市民選挙のノウハウ はじめに

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私は1979年から1982年の菅直人事務所事務局長時代に、79年の衆議院選挙(落選)と80年の衆議院選挙(当選)の菅直人選対の事務局長をやりました。そこでの体験などをもとにして、のちに「市民選挙のノウハウ」というブックレットが菅グループ(市民情報センター)から“出版”されました。

「カンパとボランティア」をキーワードとする「市民選挙のノウハウ」は20年前のものですが、いまなお生き続けています。それでもIT革命の時代の到来で、大改訂期をむかえたようです。「市民選挙のノウハウ」のミレニアムバージョンで、「市民政治」の実現をめざしたいと思います。

江田事務所 湯川憲比古


●市民選挙の大きなうねり

カンパとボランティアによる選挙,草の根運動型の選挙の実践が,各地で見られるようになってきています。選挙運動のスタイルはマチマチですが,共通していることは,市民が自分たちで候補者を立て,自分たちの力で選挙運動を行なっていることてす。

近年,生活のあり方について関心が高まっています。この問題を掘り下げていくと,私たちの生活が政治と密接につながっていることに気づきます。そして,ただ待っているだけでは政治は変わらないという事実にも気づきはじめたのてす。幸いにも,私たちは“選挙”の権利を持っています。それには,投票する権利と立候補する権利の両方が含まれます。そこで,市民が投票権のみならず,自らの手で立候補の権利を行使しようと立ち上がった運動が,“市民選挙”と呼ばれているものなのです。

●選挙は知恵くらべだ

長らく私たちは,選挙は選挙プロがやるものだ,と思ってきました。確かに,既成の政党組織,大きな組織にのった選挙には,それぞれの流儀やしきたりがあって,それなりの選挙プロがいるかも知れません。しかし,私たちが何度か市民選挙を体験してみて気づいたことは,選挙にプロは存在せず,創意・工夫の知恵くらべだということです。多くの人が意見と知恵を出し合い,そのなかから自分たちで出来る事を実行していくことが大切なのです。

●市民選挙に原則はない

知恵の出し方と実践の仕方によって,市民選挙にはさまざまなスタイルが生じてきます。共通していることは,自分たちの主張を持ち,カンパとボランティアによって運動していくということだけてす。ですから,“これが市民選挙のやり方だ”というものは,なかなかひとつにまとめられるものではありません。

しかし,選挙には公職選挙法が存在しており,選挙活動として実行できることには,いろいろな規制があります。したがって,創意・工夫の仕方にも一定の制約が加えられるのは,やむを得ません。そこで,市民選挙を実践するに際し,どのような事を検討し,何を準備し,どういう順序で実施していったら良いか,ということを簡単にまとめてみました。

●マニュアルの使い方

このマニュアルは,各頂目ごとに基本的な考え方と,その具体化のポイントを整理したものです。ここで取り上げた事を全て実行する必要はありませんし,内容についてもこの通りすべきだということではありません。

選挙のスタイルは,地域によって,そして候補者の性格,運動グループのメンバー構成などによって異なるものです。また,時世の波にも大きく左右されます。

このマニュアルを参考材料とされ,さらに討論を重ね,より個性的で,素晴らしい市民選挙運動が実践されていくことを願ってやみません。

     『市民選挙のノウハウ』制作プロジェクト


●改定版の発行にあたって

私たちが市民選挙・市民政治ということを言い出してから、ほぼ10年。これまでに、全国各地で市民選挙が実践され、多くの市民派議員が誕生しています。すでに、“普通の人々”が選挙をやることに対する違和感はかなり薄らいだといえるでしょう。しかし初めて選挙をするとなると、どのように組み立てていったらよいか、なかなか具体的な計画がつくりにくいものです。とくに市民選挙はそれぞれ持っている要素が異なりますし、せっかくの経験を伝えあうのがむずかしくなります。

そこで何とか選挙の経験を共有化できないか、と考えたのが、隠れたロングセラー『市民選挙のノウハウ』を作成したきっかけでした。しかしロングセラー故に在庫もなくなり、また、選挙法も一部改正されましたので、この度、改訂版を発行することにしました。

現在の公職選挙法の基本は立候補する人と投票する人をはじめから“別な人種”と想定して成り立っています。こうしたおかしさを普通の市民がひょいっとのりこえる、その実践が市民選挙の真髄だと思っています。市民選挙のノウハウでぜひ『勝って』ください。


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