2003年1月17日 戻るホーム民主党文書目次

経済財政に関する基本方針
〜「予算の構造改革」で経済再生を〜

民主党『次の内閣』


●「予算の構造改革」で将来への期待と安心感を

自民党政権が繰り返してきた、財政による需給ギャップの穴埋めは、効果の継続性に乏しい上に、将来不安を拡大させて消費をさらに落ち込ませるという悪循環を生んでいる。また、日本銀行は、すでに長期間にわたって、ゼロ金利という異常な状態を継続し、強力な金融緩和策を採り続けてきているが、こうした金融緩和政策をさらに当面継続するとしても、金融政策のみに過度に期待することは、デフレ克服に名を借りた調整インフレによって、国民の財産を簒奪するという破局的な道につながりかねない。

私たちは、デフレを克服し、経済を再生するために、以下のとおり、間違った税金の使い方を改め、限られた貴重な税金を、将来不安を解消しつつ、眠っている需要とこれに対応する供給力とを覚醒させることに集中投資する。歳入面も含めた抜本的な「予算の構造改革」によって、国民の不安感、閉塞感を払拭し、将来への期待と安心感を醸成していく以外に、日本を再生させる道はない。

1 『潜在的需要』を掘り起こす
  
国民が求めているサービスや財は、数限りなくあるが、その内容は、まだ貧しかった高度成長期から、少子高齢社会、成熟社会へと時代が移り変わるにつれて、大きく変化している。

ところが、社会全体としての供給が、こうした需要の変化に対応しきれていないために、こうした需要を掘り起こすことができないでいる。このギャップを埋めることこそが、経済を再生するためポイントである。

民主党は、税金の使いみちを、こうした潜在的需要に対応した供給を育てる部分に大きく移し変えることで、その顕在化を図る。

2 『将来不安の解消』を図る

日々高まっている「将来の不安」は、国民の財布の紐をさらに固く閉ざし、潜在的な需要を消費に結び付けていく上での最大の障害となっている。

民主党は、年金・医療・介護など将来不安を小さくするための施策に、予算を重点配分するとともに、将来の増税につながる国債依存から可能な限り早期に脱却するため、最大限の努力を続ける。

3 『仕事を生み出す』

将来不安の中でも、特に、緊急な対応を要するのは、雇用問題である。職を失い、職を得ることができないことは、生活の基盤を崩壊させ、さらには、人間としての尊厳をも失わせかない。

幸い「潜在的需要」に対応する供給は、多くの雇用につながるサービス分野が中心である。民主党は、特に、仕事を生み出す分野に優先的に予算を配分する。

また、就職、再就職支援のための職業訓練や職業紹介システムの充実などで、人材の能力を最大限に引き出すことにより、雇用需給のミスマッチを解消し、雇用不安の一刻も早い解消を図る。

4 『地域の個性を生かす』

成熟社会を迎え、価値観が多様化している中では、潜在的需要そのものも、地域によって大きく異なっている。政府が、集権的・統制的・画一的に対策を打っても、こうした需要を顕在化させ、新たなビジネスを生み育てていくことはできない。

民主党は、紐付きの補助金を、自由に使える一括交付金に振り替え、地方の個性と意欲が生かせるシステムを構築する。

5 『必要な資金を循環させる』

潜在的需要に対応した新しいビジネスを生み出すためには、こうした分野に必要な資金が供給される必要がある。不良債権問題の一義的な課題は、借り手企業の整理ではなく、貸し渋りや貸し剥しを阻止し、こうした資金供給が可能な金融システムを回復させることである。

民主党は、バブル大企業に対する金融と、新たなビジネスにつながりうる中小企業金融とを二分して、特に後者に対して、必要な資金が流れやすいシステムを作る。同時に、経営責任の明確化を前提に、公的資金の注入による一時国有化を断行して、金融システム全体の再生を急ぐ。


●規制改革、NPO支援で民間の活力を
   
「予算の構造改革」と同時に重要なのが、国民、NPO、地域、民間企業等の自由な活動を最大限に保障し、その能力を最大限に発揮できる環境、システムを整備することである。価値観が多様化した現代社会においては、国民の潜在的需要を政府が一元的に把握し、対応することは不可能かつ非効率である。国民の知恵と意欲を最大限に発揮してもらうことによってのみ、経済の再生、活性化は可能となる。

そのために、不要となった規制を全廃するなど大胆な規制改革を速やかに実現すると同時に、税制を中心とする重点的なNPO支援制度などを確立する。

●適正な為替レートで公正な国際競争を

実力以上に評価されている現在の円レートは、わが国の産業空洞化を進め、また深刻なデフレ不況を招いた大きな要因のひとつとなっている。この影響を緩和し、また公正な国際競争を実現するためにも、適正な為替レートの実現を目指して、最大限の努力を図る。


[参考資料]
小泉政権の経済財政運営の問題点

【目次】
(1)日本経済と小泉改革に対する基本認識
(2)小泉『構造改革』はここが間違っている
(3)平成14年度補正予算案の問題点(メモ)
(4)平成15年度予算の問題点(メモ)


(1) 日本経済と小泉改革に対する基本認識

1 幻想に過ぎない小泉『構造改革』

小泉『構造改革』は、自民党の政官業癒着体質や抵抗勢力との妥協によりその方向がねじ曲げられ、はるか彼方に後退した。「自民党をぶっ壊す」などの勇ましい公約の数々も、空疎なスローガンでしかなかったことが明らかとなった。

そもそも小泉総理は、確固とした時代認識や危機を克服するための明確な方向性を持っているわけでもなく、利権を固守しこれを分配することをもって「政治」と考える戦後の自民党政治のメインストリームを抵抗勢力と呼び、水面下で落とし所を準備しつつ彼らと戦うふりをして、具体的政策は官僚や有識者に丸投げしてきた。

小泉『構造改革』はまさに幻想に過ぎなかった。それは、21世紀の先進国に迫られる産業構造の転換と中央集権的資源配分・資金配分を根本から変えるという基本的テーマに取り組もうとしないことからも明らかである。

2 日本経済は『小泉恐慌』

小泉総理は、経済再生という最大の政治課題について、全くの無為無策である。下記のとおり、経済状況を示す指標は、いずれも急速に悪化している。まさに日本経済の現状は、『小泉恐慌』に他ならない。

構造改革そのものが幻想であるにもかかわらず、まったく論理的根拠のない「構造改革なくして成長なし」というスローガンを絶叫しても、景気後退が加速するだけなのは、ある意味当然である。その上、倒産、失業、自殺を必要以上に生み出していることが、国民の将来不安を増大させて個人消費をさらに凍らせ、さらなる不況の深刻化につながるという悪循環をもたらしている。

民主党が1998年に提案した金融再生計画を実施していれば、現在のメガバンクの惨状もなく、すでに金融システムも本来の機能を回復していたはずである。

項   目 小泉内閣発足前 小泉内閣発足後 増 減
名目GDP 513.0兆円※1 499.6兆円※2 ▲13.4兆円
名目GDP成長率 ▲0.3%※1  ▲0.6%※2 ▲0.3ポイント
国と地方の長期債務 642兆円※1 705兆円※2 63兆円
税収 50.7兆円※1 44.2兆円※2 ▲6.5兆円
完全失業率  4.7%※1  5.4%※2 0.7ポイント
企業倒産 18,926件※1 20,052件※3 5.90%
自己破産 139,280件※1 160,419件※3 15.10%
自殺者 31,957人※1 31,042人※3 ▲2.8%
預金取扱金融機関不良債権 43.4兆円※1 53.0兆円※3 22.10%
日経平均株価 13,973円※4 8,714円※5 ▲37.6%
東証時価総額 390兆円※4 250兆円※5 ▲35.8%
※1 2000年度実績 ※2 2002年度実績見込み ※3 2001年度実績


(2)
小泉『構造改革』はここが間違っている

1 小泉『構造改革』は虚構

経済危機の最大の原因は、10年以上に渡って自民党政権が間違った税金の使い方を継続していることにある。既得権益の維持に汲々とする自民党は、経済構造が大きく変化しているにもかかわらず、これへの対応を怠り、旧態依然とした予算配分を行ってきた。それが経済の長期低迷を巨額の財政赤字をもたらした。

この基本的な構造は小泉政権にあっても全く変わらない。小泉総理は就任以来「構造改革」を絶叫し続けているが、政策の集大成である予算にその跡は全く伺えない。この一点を見ても、小泉『構造改革』が虚構であり、小泉政権下で経済活性化も新たな需要や雇用の創出もあり得ないことは明らかである。

2 市場経済を破壊する小泉『構造改革』

小泉総理は、「官から民へ」を標榜しているが、「会議は踊る」のみで、何の成果もあげていない。むしろ現実に進行しているのは、市場経済の破壊である。空売り規制強化やPKO(株価維持策)、銀行等保有株式取得機構の設立等によって、株式市場への統制が強化され、産業再生機構は、本来なら市場が企業を選別するはずであるにもかかわらず、政治が特定企業だけを恣意的に救済する仕組みに他ならない。

統制経済が機能しないことは、20世紀の歴史が証明済みであり、まさに小泉改革は、時代に逆行していると言わざるを得ない。

3 『改革』の痛みは弱者に

小泉『構造改革』の柱である不良債権処理策は、競争に負けた大企業・大銀行を救済する一方で、本来ならそうならないはずの中小企業・個人を破綻に追い込んでいる。さらには、国民の将来不安が消費低迷の原因となっているにもかかわらず、大衆増税や年金、医療、介護などの新たな国民負担増を押しつけ、将来不安を増大させている。

こうした政策の結果、不公正感が増大することで、社会のモラルと活力が失われつつあり、将来に禍根を残す誤りであると言わざるを得ない。

4 『改革』の矮小化、粉飾、そして開き直り

小泉総理の手法は、『改革』を矮小化し、ときには粉飾に手を染め、最後は開き直ることである。財政構造改革は、まず「国債発行額30兆円」に矮小化され、次いで昨年度は隠れ借金で粉飾、今年度は自らの経済失政で達成できないと見るや、開き直った。

5 国民の財産を簒奪する調整インフレ政策

小泉『構造改革』の頓挫を自覚する小泉総理は、最後の逃げ道として、デフレの責任を日銀に転嫁し、調整インフレ政策をとらせようとしている。調整インフレは、「デフレ阻止」という幻想を抱かせながら、その実国民の財産を簒奪するものである。そして、手段として、株式、不動産の買い入れ、さらには国債の直接引き受けなど、まさに「何でもあり」の金融政策を実施させることにより、政府、日本銀行の信頼性を大きく損なわせるものである。


(3)
平成14年度補正予算案の問題点(メモ)

○総理就任以来掲げてきた「国債30兆円枠」を、国民に対し何ら説明のないままに放棄した政治的責任は極めて重い。小泉総理にはこのような結果を招いた原因、経緯を国民に対して説明する責任、義務がある。

○小泉総理は就任以来、既に平成13年度補正、第2次補正及び平成14年度と3回にわたって、総額約85兆円の予算を編成した。しかし、これら歳出によってもわが国経済は回復の気配を見せるどころか、危機はさらに深まるばかりであり、同時に税収は大幅に落ち込んでいる。「国債30兆円枠」という公約の破棄に至った最大の原因は、小泉総理自らの経済失政であることは明らかである。

○本補正予算では、事業規模14.8兆、GDPの押し上げ効果0.7%、9万人の雇用増を見込んでいるが、その効果は極めて疑わしい。事業規模は中小企業向けの信用保証枠の拡大で水ぶくれしており、また雇用増についても不良債権処理の加速により9万人をはるかに上回る失業者の発生が見込まれている。既にその効果の乏しさを見抜いた市場は、この補正予算案に何ら反応しておらず、株価も引き続き9000円台割れの状態にある。

○特に公共事業については、相変わらずの従来型事業の羅列である。「都市」「環境」などの看板で化粧をしているものの、単なる看板の掛け替えであり、林道整備が温暖化対策として盛り込まれるなど自民党、霞が関の既得権益を維持する内容となっている。

○また喫緊の課題である雇用対策にしても、効果が乏しいばかりか、活用さえされていない事業の焼き直しの例が見られる。社会保障における多くの国民負担増を目前とする中で、このような小手先の対応では国民の不安感は増大するばかりであり、結果的に消費の低迷を通じ、さらなる景気の悪化を招きかねない。

○実質的な政策転換を「政策強化」と強弁し、根本が腐っていながら「葉の部分を変えただけ」と国民にうそぶく小泉総理の資質こそが、景気を一層悪化させている最大の要因であり、その下で編成された本補正予算案では経済の活性化は全く期待できない。
以上


(4)
平成15年度予算の問題点(メモ)

○小泉政権2回目の編成となった平成15年度予算は、将来に対するビジョンも、経済活性化の展望も、国民の安心感も何も無い予算となった。小泉総理は「自民党をぶっ潰す」と叫んで総理の座についたが、実際に潰そうとしているのは国民生活そのものであり、「小泉構造改革」なるものが現実にはあり得ないことが明らかとなった予算である。

○約84兆円の国債発行を決めた故小渕総理は自らを「世界一の借金王」と評したが、小泉総理も既に約73兆円の国債発行を決定し、歴代2位となっている。財政における「構造改革」など存在しないばかりか、このような予算を組んでなお経済活性化の展望を全く見いだせない小泉内閣の経済財政運営は、明らかな経済失政である。

○さらに新年度予算では、社会保険等において2兆円を上回る国民負担増を求めている。財政危機の深刻化と相俟って、国民の不安は増大する一方であり、これでは消費の低迷等により経済危機は深まるばかりである。

○高速道路問題で大騒ぎした挙げ句、新年度予算では高速道路建設費は増大するばかりか、国費投入による新たな建設スキームまで組み込まれている。この一点を見ても「小泉構造改革」は虚構であり、抵抗勢力と本気で戦うことが無いことを露呈している。就任当初掲げた「道路特定財源の一般財源化」は後退し、省別・局別の公共事業シェア、特殊法人等への支出などの既得権益は見事に守っている。

○関空救済のための着陸料引き上げ、税源移譲のビジョン無き義務教育費国庫負担金の一部地方財政への押しつけなど様々なしわ寄せは枚挙にいとまがない。新年度予算は政治理念も政策もない小泉内閣と既得権益維持や保身に汲々とする与党・霞が関という国民にとって最悪の組み合わせによる、史上最低の予算である。

以上


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