1980年 ’80参議院選挙〜ダブル選挙

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選挙に勝利し連合の時代をつくろう “連合の八〇年代”は同時選挙から
社会民主連合代表  田 英夫

 いよいよ日本の政治を大きく変革する絶好の機会が訪れた。

 衆・参両院の同時選挙という異状な事態は、わが社会民主連合にとっては、きわめて困難な状況であることは否定できない。しかし、国民の皆さん、市民の皆さんが、主権者として、政治の“主人公”として、汚れきった自民党の政治に鉄槌をくだし、日本の政治を大きく変革する審判を下される日がやって来たのである。われわれはその“主人公”の指針に従って、日本の政治を国民の手にとりもどし、真の民主主義を確立するために、小さいながらも、先頭に立って奮闘しなければならない。

 あまりにも永く続いた自民党の単独政権は、あたかも、水がよどみ、やがてドブとなり、メタンガスをふき出し、悪臭を放つように、数々の汚職、腐敗の事件を発生してきた。ロッキード、ダグラス・グラマンと続いた巨大な汚職事件さらには宇野前代議士の買収事件、近くは浜田前代議士のバクチ事件と続発している。いまやその醜悪な姿は、嘔吐をもよおすほどといわざるをえない。

 一方、今回の解散の直接のきっかけとなった大平内閣不信任案の採決をめぐっての自民党の姿もまた、あきれて、批判の言葉すら見当らないはどのひどさであった。自民党は、もはや一つの政党として機能できなくなったのである。

 このような腐敗と分裂の自民党に、これ以上、大切な政権をゆだねておくわけにはゆかない。

 主権者である国民の皆さんは、今回の衆・参両院の同時選挙を通じて、必ずや、この自民党に対してきわめて厳しい制裁を加えられるに違いない。

 わが社会民主連合は、かねてからこの日の来ることを予測し、新しい連合の時代の到来に備えなくてはならないと主張してきた。そのことがいまや現実のものとなりつつあるのだ。

 この選挙を通じて、われわれは目の前に迫ったこの事態に、いかに対応し、どのような新しい政治をこの日本に築こうとするのかという、われわれの考えを主権者の皆さんに訴え、審判をいただこうではないか。

 日本の政治の現状から、まずわれわれ社会民主連合が取り組まねばならない課題は、「政治の浄化」である。前記のごとく、自民党によって汚されてしまった政治を浄化するとは、裏返していえば、自民党を政権から追い出すことである。同時に、いわゆる五五年体制の上に安住してきた一部野党内の腐敗した部分をも切って捨てなければならない。

 次に大切な問題は民主主義の確立である。自民党の一部や、社会党内の社会主義協会の人たち、それにつらなる勢力は、民主主義の原則からみると、常に逆の方向を指向しようとしている。個人の自由と人権の尊重、議会制民主主義の厳守といった問題について、彼らはその軽視と破壊をくわだてている。いまや日本の政治にとって何よりも大切なことは、いたずらに自分たちのイデオロギーを主張しあい、これをぶつけあって相争うことではなく、「民主主義」を守るのか守らないのか、という点から「敵と味方」を分けることである。

 第三に重要な問題は、「平和」である。いまソ連のアフガニスタン侵攻、そのソ連のあと押しを受けたべトナムのカンボジア侵攻によって、世界はキナ臭いニオイにおおわれている。隣国韓国では、国民が待望した民主化に逆行して、危険な軍政の方向がとられようとしている。われわれは、平和を脅かすソ連、べトナムの覇権主義的行為に強く抗議し、平和を求める内外の勢力と手を組んで積極的に行動しなければならない。さらに韓国の現状のように、民主主義が破壊されつつある状況に対しても、強い抗議の行動を起こさなくてはならない。

 同時に、一方でこのような世界の緊張状態を口実にして、わが国の防衛力を不必要に増強し、日本を軍事大国化しようとする動きも看過するわけにはいかない。

 われわれ社会民主連合は、当面する選挙を通じ、日本の政治の現状に照らして、以上のような姿勢でわが国の政治変革に取り組むことを、主権者である国民の皆さん、市民の皆さんに強く訴えたい。

 そして衆・参両院同時選挙を通じて、必ず訪れるに違いない自民党政権の崩壊に当たっては、
  (1) 政治の浄化
  (2) 民主主義の確立
  (3) 平 和
の三点で一致できる政治勢力が広く結集して、日本の政治の責任を担うことを目ざして、各政党や市民の皆さんに呼びかけたい。

 誕生して日は浅く、勢力も小さいわが社会民主連合は、ひき続き苦難の道を歩み続けなければならないが、社民連の会員、協力会員の皆さん、社民連を支持される多くの市民の皆さんとともに、自本の政治変革の先頭に立とうではないか。

 衆・参両院の選挙に勝利しよう。


野党はいまこそ連合政権構想を示そう

一、今回の解散・総選挙は、形式的には大平政権の不信任に端を発しているが、実質的には自民党の自己統治能力喪失に起因しており、一党支配をつづけてきた自民党全体への不信任ともいうべき事態のなかで行われている。

 自民党の党内亀裂は深く、かろうじて一つの党として選挙戦に臨んではいるが、選挙後の事態は誰しも予測できない。自民党は首班指名がいかなるものとなるかを国民に明示できず、政権ビジョンをうちだせないでいるのである。このこと自体、自民党がすでに議会制民主主義に責任をもてないことを物語っている。

二、だが他方、野党の側もまた統一された政権構想を国民に提示できておらず、積極的に政権交代を迫るという気迫を欠いている。選挙戦中盤に入りながら野党側がこのような状態にあることを残念に思う。

 飛鳥田社会党委員長の「緊急・民主主義政府」提案、竹入公明党委員長の「基本的政策の大綱試案」、佐々木民社党委員長の談話など、ボールの投げ合いに終わっている。

 社会党は、飛鳥田提案がたんなる選挙戦術でないなら、竹入委員長発言の通り、選挙期間中にも党首会談にただちに応じるべきである。

 佐々木委員長も飛鳥田提案に疑念を抱いているとしているので、それを解く努力をすべきである。

 野党第一党の社会党が、アドバルーンをあげながら、提唱後の実効ある措置をとらないというのでは、国民に対して全く無責任である。

 要するに事態は切迫しており、これまでのように、選挙中の宣伝合戦に終始しているわけにはゆかない。いまこそ自民党政権に代わる新しい連合政権を国民に示し、国民の投票行為が新政権の樹立に直接かかわるのだという形式をつくりださなくてはならない。

 このような野党側の協議が実現するよう、われわれは仲介の労をとる用意がある。

三、同時に、われわれは選挙後もなお、政権交代の運動が持続する状況をいまから想定しなくてはならない。

(1) 飛鳥田提案がホンネならば、選挙後もその提案内容を後退させないことを明言すべきだし、たとえ党内反対派から批判がでてもこれを一蹴し、党の分裂も辞さずに、これに責任をもつことを約束すべきである。これまでも選挙期間中だけの空約束が多く、国民はこのような朝令暮改に冷え切っている。この不信を払拭させなくてはにわかに信用できない。選挙期間中、万が一、党首会談が実現しなかった場合には、選挙後ただちに党首会談に応じ、党の路線が転換したことを明確にし、それに責任をもって対処すべきである。

(2) 同時に、野党側は、前述のように今回自民党自体が不信任されたのであるから、この党の分裂があればともかく、旧来の延長線上にある自民党と連立して政権をつくることはありえないことを明確にすべきである。

(3) われわれの追求しているのは「五五年体制」をつき崩すことであり、保守党もまた金権、汚職体質と闘い、リベラルな開かれた党へ脱皮することを期待している。われわれは真の社会民主主義勢力がわが国に根づくことが議会制民主主義の成熟を保証すると確信するが、同時に、右の課題達成にも力を注ぎたい。当面、われわれが新自由クラブとの選挙協力・提携をつよめていることも、この方向に役立つものと考えるからである。

(4) 中道四党は、当面する激しい流動状況に追われ、あせって判断を誤ることのないよう、相互の協議をつよめ、結束を固める必要がある。各党の主体性を堅持しつつ、協調して主体的に政治状況に対応できるよう、いまから準備しなくてはならないと考える。

 なお、連合政権を話し合うに当たってのわれわれの政策の骨子は次の通りである。

(1) 金権・腐敗政治を打破し政治倫理を確立する。

 情報公開法の制定、企業献金禁止など政治資金規制法の強化、公選法の改正で公営選挙の拡大、オンブズマン制度の導入、行政改革の断行。

(2) 国民生活の安定化

 公共料金の抑制とその情報公開、独禁法強化でヤミカルテルの禁止、物価急騰の際には生活二法の発動、年金で最低生活を保障、老人医療保険制度の新設、不公平税制の是正。

(3) 外交、防衛

 日米安保条約の非軍事化に努力し将来は友好条約へ、経済援助など積極的な平和投資、自衛隊は現状維持とし、シビリアン・コントロールを強める。

(4) エネルギー

 産業構造を省エネルギー型に転換、当面のつなぎとして石炭の見直し、ソフト・エネルギー(太陽、風力、水力、地熱、バイオマス)の開発に全力を投入。原発は当面安全管理、住民合意の前提で運転。

(5) 政権構想

 中道政治勢力中心に政権基盤をつくり、この核に諸党の結集を呼びかける。共産は除外し、ダーティ部分と教条主義的勢力も対象としない。

 一九八〇年六月十日

社会民主連合


1980年

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