1981年

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院内統一会派問題について

社会民主連合運営委員会

 連合政権へむけて中道政治勢力結集の必要性

一、長きにわたる自民党の一党支配に終止符をうち、「五五年体制」を打破することは、われわれに課された重要な政治課題である。そのためには、自民党に代わりうる新しい政権の受け皿を早急につくりあげなくてはならない。

二、社民連の政権構想は「社会民主主義勢力の結集を核とし、改革的保守とも提携する」というものであるが、その「道すじ」と「速度」については客観的政治情勢によって左右されるものであり、まだ確定的なことを決定する段階にはない。

三、しかしながら、現局面において、中道政治勢力の結集は、国民的多数派形成の政治的「核」となりうるものであり、社民連の指向する政権構想の重要なステップになりうると判断できる。

四、多次元社会において国民的多数派を形成するためには、多様な価値観や多彩なニーズを包含しうる政治勢力をつくりあげる必要があり、そのためには政治的スタンスをかなり広くとらなくてはならない。このことを目指すならば、短・中期的には、民主的革新と民主的保守が提携する道を模索する必要があり、このことがより広い政治的基盤をつくりあげることに通じよう。現に英国においても、保守党、労働党二党体制に不満をもつ英国民大衆の意識に応える形で、労働党の一部議員、党員が脱党して「社会民主党」を結成したが、自由党との連合が予定され、すでに有権者の四〇%の支持率をえている事実は、われわれにとって大きな教訓となるものであろう。

五、民主的革新と民主的保守の提携を可能とさせる共通の理念は次のようなものである。すなわち、より良き社会の創造が「良きものを守り、悪しきものを改め、より良き社会に発展させる」過程であるとすれば、「良きものを守り、より良きものへ改革する」という点で、民主的革新と民主的保守は一致し、より良き社会創造への車の両輪となりうる筈である。その共通の理念は平和と自由の民主主義である。

六、社民連の考える政治勢力結集の最低要件は、次のごときものである。

(1)理念――平和と自由と民主主義(自治、分権、公開、参加、公正)

(2)政策基盤――護憲、国際的軍縮を最低綱領として、各党独自政策の許容限度を一致させるため、一致点を拡大させ、相違点は相互理解の下に克服へ努力する。

(3)軍縮・平和運動の展開――軍拡や急激な右傾化に対抗しうる幅広い勢力の結集をめざす。その場合、軍拡路線と急激な右傾化に対し、不安を感じている無党派市民層と連携できる運動を重視する。

七、右のような展望は、最近急速に進み始めた労働戦線の統一の動向からも現実性をもつといえる。統一への胎動は野党再編を促し、政治的多数派形成にも連動してくるであろう。


 社民連と新自由クラブの院内統一会派派結成について

一、当面、各党の党内事情を考慮し、さらに臨時国会がさし迫っているという「時間の制約」を加味して検討するとき、中道政治勢力結集の第一段階としてまず可能なところから結集するという方針を選択せざるをえない。今回の臨時国会が“行革国会”という重要な国会であることもあわせて考慮するとき、われわれは臨時国会までに衆議院で院内統一会派をつくることが必要との判断にたち、その対象として新自由クラブを選択する。われわれは今後、通常国会にむけて中道四党の統一会派結成のためにひきつづき努力をつよめていくことにする。

二、社民連・新自由ク二党間結集を先行させる理由

(1)中道政治勢力結集が当面困難であるならば、次善の策としてまずやれるところから先行しなければ、いつまでたっても事態は決して動かない。社民連にとっては二党先行は行革臨時国会対纂であると同時に、将来の中道政治勢力桔集――国民的多数派形成を展望しうる第一歩として位置付けをしたい。

(2)保守の改革をめざして政権の党を離脱した新自由クと、革新の自己革新を求めて野党第一党と訣別した社民連とは、その成立の歴史において共通した心情的親近感があり、各レベルの個人的接触を通じて信頼関係も深いものがある。

(3)ともに五五年体制打破をめざし、すでに参議院においても「新政クラブ」という院内会派の実績がある。

(4)重要政策大綱について合意の可能性がある。

(5)両党結集は社会党支持層の一部及び自民党支持層の一部を吸収しうる可能性―都市無党派層や市民結集の可能性―国民的多数派形成の可能性を実証しうる貴重な実験であり、まさに多元社会に対応しうる市民参加型政治勢力結集の最大公約数たりうるであろう。

(6)今後とも誠意をつくして中道政治勢力結集の可能性を追求していくとともに、社会党に対しては狭い社共共闘に逆もどりしないよう社会党内の良識的改革派との連帯を維持強化してゆく。特に社会党支持層の基盤を重視する

(1982/9/12発、通達第十七号)


院内統一会派「新自由クラブ・民主連合」を結成
  中道政治勢力結集への展望をひらく

 社民連と新自由クラブとの衆議院院内統一会派「新自由クラブ・民主連合」が、九月二十一日開かれた両党合同代議士会で確認され、田英夫社民連代表、田川誠一新自由クラブ代表が共同記者会見で院内会派結成についての声明を発表した。

 社民連は昨一九八〇年十一月の党大会で承認された政治方針「新自由クラブとの院内会派結成をも模索することにし、(中略)、双方とも誠意をもって前向きに努力を続行することになった」 に基づき、昨年より新自由クラブと公式、非公式に会談を重ねてきたが「行政改革臨時国会」を前に、両党間で院内会派結成について急速に話し合いが進展した。

 七月三十日、九月十一日に開かれた社民連運営委員会は、中道政治勢力の結集、新自由クラブとの院内統一会派結成について論議の結果、次の基本方針を了承した。

 さらに新自由クラブとの会派結成にともなう細部の打ち合わせ(すり合わせ)を臨時国会までに積極的、友好的にまとめるために、江田五月副代表、楢崎弥之助書記長、阿部昭吾選対委員長を窓口として新自由クラブとの交渉をはじめた。三回にわたる会談の未「名称、声明、人事」 について合意がみられた。

 九月二十一日開かれた両党合同代議士会は、山口敏夫新自由クラブ幹事長の交渉経過説明を承認し、院内会派「新自由クラブ・民主連合」 の結成を確認した。

 席上、田社民連代表は「保守、革新のちがいはあるが、それを乗りこえて結成されたこの会派に国民のみなさんは歓迎、支持していただけると確信する。私たちがめざした政治の変革はこの延長戦で必ず実現できる」とあいさつした。

 田川新自由クラブ代表は「一旦一緒になったからには離れないのが私の心情。社民連とは思想信条も近いし会派結成は大変嬉しい。既成政治を改革しようとする初心を忘れずにやっていけば政策問題などはかなり解決できる」とあいさつ。

 代議士会終了後、田代表、田川新自由クラブ代表は共同記者会見で次のような共同声明を発表した。


  声 明

 新自由クラブと社会民主連合は、第九十五臨時国会において、衆議院院内統一会派、「新自由クラブ・民主連合」を結成し、法案審議など国会運営の面で、同一歩調をとることとなった。

 われわれには、共通する政治目標がある。

一 われわれは、結党の経緯において、ともに自・社両党から訣別し、既成政党に飽き足らない、副広い国民各層の支持と参加を求め、政治に新風を吹きこむことに、努力してきた。

 多極化する国際情勢と、多様化する国民意識からみて、観念的な保守対革新のイデオロギー対決は、すでにその意味を失っているという共通の認識をもつ。

 われわれは、ともに、五五年体制を打破し、政権交代可能な政治‥勢力の結集を目指すとともに、金権腐敗の政治、巨大な圧力集団の利益にのみ奉仕する政治を刷新する基本姿勢にたつ。

一 われわれは、日本国憲法の基本理念である、自由で公正な社会を創るという共通の目標を掲げ、分権と参加、教育の改革と充実した福祉の実現をL期す。

一 われわれは、簡素で効率的な政府を目指し、国民の納得する行財政改革をはかるとともに、増税なき財政の再建を進める。

一 われわれは、世界の平和と、アジアの安定に寄与するため、最善をつくす。

 外交努力によって、国際的緊張緩和に貢献するとともに、安易な軍拡志向と右傾化に歯止めをかける。また、非核三原則は、これを誠実に守る。

 世界の平和と自国の安全は、政治・経済・外交・防衛等、総合的安全保障政策に求める。

一 われわれは、この統一会派を、必ず立派に機能させ、国民のためには、政党もまた大同につくことができることを示す決意である。


  昭和五十六年九月二十一日

新自由クラブ・民主連合


衆議院会派「新自由クラブ・民主連合」発足にあたって(談話)

社会民主連合書記長  楢崎 弥之助

一、両党は信頼関係を基礎として、友好裡に現在の政治に対する基本姿勢の合意をみた。また基本政策についても相互の理解を深めることができた。

一、両党の衆議院における統一会派結成は、国民の多彩な価値感と多様なニーズを包含しうる政治的基盤を示したと確信する。

一、両党は今後引きつづき、この声明を「柱」として政策大綱作成の共同作業にはいる。

 一九八一年九月二十一日


中道四党首会談  中道勢力結集で一致

 社民連と新自由クラブとの院内統一会派が結成され、中道結集へ大きく前進した。これを受けて九月二十四日、国会内で公明、民社、新自ク、社民連の中道四党首会談が開かれ、中道勢力結集問題について協議した。会談には四党の書記長・幹事長も出席した。

 中道四党の党首が公式に会談したのは、佐々木民社党委員長がさる二月の同党大会で野党再編構想を呼びかけて以来初めて。

 会談では、田川新自ク、田社民連両代表が「新自由クラブ・民主連合」(新自連)を結成したいきさつを説明し、田川氏は「幅広い政治勢力の結集が必要であるとの認識には変わりなく、いつまでも二党だけの会派を持続するわけではない」と述べた。

 田氏も「二党だけで話をおわらせるつもりはない。われわれの目標はあくまでも五五年体制打破をめざす中道勢力の結集であり、そのためにいっそう努力したい」と強調した。

 これに対して竹入公明党、佐々木民社党両委員長もこの説明を了承、中道結集のため、統一会派は好影響をもたらすとの考え方から新会派に協力していくと表明、今後努力を重ねることで意見が一致した。

 具体的には四党(三会派)の書記長・幹事長レベルで緊密な連絡を取り合うことを申し合わせた。

 さらに佐々木氏は、行革国会において三会派による合同国会対策委員会の設置を提唱、これに対しては、三会派間で国会対策について随時協議していくこととなり、実質的な合同国対委の性格を持つものとして位置づけられた。

 われわれ社会民主連合は、当面する選挙を通じ、日本の政治の現状に照らして、以上のような姿勢でわが国の政治変革に取り組むことを、主権者である国民の皆さん、市民の皆さんに強く訴えたい。

 そして衆・参両院同時選挙を通じて、必ず訪れるに違いない自民党政権の崩壊に当たっては、(一)政治の浄化、(二)国民主主義の確立、(三)平和――の三点で一致できる政治勢力が広く結集して、日本の政治の責任を担うことを目ざして、各政党や市民の皆さんに呼びかけたい。

 誕生して日は浅く、勢力も小さいわが社会民主連合は、ひき続き苦難の道を歩み続けなければならないが、社民連の会員、協力会員の皆さん、社民連を支持される多くの市民の皆さんとともに、日本の政治変革の先頭に立とうではないか。 衆・参両院の選挙に勝利しよう。


全国世論調査に見る統一会派「新自連」への反応

 社会民主連合が「政治刷新」の旗印で九月二十一日に新自由クラブと結成した衆院の統一会派は、政治の新しい潮流として国会内外で確実に波紋を広げているようだ。


 きわめて高い関心度
 新会派発足後、初めて国民の反応を探った最近の「読売新聞」全国世論調査(十月二十八日付)は、早くも国民の三分の二にその存在が浸透している事実を明らかにしている。

 まず数字を見よう。同調査によると、「新自連」の結成について「知っている」人は六五%もあり、「知らない」の三〇%を大きく上回っている。

 “一強六弱”といわれるのが、残念ながらいまの政党勢力地図の実情である。しかしその“六弱”の五番目と六番目の院内会派としては、きわめて高い関心度である。

 中でも三十歳から五十歳までの働きざかりはどの年代層も「知っている」が七割前後、また、職業別にみても管理・専門職の九二%をトップに、商工・サービス業、自由業、事務・技術職、学生ではいずれも四分の三以上が「知っている」と答えている。

 それでは、「新自連」結成に対する賛否はどうか。結果は「好ましい」が二七%で、「好ましくない」の二六%とほぼ横並びながら、やや上位。ほかに無答が四六%と出ている。

 賛否の中身が与える示竣
 「好ましい」と答えた理由のうちわけは「国会で発言の場を確保するため」という四七%に続いて、「両党が伸びてほしいから」「保革対立の垣根をとり払うきっかけになるから」「野党結集は望ましいから」などが一八〜一四%である。発足後二カ月にしては、社民連の当初のねらいが国民にも納得されていると見てよかろう。

 逆に、反対の理由は「主体性を失う」三五%、「保革の政治的立場をあいまいにする」三一%、「国会対策上の安易な方便」二八%など。いってみれば、賛成論を裏返しにした答えである。

 さて、この「新自連」結成に対する賛否の中身は、社民連の今後の活動にも多くの示唆を含んでおり、慎重に分析してみる必要があろう。第一に、「新自連」を大多数が知っていても、賛否となると半数近い四六%が意見表明を避けている。

 態度保留が多いのは女性、年齢別には六十歳以上の年代、また、小・中学校卒の学歴者といったところが日立つが、特に、有権者の半分を占めている女性の比率が高いのは問題である。女性は「新自連」結成についても、「知っている」は五四%。男性の七九%に比べると、大きな開きだ。


 連合への熱い視線
 もう一つは、「好ましくない」とする意見の三分の二が、党の主体性や政治的立場をあいまいにするとの観点から問題を指摘していることである。もちろん、この答えの中には他党支持者の“意識的”な回答が含まれている。が、今後、社民連が院内会派の輪を広げ、更に政党連合へ進もうとする場合、周到な党内論議を必要とする点でもある。

 自社両党の五五年体制が国民の多様な要求や意識の変化を吸収できなくなり、時代に即応した政界再編が叫ばれて久しい。しかし、時代を先取りしなければならない野党陣営も過去のしがらみを脱し切れず、ここ二十数年、細分化するばかりだった。その野党の中で、社民連が初めて統合に向けて先陣を切ったのは勇断である。

 賛否相半ばとはいえ高い関心度――。この調査結果は、ささやかではあるが長い間待望した政界再編成の新しい芽に、国民が熱い視線を送っている姿を浮き彫りにしたものである。


1981年

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