2000年1月29日 戻るホーム民主党文書目次

定数削減法案をめぐる民主党の対応について

民主党幹事長 羽田 孜
 1月27日夜、自自公3党は衆議院本会議で衆議院議員定数20削減という修正案を強行採決しました。前国会に続いて強行採決を行い議会制民主主義を踏みにじった与党3党にたいし、私たち民主党は強くこれを批判するとともに、ルールのなくなった国会での審議を拒否し、解散総選挙を求めて戦う決意を明らかにし、行動していきます。

●民主党の立場

 いうまでもなく、国会は国民を代表する、国権の最高機関です。選挙制度は議会制民主主義の土台をなすものであり、その論議は拙速であってはなりません。ましてや、議会で多数を占める与党が反対勢力の力をそぐための政略の道具に用いることは論外です。

 衆議院議員の定数削減問題に対し、民主党はその数の多寡を論議する以前に、「選挙制度は議会制民主主義の基本であるから、きちんとしたルールで手順を踏み、選ぶ側の立場で結論を出すべき問題だ」との立場から、はじめから、いつまでに決めよう、しかも通常国会の総理の施政方針演説の前までに、などと「出口」を決めずに、与野党協議をしっかり行って選挙制度のあり方を議論しようと主張してきました。

 「民間や公務員など世を挙げてのリストラに国会議員が範を示す」とのもっともらしい説明に、今の政治や政治家に対する不信感を根強く持っている皆さんはあるいは納得されるかもしれません。しかし、国民の参政権に関わる議員定数問題と雇用問題とは次元の違うもので、短絡した議論だと言わざるを得ません。さらに「国会もリストラしたのだから」と、逆に経済や企業の構造改革につながらない、安易で理不尽な首切りを後押しする言い訳にされかねないと私たちは危惧しています。


●これまでの経過

 しかし、自自公3党は、昨年の12月、与野党の選挙制度協議会の議論を勝手にうち切って、倫理・公選特別委員会で強行採決しました。伊藤衆院議長の裁定で継続審議になったものの、本会議を自由党は欠席、その夜に自自両党が「次の通常国会での冒頭処理」を2党間で勝手に決めました。

 今国会の開幕直前、伊藤衆院議長は「話し合いによる円満な解決」をあっせんしましたが、4回にわたる与野党協議の途中で与党は再び20人削減の修正案を提出し、与党のみの1時間だけの審議で前国会同様に26日の委員会で強行採決を行い、27日に野党が欠席する中で衆院本会議を開き、修正案を可決しました。

 本会議の前にも、伊藤衆院議長は、これまでのあっせんや裁定よりも強い「議長裁断」を与野党双方に示し、懸命の調整を試みました。私の長い議員生活でもこれほどまでに強硬な議長の調停は記憶がありません。しかし与党側は協議にすら参加せず、一方的にこれを拒否。逆に議長を恫喝し、伊藤議長はその圧力に屈し本会議のベルを押さざるを得ない状況に追い込まれました。このように与党が議長の権威を失なせる暴挙に暴挙を重ねた結果、国会と議会制民主主義は死んだといえます。


●自自公あって民主主義なし

 現行選挙制度の根幹を崩し、国民の参政権にかかわる重大な問題を、自民党は何故強行採決という暴挙によって押し通そうとするのでしょうか。その最大の理由は「冒頭処理」でなければ連立を解消するという自由党との関係を優先したからです。自自公連立の枠組みを維持するために、冒頭処理というスケジュールを決め、内容は一切おかまいなし、削減は20でも30でも、50でもよいという対応なのです。与党だけの勝手な都合で、議会制民主主義の基本である選挙制度が決められていいのでしょうか。

 これまでの国会の長い歴史でも、選挙制度を与党だけの賛成で押し切って決めたことは一度もありませんでした。まさに、国会も選挙制度も、いまの与党は「私物化」しているのです。

 このような「自自公あって民主主義なし」の横暴を許してはなりません。これを許せば予算であれ他の法案であれ、「まず結論ありき」では国会の審議は形骸化してしまいます。日本の国会は死んでしまいます。


●直ちに解散・総選挙を

 いまこそ野党第一党の民主党が問われています。私たちは、このようなルールのなくなった国会の審議に参加することはできません。直ちに衆議院の解散・総選挙を行うよう要求します。今何より求められていることは「定数の冒頭処理ではなく冒頭解散」です。与党は、国会を空白にしてはならないと宣伝しますが、今がまさに空白なのです。

 しかも、このような混乱を承知しながら、小渕首相はこの無茶な事態を回避する指導力も発揮せず、それどころか、「国民への約束通り、冒頭処理をして欲しい」と執行部へ指示したと伝えられています。定数削減は国民への約束ではなく、自由党への約束であったはずです。いずれにしても、自分たちのおやりになっていることがいかに常軌を逸しているか、お解りになっていないようです。

 また、与党は「この予算案を通すことが最大の景気対策であり、野党も協力すべき」などと主張していますが、もとより、与党には野党の主張や修正要求には全く耳を貸すつもりはありません。

 私たちは、「赤字国債に頼り、構造改革につながらない政府予算案は、日本をより悪い方向に導くだけ」との立場から、この予算案は通すべきではないと考えます。このことについての詳しい主張は、また改めてお伝えしていきたいと思います。

 予算の成立よりも国民の審判を仰ぐことこそ最大の緊急課題であり、自自公内閣の退陣こそが最高の景気対策です。解散・総選挙の実現と日本の政治を変えるために、みなさんも勇気を持って立ち上がり、私たちにお力をお貸しください。


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