2003年3月18日

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菅 直人代表/定例記者会見要旨

○ブッシュ大統領の決定は国連憲章に反しており、民主党は断じて賛成できない
○小泉総理の説明は納得できるものではなく、本会議や党首会談の開催を要求する
○今回の事態で世界経済にとって重大なマイナス影響が出る心配もある
○総理が本会議の時間に記者のインタビューを受ける、その神経が理解できない
○明日の党首討論では、米国支持の正当性、武力行使の正当性などを問い質したい

ブッシュ大統領の決定は国連憲章に反しており、
民主党は断じて賛成できない

【代表】さきほど両院議員懇談会でも申し上げたことでありますが、若干インターネットでこの会見の実況があるということなので、イラクのことについて見解を重ねて簡単に申し上げておきたいと思います。

今日10時からブッシュ大統領が全世界に向かって意見表明があったわけです。基本的には、新たな国連決議を取り下げて48時間以内にフセイン親子がイラクを出ていかないならば、武力攻撃を開始するということを大統領として言明したわけです。

しかしこの大統領の決定は、明らかに国連憲章に反する決定だ。国連憲章では、みずからの国が攻撃された場合の個別的自衛権の反撃と、国連決議あるいは国連軍による武力行使は認めていますが、いずれでもない一方的な攻撃は国連憲章に反しているという立場から、ブッシュ大統領の決定には私たち民主党としては断じて賛成できない、反対であるということをまず明確にいたしたいと思います。

この間民主党としては、更なる査察の継続によって、イラクの大量破壊兵器を廃棄に追い込むことがまだまだ可能性が十分あると、このような立場で主張してきたわけですが、残念ながらその主張が受け入れられない形でこういった展開になったことについては、大変残念でありますし、戦後の国連という場を一つのルールとした機能が大きく損なわれてしまったということも、心配しております。

小泉総理の説明は納得できるものではなく、
本会議や党首会談の開催を要求する

【代表】これに対して小泉総理は、ブッシュ大統領の決定を支持する旨の発言をされているようです。しかしその理由については、必ずしもこれまで言ってきた内容との整合性において、納得できる説明はありません。とくにこれまでは、新たな国連決議が望ましい、そういう発言を繰り返していたわけですし、先だっての与野党の党首会談でも、その時点で考えるということで、あらかじめまだ決めてはいないのだという姿勢を崩していなかったわけですが、ではどういう理由で今回の大統領の決定を支持するのか、という説明が十分になされておりません。

この問題に絞った本会議を開いて、しっかりとした議論をするように強く要請をしておりますし、また前回、きわめて中途半端だった党首会談を改めて、今度は我々のほうから要求をしているところでありまして、国民に対して総理の説明責任をきちっと果たすように強く迫ってまいりたいと思っています。

また国会自身が、この問題で武力行使に反対だということを、全世界に向かって明確にするために、決議案を提出する作業に入っております。与党の中でもこれまで公明党は、新たな国連決議のないままの武力行使には反対、ということを明言していたわけですから、その趣旨に沿った国会決議には賛同いただけるはずですので、そういう点からも国会におけるそうした趣旨の決議案の採択に向けて努力したいと思っております。

今日はそれ以外の問題がないわけではありませんが、一日なんといってもこの問題が中心でありますので、私からはこれに絞ってあとは皆さんの質問に答える形でお答えしたいと思います。

<質疑応答>

今回の事態で世界経済にとって重大な
マイナス影響が出る心配もある

【記者】今回のこういう事態で、経済への影響が懸念されています。民主党として経済問題どういうふうにお考えか、また政府に対してどのような要請をお考えでしょうか。

【代表】もともと日本経済そのものが非常に行き詰まっている中で、この間イラク情勢が不安定ということもあって、それも一つの要因になって株価が大きく下がっているわけです。

ただ経済に対する影響は一般的にはイラクの石油の産出が一時的に止まることによる石油の高騰、あるいは石油の量が制約されるといったものの悪影響が心配されております。

今日の株価などを見ると、やや戻しているところもありまして、短期の軍事行動で終わるというような見通しも一部ではあるいはあるのかもしれません。

そういった点で、なかなか直接的な経済に与える影響というものは、推測が難しいところがありますが、少なくとも石油産出国のイラク、あるいは中近東という隣のサウジアラビアや他の国々に与える影響などを考えると、石油を巡っての混乱が長引けば、世界経済にとってきわめて重大なマイナス影響が出うる心配があると思っております。

総理が本会議の時間に記者のインタビュー
を受ける、その神経が理解できない

【記者】今日の13時からの小泉首相の発言で、党首会談あるいは国会より先に記者会見となったということについて、国民へのメッセージの発し方についてはどのようにお考えでしょうか。

【代表】すべてが異常と言わざるを得ません。後先はあえて言いませんが、少なくとも1時というのは、衆議院の本会議が開かれる時間そのものでありまして、少なくとも法案によっては総理も議場にいるべきですし、たとえ答弁がないとしても、衆議院の本会議というのは総理が出席すべき会議ですから、わざわざその時間に記者会見あるいは記者のインタビューを受けるというその神経が私にはまったく理解できません。

やはり総理という以上は、きちんと場合によれば、我々も含めてテレビを通して会見が十分聴ける時間がとれるわけですから、その時間をとって国民に説明する。それと前後して国会の本会議、さらには場合によっては、そのための予算委員会の集中審議を衆参で開くなどして、単に一方的に国民に伝えるだけでなく、そういう国会での議論を通して国民にきちっと説明をする。そのことをやるべきだ。それをまったくやろうとしないまま、しかも本会議が始まる時間に合わせた時間、しかも記者会見という形でもない、単なる質問に応じるというやり方というのは、あまりにも国民に対する説明責任というものを一切感じていないのか、あるいは自信がないためにそういういい加減な中途半端なやり方をあえて選んでいるのか、いずれにしてもまったく責任を果たしたことにはならないと考えています。

明日の党首討論では、米国支持の正当性、
武力行使の正当性などを問い質したい

【記者】いま国会を通じてというお話がありましたが、明日は党首討論が予定されています。いままでおっしゃったこととダブるかもしれませんが、この党首討論を通じて小泉総理に、この点を問い質したいということがあればお聞かせください。

【代表】明日予定どおり党首討論があれば、当然このイラク問題が主要な議題というかテーマになると、またそうしたいと考えております。

一つは民主党の姿勢を、明確に改めて国民の皆さんにお伝えしたい。更なる査察の継続をこれまで主張してきた。そして今回のアメリカの大統領の決定には反対である。また政府に対しても、反対という立場で行動するように働きかける。国会においても働きかける。こういう姿勢を明確にしたいと一つは思っております。

それに加えて総理に対しては、いったいなぜ支持をするのか。米国を支持する正当性と言いましょうか、その根拠を問い質したい。これが第一点です。これは新たな国連決議が望ましいとか必要だとか言ってこられた経緯もありますので、その見方が変わったのか、何か新たな事情が起きたのか、そういったことでの米国支持の正当性がまず第一点です。

さらにそれにも関係しますが、武力行使の正当性ということも、きちっと問わなければなりません。総理は大量破壊兵器がいろいろ流れた場合に、より大きな被害をもたらすことが心配だとされています。

一般の抽象論ではそれはあり得ると言いましょうか、そういう議論は成り立つわけですが、その前にアメリカの攻撃によって、イラクの一般市民が受ける可能性のある被害というものをどう考えているのか。一般的にいえば決して一人二人の被害で済むとは思えない。前回の湾岸戦争では10万とも、一説には30万とも言われる人たちが犠牲になったわけで、そういうことを考えると、武力行使の正当性における大量破壊兵器による被害ということと、今回の戦争による被害ということをどう勘案するのか。

さらには日本が国際社会の中での平和というものが、日本の繁栄の基礎であるという趣旨のことを、この間総理は述べているわけですが、それとの関係で、それでも武力行使をおこなうことが必要だという根拠は何なのか、武力行使の正当性について問い質したいと思っております。

また先ほどの、総理の会見というかインタビューの中で、日米同盟と国際協調のことについて触れられております。日米同盟との関係というものについて、この間どうも総理の言葉が矛盾に満ちているというか、従来は日米同盟と国際協調の両方を成り立たせるために努力しているんだということを言われておりましたが、結果的には少なくとも国連の場における国際協調というものが達成されなかった中で、一方を選んだという意味なのか。

つまり国際的な協調よりも日米同盟というものを選んだという意味なのか、そうでないのかそういったことについてもきちっと意見を質しておきたいと考えております。

残念ながらわが国も他国と同様にテロ等の
リスクからは免れ得ない状況にある

【記者】首藤議員がイラクを訪問したときに、第三の敵という形で名指しをされたわけですが、武力攻撃支持という姿勢を出したことで、日本はイラクの敵国になったという認識は代表にはありますか?また日本のリスクというか危機というのは何か、簡潔にお答えいただければと思います。

【代表】イラクにとって米英に次ぐ第三の敵という言い方が、かつてあったというのは報道で知っています。これはいまのフセイン政権という政権の立場の一部の人が、そういうことを言われたのが報道を通して伝わってきておりますが、どこまで一般的なイラク国民の認識なのかそこはちょっと私には定かではありません。

現実の武力行使が始まった場合に、どういう展開にあるのかにもよりますが、非常にある意味で、イラク内部も武力行使による大きな影響が出るわけですから、わが国の姿勢をきちっと国際社会に伝えておくことが、それが誤解だとすれば誤解を解くことになると思う。

先ほどわが党として、日本には武力行使にすべてが賛成ではないということを明確にする意味からも、国会決議を出していこうというのも、一つのそういう姿勢の表れと理解していただければいいのではないかと思っております。

またイラクに対する攻撃がテロ等のリスクを招くのではないかということでありますが、私は9月11日以降、あるいは北朝鮮の工作船等々を含めて、わが国が他の国と同様そういう危険性をもっている国であるというのは、ほとんどの国が完全には免れ得ないわけですが、わが国も残念ながらそういう状況に一般的にはあると思っています。

そういう意味でイラクに対する軍事攻撃がおこなわれるから、余計に危機が強まるという側面も部分的にはありますが、極端に言えば、イラクに対する武力攻撃がある・なしにかかわらず、いろいろな意味での危険性が高まっている時代だという認識のもとで対応していく必要があるだろうと思っています。


参考:
03/18 小泉総理インタビュー[イラク問題について]
03/18 菅直人代表 イラク問題の平和的解決を求める(談話)


2003年3月18日

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