1993/11 No.70 ホーム主張目次たより目次前へ次へ

海江田万里氏・福岡政行氏招き
シンポジウムとパーティー開催

 10月16日、岡山プラザホテルで江田五月会主催のシンポジウムとパーティーが開催された。 この催しは、突然の衆議院解散・総選挙で延期されていた7月10日開催予定のシンポジウム・パーティーの「仕切直し」である。 シンポジウムの会場では、650の椅子はすべて埋まり、立ち見の参加者も約200人、さらに会場に入りきれない200人以上の人たちが、ロビーでモニターを注視する。

 午後4時。大亀幸雄・岡山社民連書記長の司会でシンポジウムがスタート。2時間にわたり、密度の濃い討論が繰り広げられた。引き続き午後6時30分から行われたパーティーにも、これまでの江田五月会、岡山県社民連主催のパーティーをはるかに上回る1500人もの参加者が詰めかけ、連立政権と江田科学技術庁長官への期待の高さがうかがわれた。

1500人がつめかけパーティーは大盛況=プラザホテルにて(撮影:柴田清美さん)

 なお、パーティーで祝辞をいただいた来賓は以下のとおり。【順不同・敬称略】海江田万里・衆議院議員(日本新党を代表して)/河合昭・岡山県副知事(知事代理)/大橋信之・備前市長(岡山県市長会を代表して)/藤本道生・和気町長(岡山県町村長会を代表して)/森暢子・参議院議員(社会党岡山県本部を代表して)/日南香・公明党岡山県本部書記長/舛田貞三・民社党岡山県連合会執行委員長/森本徹磨・日本労働組合総連合会岡山県連合会会長/石田美栄・衆議院議員/秋山長造・元参議院副議長

お詫びとお礼

 ご多忙の中、シンポジウムとパーティーにご参加下さった皆様、本当にありがとうございました。シンポジウム会場に入れずお帰りになった方々数おられたようです。まことに申し訳ありませんでした。
 また、すばらしい音楽でパーティー会場のムードを盛り上げてくださった「ザ・スウィングビーツ」の皆さんに、心より御礼申し上げます。

 江田五月会事務局長  橘 民義

 

シンポジウム 新政権の課題と政界再編の行方

司会・大亀幸雄氏からの問題提起

 (1)細川内閣の性格は? 暫定政権なのかどうか。前政権から引き継ぐものは何か。また引き継がないものは何か。

 (2)政界再編・新党結成の見通しについて。どういう新党が求められるのか。具体的に述べてほしい。

 (3)不況対策について。所得税減税をするのかどうか。短期赤字国債を財源にするのか。消費税の見直しをするのか。

 この3つに焦点を絞って討論したい。

江田五月氏の第一回発言要旨

歴史的意義持つ細川政権。本格政権めざす中で政界再編も進行。

 細川首相は特別国会での所信表明演説の中で「この内閣は単なる歴史の通過点ではない」という意味のことを述べている。細川政権の誕生は、日本の政治のおける新しい歴史の始まりを意味する、と私も思う。

 自民党政権によって政治が腐りきったことに、国民はとことん嫌気がさした。そして非自民政権を選んだ。細川内閣の、自民党歴代内閣では到底考えられない70%を越す高支持率は、ホソカワ氏自身の政治スタイル、スマートなイメージに対する好感のあらわれという面も大だが、根本的には、国民が今の政府を「自分達が選んだ政府」と感じていることの証左だと思われる。

 私は選挙中、「本当の民主主義をスタートさせよう」と訴え続けてきた。民主主義とは何か。国民が自らの1票で政府を作るという事だ。新しい民主主義が今スタートした。そういう意味で細川内閣は、大きな歴史的指名を背負った内閣だ。

 細川政権は「政治改革政権」と言われる。政治改革が最重要課題であることは言うまでもないが、それだけを行うのではない。努力して本格政権にしていかなければならない。そのためには8党派が政権を担当しながら融合し、保革を乗り越えた新党に収斂していくことが望ましい。

海江田万里氏(衆議院議員・日本新党)の第一回発言要旨

最低2年は政権担当し、連立内閣の特色出した予算作るべき。

 細川政権の「寿命」についてだが、私は最低2年は保たせたい、保たせる努力をすべきだと思う。

 政府の一番大切な仕事は予算編成だ。生産者ではなく生活者優先の予算を作ることが新政権の務めだ。現在施行の平成5年度予算は100%自民党政府が作ったものだ。平成6年度(来年度)予算も、すでに自民党によって骨格が作られているため、新政権らしさをフルに発揮することは難しい。新政権がゼロから組めるのは、平成7年度予算からだ。その作業が来年4月に始まる。その予算を成立させ執行するためには、最低2年必要という事になる。

 生活者優先。そして21世紀の高齢化社会のための布石となる予算を作ることができれば、国民に政権交代・新政権の意義を十分納得してもらえるはずだ。

 景気に関しては、連立政権としてもいろいろと手を打っているし今後も努力する。ただ、来年減税、再来年消費税アップという短絡的な対応では根本的な解決にはならない。経済のしくみそのものを、生産者優先から生活者優先へと大きく変革していく必要がある。

福岡政行氏(白鴎大学教授・政治学)の第一回発言要旨

年内解散1〜2%だがある。自・社両党の分裂は時間の問題。

 細川政権は来年秋まで持つだろう。政治改革関連法案もおそらく成立するだろう―。私はつい数日前までそう思っていた。

 しかしここにきて、少し事情が変わってきた。最大の理由はコメの関税化だ。関税化受け入れは社会党がついていけないのではないか。これにより、連立与党内にきしみが生じることになる。さらに消費税の税率アップというハードルが加わる。政治改革という最初のハードルは越えられても、コメ、税制と続けざまにハードルを設定されたら細川政権は持たず、年内解散と言うこともあり得る。もっとも1〜2%の可能性ではあるが。

 一方、自民党は再分裂の可能性大である。事実、新政党は「一本釣り」を進めている。連立政権が来年秋まで続けば、自民党はガタガタになるかもしれない。

 それ以上に、社会党の分裂も不可避だ。今月(10月)中に「護憲新党」の動きがでるだろう。新政党と公明党の「新・新党」結成は射程距離に入った。

 こうした状況の中で次の総選挙が行われると、自民党は130〜140、新政党と公明党の新・新党も130以上、日本新党と新党さきがけが60〜70、社会党は50程度となり、細川首相の言う「ゆるやかな多党制」が実現する。

 次にゼネコン疑惑だが、これは中央政界に波及する。自民党だけでなく連立与党からも渦中の人がでるかも知れない。

 最後に連立与党に対する注文だが、軍縮を行うべきだ。次の予算で防衛費を減額し、それを戦後補償に充てれば、支持率はさらに高まるはずだ。

江田氏の補足説明要旨

変革前提に基本政策継承。公開性高めオープンな政治めざす。

 日本のようにあらゆる事象が複雑に関連し合っている社会では、革命的な手法では問題は解決しない。時間をかけてゆっくりと変革するべきだ。

 連立8党派は、自民党政権の基本政策ではなく、自衛他愛や安保など国の基本政策を引き継ぐことで合意している。私の所管である科学技術政策、特に原発政策に関しても、「核燃料サイクル(ウラン燃料を使用して生じたプルトニウムを再利用する)」という基本方針は引き継ぐことになる。

 ただ、政・官・財の癒着の構造を踏襲することはあり得ない。利権政治はぜったいに行わないということだ。

 「寄らしむべし、知らしむべからず」という、旧来の政治スタイルは大胆に変革していく。情報をできるだけオープンにし、さまざまな立場の人々の意見を聞くなど、新しい政治の手法で臨みたい。

 引き継がなければ変えられない、ということを理解してほしい。

海江田氏の補足説明要旨

保守・革新を越えた新しい理念のもとで新しい政党の結成を。

 まず、新党さきがけと日本新党が一つになることが大切と考える。そうなると求心力が生まれる。自民党の良質な部分、社会党の良質な部分を引き寄せる税が生まれる。

 一本釣りと言った手法ではなく、まずきちんと理念を提示し、その理念のもとに結集するというやりかたで、新党を作っていきたい。

福岡氏の補足説明要旨

政治改革以外にも課題山積。時代の声聞き行動で理念示すとき。

 時代の声をより的確にキャッチした政党が中心となり、時代の超えに答える形で理念を提示してゆくのだろう。

 政治改革がすべてではない。コメの市場開放、税制、あるいは世界の中で日本はどのような道を歩むのかと言った大きな課題が山積している。どの政党が政権を担当しようとも、これらの課題の真正面から取り組み、解決していかねばならない。新しい政治の幕は上がったばかりだ。

質疑応答

Q 日本新党は保守なのか革新なのか。そもそも保守・革新を分けるものは何か?

海江田 今や保・革の区別はない。日本新党は自社55年体制を崩したという意味ではずいぶん革新的な政党かも知れない。

 保・革ではないとすると、何を持って政党の線引きをするか。それはやはり生活者の側に立つか生産者の側に立つかでと思う。

江田 そもそも日本の保守・革新の色分けは、米ソ冷戦構造の投影だった。親米・資本主義が自民党であり、親ソ・社会主義が社会党だったわけだ。しかし、冷戦構造自体が崩壊した今、資本主義(保守)対社会主義(革新)という構図は意味を失った。

 21世紀は、成長ではなく安定の時代だ。かつてのようなイデオロギー対立の政治では立ち行かない。

 生産優先・経済第一というかつての自民党的立場のグループ、「普通の国」をめざすグループ、生活者優先・人権や弱者保護を基本とするグループという3極構造の中で、時の重要政策課題に応じて3つのうち2つが連立して政権を担当するような形が、模索されてしかるべきだ。

 何はともあれ、今は連立8党派が結束すべき。自民党が再び政権の座につくのを許してはいけない。そして利権構造の根を絶たねばならない。

福岡 『保・革』ではなく、「いいものは残す。悪いものは改める」ということだ。

 歴史の歯車はすでに回りはじめた。政治状況はもう後戻りはしない。旧い政党の枠組みは意味を失った。

 社会党は解散した方がいい。連合は、横路・江田を中心に、社会党良識派プラス日本新党・新党さきがけグループ、場合によっては河野洋平氏のような自民党良識派までを結集した、中道的良識的な政治勢力の結集をめざしているのではないか。この「まん中」の道は、今後大きく太くなる可能性を持っている。

Q ずばり総選挙はいつか?

福岡 早くて来年5〜6月と思う。もし95年度予算編成で軍縮・戦後補償など「連立カラー」が上手く出せれば、政権は来年秋まで悠々続くだろう。

 自民党は今でもすでにボロボロだ。ある自民党議員など、「まだ野党になって2か月かぁ」などとため息をついている。後1年も新政権がもったら自民党は崩壊する。

 しかし、コメ、消費税という2つのハードルを、小沢一郎氏が意図的に年内に設定してきた場合、冒頭にのべた年内解散の1〜2%の可能性も捨てきれない。

海江田 政治改革関連法案が年内に成立するかどうか、非常に厳しい状況だと認識している。与野党の妥協案が浮上してきた場合、社会党がそれを呑めるかどうか微妙だからだ。

 ただ、仮に社会党から20人こぼれても、自民党の側から20人(連立政権側に)入ってくる可能性もある。

 細川さんはああ見えて、そうとう粘り強い人だ。しぶとく努力し、政治改革を成し遂げると信じている。

江田 1〜2%、年内解散があり得ることは否定できないが、むしろ細川内閣は存続するが、連立を支える政党の組み合わせが変化する可能性の方が高いのではないか。

 いずれにせよ政権の延命だけのためにコメ問題を先送りにすることは許されない。税制も同様。消費税の税率うんぬんだけでなく、伝票式を導入し透明性を高めるなど、抜本的な税制改革に早急に取り組まなければならない。

 時代を見つめれば、やらざるを得ないことが山積している。しかし旧い政党の枠組みでこれを成し遂げることは不可能だ。旧政党が「因数分解」されて、新しい形で再編されなければならないゆえんである。

Q 不況対策、円高対策は?

海江田 所得税減税をぜひとも行うべきだ。統計的に見て、来年あたり、大型家電製品を中心に買い換え需要が高まりを見せるはずだ。個々に的を絞って減税し、消費の冷え込みを後退させるのが良作と考える。

 消費税に関しては、すべてのものの税率を一律に上げることには反対だ。食料品、医薬品は税率を据え置くなど、ものにより、段階的な税率を設定してもよいと思う。

 同時に年金生活者の皆さんの暮らしを圧迫しないように、現在物価スライド制になっている年金支給額の上昇基準を物価と切り離し、(消費税率上昇分をカバーする)特別の調整制度を設けるなど総合的に対応したい。

 円高対策については、個人的意見ではあるが、デノミも一つの選択したり得ると思う。

Q 小沢一郎氏をどう見るか? 江田氏と小沢氏の考え方に共通点はあるのか?

江田 先の選挙の最大のテーマの一つは「自民か非自民か」だった。その結果、国民が絶妙のバランスで各党に議席を与え、非自民が大きく腕を組めば政権交代、一つ(政党)でもこぼれると自民党政権が続くという事になった。だから、各党ともお互いに許容しにくい部分を我慢しあって手をつなぎ、連立政権を作ったわけだ。

 ただし、これから先、小沢氏に限らず疑惑がでてきた場合は、それが与党の議員であっても、今国会で成立させようとしている政治改革法案に照らし、きちんと対応する。過去ではなく今後の私たちの対応を見てほしい。

 小沢氏とは、中央公論や月刊アサヒなどで何度か対談したことがある。男女共生社会に対する考え方などについては違いがあると感じた。ただ、冷戦構造が崩壊した今の時代は数百年に一度の大転換期だ、というような歴史認識は共通しているように思う。

 無論、「普通の国家」というようなビジョンは私とはあい入れない部分かも知れないが、それでも国際貢献は必要という点では共通している。このように、ごく大まかなくくりで言えば、一緒にやっていける部分も結構あると思う。

福岡 江田さんと小沢さん、さらには日本新党の共通点は、「変革していこう」という事だと思う。これまでの政治ではダメだという認識も共通のものだ。

 ただし、政治手法は江田さんと小沢さんではずいぶん違う。

 小沢さんは、説明しない。結論をポンと出し「ついてこない? じゃあ結構」とやる。

 逆に江田さんは、どちらかというと説明をしすぎるきらいがある。小沢流が決していいとは言わないが、説明するなら、分かりやすくはっきりとしてもらいたいというのが、江田さんをはじめ新政権の方々に対する注文だ。

 国民は分かりやすい説明、分かりやすい政治、分かりやすい政治家の行動を求めているのだから。

司会を終えて…

岡山県社民連書記長 大亀幸雄

 江田さんは、さすが現職の閣僚、発言は極めて慎重。「日本の保守・革新は米ソ冷戦構造の投影。もうその時代は終わった。これからは保・革を乗り越えた新党に収斂していくことが望ましい」と、新党への期待を表明。

 海江田さんは「今や保守・革新の区別はない。自民党と社会党の良質的部分も参加する、新しい理念のもとに結集した新党を作りたい」と極めて率直に表明。

 福岡さんは、学者らしく客観的に状況を判断。「社会党は解散した方がよい。横路・江田を中心に、社会党良識派プラス日本新党、新党さきがけグループで結集した、新しい政治勢力がよい」と、新しい方向も指摘。

 新しい政治理念とは何か、についてのパネラーの発言も注目された。

 江田さんは「生活者優先、平和、環境、人権、それに弱者保護などを基本とした理念が重要」と説明。海江田さんは「すべての政策を、生活者優先の立場から洗い直し、再構築することが大切」と説明。

 みっちり2時間のシンポジウムだったが、それでも未消化の問題がたくさん残った。(1)不況の実態と具体的景気回復策 (2)選挙制度改革と新党結成へのプロセス (3)基本政策(安保、自衛隊、原発など)への対応とその解決方向―など、またの機会を期待したい。参加者の気持ちはピッタリ一致した感じがした。細川内閣の「責任ある変革」をめざした大奮闘を心から祈る。


 瀬戸内海に『イイダコ』が復活した。絶滅寸前まで追い込まれていただけに奇跡的とも言えるカムバックに心がなごむ。

イイダコは卵の粒がご飯そっくりの形をしていて頭(体)の中に詰まっているため『飯ダコ』なのだが、子供のころ初めて見た時は、少しばかり神秘的な感じさえした。きっと絶滅の危機に際しては神の手厚いほどを受けたに違いない。

うれしいことにイイダコはその風味において極めて優れている。ゆでたままを酢醤油につけて一気に口に入れるのも良いが、うま煮風にして少しずつ噛みしめるのもまた良い。ここに辛口の日本酒でもあれば言うことなし。素人でも簡単に釣れるので、温かな秋の海に釣船を浮かべてその上でいただければ「人生最良の日」と思わなくてはいけない。

イイダコがなぜ増えてきたのか定かではないが、瀬戸内海の水もやや清くなったのだろうか。それならばなおうれしい。もう二度とイイダコをいじめてはいけない。

それにしても腹立たしいのはロシアの船。放射性廃棄物をわざわざ運んでまできて海にドボドボとは何ごとか。かつてはどこの国もやっていたこと、などと言っては行けない。イイダコならぬ巨大な『おばかダコ』など美味なはずがない。(T)


江田五月の「東京通信」  ロシアの海洋投棄など難問がいっぱいです。

厳重抗議で2回目の投棄は中止。全面解決に向け奮闘中です

 10月16日(土)の夕方、シンポジウムを終えた私のところに、ロシアによる日本海での低レベル液体放射性廃棄物の海洋投棄の第一報が届きました。

 すぐに科学技術庁に連絡をとり、外務省を通じてロシア政府に事実確認を行い、事実ならまことに遺憾、即時停止を求めることを決めました。18日(月)の夕方には科学技術庁で関係省庁連絡会議を開き、20日(水)の午前、私が本部長をしている放射能対策本部の幹事会で、日本独自の調査を決定、同日夕方5時には海上保安庁の調査船が出発しました。

 この間ロシア政府は投棄の事実を認め、その上に2回目の投棄をするとのことでしたが、日本政府はあげて厳重抗議の結果、2回目の投棄は中止されましたが、一時はほんとうに大変でした。

 20日(水)には、来日したIAEA(国際原子力機関)のブリックス事務局長と会談。今後はIAEAに事前通告された(海洋投棄などの)情報を日本に知らせるよう要請し了解を得ました。さらに22日(金)には同じく来日したロシアのミハイロフ原子力大臣と会談。海洋投棄中止を今後とも継続するよう強く申し入れると同時に、ロシア極東での処理施設問題を話し合いました。

 海洋投棄についてのロンドン条約締約国会議(11月開催)での海洋投棄全面禁止問題へ向けてまだまだ難問山積みです。今回課題となった日本政府の情報収集システムも含めて、政府の対応能力を高めていきたいと思います。

色んな人の声を聞き「開かれた科技庁づくり」をめざします

 科技庁長官に就任して2か月。なにしろ科学技術庁はたいへんな専門家の集団ですから、まず「所管事項説明」(これが数十時間に及ぶ!)をはじめとする猛勉強が最初の仕事でした。

 つくば研究学園都市の7研究施設を8月19日、千葉市の放射線医学研究所(重粒子線がん治療センターなど)を9月1・2日、青森県六ヶ所村などの核燃料サイクル施設を9月15・16日など、科学技術庁関連施設の視察も行いました。

 多忙な日程の合間を縫って、さまざまな人たちともお会いしました。長官室には連日たくさんの方が来られます。石川秋田市長、岩國出雲市長、宇宙飛行士の毛利さん、中川大阪府知事、波多野国連大使、ドイツ社民党議員団、ワルディマン・インドネシア教育文化大臣。ショット・オーストラリア科学大臣、モネムPLO日本代表など、国内だけでなく世界各国からいろんなお客様が訪ねてきます。

 もちろん原発推進派の皆さん、反対派の皆さんとも何度もお会いしました。ある新聞からは、「八方美人、十六方美人の綱渡り」などと書かれましたが、反対派の人も原子力に深い関心を持つ仲間と考えて、対話を続けていきたいと思います。

ウィーンのIAEA総会での演説。「江田カラー」が少しは出せたかな?

 9月27日、ウィーンのIAEA(国際原子力機関)の年次総会で政府代表演説を英語で行いました。内容は、(1)政権交代後の連立政権は原子力政策を継承していること、(2)日本の原子力政策は平和利用に徹すること、(3)核不拡散条約(NPT)の無期限延長を支持すること、(4)核兵器廃絶、核軍縮、核実験禁止を強く求めること、(5)高速増殖炉「もんじゅ」を国際共同研究のために解放すること、(6)プルトニウムの国際管理の新提案、などです。

 プルトニウムの国際管理構想は、同じ日(数時間後)に行われたクリントン大統領の国連総会演説と対応したもので、今後日本とアメリカで協議していくことになりました。演説原稿は私自身の手も相当入って、かなり「江田カラー」も出せたのではないかと思っています。


10月17日、久しぶりの岡山。祝賀ラッシュの日程を精力的にこなす。

11:00 市民グループと意見をかわす…

 『放射能のゴミはいらない・岡山県条例を求める会』の皆さんとの懇談会。
 『求める会』 のメンバーには、自民党政権下の 「閉鎖的」だった原子力行政に対する不信・不満がある。今回、政権交代で科学技術庁長官に就任した江田五月への期がにじむ懇談となった。
 活発な意見交換の後、江田議員は、「原子力行政を国民に開かれたものにすることが大事。国民とともに考え、悩みながら進めていきたい」と答えた。

12:00 弁護士有志主催の「祝う会」へ

 「江田さんは我々の身内。大臣を酒の肴にできる機会など滅多にない」
 こんな軽口ではじまった弁護士有志主催の『祝う会』。江田五月の「所信表明演説」 のあと、60余名の参加者からの要望で「代表演説」。時折、辛口の質問も飛びだし、おおいに盛り上がった。
 江田五月いわく、「鋭い質問が多く、国会答弁なみに緊張しました」

15:30 税理士政治連盟の就任祝賀会へ

 この日は祝賀ラッシュ。弁護士会有志の会に続いて、『岡山県税理士政治連盟』と 『税理士による江田五月後援会』の共催による大臣就任祝賀会。会場のホテルニューオカヤマには60名を超す税理士の皆さんが駆けつけてくださった。
 姫井・税政連会長、吉澤・後援会会長からお祝いの言葉をいただいた江田五月は、「支援していただいた皆さんに、誇りに思っていただけるよう精進します」 と力強く答えた。

19:00 作州五月会のみなさんと「乾杯」

 小雨にけむる国道53号線を一路津山へ。この日最後の日程、作州五月会主催の『長官就任を祝う会』 に出席するためだ。

 鶴山ホテルの会場には、300名以上の参加者が詰めかけた。大盛会だ。

 額田克海・津山江田五月後援会会長のあいさつで、会は始まった。続いて、永礼・津山市長、坂元・町村議長会会長(勝田町議)、中尾・津山商工会議所副会頭など来賓の皆さんが祝辞を述べた。

 作州は、故・江田三郎ファンの多い土地柄。祝辞の中でもたびたび「江田三郎」の名前が出る。これを受け、江田五月も、「私の誕生日に父が亡くなり、政界入りを決意した。そして、連立合意−政権交代の決まった7月29日が父の誕生日。運命めいたものを感じる」とエピソードを披露。

 乾杯の後の懇親会。ゆっくりしたいところだが、それもままならない。翌朝の国会に間に合うよう、20時30分、会場を後にし、夜行列車に飛び乗った。


動燃人形峠事業所を見学。労組とも懇談

 10月1日、大亀書記長、橘県議をはじめとする社民連のメンバー15名が、苫田郡上斎原村にある『動力炉・核燃料開発事業団人形峠事業所』を訪問した。

 今回の訪問は、科学技術庁長官となった江田五月を支える人々に、人形峠事業所の実情を知ってもらいたいという同事業所からの要請にこたえるもの。一行は、所長の早川氏から事業概要の説明を受けたあと、ウラン濃縮プラントや展示館などを見学した。

 この日は、人形峠事業所労働組合とも懇談。今後とも相互に情報を交換し理解を深めることを約束した。

幅広い参加者集め山口二郎講演会開催

 9月20日、岩波新書「政治改革」等の著者として知られる山口二郎・北海道大学助教授の講演会がまきび会館で開催された。

 主催は『新政治研究会準備会』。参加者は、社民連、社会党、民社党などに所属する現職・元職の県・市議会議員、労働組合の関係者、市民など約150名。

 「これだけ幅広い人々が一堂に会するのは、社会党と民社党の分裂以後はじめてのことではないか」  質疑応答の司会を務めた大亀・岡山社民連書記長はこのように述べ、この会の意義を強調した。 

 山口氏は講演の中で、(1)支持層が高齢化・硬直化している現在の社会党が今後勢力を回復することは不可能である。(2)社会党は、西欧型社会民主主義勢力へと脱皮を図る中で、日本新党や新党さきがけに代表される「リベラル派」と連携し、小沢一郎氏言うところの「普通の国家」路線に対抗すべきだ、などと述べた。


編集後記
 前号でスタイルを一新した五月会だよりに、河田一臼先生がすばらしい題字を贈って下さいました。
 先生は江田五月の書道の師。前々号まで17年間一面を飾った旧題字も、先生の筆になるものです。
 この新しい題字に負けないよう、江田五月もこれまで以上に大活躍してほしいものです。


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