1988

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リクルート疑惑の真相解明が急務 楢崎弥之助顧問に聞く

 リクルートコスモス前社長室長・松原弘氏が、楢崎代議士に贈賄工作をしていたという重大証言は、広く国民に衝撃を与えました。楢崎氏は、リクルート疑惑は典型的な構造疑惑であり、真相の解明が急務だと、国会、司法が車の両輪となって事実を明らかにすべきだと語りました。(社民連事務局長・石井紘基)

石井 楢崎顧問は、予算委員会などでリクルート疑惑はロッキード事件のような構造汚職だと追及されているわけですが……。

楢崎 今回のリクルート疑惑は、政界、官界、財界、そしてマスコミをも巻き込んだロッキード事件以上の典型的な構造疑惑です。確実に儲かる株を自分の金も使わずに特権的に入手し、莫大な売却益を得る。これはまさに「濡れ手に粟」の献金(殖産住宅事件最高裁判決)です。いままさに消費税という名の大型間接税を導入して、国民に税負担を強いようとしている竹下首相、宮沢蔵相、安倍自民党幹事長、渡辺政調会長らが現段階では秘書らを通じてとはいえ甘い汁を吸っていた。そんなことが許されるわけがない、というのが国民の感覚だと思います。

石井 東京地検への告発にあたって、政治家としての心情を伺いたいと思います。

楢崎 予算委員会での追及や、国会への資料提出の要求をしてきましたが、もはや国政調査権の限界を越えたと実感しました。強制捜査権の手に委ねざるを得ない状況と判断して、九月八日に江副浩正・リクルート前会長、池田友之・リクルートコスモス社長、松原弘・同社前社長室長の三人を贈賄罪で東京地検に告発しました。告発という最高手段に訴えることは決して好ましい方法だと思っているわけではありませんが、国会の権威を守るために個人的な心情はあえて乗り越えました。また、告発は国会の国政調査権を縛るものではなく、今後は国会と司法が車の両輪となって真相究明を進めていくことになります。

石井 国会の政治倫理綱領との関わりについてお話し下さい。

楢崎 今回、株を譲渡されたとして名前のでている国会議員は、みな「法には触れない」「秘書のやったこと」と弁明しています。同じ国会に身をおくものとして、私自身慙愧に耐えない思いで一杯です。国会ではロッキード事件の教訓から、一九八五年に「政治倫理綱領」「行為規範」を議決し、国会法も改正しています。その決議にも「政治倫理に反する事実があると疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」とあるように、疑惑をもたれた政治家自身が責任の所在を明らかにする義務があるのです。

石井 社民連本部にも、楢崎顧問の証言と同時に、たくさんの激動電話がかかっています。また、一方でテレビ放映された「隠しどり」フィルムに衝撃を受けた人も多かったようですが……。

楢崎 何の面識もなかった松原弘リクルートコスモス社長室長(当時)が、予算委員会での質疑の前日(八月四日)を初め、赤坂の議員宿舎、博多の自宅を何度も訪れ、「先生も政治活動には何かと費用がかかりましょうから」と執拗に金を受けとらせようとしたり、「先生が議員活動を続ける限り、リクルートとしては最後までご支援をしたい」などという支援申込みは、余りに異常と言うほかありません。これは、リクルート側が私を陥れる罠ではないかと疑わざるをえませんでした。

石井 密室のことですから、「金を渡した」と言われても反論するのが難しいということですね。

楢崎 そうです、身の潔白を証明する証がない。なんとかしなければ危ないと思い悩んでいたとき、たまたま取材にきた親しい記者にこのことを打ち明けたところ、「贈賄罪などは立証が難しい。疑問の余地がない証拠を残しておく必要がある。協力しましょう」ということで、その結果があのビデオになったのです。私にとってはギリギリの身を守るための正当防衛、緊急避難の措置でした。

石井 今後の院内外の真相解明への動きを教えてください。

楢崎 東京地検特捜部のがんばりを信頼しています。そして、このリクルート疑惑を徹底追及すべき本来の場所、国会では「税制問題等に関する調査特別委員会」に、江副浩正・前リクルート会長の証人喚問を実現させ、疑惑の徹底解明をはかりたい。私の真意は、うやむやになりかかっていたこの重大な事件を徹底究明するため、政治生命をかけたということです。



  リクルート疑惑全容解明について(談話)

代表 江 田 五 月

 昨日、私たち社民連の顧問である楢崎弥之助代議士は、株式会社リクルートコスモスの社長室長松原弘氏に関する贈賄罪容疑を明らかにされた。「リクルート疑惑」解明の国会審議のさなかにおける、当のリクルート側からのこのような傍若無人の非違行為に唖然とすると共に、国会の権威と信用がここまで崩壊していることを目のあたりにし、慄然たる思いである。
 リクルートコスモス社は、松原氏を辞職させ、反論を公表したが、その内容は、事実の歪曲と楢崎顧問への誹誘に終始している。同社が、同顧問の願う事態解明への協力を拒否し、疑惑の隠蔽に狂奔する意図を明らかにしたと断ぜざるを得ない。もはや本件は、楢崎顧問と松原氏との個人的関係を越え。国会とリクルートとの闘いになった。
 それなのに国会は、ここに至ってまだ、同疑惑の解明に全国会あげて取組むという態度になっていない。まことに遺憾である。
 楢崎顧問は、捜査当局であると国会であるとを問わず、今回の容疑解明に全面協力する。私たち社民連は、楢崎顧問の意図と行動を断固として支持し、全党、とりわけ野党各党が、この容疑の解明と、それを手懸りとしてリクルート疑惑の全容の解明に、あらたなる決意で取組まれることを期待する。
以 上
(1988年9月6日)

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