2003年1月31日 戻るホーム民主党文書目次

政権交代を実現するために
野党結集準備委員会報告


1.政治の現状と自公保政権の限界

 日本経済の低迷は深刻の度合いを深め、戦後築いてきた蓄積を消滅させ、さらに後世代への多大な負の遺産を積み増している。長期不況は出口も見えないまま、社会の荒廃、自信の喪失、未来への希望を失わせ、かってない閉塞感をもたらしている。この責任は、長年政権を担ってきた自民党的政治、とくにこの10年の政治にある。政権維持を目的化し、旧来の利権の擁護と一部の組織や業界の利益に目をむけたままで本格的な構造改革が出来なかった自公保政権の罪は極めて大きい。

 「構造改革」を掲げて登場したはずの小泉政権に対する国民の失望感もいよいよ高まっている。この政権は、政官業癒着の構造を断ち切ることに腰が引けているだけではなく、日本経済と国民生活を破壊しようとしている。これ以上こうした政権を放置することは、政権交代をめざす野党、とりわけ民主党の怠慢であるとの誹りも免れないであろう。

 先の大会においてわが党が掲げたように、当面する政治課題である日本経済の再生と雇用の創出のためにも、われわれには一刻も早く自民党政治を終焉させ、民主党主軸の新しい政権を実現する責任がある。そして、経済を建て直し、安心の日本を作り出し、この国の外交政策を確立する必要がある。われわれは決して自己保身に走ることなく、政権交代のための、あらゆる手段を尽くして前進すべき時を迎えている。


2.民主党の責任と課題

 小泉内閣の失政と混迷が明らかになっているにもかかわらず、政権交代の気運が高まることもなく、利権政治の継続と政権の安住を許している。その責任は野党第1党である民主党にあることを深刻に理解し反省しなければならない。

 昨年の代表選挙以来、民主党の支持率が下がり、国民の民主党離れを引き起こしたのは、政権交代への可能性を後退させ、国民の選択肢を小さくしてしまったことに最大の要因がある。民主党はこの点を謙虚に反省し、政権を担える中心政党に大きく局面を開くことが重要である。国民の不満をきちんと受け止め、内向きだけでなく、広く国民の期待に応える行動や政策を展開することが必要である。

 しかし、最近の世論調査によれば、現在の民主党の政党支持率は急減し、前回総選挙時の20%水準を大きく下回っており、政権交代どころか、このまま総選挙を迎えたら、わが党自身の現有勢力を維持することも困難であることを示している。昨年の通常国会終了時(2002年7月)の予測では、わが党は統一補欠選挙での大幅な前進も不可能ではなかったとされていた。にもかかわらず、代表選挙でのイメージダウンなどもあって、いまや政権交代のリアリティを失ってしまったと見られている。もはや、党大会で掲げた「政権交代で日本を変える」とのスローガンをいくら声高に訴えても、国民は現状のままでの民主党には大きな期待を寄せないであろう。


3.政権交代と野党結集について

 政権交代を目指さないとするなら、野党の存在価値はない。野党はそれぞれが存在感を示すために独自性、違いをことさら際立たせようとする傾向があるが、数の少ない野党がバラバラでは政権与党を利するだけである。

 国民は強く、信頼できる、自公保政権に代わる野党の出現を待っている。野党はそれぞれの立党の理念・政策を持ちつつも、非常・緊急事態を迎えている政治の現状にかんがみ、大きな視点で結束し政治転換に立ち上がり、国民の信頼に応えるべきである。

 民主党はじめ野党をめぐる選挙情勢は容易ならざるものがあるが、野党が政権交代の大義で結集し、新しい局面を創り出すことによって、政治への不満、政治転換への期待、日本再生への真の改革へ広範な国民の支持を呼び起こし、大きな波動を生むことは可能である。

 94年の政治改革は、政権交代の可能な二大勢力によって、政治に緊張と政策的競争を作り出し、失政があれば政権交代という状況を生み出した。比例代表が並立されてはいるものの、小選挙区制度は劇的な変化をもたらす制度であり、改正後3回目の総選挙でその真価を発揮することは十分可能である。この可能性を生かすためにも、民主党がイニシアチブをとって、速やかに野党結集をはかり、自公保政権に代わる政権党の姿を具体的に国民の前に示すことがわれわれの責任であり、使命でもある。

 その大きな前進のための道は野党結集以外に残されていない。国民は民主党だけでは力が弱すぎる、もっと迫力ある政治勢力が必要だと実感している。この国民の感情に応えることがいま最も必要なことであり、この際、小異を超えて、2003年の「改革リベラル大合同」への道を歩み出すべきである。民主党は政権交代を掲げる野党第一党として、より大きな政権担当能力を有した存在感ある大野党の存在を国民に提示していくことが求められている。

 自由党はわが党と政策距離が近いうえ、小選挙区における競合地区も少ない。しかも、同党には既に相当数の有力候補者があり、それらは民主党との完全協力があれば当選圏に入る見込みがある。かつ、同党の党首が合流に積極的な姿勢を見せているという決定的に大きな誘因がある。自由党は比較小党でありながらも、政権交代の実現を重視している現実政党でもある。共通の大義が通じれば、大同団結するチャンスは限りなく大きい。

 社民党は党歴も長く、地方組織や支持基盤との関係も複雑・多岐に及ぶが、野党結集のパートナーとして不可欠の存在である。同党との協力関係を慎重に推し進めて、継続的な協議を進めていくことも極めて必要である。


4.めざす政権の基本的目標、基本政策

 “小異を残して大同につく”との観点に立ち、来るべき大結集に向けて、政権運営に欠かせない基本政策についての合意を先ず急ぐべきである。

 それは、
(1) 自民党型利権政治との決別、
(2) 従来型公共事業ではない、雇用創出・新産業育成型事業への大胆なシフト、
(3) 対米追従ではなく、日本の自立外交の確立、
であり、これら三つの基本政策について論議を積み上げる必要がある。

 また、政治改革、地方分権はじめ多くの国民的課題にも共同で取り組んでいくことが重要である。さらに、とりわけ長期政権に由来する構造汚職を断ち切るためのプロジェクトチームの立ち上げ、イラクや北朝鮮問題での野党の独自外交の展開など、具体的課題で野党が共同行動を積み重ねていくべきである。

 政権交代に向けた取り組みは、すなわち「国民のための政府」を確立する運動でもある。野党結集の道を着実に推し進めるためにも、国民との対話を積極的に展開し、国民が納得できる政権交代勢力の結集をはかっていくことが大切である。同時に、日本の将来を憂う有識者や専門家など各界の人たちを交えた「新しい日本を創る国民会議」(仮称)の結成を広く国民に呼びかけ、大いなる論議を巻き起こしていくことも必要である。

 以上、報告する。

【野党結集準備委員会】
委員長  石井 一
委 員  江田五月 上田清司 海江田万里 玄葉光一郎 斉藤つよし
 玉置一弥 中山義活 千葉景子 広中和歌子 山根隆治

野党結集準備委員会の提言

 われわれは、政権交代を実現し、自民党に代わる新しい「国民のための政府」を作り出すために生まれた政党である。

 現在の自公保政権は、政官業癒着の構造の上に咲いた利権政権であり、その歪んだ構造がこの国の経済をも行き詰まらせ、今日の長期不況と国民生活の困難を招いている。また、その米国追従外交は、国際化時代の開かれた国益を台無しにし、かつ国民の誇りを損なってきた。「構造改革」を掲げて登場した小泉政権も、いまや日本経済と国民生活を破壊しようとしている。

 このような時、民主党は党内の軋轢や政策調整に気を奪われ、敵陣に攻め込んで政権を奪い取るという迫力を欠いてきたと見られて、国民はいま、選択肢のない政治の現状に立ち往生している。当面する政治課題である日本経済の再生と雇用の創出のためにも、一時も早く自民党政治を終焉させ、民主党主軸の新しい政権を実現しなくてはならない。経済を建て直し、安心の日本を作り出し、国際社会での責任あるこの国の外交政策を確立する必要がある。

 野党結集準備委員会は、昨年末、(1)党内に委員会を設置し、その検討を踏まえて、各党と協議を開始する、(2)民主党と自由党両党間の連携を一層強化する、の二つの緊急課題に応えるべく設置された。以来、本委員会は数次に及ぶ闊達な討議を通じて、この新たなる前進のために以下のことを早急に取り組むべきであるとの結論に達した。

  1. 国民の政治参加を遠ざけ、政治家が利権を使って国政を私する政治を断ち切る。政治腐敗、経済失政による国民生活の破壊、主体性なき外交を阻止し、国民生活及び対外政策課題の主要な分野での共同行動をめざす幅広い国民結集のための「新しい日本を創る国民会議」(仮称)の設置を呼びかけ、広範な国民運動を展開すること。

  2. 現在の小選挙区制度の下では政権交代の実現には、野党結集が不可欠であり、野党間の連携をさらに強化すること。

  3. その第一段階として、自由党との間に、合流をも視野に入れて、政権構想、政策合意、選挙協力等を協議する機関を設置すること。

  4. また、社民党とも国会内の共闘関係や選挙協力を最大限追求するとともに、無所属クラブを含め、広範な政治勢力を結集すること。

  5. 以上の行動に直ちに取り組むとともに、政権交代勢力の樹立のための新たな体制の構築については、本年4月の統一補欠選挙及び統一地方選挙後できるだけ速やかに結論を得ること。


 以上、提言する。

2003年1月31日


結び
−報告と提言に臨んで−

 本準備委員会の論議の過程では、合流に関して様々な意見が出された。(1)当面選挙協力のみで、合流は慎重であるあるべきではないか、(2)自由党や社民党が別個に戦う方がより大きな得票を期待できるのではないか、(3)いま合流するのは野合に見られるのではないか、(4)地方によって温度差があり、合流には時間がかかるのではないか、(5)小沢的手法による混乱が予想されるのではないか、(6)合流への合意をとるのに党内がガタガタとしてまとまらない姿をまた露呈させるのではないか、などであった。

 しかし、われわれ野党の最大の責任は政権交代のリアリティを国民に示すことにある。一票を投ずれば政治は動くという実感を国民に伝える必要がある。そのために、ありとあらゆる方策を一気にとることが、いまわれわれに残された唯一の道であり、中途半端な、小手先の対策では何らインパクトがなく、効果は期待できないとの強い考えに基づき、本準備委員会は、以上の報告と提言をとりまとめた。

委員長 石井 一


2003年1月31日 戻るホーム民主党文書目次