1983年11月 衆議院総選挙(12/18投票)

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総選挙に当たり国民へのアピール 
中曽根内閣の五つの争点かくし

社会民主連合

 中曽根内閣は、レーガン米大統領との「日の出山荘」会談、田中角栄元首相との会談など過剰な政治演出で人気を取ろうとしていますが、その陰に次のような重大な争点かくしが目論まれています。

1、「悪法改悪」かくし
 改憲の歌まで作った中曽根首相の本心はいまも変わっておりません。自民党の安定多数が続くようだと、本音(憲法改悪)を実行しようとするでしょう。だから、今度の選挙は重要なのです。この前の衆参ダブル選挙で、自民党が圧勝してから、わが国の政治はメッキリ右の方に傾いてきてしまいました。この傾向が続くとなると、改憲論者中曽根氏が手腕を発揮するということになりかねません。

 私たちは今度の総選挙で争われる重大な政治テーマに「護憲か、改憲か」という大きな課題が潜んでいることを国民の皆さんに訴えます。


2、「田中角栄議員の辞職」かくし
 中曽根内閣は、ロッキード裁判一審判決で有罪となった刑事被告人、田中角栄を辞職させるというケジメをつけられませんでした。密室での中曽根・田中会談という全くわけのわからない芝居を国民の皆さんどうお考えですか。

 私たちは、田中議員の辞職とは、たんなる個人の道義的問題にとどまらず、わが国の政治を浄化できるかどうか、政治の倫理を確立できるか否かの分かれめになると判断します。今度の選挙で争われるのは、「刑事犯罪者田中角栄は議員を辞めよ」という国民の審判です。総選挙後の国会に、私たちはもう一度「田中辞職勧告決議案」を提出致します。もしも、この選挙で自民党が勝利するようなことがあれば、政治浄化の道は一層遠退いてしまいます。

 国民の皆さん、金権腐敗の政治にピリオドを打ち、政治浄化のために奮闘する私たちに力をかしてください。


3、「軍備拡張」かくし
 今年はじめ、訪米した中曽根首相は、「日本は不沈空母」「シーレーンを守る」という勇ましい発言をくりかえしました。その後、国民の人気が一挙に落ちたために、ややソフト・ムードに切り変えていますが、本心は全く変わっていません。いまのまま行くと、来年度には軍事費はGNPの一%を超すことは必至です。武器輸出の禁止や非核三原則の堅持というような国民大多数の願いも、次つぎに崩されてしまいかねない勢いです。

 このような軍備拡大の姿が来年春以降には国民の目の前にはっきりしてくることでしょう。だからこそ、来年度の軍拡予算を組む前に今度の選挙となったのです。

 国民の皆さん、ここが今度の選挙の重大なポイントです。中曽根内閣は、ホンネをかくして総選挙を行い、改選後に国民に人気のない政策を“一瀉千里”にやってしまおうというのです。

 私たちは国民の皆さんが、このかくされた部分を正しく見抜いて、「軍縮か、軍拡か」の選択に誤りない判断を下されることを訴えます。


4、「増税」かくし
 中曽根内閣は、六年間放置してきた所得税の課税最低限をようやく引き上げることにしました。これは過去六年間行われてきた勤労者、サラリーマンに対する「事実上の増税」を止めたもので、減税とはいえません。

 この遅すぎた措置も束の間、来年度は大幅な増税が計画されています。すでに政府の税制調査会は、“物品税の課税対象を拡大する”ほか、酒税、自動車税、エネルギー関係税などの一斉引き上げを答申しています。来年は増税の年になることは疑いありません。

 だからこそ、中曽根首相は手の内が見えてしまう前に総選挙をやってしまおうというのです。これは増税かくしの選挙といってよいでしょう。

 国民の皆さん、今度の選挙では「減税」をとるか、「増税」をとるかが真の争点です。社民連は減税に全力を傾注します。


5、「福祉の切り捨て」かくし
 中曽根は行政改革の名をかりて、福祉の切り捨てを行おうとしています。
 私たちも、行政改革には大賛成です。大きくなりすぎた官僚機構を縮小し、ムダを省くことによって「増税なき財政再建」をすることはいま切実な課題です。しかし、年金、医療など福祉関係の予算を削ることは本末転倒というべきです。

 中曽根内閣は中途半端な行政改革しかやろうとしていません。そこで、財政のしわよせを、弱い者いじめの福祉切り捨てにかけようというのです。

 私たちはこういう政策には反対です。年金でシビルミニマム(国民の生活できる条件)を確保し、老人や身体障害者が安心して暮らせる福祉社会をつくって行くべきだと思います。福祉の切り捨てを許さず、福祉の拡大に全力を注いでいるのが社民連です。


総選挙政策


 一、汚職の根絶と政治倫理の確立

 刑事犯罪人が、事実上、わが国の政治を動かしているという“異常事態”は国民の政治不信をいやが上にも高めている。

 われわれは、一審で有罪判決のでた田中角栄の議員辞任を強く求めると同時に、政治家の汚職を根絶するため次のような措置をただちに実現することを要求する。このような諸措置によって政界を浄化し、政治倫理を確立しなくては、国民の政治不信を払拭することはできないからである。

(1) 「政治資金規正法」 の強化と「公職選挙法」 の改正
 金のかかる選挙を止めさせ、“金が政治を動かす”という状況を無くするためには、まず「政治資金規正法」を抜本的に改革しなくてはならない。このためには、企業献金を一切止めさせ、政治献金は個人からのもの(五十万円以下)に限定する必要がある。また「公職選挙法」を改正し、公営選挙を飛躍的に拡大し、金のかかる選挙を止めさせなくてはならない。

(2) 国会における諸改革
 公務員の守秘義務を認めるなど抜け穴のある現在の「議院証言法」をより強力なものに改める。
 また、懲罰委員会を政治倫理委員会に改組して議員の倫理確立に万全を期す。国会議員が有権者の負託をうけた役職であるならば、公人の倫理は、一層きびしく問われるのは当然である。したがって改組された倫理委員会は院外における議員の行動も検討の対象とし、一審で有罪判決のでた者はただちに議員を辞めるルールを確立する。

(3) 構造汚職の再発防止のためのその他の措置
 アメリカのSEC(証券取引委員会)に匹敵する行政機関を設置し、取引きの公開を期す。また、会計検査院の権限拡大により、不正な取引や資金の流れの不透明な部分をなくする。

(4) 政治倫理法の制定
 政治家の資産・収入・献金の公開を義務づける「政治倫理法」を制定し、政治汚職を積極的に防止する法制度を確立する(政治家には上級公務員も含めることとする)。


 二、反核・軍縮の積極的外交を

 米ソの核軍拡競争は戦後最大の規模に達し、軍事的緊張も各所で高まっている。とくに、ソ連のSS20の配備と西∃ーロッパヘのアメリカの戦域核ミサイル配備は、激しい政治的緊張をひき起こしており、核をめぐる情勢はかつてない鋭いものとなっている。

 こうした状況を反映して、アジアにおいてもソ連のSS20配備、アメリカ第七艦隊の日本寄港や日本海での大規模な軍事演習(チーム・スピリット)など、軍事緊張も高まっている。

 ソ連は新型SIBM搭載の原潜をオホーツク海に配備し、核軍備を一挙に強めた。対抗するアメリカは、核巡航ミサイル(トマホーク)を第七艦隊に搭載して日本寄港をうかがっている。大韓航空機撃墜事件は、このような極東の緊迫した情勢抜きには考えられない事件であった。

 中曽根内閣は、このような緊迫した情勢のなかで、「三海峡封鎖」を主張し、「不沈空母論」を展開しているのであり、一般論としての日米軍事協力とは違った、きわめて危険な外交姿勢といわなくてはならない。

 われわれは、このように特殊異常な情況を踏まえて次のような当面の外交防衛政策を提唱する。

(1) 反核・軍縮の外交を積極的に展開し、米ソに核軍縮交渉を迫る。西ドイツ議会の戦域核ミサイル配備決定でINF(中距離核戦力)制限交渉は行きづまりとなっているが、これを再開し、核軍縮交渉の早期実現を迫る。

(2) 極東においてソ連との間に信頼醸成措置(CBM)をとり決め、相互に情報を通報し合う(軍事演習の場合、その目的、規模、期間、場所などを通報し合う)。

(3) 防衛予算をGNPの一%以内に抑えて、武器輸出禁止の三原則を守る。シビリアン・コントロールを強め、専守防衛に徹する。

(4) 日ソ平和条約の締結と北方領土問題の解決。


  三、増税反対と不公平税制の改革

 政府の税制調査会は、“物品税の課税対象を拡大する”ことを答申したほか、酒税、自動車税、エネルギー関係税などの一斉引き上げを答申している。これによって、総選挙後に編成される来年度予算では大幅増税が確定的となってきた。

 増税なき行政改革のスローガンはいまや完全にホゴになろうとしている。政府が人気とりに行った僅かばかりの所得減税は完全に帳消しとなり、国民の税負担は一挙に増大することになろう。

 われわれはこうした情勢を見通して次のような態度を貫く決心である。

(1) 中曽根内閣の増税かくしを暴き、物品税をはじめとする増税に断固反対する。

(2) 所得税の課税最低限を毎年見直し、勤労者への事実上の増税を食い止める。

(3) 医師優遇税制など不公平税制を抜本的に改正し、税の公正化をはかる。

(4) 大型間接税の導入には絶対反対する。


  四、行財政の抜本的改革

 臨調答申を実行することは中曽根内閣に課せられた義務であるが、政府は官僚の総抵抗にあって、行政改革を行う意志を喪失してしまっている。いままでに提出された政府の行革案は、国鉄再建法を除いて見るべきものがなに一つない。臨調答申をたんなるセレモニーに終わらせず、真の行政改革を行わせるためには、むしろこれから本格的な改革案をつくりださなくてはならない。

 われわれは以下のような改革を要求する。

(1) 中央省庁のムダを省き、機構・規模を大幅に縮小する。

(2) 不要化し、現在の諸条件に照応しなくなった地方出先機関は原則として全廃する。

(3) 多くの許認可事務や権限を地方に移譲し、徹底した分権化を推進する。

(4) 特殊法人の新設を原則として禁止すると共に、その大部分を統廃合し、整理する。高級官僚の「渡り鳥」や天下りを止めさせ、経費のムダ使いや浪費を止めさせる。

(5) 補助金行政の全面的見直しと削減を強力に推進する∵不要不急補助金の廃止、性格の類似した重複補助金の統合化、補助金のメニュー化などを行い、その総額を当面二〇%削減する。

(6) 三K問題(国鉄、食管、健保)の抜本的改革を行う。とくに医療費に関しては薬価基準の改正、医療報酬制度の改革により医療費総額の抑制を行う。


  五、教育の抜本的改革

(1) 六・三・三・四学制を見直し、今日の社会的状況に適したゆとりある学制に切り変えることにする。終戦直後に作られたこの学制は、その後の高度成長による社会の変化や文化的状況の変化によってかなり現状に合わなくなってきている。そこで、今日の状況に適する学制を至急つくりあげる必要に迫られていると判断される。
 新しい学制をつくるに当たって重要なことは画一的な進学コースに代わって、各自の個性を伸ばせるような多様な進学コースのメニューをつくり、無理なく進学できるようにすることが基本である。

(2) 偏差値中心の受験制度を廃止する。能力評価は絶対値で行われるのが基本であり、競争主義の導入は歪んだ教育の原因となり、非行や校内暴力の遠因ともなるものである。

(3) 義務教育のカリキュラムを抜本的に改正し、今日の状況に見合ったものに改める。

(4) 学校教育にボランティア体験の導入をはかる。

(5) 社会人や高齢者に大学を開放し、生涯教育を充実する。

社会民主連合


1983年

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