1986年5月6日

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一九八六年四月の提案  衆・参議院選挙政策
政策委員長 菅 直人

  三つの目標

 国際社会に共生し、平和に貫献する
 世界のGNPの11%を占める経済大国日本の行動は好むと好まざるとに関わらず、世界の国々に大きな影響を与えている。日本はいまこそ、軍事面での自制と経済面での相応の責任と負担を自らに課し、国際的に覇権型でないソフトな貢献を果す国をめざすべきである。

 具体的には経済政策として、国内的には、一層の市場解放を進めるとともに、減税、労働時間短縮、社会資本の充実などで内需主導型の経済成長を図り、対外的には、海外直接投資、開発途上国への技術移転などで国際的な水平分業をめざす。

 また世界平和に貢献するため非核三原則、防衛費のGNP1%枠、武器・軍事技術の輸出禁止など、平和憲法に基づく政策の維持はもちろん、「マルコス疑惑」に見られるようなODA政策の問題点を見直し、国連など国際機関へ、人材派遣、分担金増額、機関誘致などで貢献することも必要。


 人々の連帯で柔らかな福祉社会を建設する
 急速な高齢化の中で、福祉、社会保障のあり方が問われている。日本がこれから目標とすべき福祉社会とは、人々が年齢、性、障害の有無を問わず、個人の能力が自由に発揮できる包容力のある社会である。

 それは「早く来すぎた未来」といわれる高度技術社会の中で、人間であることの意味が問われていること。もう一つは国民の間に、もうこれ以上の豊かさや便利さをむやみに求めるよりも、劣悪な環境や競争社会のいらだちから逃れ、社会的な富の分配の公正さと、生活の質の向上を求める声が高まっているからである。

 また、これからは福祉を総合的にとらえ、単に年金、医療の整備だけではなく、施設の充実、専門職員の確保、ホームヘルパーなどの社会サービスの充実、住宅・生活環境の改善まで、福祉水準を統合的に高めることが重要である。

 医療については、治療偏重の現状を改め、予防、治療、リハビリの包括的体制を築かなければならない。さらに、いまは財政的理由だけから給付水準を切り下げている年金についても、総合的福祉社会づくりの中から、給付と負担のバランスについて国民的コンセンサスを生まなければならない。


 市民派政治勢力を結集する
 最後の目標は、第一、第二の課題を実現するために、官僚の政策技術型の発想、圧力団体の要求を超える構想力、問題発見能力、政策立案能力を兼ね備えた市民政治勢力結集を創りあげることが必要。

 いま、日本の市民主義は抵抗=要求から対案提起型へスタイルを変えつつある。また不毛なイデオロギー政治や利益誘導型政治を離れ、生活者感覚を政治に持ち込むライブラリーポリティクスを求める人々が増え、さよざまなネットワークが編まれつつある。

 市民派政治勢力はこういう変貌しつつある日本の市民主義を吸収し、議会政治を活性化し、日本の政権交替を促すことを目標とする。


  当面の重点政策


 不公平税制の是正と叫税阻止
 税制改革が正念場を迎えつつある。我々は一貫して主張し続けているサラリーマンを中心とした大幅所得税減税を実現し、公平の観点から所得税体系を抜本的に見直す。
 また、国民負担を増大させる大型間接税の導入阻止に全力をあげる。


 衆議院・定数の抜本是正
 「一票の平等の前には、一議員の政治生命など、羽よりも軽い」とは、国勢調査ごとに自動的定数是正が行われる米国下院議員の言葉である。
 我々は今国会でまず格差を三倍以内とする暫定案を成立させ、一・五倍以内、自動的是正の行われるような抜本制度是正への道を開く。


 社会資本の充実
 本格的な高齢化を前に、わが国は次代に向けた社会資本の充実を図らなければならない。そのために、現在の縮小均衡型の財政、経済政策を打ち切り、建設国債の弾力発行を含む積極経済路線への転換を図る。
 また東京湾横断道路に代表される一点豪華主義の投資のあり万を見直し、住宅、環境、防災、下水道など生活関連の投資拡大に努める。


 環境の保全
 緑を中心とした環境保全は、国内問題であると同時に、「宇宙船地球号」の課題でもある。我々は都市の緑の保護、森林資源の確保を図るとともに、国際協同研究などを進め、地球規模の環境保全に努めなければならない。
 また、環境の保全は我々の生活のあり様にも関連する。合成洗剤、食品添加物、有機農法などの問題にも積極的に取り組み、リサイクル社会をめざす。


 分権による行政改革の推進
 硬直化した行政機構のムダを省き、住民本位の行政を行うためには、思い切った地方分権しか方法はない。我々は権限と財源の思い切った自治体委譲を進め、不要不急な補助金の撤廃に努力する。
 また国鉄の民営化、省庁・特殊法人の統廃合など根本的な制度改革をめざす。


 情報公開による民主主義の発展
 国民が主権を行使する際、最も大切なことは、行政情報が全ての国民に等しく知らされ、国民が自らの価値基準に基づいて正しい判断ができることです。
 そのためには情報公開の制度の確立がぜひ必要である。
 私たち社会民主連合は、山形県や岐阜県などで「情報公開条例」の運動を展開し、実際に制度をかちとってきました。国会においても、従来からの野党共闘を強め「情報公開法」制定のために全力を尽くします。
 また同時に「プライバシー保護」の制度を確立し、個人の人権が損なわれないように努力します。


  補 足

 中曽根内閣の経済政策は破綻をきたし、その大きな誤りが明確になった。参院選では、この点を強調してたたかってゆく。
 今回のチェルノブイリ原発事故を教訓にして、エネルギー政策を再考する。同時に原発の現状は認めつつも、クリーンでもっと小規模エネルギー開発の重視を強調する。


1986年

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