。

6.官房機密費、外務省機密費の削減等
 
0.2兆
 適切な改革が行われるまでの間、官房機密費は半減する。外務省機密費についても同様に見直しを進める。また平成14年度同様の節約に努めることとし、14年度補正予算における節減額を当初予算より削減する。

以上の歳出見直しによる節減される額は8.8兆円程度である。


【重点配分項目内訳】
=8.8兆円の重点配分を行い、100万人の仕事を生み出す=

1.『潜在需要』を掘り起こす        重点配分額=4.9兆
「人生80年時代」「ハードからソフトへの転換」など時代の変化に応じ、今、国民が求めているサービスを提供する。

主要事業

グループホーム1万戸増設 7400億
学童保育充実(希望者全員入所) 87億
「30人学級」推進           960億
居住空間倍増、住まいの質向上 1600億
里地・里山保全            500億
中小企業ISO取得支援       30億  等

以上の事業実施により、69万人の仕事を生み出す


2.『将来不安の解消』を図る        重点配分額=0.9兆
日々高まる「将来の不安」は、国民の財布を一層固く閉ざし、消費の低迷を招いている。年金・医療・介護の分野に重点的に資源を配分し、国民の不安を和らげ、消費の活性化に結びつける。
主要事業 医療費3割負担増凍結      400億  
  介護保険国庫負担増       4000億  
  障害者ホームヘルプ事業拡大  28億  
  失業者生活支援基金拡充    500億  
  小児医療救急体制整備     36億  等

以上の事業実施により、1万人の仕事を生み出す


3.『仕事を生み出す』             重点配分額=2.2兆
生活基盤崩壊、人間としての尊厳喪失までも招来しかねないほど、雇用は重要であり、緊急な課題である。国民の不安解消、より生活の質を高めるサービスの分野に眠っている多くの潜在的雇用を掘り起こすために、大胆な重点配分を行う。またこの分野に円滑に人材が供給されるよう、学校教育、職業訓練、ミスマッチ解消にも全力で取り組む
主要事業 国民負担無き雇用保険財政安定化  5000億
職業能力開発支援制度創設      5000億
緊急地域雇用創出事業拡充      1600億
地域労使共同による雇用維持     76億
高校新卒者資格取得支援       210億  等

以上の事業実施により、26万人の仕事を生み出す


4.『地域の個性を生かす』           (一括交付金額=15兆)
価値観が多様化する中、潜在的需要そのものも地域によって大きく異なっている。政府が統制的・画一的に対策を行っても、こうした需要を顕在化させ、新たなビジネスを生み育てることはできない。地域にどんなニーズがあり、これを充たすためにいかに地域の資源を活用するべきかをよく知っている地域に使い勝手の良い資金を交付することで、潜在的需要を掘り起こし、経済の活性化と地域住民の生活の向上を実現する。

なお「一括交付金」は現在ある個別の補助金を統合するものであり、新たな財政需要は生じない。

5.『必要な資金を循環させる』          重点配分額=0.8兆
潜在的需要に対応した新しいビジネスを生み出すためには、その分野に円滑に資金が供給されることが重要であり、不良債権処理はそのためにこそ不可欠。バブルに踊った大企業と機動的な動きから新たなサービスに対応しやすい中小企業を明確に区分し、特に中小企業に対して必要な資金が流れやすいシステムを作る。
主要事業 中小企業向け信用補完制度拡充  6000億
再建途上中小企業向け融資制度  300億
政府系金融機関審査能力向上   200億
中心市街地活性化推進        280億  等

以上の重点配分合計額は8.8兆。雇用増は100万人程度である。

【重点配分と一括交付金の関係】
既存の補助金は、制度として定着しているものが多く、一括化しても基本的には現在の行政サービスは提供されるものと考える。一方、現在の危機的な経済状況に対応して行う「重点配分」は緊急的なものであるため、当面は事業の性格が一括交付金に含めるべきものであっても、個別の補助制度として行う。「重点配分」によって仕事が生まれ、経済が活性化する中で、経常的な事業継続の必要性の高いものについては、「一括交付金」に含めていく。


【歳入に関する説明資料】

1.民主党減税案
(1)ローン利子控除制度の創設(1兆円程度の減税)
住宅、自動車、教育費等を中心にキャッシュ・ローン以外のすべてのローンに係る利子を所得控除する「ローン利子控除制度」を創設し、資産デフレを軽減すると共に、将来的に金利が上昇した場合においても、消費を下支えする。(020822税制改革の基本構想)

⇒米国の所得税制度では20世紀初頭より、消費者によるローンの支払い(自動車ローン、クレジットカードローンを含む)について、所得控除できる制度があった。これは個人の生活においても、企業と同様、利子を経費と見なしていたものと思われる。この制度は米国が「双子の赤字」に悩んでいた86年に、控除対象を住宅ローンに絞ったが、現在でもなお米国の「住宅ローン利子控除制度(住宅ローンに支払った利子を全額所得控除できる・借入金上限=100万ドル)」が大幅な優遇制度となっているのは、この歴史的経緯によるものである。

(減税額算出)
⇒「キャッシュローン以外の全てのローン」の残高の把握が困難であり、また本制度導入によって消費が活性化されるので、正確な減税額、或いは消費税増収との相殺額の算出は困難。把握できる限りで算出すると減税額は約1兆円程度。
  住宅ローン残高:153兆 ……金利3%で仮定
  その他ローン残高:13兆 ……金利5%で仮定

(2)住宅譲渡損失繰越控除制度の創設
○住宅譲渡損失の繰越控除制度の拡充(賃貸住宅住み替え時への適用)、譲渡損失を前年度所得から控除できる繰戻還付制度を創設する。(021108経済活性化プラン)

(3)NPO支援税制(減税額100億程度)
⇒添付資料「NPO支援策の強化・拡充について(メモ)」参照

(4)登録免許税手数料化(減税額7000億程度)
○不動産取引等に係る登録免許税の定額手数料化、印紙税の廃止も含めた見直しを行う。(021108経済活性化プラン)
(減税額算出)
⇒平成13年度課税実績(土地分5847億・建物分1336億・合計7183億)に基づき、手数料化(=費用弁償)でほぼ税収が無くなると試算。

(5)研究開発等政策減税(減税額1.3兆程度)
○全産業を対象とした研究開発及び環境対策に対する政策減税の拡充及び恒久化。企業の設備更新の促進に資する減価償却制度の抜本的見直しを行う。(021108経済活性化プラン)
⇒政府案並みを想定。
減税額内訳:研究開発減税(中小企業分除く)=5470億
        設備投資減税(中小企業分除く)=5270億
        中小企業支援           =2300億

(6)連結付加税廃止(減税額700億程度)
○連結付加税を廃止する。(021108経済活性化プラン)
⇒平成15年度税制改正で廃止も議論されたが、結果的に存続することとなった。

(7)株式譲渡益課税ゼロ税率適用(減税額1800億程度)
○日銀による株式購入は市場を歪めるものであり、容認できない。民主党は証券市場の活性化、直接金融の拡大を図るため、株式譲渡益課税の時限的なゼロ税率適用、損益通算範囲の拡大、繰越控除期間の延長を行う。あわせて公正・透明な市場を確立するために、「日本版SEC」を設置する。(021108経済活性化プラン)

(減税額算出)
⇒平成14年度税収見込額を基準に、全額減収とする。

(8)エンジェル税制拡充(減税額確定困難)
○売却損の損益通算範囲の拡大等エンジェル税制の大幅拡充を推進する。(021108経済活性化プラン)
⇒平成14年8月現在、対象ベンチャー企業16社、エンジェル数246名存在するが、実際にエンジェル税制の適用事例は皆無=極めて使い勝手が悪い。

(9)中小企業留保金課税廃止(減税額800億程度)
○中小企業(同族会社)の留保金課税を撤廃する。(021108経済活性化プラン)
⇒政府案は自己資本比率50%以下の中小企業について課税停止しており、これだと減税規模は初年度420億円。民主党案は中小企業基本法における中小企業全体を対象としており、民主党案では減税額830億程度にする内容である。

(10)環境税創設⇒別紙参照

(11)国有財産売却収入(6000億程度の歳入増)
⇒財務省によれば、すぐに売却可能な国有地は8000億円分。このうち、3000億は平成14年度内に売却するとしており、さらに平成15年度予算においても約3000億の売却収入を既に計上している。よって残の2000億を歳入に追加計上可能。さらに莫大な財産を保有していることから、4000億加え、6000億収入予定。

(12)特定財源の一般会計取り込み(7000億程度の歳入増)
⇒揮発油税(平成15年度税収見込み:2.8兆)は、現在の制度下では、その3/4を一般会計に繰入、残る1/4は道路整備特別会計に直入される(一般会計を経ない)ことになっている。民主党案に従い道路特定財源を一般財源化することにより、この直入分は当然に一般会計歳入となる。


【歳出削減に関する説明資料】

(1)公共事業費削減(3.6兆円の削減)

 【一般会計の公共事業費内訳】
総額 内、一般会計支出
補助金
内、特別会計繰入 その他
(一般会計直接支出)
8兆0971億 2兆8876億 4兆0050億(3) 1兆2045億(1)

 【特別会計の内訳】
特別会計公共事業総額 内、補助金 その他(特別会計直接支出)
6兆9688億 2兆2430億(2)(3) 4兆7258億

(1)一般会計が直接支出する事業費は半額 ⇒1兆2045億/2= ▲6022億
(2)特別会計支出の補助金は全て「一括交付金」とするので、補助金支出相当分の一般会計から特別会計への繰入の必要性はなくなる  ⇒ ▲2兆2430億
(3)特別会計直接支出に充てられている一般会計からの繰入分(4兆50億―2兆2430億)については、一般会計直接支出同様に半減。 ⇒ ▲8045億(*1)

*1=(4兆50億−2兆2430億=)1兆7620億の内、空港整備特別会計に繰り入れている1530億は別扱いとする。これは羽田沖合展開事業用の費用である。
結果的に削減額は
  (1兆7620億−1530億)/2 = 8045億

以上による削減額は以下の通り
一般会計直接支出の半減 (1) 6022億
特別会計への繰入支出の減(2)+(3)    3兆0475億
合計額 3兆6497億

(2)「一括交付金」創設による削減額(3.2兆削減)
一般会計において「一括交付金」の対象となる見込み事業は、674件(予算書の「項」ベース)、総額15兆8443億。これを「町づくり」「教育」「社会保障」「農業・環境」「地域経済」「その他」の6つの分野に大括りし、分野の範囲内で地方自治体が自主的に事業を選択できることとする。これによって自治体職員の業務の過半を占めると言われる補助金申請業務が大幅に簡素化でき、また事業の効率的執行(近接事業の相互連携、地域の実情に即したコストの低減等)が期待できるため、当該一括交付金の額を20%カットする。(「一括交付金」については資料参照)

主要経費別「一括交付金」対象補助金
主要経費 対象金額
社会保障関係費 9兆4394億
文教及び科学振興費 3兆 180億
公共事業関係費 2兆6470億
中小企業対策費 497億
エネルギー対策費 26億
食料安定供給関係費 1287億
その他の事項経費 5590億

合計

15兆8444億

削減額=15兆8444億 × 0.2 = 3兆1688億

なお特別会計にも「一括交付金」対象の補助金が存在するが、当該補助金の2割削減分は元々一般会計の負担ではないので、上記削減額には算入しない。

(3)特殊法人等向け支出の削減(1.26兆削減)
民主党でとりまとめた「特殊法人改革案(01年12月)」に基づき、その後の状況の変化(独立行政法人以降等)を勘案した上で、削減額を算出。

(4)国家公務員人件費・国会議員歳費削減(0.1兆程度)
正確な算出は困難であるが、概算は以下の通り。
(1)国家公務員の定員増停止(3000人)
政府予算では、本年約5000人の削減を行う一方で、3000人の増員を予定している。「一括交付金」の創設により霞が関官僚の事務も大幅に削減されること等を念頭に、当該3000人の定員増を停止し、配置転換により補うこととする。
   削減額 = 平均給与 500万円 × 3000人 = 150億

(2)指定職以上の退職金水準の見直し
政府は退職金の官民格差(5.6%官僚が高い)の是正をめざし、15年度において最大1割の幹部職員退職金引き下げを行うとしている。これをさらに徹底し、平成14年度の国家公務員退職金予算額9200億の1%削減を目標とする。
   削減額 = 9200億 × 1% = 約100億

(3)異動手当見直し
異動手当は物価が高い都市部と比較的安い地方の格差を埋めるための手当。実際には、地方に転勤後も3年間は都市部における給与が保障(異動手当支給)となっているため、政府からも善処を求める声が続出した(予算委員会・上田議員質問時)。これを15年度より見直すこととする。
   削減額 = 約300億円

(4)国会議員歳費削減(10億削減)
 10%とカットとなっている国会議員歳費について、さらに5乃至10%カットする。

以上、削減額合計 150億+100億+300億+10億 = 560億

(5)官房機密費、外務省機密費の削減等(0.2兆)
 平成15年度 官房機密費  14.6億(前年度と同額) ⇒ 半減で7億削減
        外務省機密費  10.0億(対前年度▲1.5億)⇒半減で5億
 平成14年度補正予算計上節約額(歳出の削減)= 1720億
    削減額合計 7億 +5億 + 1720億 = 1732億


背景資料(H14.8閣議決定に基づく)

民主党版「環境税」の概要

1.環境税について
(1)導入の意義
地球温暖化を抑制することは、現在の世代に課せられた重大な課題。これを果たすためには、環境税の導入は「税収の使途のグリーン化」「国民の環境意識の向上」「化石燃料の使用抑制・効率化」の観点から有用。また産業競争力向上も期待。

(2)課税対象・税率・税収
石炭を含む化石燃料に対して、含有炭素トン当たり3000円(ガソリン1L当たり2円程度)の税率で課税し、約9000億の税収を見込む。但し他に転換不能な原料炭・ナフサ等の原材料に対しては課税しない。

(3)税収の使途
一般財源とするが、導入の目的に配慮し、新エネルギー、省エネの技術開発、設備投資、普及等に優先的配分を行う。

(4)現行制度との調整
○電源開発促進税は、既にその使途の一部が新エネルギーの開発等に充てられていることから、1/3程度を環境税に組み替える。(税収中立)
○環境税導入によって相対的に原発が有利となることを避けるため、石油税の税率を1/3程度引き下げる。(減収額見込み:1600億程度)
○現在の非課税である石炭については、激変緩和措置を設ける。

2.自動車関連諸税の整理合理化
(1)自動車重量税の暫定税率廃止
自動車重量税の暫定税率を廃止し、本則に戻す(減収見込み:国分=3600億、地方分=1200億)。また従来運用で道路整備財源とされていたが、これも一般財源化を行う。

(2)自動車取得税の廃止
消費税と二重課税となっている自動車取得税は廃止する(減収見込み:地方分=4500億)

3.道路特定財源の一般財源化
国における特定財源制度(揮発油税、石油ガス税)、地方における特定財源制度(地方道路税、軽油引取税)はいずれも廃止し、すべて一般財源とする。なお上記4税の暫定税率はいずれも維持する。

(参考1)税収見込み
国分  増収   環境税創設 +9000億
     減収 自動車重量税暫定税率廃止         ▲3600億

一般会計分差引

+5400
石油税率引き下げ ▲1600億

差引

+2400億

地方分 減収   自動車重量税暫定税率廃止 ▲1200億
自動車取得税廃止              ▲4500億

合計

▲6100億

なお自動車重量税の算定にあたっては、現在政府が提案している「地方譲与割合かさ上げ」は見込まず、現行制度によって算定している。

(参考2)環境税収の使途
環境税創設による税収(9000億程度)は、その創設目的等により、地方の道路整備費用として充当可能な「町づくり一括交付金」及び太陽光発電、燃料電池等新エネルギー開発・普及の財源に充てることとする。


背景資料(H13.5閣議決定に基づく)

民主党版「一括交付金」の概要

1.趣旨
「一括交付金」制度は、01年5月に民主党の政策として正式に決定された制度であり、その前段階として01年通常国会には対象を公共事業関係に絞った「公共事業一括交付金法案」を国会に提出している。

趣旨は、現在の個別補助金制度では霞が関の作った基準に縛られ地域の実情に沿った事業の実施が困難なこと、また実際の事業選択においては霞が関の「箇所付け」が優先され、真に地域が必要とする事業を優先できないことなど国民の貴重な税金が、有効に活用されていない状況を改善すること。さらに将来の税源移譲に向けて、地域の政策能力、住民への説明能力の向上を図るとともに、実際の税源移譲の際には「一括交付金」を、地域間財政調整の財源とすることも念頭に置いている。

2.概要
 現在ある地方自治体向け個別補助金(一般、特会あわせて約20.4兆円)を原則として全廃し、下記の5つの分野の大括りにして、自治体に交付する。自治体においては、分野内での事業選択は自由に行えるものとする。
(1)まちづくり一括交付金
   主として社会資本整備関係に充てる交付金
(2)教育一括交付金
   教員の給与、教育施設、生涯教育等に充てる交付金
(3)社会保障一括交付金
   医療保険、介護保険、社会福祉施設の建設・運営費等に充てる交付金
(4)農業・環境一括交付金
   農業構造改善を含む農業支援、環境保全に充てる交付金
(5)地域経済一括交付金
   地域の産業対策、雇用対策に充てる交付金
(6)その他一括交付金
   上記5分野のいずれにも属さない分野の事業に充てる交付金

(一括化対象除外)
国政選挙事務等の「委託費」については、一括交付金から除外する。又、生活保護等、国が保障すべき最低限のナショナルミニマムに係わる補助金については一括対象から除外し、今後国が全額を負担する制度へと改める。

(配布額)
各自治体の5区分ごとの配分額は、一括交付金制度創設前直近5年間の区分ごとの配分額の平均額を基準とし、これより2割減額する。

(チェックシステム)
「一括交付金」を受けた自治体は、交付を受けた翌年度の8月までに議会の承認を受けた上で、報告書を国に提出しなければならない。国は用途外使用の疑いがある時は当該自治体に説明を求めることができ、実際に用途外使用であった時には、「一括交付金」の返還を請求することができる。

3.民主党予算案における「一括交付金」の額
(1)配分額
一括交付金名称 従来の補助金を
一括化した額
(2割削減後)
その他の事由による
増減額

合計

町づくり 2兆9709億

(*1)6100億

3兆5809億
教育 2兆4144億 2兆4144億
社会保障 7兆5245億 7兆5245億
農業・環境 1兆2903億 1兆2903億
地域経済 1020億 1020億
その他 935億 935億

合計

14兆3956億

6100億

15兆0056億
*1=環境税の導入とあわせて、「自動車重量税暫定税率廃止」「自動車取得税廃止」を実施するため、地方の道路整備財源が縮小することとなる。当該6100億円は、この減収分の補填額である。

(2)「一括交付金」から除外した補助金の例(除外総額:2.3兆)
○国が直接責任を負うべきもの
例)生活保護費補助金、拉致被害者等生活相談等事務委託費、
不発弾等処理交付金、外国人登録事務委託費、原爆被爆者医療費等

○交付先が限定されており、一括交付になじまないもの
例)災害救助費負担金、アイヌ伝統等普及啓発等事業費補助金等

○特定の財源によって交付されている補助金
例)電源立地促進対策交付金、生涯職業能力開発事業等委託費等


(別紙)

民主党予算案に関する説明

○政府予算案の税収見込みについて(【歳入内訳】注1)
政府は、平成15年度経済見通しを名目成長率は▲0.2%、実質で+0.6%を見込んでいるが、政府の予算案ではこの成長率は実現できず、また税収見込みを達成できないものと考える。そもそも政府の税収見込みはかなり甘めの見積もりであり、達成は覚束ない。

民主党案は、税収見込みにおいて政府税収見込みを算定の基礎としているが、これは雇用重視の民主党予算案によってこそ、実現できるものと考える。

○公共事業費について(【歳出削減内訳】注2)
公共事業については、単に事業量の縮減のみで事業費を削減するだけでなく、入札制度の抜本的な見直しや事業費に含まれる間接経費(事務費)の適正化、さらには効率的な事業実施によるコストの引き下げ等を通じて、実現する。

○公務員制度の見直しについて(【歳出削減内訳】注3)
1.補助金の一括交付化によって、地方公務員はもとより、霞が関官僚の事務の大幅な削減が実現できる。過剰となる分野の公務員を、チェック型行政への転換等に伴い人員が必要となる分野に大胆に配置転換を進める。政府予算案にあるような国家公務員の定員増は認めない。

2.民主党の予算案では、例えば労働職員、税務職員、刑務所職員など拡充が必要な分野の増員は、今の公務員の配置転換することで対応する。このような工夫の中で「食品Gメン」「環境モニター」などを創設し、新たな財政負担を生まずに、社会のニーズに応えていく。

3.さらにILO勧告を踏まえ、平成16年度には公務員制度を抜本的に改める。

○政治主導で予算編成(編成プロセスの改革)
○「予算の構造改革」を実現するためには、予算編成プロセスを抜本的に見直すことが不可欠。下からの積み上げ方式では、大胆な改革を実現することは不可能。

○民主党は、政治主導の予算編成を実現する。内閣(=政治)が予算の大枠を重点的な配分先を定め、ついで省庁別の配分額を定め、そして各大臣が各部局毎の配分額を決めることによって、時代や国民のニーズに即した柔軟な予算を編成する。


2003年2月5日 戻るホーム民主党文書目次