2003年4月1日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○農水相後任決定のもたつきは、小泉政権が実質的な力を失った一つの象徴
○株価総額が大幅に減少、小泉政権の経済失政が数字の上でもはっきりしてきた
○対米追従でないと言えない総理は、追従か反米かの二分法に持ち込もうとしている
○北海道知事選は負けることができない、都知事選にも勝手連的に応援に入りたい
○民主党の緊急事態法制については、きちっとした案を提示していく

農水相後任決定のもたつきは、小泉政権が実質的な力を失った一つの象徴

【代表】昨日は大島農水大臣の辞任をめぐって、小泉総理もいよいよ抵抗勢力に頼らざるを得なくなるのか、どうするのかという瀬戸際になっております。そこで先ほど幹事長とも相談して、いよいよ小泉総理が、本当に自民党の抵抗勢力と手を切るというなら、わが党も小泉総理と組むという選択を考えていいのかと相談したのですが、よくみたら4月1日エイプリルフールでして、そんなことはまったく議論しておりませんが、多少はそういう話も今日にぴったりの話ではないかという思いで、ちょっと申し上げてみました。

冗談はその程度にしまして、結局小泉総理も、昨日の一連の動きは、完全に小泉政権がレームダックというか、実質的な力を失ってきた一つの象徴だと見ております。

とくに今日も株価の終値は8000円を切っておりますが、3月末日で8000円を切ったということは、本当にこれはイラクの戦争がなければ、そのこと自体が大きな政局というか、小泉降ろしになっていただろうと思います。小泉さんにとっては、イラクの戦争によって支えられているというきわめて奇妙な形になっております。

株価総額が大幅に減少、小泉政権の経済失政が数字の上でも明らかに

【代表】民主党としては予算が上がったわけですが、平成15年度の民主党の予算に対する考え方は明確に打ち出しておりますので、これから補正予算という議論になる場合に、わが党としては先に提出した平成15年度予算の考え方に沿って、もう一度いまの予算を作り直すという考え方が必要ではないかという立場で、経済政策のある意味で最大に重要な問題でありますが、その問題に対応していきたいと考えております。

4月1日になったわけですが、総理が就任して1年10ヶ月になるわけですけれども、時価総額でいえば株価でこの1年間ですか、昨年の期末からこの1年間で70兆円の株価総額が減少した。そういう中で銀行を中心に、就任時から言えばもっと大きな額ですが、そのような株価総額が減少して、自民党というか小泉政権の経済失政が、あらためて数字の上でも非常にはっきりしてきたと、重なりますが申し上げておきます。

対米追従でないと言えない総理は、追従か反米かの二分法に持ち込もうとしている

【代表】イラクの情勢がこんな情勢ですので、きちっとしたこれからの日本の外交・安全保障に対する考え方の議論を、総理との間ではしたいと考えております。残念ながら明日の水曜日の党首討論はおこなわれないことになってしまいましたが、どうも総理は対米追従と言われていることに対して、最近は対米追従ではないと言えないものですから、対米追従でなぜ悪いんだと、逆に対米追従でないというのは反米なのか、という二分法に持ちこもうとしております。

しかし当然のことですが、対米追従と反米の間には、国連を中心とした日本の自主的な立場をきちっと持ちながら、日米同盟、国連、アジアというものをきちっと3本の柱にした外交方針があるはずで、そういう意味では対米追従でもない、反米でもない、第三の道とも言える日本の外交政策をこの機会にしっかりと打ち出していきたいと考えておりまして、どういう形がとれるか分かりませんが、総理との議論の場があれば、そういう場を通してこうした議論を深めていきたいと考えております。

北海道知事選は負けることができない、都知事選にも勝手連的に応援に入りたい

【代表】統一地方選挙が始まっておりまして、27日には北海道の鉢呂選挙に出かけ、29、30日も鉢呂さんの選挙の応援に出かけてまいりました。全般としては、北海道の場合、比較的農村地帯を回ったわけですが、かなり反応はあるわけで、初日は札幌も回りましたが、札幌が天王山になると皆さんも言っておられますし、私もそう感じております。

何としても北海道の知事選は、小泉さんが応援する自民党の候補者と、私たちが応援する鉢呂さんでありますから、あらゆる意味でこの戦いだけは負けることができないという覚悟で臨んでいきたいと思います。

東京のほうは、現在のところ樋口さんの選対は、政党は支持という形をとっておりますけれども、あまり政党が前に出ない形の戦いになっております。しかし次第に政党というのか、私などにも少し応援に入って欲しいといった打診も来ておりますので、広い意味で勝手連的なスタンスでそういう要請を受けて、応援に入りたいと思っているところであります。

イラク問題への小泉政権のスタンスに対し、韓国は与野党を超えて危惧している

【代表】昨日、韓国の与野党19名の国会議員が来られまして、わが党だけではありませんが、超党派でシンポジウムがおこなわれました。残念ながら私自身はシンポジウムには出られませんでしたが、夕方の懇親会あるいは今朝のわが党の本部を表敬訪問された中で、若干の意見交換をいたしました。

昨日のシンポジウムを聞いても、非常に日本の国会、とくに日本の与党との意見の違いがかなりはっきりしております。つまり韓国の場合は、与党民主党も野党ハンナラ党も、北朝鮮の核開発が第二次朝鮮戦争につながることをいかに避けるか、ですから平和的に話し合いで解決するというのは単に望ましいという意味ではなくて、平和的あるいは話し合いで解決しないときには第二次朝鮮戦争に立ち至るので、それは何としても避けるんだということを第一優先度に、この問題をとらえているわけです。

しかし日本の与党・政府は、言葉では平和的話し合い路線というのはイラクの場合でも賛成だと言っていたわけですが、同じようにイラクの場合でも、相手がそれを放棄しなければ武力行使もやむを得ない、イラクの場合はフセイン政権自身は放棄したと言っても隠しているはずだと言って武力行使に進んだ。北朝鮮の場合は、キム・ジョンイル自身が核開発は継続しているんだと言っているわけですから、その論理から言えば、アメリカが武力行使をすると言った場合には、相手が棄てないのだからやむを得ないという論理に、少なくても論理的にはなるわけで、そういう点でいまの小泉政権あるいは自民党を含む与党のスタンスに対して、韓国の国会議員の皆さんは与野党超えて大変危惧しているということが強く感じられました。

そういった意味で、わが党からもそういう提案があったようですが、近い将来中国のしかるべき人たち、場合によってはロシアの国会議員などを含めて3国あるいは4国の国会議員、あるいはそれに相当する人たちが集まった議論の場を作ろうではないか、という提案がそれぞれ出されましたが、ぜひそういう形で、もちろんアメリカなどの関係なども非常に重要ですが、ある意味当事者としての韓国、あるいは中国、日本、場合によってはロシアという国がどう対応するのか、本当に話し合いあるいは平和的にやろうと思うなら何をするのか、そこまで含めて議論を積み上げていきたいと感じております。

<質疑応答>

大派閥が閣僚を出さなかったことは、小泉総理の指導力低下を特徴付けるもの

【記者】大島農水大臣の辞任問題で、新大臣が決まるまでの経過で、3人断られたということで、かなり小泉政権にとって、だいぶ質が変わってきたと思いますが、代表はその点どのように見られているか。また今後の政局の行方をどのようにお考えか、お聞かせ下さい。

【代表】最初に申し上げたように、小泉政権がレームダックに陥りつつあるという、まさにそのことを如実に現わした経緯だと思います。とくに二重の意味で、そのことは言えると思います。まず小泉さん得意の一本釣りといいましょうか、そういうことに近いことを一方でやりながら、他方では派閥のしかるべき人に協力要請をしている。従来、勢いのあるときには、派閥の相談はなくダイレクトに話をして、極端に言えば派閥が反対しても、それなら知りませんよと言って引き抜くということを平気でやっていたわけですが、今回の場合には派閥にお願いした上で、派閥からも断られ本人からも断られた。

そういう意味では、非常に小泉総理の自民党内での指導力の低下が表れている。また評論家ではありませんので私から言うのも変ですが、自民党でいえば最大派閥の橋本派、そして江藤・亀井派そして何番目かわかりませんが堀内派の3派閥が閣僚を出さなかった。残る派閥はというと、森派と山崎派と高村派と旧加藤派というのが残っているのかわかりませんが、いずれも小派閥でありまして、ある意味では森派以外の大派閥がすべて閣僚を出さなかったという現象は、とくに自民党の中での小泉総理の指導力の低下をはっきりと特徴付けるものだったと見ています。

民主党の緊急事態法制については、きちっとした案を提示していく

【記者】有事法制について、与党側は対案を早く出せと言っていることについて、以前代表は、野党が経済失政を隠すために言っていると言いました。国民からすると、やはり野党第一党がどのような案を示すのかというのは大いに関心があると思うのですが、具体的にどういう内容になるのか、またいつまでに出すのかということをお聞かせ下さい。

【代表】まず質問のなかにあった、経済失政を隠すためにというのは、私がどういう文節で申し上げたか、自分の言葉ですが言葉尻までは覚えていませんが、言ったのはイラクの戦争というものに関連して経済失政を覆い隠そうとしている。その中にもちろんイラクの戦争があるから、あるいは北朝鮮の脅威があるから、有事を急げというのも関連はしていますが、ストレートに経済失政を隠すために、民主党に有事の対案を出せといったという意味で言ったのではありません。

少なくとももうちょっと広い、つまり安全保障問題をイラク問題を中心にした問題で結果的に覆い隠そうとしているのではないかと申し上げたのです。そこだけは明確にしておいていただきたいと思います。

その上で言いますと、私が1月の党大会で申し上げたのは、この通常国会の間にはわが党でいう緊急事態法制について、きちっとした案を国民に提示したい、という言い方をしたと思います。ですから普通に考えていただければ、この通常国会の会期中、それも最終日に出すということでないとすれば、予算が上がってこの統一地方選挙が終わり、連休が終わったあたりかなと。これは決して私が思っていたというよりも、一般的にもそういう見方ではなかったかと思っています。

ですから、一つの見通しのなかで、それぞれ担当する人たちが努力をしていただいてきていると思います。決してわが党がズルズルと引き伸ばしているという意識はまったくありません。つまり、しかるべきときには、きちっと時間的にも対応できるところで、わが党の考え方を提示をしていきたいと思っています。

そういう点では細かい日程までは申し上げませんが、いま申し上げたことを念頭に置きながら、しかし議論にも相当時間がかかりますので、ある意味ではこの統一地方選は前半・後半ありますけれども、ある段階までくれば議論をしっかりとしなければならないのではないかと思っています。

わが党にとっては、東京・北海道・三重・神奈川の4つの知事選が最重点区

【記者】先ほどの統一地方選について、北海道と東京のことについて触れられましたが、三重と神奈川のことについても、幹事長は重点選挙区という言い方をしています。事情はいろいろと違うと思うのですが、この残る2つの選挙についての取り組みや考え方などをお聞かせ下さい。

【代表】岡田幹事長が言われたことは、まさにそのとおりであります。私はあえて一番注目されている2つを申し上げましたが、三重県も正式に民主党が推薦をしていますし、神奈川県はつい先日まで仲間であった松沢代議士が立候補して、勝手連といっても神奈川県の県連会長含めて相当に民主党の仲間が応援に入っています。

私も2日目に事務所に激励と言いましょうか、訪れて、もし私が応援に入ったほうが好ましい場面があれば言ってもらえばいつでも来ます、ということを選対の関係者に申し上げておきました。そういう意味では、4つとも大変重要な戦いだということです。

多少言えば、対立候補が一番はっきりしているのが北海道。三重県は自民党が最初から誰をやっていいか分からなくなっているところがありまして、東京も比較的対立候補ははっきりしていますが、政党というものがあまり前に出ていない。神奈川もそういう意味では政党が前に出ている部分と出ていない部分があり、そういう多少のニュアンスの差はありますが、基本的にはわが党にとっては4ヶ所の知事選が最重点であることはそのとおりです。

中国・韓国・北朝鮮、そしてわが国によるAUという構想も、一つの考えではないか

【記者】冒頭の発言のなかで、アメリカ追従でもなく反米でもない、第三の道ということをおっしゃいましたが、具体的にアジアの安全保障政策はどうあるべきかということについて、どんな考えをお持ちでしょうか。

【代表】こういう短時間の記者会見で申し上げるにはまだ十分練れていませんが、たとえば先日の外国人記者クラブでいくつか質問をいただきましたけれども、日本の外交の3本の柱と言われていますが、もう少しシンプルに言えば、一方で日米関係、一方でアジアの関係、というのが日本の地政学的にも置かれたところから考えていく、一つの構造ではないか。

その中でこれまではどちらかというと、これまでは日米同盟が基軸であるということは、それはそれで私も同感なのですが、もう一方のアジアに関する構想が日本独自でまだ持てていない。どちらかというと、アジアの問題もアメリカを通してアジアとの関係を決めてきた。冷戦状況で言えば、中国との関係、あるいは南北朝鮮の関係もそういうところがあったと思います。

しかし冷戦が終わった今日の中で、北朝鮮問題がソフトランディングによって何らかのいい意味での決着ができたときには、一番いま発展途上である中国、そしてかなり発展している韓国、北朝鮮は遅れていますが、韓国・北朝鮮と、そしてそうは言っても、まだ世界の有数の経済大国のわが国と、そういうアジアの中国・朝鮮半島・わが国というものが連携したときに、EUならぬAUというものを50年くらいの展望で考えられる、あるいはそういうことを構想することも一つの考えではないかということを、外国人記者クラブでの質問に答える形で申し上げました。

そのような考え方、時間的にも長い考え、構造的にはもっと大きな一つの構想をもった中に、先ほど申し上げた第三の道の一つのイメージがあるのではないかと、私はそう思っています。

編集/民主党役員室


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