1987年9月20日

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’87全国研修会 代表挨拶(要旨)

江 田 五 月

 最近の歩みを振り返って
 昨年のダブル選挙後、私たちは、社会、民社、社民連はもともと同根なのだから、この際、院内会派を一つにすべきだと提唱しました。しかし、これは出来ず、結局他党、とりわけ民社党からの強い要請を受けて、私たちは捨て身の決断で自らを二分し、社会、民社と二分統一会派を作りました。

 私はこの異例の決断は好結果を生んで来ていると思います。この際、関係各党の友情に深く感謝いたします。

 そして、何より大きな成果は、野党の結束が大きく前進したことです。売上税国会の顛末は、皆さんご承知のとおりです。これからの私たちの使命は、売上税国会の経験をどうやって野党再編成にまで発展させるかです。

 社、民の和解
 社会民主主義又は民主社会主義は、今や、世界の大潮流になったと言えます。問題は、この大きな潮流を、どうやって現実の政治の世界に顕在化させるかです。

 今、私心や党派心を捨て、虚心に政治の流れを考えれば、同じ過去から出発し、同じ未来を目指す社会、民社、社民連が、過去のいきさつを乗り超えて歴史的和解をするときが来ているとの思いに至るはずです。

 新党を創ろう
 資本主義は社会主義を採り入れることを学び、社会主義も今、資本主義に大いに学んでいます。この二つの体制が、それぞれ自己変革を遂げ、そして新しい付き合い方を創造して行くことが現代の課題です。

 わが日本は、まずは今の基本的社会制度を前提としながら、その上にたって自己変革と新しい世界の創造という現代の課題に挑戦しなければなりません。

 この新しい課題は、果して自民党に任せられるでしょうか。キャッチアップの時代が過ぎて、自民党はもう役割を終わったと言うべきです。

 社会、民社の和解により生まれる新しい政治勢力こそが、この新しい課題に挑戦しなければなりませんが、問題はもっと複雑です。

 新しい酒は、古い皮袋に入れることはできません。これまでの政党がいくら脱皮し連合しても、しよせん国民からは、新しい課題を担うにふさわしい政党とは認められないのです。

 また、新しい政治勢力には新しい血が必要です。それは、これまでの政党に参加してない、しかし政治を通じて自分たちの手で未来を創っていくことを求める各界各層の国民です。

 全民労連(「連合」) の誕生は、野党再編成に大きなインパクトを与えるでしょう。もし、野党が今までのとおりバラバラで、足の引っ張り合いばかりに終始するなら、「連合」は傘下の労働者の要求を実現するため、自民党を頼る他なくなります。

 こうして自民党が「総合政党」となると、日本の議会制民主主義は名ばかりで、再び日本は世界の孤児、世界の撹乱要因となってしまいます。八六体制は非常に危険です。この道を防ぐためにも、新党の結成を急がなければなりません。

 新党の性格
 新党は、まず国民の党でなければなりません。

 次に新党は、生活の党でなければなりません。政治の課題も政党の活動も、生活者が現に生活する場に求めなければなりません。

 新党は、自由と創造の党でなければなりません。参加した各人の自由な創意工夫を最大限生かすことが大切です。

 新党は、改革の党でなければなりません。例えば、土地、教育、農業等、従来の枠組みを大きく変えなければならない課題が、今の日本には山積しています。

 最後に新党は、清潔な党でなければなりません。きれいな選挙によって初めて良い政治が生まれます。これらのことは、これから参加して来るみんなで考えて行く課題です。

 新党の目指すもの
 それでは新党は、どのような日本を創ろうとするのでしょうか。

 まず、自由世界の一員として、平和な世界秩序の創造に役割を果たさなければなりません。現在の世界は複雑に絡み合った東西の軍事緊張関係で成り立つ面があることを無視せず、自由世界の一員としての役割を分担しますが、軍事対立の一方に加担するのでなく、戦争のない、南北の関係でもすべての国が対等に協力する世界を創るために、大きな役割を果たします。

 次に、混合経済体制のもので豊かさの持続と生活の質の転換を目指します。社会の構成員がお互いに助け合うことに喜びを見出し得るような「福祉社会」を目指します。次の時代に引き継ぐべき自然や文化遺産を大切にした「共生社会」を目指します。

 最後に、議会制民主主義をどこまでも大切にし、異なった主張を尊重してこれに席を譲る可能性を最大限保障します。

 新党結成のプログラム
 これまで述べたことでご理解いただけると思いますが、新党結成は急がなければなりません。

 私は、「連合」結成から次の国政選挙までの期間を含むこの一両年が最も重要な時期だと思います。そこで、この間にまず、社会、民社の歴史的和解を実現しなければなりません。そして、それを第一段階として広く市民参加を得た新党を結成し、次の国政選挙はこの新党で臨むべきです。

 私は、これまで公明党のことについては、ほとんど言及しませんでした。それは、この党を無視しているからでなく、現在はまだ、同根の社、民、社民連の融合が先行すべき段階だからです。公明党との結集がなければ、政権は展望できません。

 江田三郎の志を受け継いだ社民連は、今、その結党の理想を実現する最も重要な時期に差しかかっています。

 八六体制を豪語する自民党の軍門に下り、巨大技術と管理社会の中で自己を失ったさまよえる群衆が地球の破滅に進んで行くのを拱手傍観するのではなく、新しい課題を担う新しい政党を創り、緑の地球の上に再び大きな夢と可能性を持つ人間の社会をよみがえらせようではありませんか。


1987年

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