1999年3月11日

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情報公開法案 総務委員会 質問 

午後一時十一分開会

委員長 (竹村泰子君)  ただいまから総務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。

江田五月君 太田長官、最初にちょっと突拍子もない質問をしますので、余りびっくりせずに、怒らないで答えてほしいんですが、あなたはこの情報公開法は嫌いですか、嫌いじゃないですか。

国務大臣 (太田誠一君) 議員として答えよということかあるいは国務大臣として答えよということか、その辺だろうと思っております。
 私、ついこの間まで衆議院の法務委員会の情報開示の司法判断に関する小委員会の委員長を務めさせていただいておりました。これは、民事訴訟法の改正に際しまして、三年前だったと思いますけれども、衆議院の法務委員会で、民事訴訟法改正案の中で裁判官のインカメラ手続などについて今日の考え方を反映していない部分があったので差し戻しをして、その間に行政府も検討するけれども立法府も検討するということで取り組んでおりましたぐらいでございますから、この情報公開法については私自身も思い入れがございます。

江田五月君 思い入れを持たれて精力的にこの成立に努力をされているということだと思うんです。なぜそういう質問をするかというと、一般には、やはり行政側というのはよらしむべし知らしむべからずが好きなんだ、余り情報公開なんというのはやられたくないんだという、そういうことが言われているわけですね。太田長官個人として、あるいは一政治家として今のようなお気持ちはわかりますが、総務庁長官としては今の嫌いですかということについてはどういう答えになりますか。

国務大臣 (太田誠一君)  私は、このよらしむべし知らしむべからずという土壌が我が国に長くあったということは承知をしております。それは私もそう思いますけれども、役所、行政機関自身が時代の変化というものを受け入れて、なるべく国民主権の考え方にのっとって開示していこうというその変化は随分あるんだというふうに肌に感じております。
 今の時点で、きょうこの時点でどうかといえば、それはみずから情報公開をした方がよいというふうに行政機関の各位も思っていると考えております。

江田五月君 私は、やはり本来ならこの行政情報公開法というのは、役所に提出をしてもらうものではなくて、国会が議員立法でちょっと荒い言葉で言えば行政に押しつける、そういう性質のものであっただろうと思うんですね。
 ただ、いろんな事情でそういうことができず、ちょっとそのスタートのところでボタンのかけ違えというのがあった。しかし、ある種のきれいごと、建前にはなりますが、今、長官がおっしゃるとおり、今こういう時代になっているので昔流の秘密主義ではもう行政自体もその質の高さを保っていくことはできない。国民の不断の監視のもとで行政も透明性を高め、国民とともに、国民のために行政をやっていくことによって、そういう姿勢をとることによって行政自身が質のいい行政になっていくんだ、行政の方もむしろこの情報公開を歓迎しなきゃならぬ時代になっているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

国務大臣 (太田誠一君)  そういう意味ではまさにおっしゃるとおりだと思います。
 また、これは余計なことでありますけれども、総務庁という役所は本来そういう意味で国民の視点を踏まえながら各行政機関のあり方について考えるところでございますから、特にそういう意味では進んだ考え方を持っていると私は感じております。

江田五月君 積極的なお答えをいただいて大変うれしいんですが、しかし、それはきれいごとといいますか建前なんですよね。建前が世の中大切なんで、それはもう建前だからどうでもいいんだとなったら世の中むちゃくちゃになるわけですから、建前というのを大切にしていかなきゃならぬ。しかし、やっぱり建前のところがあって、行政担当者は自分のミスは人に知られたくないし、何事もなしに任務を終えて昇進していきたいものではあるしということはある。ですから、そこはやはり情報公開ということで市民と行政との緊張関係が生まれる、これが大切なんだろうと思うんです。
 そこで、知る権利についていろんな議論がありましたが、私は、知る権利自体が憲法上どういう位置づけをされるべきか、それも一つ大切な議論ですが、今のような市民と行政との緊張関係というようなことで見ると、やはり知る権利というこの一つのうったてがあつて、そして行政情報というのはもう原則公開なんだと、こういう葵の御紋があることの方が情報公開の実態がよりいいものになっていく、より透明性の高いものになっていく。
 ですから、知る権利を掲げるということは、そういう実際的な配慮からするとやはり大切なことだと思いますが、いかがですか。

国務大臣 (太田誠一君)  何度かお答えをいたしておりますけれども、知る権利という言葉を使う使わないにかかわらず、行政情報の原則公開という考え方を徹底すればよろしいんではないかと思います。何回も同じことを言ってあれですけれども。

江田五月君  いや、それでいいです。徹底すればよろしいんじゃないかと思いますというお答えですが、徹底されますね。

国務大臣 (太田誠一君) そのつもりでおります。

江田五月君  先般、私は本会議の質疑のときに申しました。情報公開法は、政府や与党の側ではなくて野党の側から数えてみたら十二本、議員立法としてこれまで提出されました。私もその一番最初の段階からかかわってきた一人ですが、しかしその都度厚い壁に阻まれてほとんど審議もなく廃案になってきた。
 考えてみると、そのうちの一つでももっと早く成立をしておればいろんな事態が起きずに済んだのではないか。その間、例えば、今名前は変わりましたが、当時の動力炉・核燃料開発事業団、ありましたね、あるいは防衛庁だ、大蔵省だ、日銀にまでというような不祥事もございました。また一番悲劇的な事例は恐らく薬害エイズのことでしょうが、そういうものを見るにつけ、時間がかかったな、遅きに失したのではないか、そういう思いがしますが、長官の感想はいかがですか。

国務大臣 (太田誠一君)  それらの今おっしゃったさまざまな不祥事は、それはこのことだけで説明できるものでもないと思います。それはそれとして、もともとの問題があったと思うのでございまして、直ちに情報公開法案がなかったから起きたというふうにはにわかには思えないわけでございます。
 ただ、これまで江田委員を初め皆様方が努力をされて、情報公開法案をたびたび提案をされて努力してこられたことについては敬意を表する次第でございます。

江田五月君 なかったから起きたというと、それはそこの因果関係は非常に難しい。しかし、あれば多少そのあたりの雰囲気が変わっていたんじゃないかなという思いは共有されませんか。

国務大臣 (太田誠一君)  それは、あるいはあるかもしれません。しかしそれだけではなくて、もっとあると思います。国民主権ということと、それから行政を主権者から信託されているということの考え方をもっと行政の末端まで徹底しなくちゃいかぬ。これだけではないと思います。ほかにもたくさんまだ問題があると思います。

江田五月君 こんなことで押し問答をしてもしょうがないので。
 長官は、しばしばそこで国民主権というお話をされます。もちろん、国民主権というのが一つ非常に大事なことである、情報公開を基礎づける原理の一つであるということはそのとおりだと思います。しかし、この情報公開法は、単に国民主権だけではない、それは何人もと。何人にも情報公開請求権を認めているので、これはもちろん何人の中には国民以外も入りますよね。

国務大臣 (太田誠一君)  私は、外国人に対して情報開示の請求を認めるということの考え方が実はよくわからない。正直言ってよくわからない。ただ、現にアメリカがそういう制度になっているということは前から聞いておりますので、そうすると日本国民もかねてからアメリカの情報公開法にのっとって請求をしてその恩恵を受けているわけでありますから、我が国も後から打ち立てるときに同様の制度をとらなくては、相互主義的な考え方でこういうことがあるのかなというふうに思っているわけであります。

江田五月君 相互主義の考え方もあるでしょうが、しかし相互主義なら認めている国だけ認めるということになるわけですが、これはちょっと違いますよね。そうではなくて、情報公開を請求する外国人の所属をする国が我が国民に情報公開を認めていようがいまいが何人にも情報公開請求権を認めているわけですから、国民主権、さらに相互主義、そうしたことを越えたある種の新しい時代の地球的原理というものを含んでいるのではないかか、そこまで洞察をしなければいけないんじゃないかと思いますが、いかがですか。

国務大臣(太田誠一君) アメリカでそうなっているということは、おそらくそのほかの国々に前例がなかったのにアメリカはそういうことにしたわけですから、アメリカ人の考え方の中にはあるいは江田委員のおっしゃったようなグローバルというか、あるいは コスモポリタンというか、そういうふうな考え方があっての制度かもしれないとも思いますけれども、今、視野はそこまで及ばないという状態でございます。

江田五月君 太田長官、大分高いところから見ていらっしやるわけですから、それだけの上背があれば世界が見られるんじゃないかと、ぜひ見ていただきたいと思います。
 冗談はさておき、第一条に「責務」という言葉がございます。「行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務」。この「責務」というのはどういう意味ですか。

国務大臣 (太田誠一君) 責務というのは、主権者が国民であって、そこから信託をされているわけでありますから、説明責任があるというのは当然のことだろうと思います。

江田五月君 責務という言葉の国語的意味をあれこれ言っていても仕方がないんですが、私は、責務というのは重要な規定であるが、しかし、なぜ義務と言わなかつたのかなということをちょっと感ずるんです。義務といえば権利がある、しかし責務の反対にはどうも権利というのがない。権利を認めるのが嫌だから責務と言ったのかなと思ったりするんですが、そんなことはないでしょうね。

国務大臣 (太田誠一君)  私は、実はこの法案の条文ができた後に就任をいたしましたので、私なりに自信を持って今この法案を提案している立場になるために自分なりに消化をしてきたことを申し上げますと、責務というのは、それは主権者という言葉と無縁ではないと思っておりまして、権利と義務ということは必ずしも主権者ではなくて、言ってみれば統治される側というふうな立場があって権利義務というふうな言葉の使い方になるのではないかと思います。国民主権という立場からいうと、責務という言葉の方が非常にぴったりするのではないかと思います。

江田五月君 そういうやりとりをしていても仕方がありませんので、ちょっと具体的な実務的なことに入らせていただきます。
 幾つかあるんですが、きようはまず手数料のことについて伺います。手数料はなぜ取られるんですか。

国務大臣 (太田誠一君)  手数料は、先ほども申しましたけれども、情報開示を請求される方、それはいずれにせよ特定の国民がしかも個人でやられることが多いわけでございますから、特定の個人が特定の理由でもって請求をされるというその国民の立場というものと同時に、それに対応するためには人を配置しさまざまな施設での対応もしなければいけない。それにかかる費用というのは一般の納税者が負担をするわけでございますから、納税者一般のいわゆる負担と、それから請求をされる側の立場というものの両方を見て、負担の公平というふうなことを考えて費用をいただくということになったわけでございます。

江田五月君 先日、本会議であなたは、手数料は特定の者に対して役務を提供する場合にその費用を回収するために徴収するものであります、すべて租税の一般財源で賄うのは国民の合意が得られない、そういう答弁をされておられますし、今も同じ趣旨です。
 さて、しかし、情報公開は国の責務としてやられるわけですね。しかも、さっきお伺いしたらお答えになりましたが、よりいい行政をつくっていくためにやることなんですね。請求をしてくれるのはむしろ国民、国の責務を果たす、いい行政に行政自身をつくり変えていく、そのいわばきっかけをもらっているわけですね、請求されることによって。それなのに、ありがたい、ありがたいとむしろ手を合わせて拝むぐらいになきゃならぬのに、なぜ手数料を取られるんですか。

国務大臣 (太田誠一君)  私は、こういう場合に行政機関というのは何なのかというと、江田委員のようにとらまえると、国という人格が別にあって、そしてその国という人格にとってのメリット、デメリットと、それから請求をされる方のメリット、デメリットというものを比較されるというふうにお考えになられるようでございますが、国というのはそれを支える一般の国民がいるわけでありまして、その一般の請求をしている以外の人たちとの関係はどうかということは、これは両方考えなければ、何といいますか不特定多数のために、憲法十五条に書かれておるとおり内閣あるいは国家公務員というのは一部の国民のために仕事をするんではなくて国民全体のためにパブリックサーバントであるべしということがありますので、そこは両方考えなくてはいけないと思うのであります。

江田五月君 これはもっと詰めた議論をいろいろする必要があるのかもしれませんね。行政サービスは受益者という人が本当にいろんな利益を享受する、そういう場合であっても必ずしも全部が全部手数料を取るわけではありません。まして、この情報公開のように行政自身にとっても必要なことである、国の責務を果たしていくことである、そして今これからは、もう本当にむしろ行政側からいろんな行政内容というのを積極的に国民に発信をしていかなきゃならぬという時代ですから、何かおまえ利益を受けているんだから手数料を払えという、あるいはその費用これだけかかったんだから国が回収をするんだという発想というのはちょっとそぐわないんじゃないかという気がいたしますが、重ねて伺います。

国務大臣 (太田誠一君)  同じ答えになるわけでありますけれども、国はそれ自体として何かあらかじめ財産を持っているとか、それはすべて国民のものであって、租税の負担とそれから国民に結局は行く債務を負ってやっているわけでありますので、そこはその負担について国が一つの人格を持って、損をした分を回収するとかいうことではなくて、一般納税者に対する立場というのはあると思うのでございます。

江田五月君 手数料を取る目的として乱用防止という考え方はございますか。

国務大臣 (太田誠一君)  乱用防止を直接の目的としているわけではないわけでありますが、あるいは結果としてはそういうこともあり得るかもしれないと思っております。

江田五月君 乱用防止のために高い手数料を設定するという考え方はないですよね。

国務大臣 (太田誠一君)  そういう目的ではありません。

江田五月君 地方では、コピー代とか郵送料とかいうもの以外に特別に手数料を取ってないケースもあるんですが、長官の今の説明だとこれはちょっとおかしいということになるんですか。それとも、それはそれでそれぞれの地方の考えることだということになるんですか。

国務大臣 (太田誠一君)  それはそれぞれの地方で、国と地方自治体は互いに独立であって対等であるという考え方でまいりますと、地方は地方の考えでやっておられることだということであります。

江田五月君 この法律は言ってみれば地方に対するある種のモデルになる。修正後の四十一条で、「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、」 云々と。
 手数料のところについては、この法律はこうなっているから地方も右へ倣えとせよと、そういう考えはないでしょうね。

国務大臣 (太田誠一君)  そういう考えはありません。

江田五月君 さてそこで、この法律の手数料の考え方についてちょっと伺いますが、請求手数料と閲覧手数料でしたか、いずれにしてもそういう内容、二重に取られる。さらに開示の手数料のほかに、これは実費ということになるんでしょうが、謄写の手数料も取られる。三つの手数料があるんですけれども、この相互の関係というものはどういうふうにお考えですか。

政府委員(瀧上信光君)  情報公開法の手数料の規定では、「開示請求をする者又は行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、それぞれ、実費の範囲内において政令で定める額の開示請求に係る手数料又は開示の実施に係る手数料を納めなければならない。」ということで、開示請求に係る手数料としまして、開示請求の処理に係る事務の費用の一部の負担……

江田五月君 法律の中身はわかっていますから、聞いていることに答えてください。

政府委員(瀧上信光君) はい。それから、開示の実施に係る手数料としまして、写しの交付、閲覧等の開示の実施に係る事務の費用の負担を求めようとするものでございまして、開示請求に係る手数料につきましては一定額を、そして開示の実施に係る手数料については実費をということを前提として徴収するということになっております。

江田五月君 開示請求は一定額、そして開示の実施の方は実費。その二つは別々なんですか、それともある程度の関係を、例えば、開示請求のときに幾らか払いますね。実際に開示の実施をする、そのときに実費がかかりますね。その実費については開示請求のときに徴収した手数料でまず埋めていくんだと、それをオーバーしたときにはその部分を取るんだとか、そういうようなことについてのお考えがあるやに伺っているんですが、どうですか。

政府委員(瀧上信光君)  ただいま申し上げました手数料はそれぞれ別でございます。しかし、ただいま御指摘のありましたように、衆議院の段階におきまして附帯決議におきまして、「開示の実施に係る手数料の額を定めるに当たっては、実質的に開示請求に係る手数料に相当する額が控除されたものとなるようにすること。」という附帯決議がつけられているところでございます。

江田五月君 だから私は思うので、これはやはり本来立法府がつくってそれを行政に押しつける、言葉は悪いですが、そういう性質のものでなきゃならぬというのがそのあたりにあるので、行政府の方はなるべくそこで自分たちの許容範囲を広くとっておいて後でやりたいと思われるかもしれませんが、附帯決議でそうなっているんですから、これはそう実行してくださいよ。いかがですか、長官。

国務大臣 (太田誠一君)  附帯決議のとおりにいたしたいと思っております。

江田五月君 ですから、開示の実施に係る手数料という場合には、実費以外に別途一定額の実施手数料というものがあるという理解はしないでよろしい、そうじゃなくて、実施に係る手数料の方は実費だと。これはそれでいいですね。

政府委員 (瀧上信光君) 御指摘のように、実施に係る手数料は実費でございます。

江田五月君 そのときの実費というのは何ですか。

政府委員 (瀧上信光君) 例えば閲覧等におきましては、開示の実施の処理で閲覧文書の搬入、写しの作成、部分開示の場合のコピー等の作業でございます。そして、写しの交付の場合には写しの作成にかかる費用でございます。

江田五月君 写しの作成にかかる費用、その費用というのはこれは何ですか。写しをつくるには、例えば総務庁だったら総務庁の建物も必要だろうし、そこへいろんな部屋もあるだろうし、その中にコピー機もあるだろうし、写すための人も要るだろうし、人件費、ボーナスもあるだろうし、それら全部ということなんですかい。それとも、通常民間で写しをとるときにはコピー一枚とるには幾らとか、コンビニでも何でも今あるじゃないですか。そういう額をお考えなんですか、どうですか。

政府委員 (瀧上信光君)  開示を実施するための人件費とか光熱費とか事務用機器等の諸費、そういったようなものを含みますが、その中の一部を手数料として負担していただくということでございます。

江田五月君 やはりそこが関係するんですよ。これは国の責務を果たすための仕事なんで、しかもいい行政をつくっていくための事務なんですから、一般行政経費をその実費の中にぶち込んで回収してやろうというような考え方はやっぱりとれない。そうじゃなくて、写しをつくるといえば、普通は世間では大体わかりますよ、どの程度のことかね。その世間の常識、コピーをつくるための費用というときに、普通に世間の人が考える常識の範囲ということになるんじゃないかと思いますが、長官いかがですか。

国務大臣 (太田誠一君)  正直に言いまして、私は附帯決議に付されるまでは、最初にいただくものは、今言ったランニングコストではなくて、もう少し大きな範囲の費用を象徴的にごく一部でも御負担をいただきたいという気持ちであったわけであります。ですから、それが利用できないほど過大なものであってはいけないということは間違いなくあるわけでありますけれども、だからといってただというのは私はちょっと抵抗があるということでございます。

江田五月君 普通の町でコンビニでコピーとるときだって、それは多少のコンビニのもうけも入っているわけですから、総務庁がもうけるというのはどうだかわからぬけれども、そこはひとつ考えてください。
 それから請求に係る手数料ですが、これは定額だということですが、どういう単位で定額にされるんですか。文書偽造のときのような文書の枚数の数え方、これは大変なんですよ。三人で一つの文書に判こ押していたら、どこか偽造したら三つ文書を偽造したことになったりするわけですが、そういうようなむちゃな考え方じゃなくて、別に文書の真正を担保するための開示請求じゃないんですから、そうじゃなくて行政の透明性を高めるための開示請求ですから、そこにどういう文書がどのくらいな数あるかは別として、一つの請求が単位で一定額ということにすべきだと思いますが、いかがですか。

政府委員 (瀧上信光君)  ただいまの御指摘の徴収単位についての基本的な考え方を申し上げれますれば、例えば一請求に対し一定額の金額を徴収するという考え方に立っております。

江田五月君 もっと詰めていきたいところですが、ちょっと時間がありません。また後ほど。
 それで、修正案の提出者の皆さんにちょっと伺っておきたいんですが、大変な御努力だったと思います。決断もされたことと思います。敬意を表します。ただ、私どももやはり国会議員でございまして、衆議院だけですべてを決めて参議院は指一本さわるべからずと言われてもちょっと困るんですが、そういうことはないんでしょうね。

衆議院議員 (佐々木秀典君)  江田先生御指摘のように、私ども衆議院でも大変に与野党協議を尽くしまして、その中で理事などは特に苦労をいたしました。結果として、全党が共同提案になったということでございますけれども、一つには、やはり時間との勝負という問題もございました。
 何分にも、昨年の通常国会に政府が提案された、それについて審議をし、このままではいけないということで、これについては与党にも御理解と御認識をいただいて修正をしなければならないという作業に入ったわけです。しかし、その後参議院選挙を経て、二つの臨時国会でもこれができ上がらなかった。そして今度の通常国会に来たわけですけれども、この通常国会開催に当たりまして、お互いに与野党間の理事の申し合わせ、それを受けての衆議院の内閣委員長の御発言でも、二月の中旬までにはこれを上げたい、衆議院で上げて参議院にお送りしたいという目標を設定いたしました。そうした時間の制約の中での修正協議でございました。
 そこででき上がったものをこちらにお届けしているわけです。しかし、衆議院は衆議院、参議院は参議院の独自性がございます。私どもがこの決定で、参議院の皆さんにこれ以上出っ張ってもらっては困るとか、そういう筋合いのものではございません。
 ただ、私どもは苦労してここまでまとめ上げたという点についてはお認めをいただきながら、しかし私どもとしても、何といってもなおよりよいものができることを望んでおりますから、それについてはまた参議院で与野党御協議いただいて、さらに修正ということもあるのではなかろうかと、これは期待を込めて申し上げておきたいと思います。

江田五月君 植竹議員も同じでよろしいですね。

衆議院議員 (植竹繁雄君)  私の方は、やはり与党といたしまして、この情報公開というものがどういう意義があるか、二十一世紀に向かってより国民全体にいろいろな情報を公開することによって未来に対する展望というものが必要だという意味で、大きな目的でこれを考えたのであります。したがいまして、そういう大前提のもとに、いろいろ細かい点で再修正とかなんとか、根本目的に向かって私の方は進んでおるわけでございます。
 また、細部につきましては、衆議院は衆議院なりに与野党ともに全党一致にてこれを考慮し、審議し、そしてつくり、可決されたものでございます。そういうことを踏まえまして、私どもは進んで提出に参ったわけでございます。どうぞお酌み取りいただきます。

江田五月君 よく酌み取りたいと思います。何がいいか悪いか、これはいろいろ議論はありますが、しかし、それでもこの方がよりいいというような共通の認識というのは私は生まれるんだろうと思うんです。ぜひそういうことで、衆議院の皆さんにも参議院の努力もひとつお認め、お許しをいただきたいと思うんです。
 さて、管轄でちょっと伺いたいんです。きょうは法務省民事局長に来ていただいておりますが、民事事件あるいは行政事件含めての管轄というものは、これは何か法律上もう動かせない大原則みたいなものがあるんですか。それとも、訴訟というものを国民の皆さんに使っていただくために、いろんな利益を比べてこういうふうにしたらいいということで決められる、いわば立法裁量にゆだねられるものではないかと思いますが、いかがですか。

政府委員 (細川清君)  民事訴訟の土地管轄は原則として被告の普通裁判籍所在地、それから行政訴訟においては行政庁の所在地の裁判所の管轄となっております。
 しかしながら、これらの原則的な管轄のほかに、民事訴訟におきましても行政事件訴訟法においても、それぞれのいろんな理由から特別な管轄を認めているわけでございまして、結局のところ、これらの管轄の規定は、被告所在地の管轄を原則としつつも、当事者間の公平、円滑な審理の確保、訴訟経済等に配慮して、立法政策的な配慮がなされているというふうに考えております。

江田五月君 立法政策的な配慮ですよね。塩野先生も国会が決めることだという趣旨のことをおっしゃった。そこで衆議院で、単に被告住所地を管轄する地方裁判所だけでなくて、全国の高等裁判所本庁所在地を管轄する地方裁判所に管轄を認められたということなんです。
 なぜ高等裁判所の本庁所在地かということで、最高裁から高等裁判所の本庁とか支部とかというのはどういう趣旨で設置をされているんだということをちょっと聞いてみたんですが、文書を読むともう時間がないんですけれども、要は国民の便宜だと、比較的遠隔の地にある当事者その他関係人の不便をできる限り少なくするためにということで、全国に高裁がありますが、同時に支部もつくっておる。
 ですから国民の便宜ということを考えたら、高裁本庁だけだと国民みんなに高等裁判所を使ってもらうにはちょっと不便がある、だから支部を置いているというふうに最高裁も言っているわけですから、これは私は立法裁量としては本庁所在地だけではちょっと足りないのではないか。支部の全部と言うと衆議院の皆さんの御苦労をちょっと尊重しないと言われても困るんですが、しかしそれでも支部の中には大変苦労するところがあるんです。その辺のところは、衆議院の修正案を出された皆さんはどうお感じですか。

委員長 (竹村泰子君)  時間が来ておりますので、手短にお答えください。

衆議院議員 (佐々木秀典君) 今御指摘のような点について衆議院でもいろいろ協議をしました。
 私どもとしては、高等裁判所八カ所については与党さんの御理解も得られたんですが、御指摘のように高等裁判所には本庁のほかに六つの支部がございます。私どもとしてはこの支部までということを申し上げたんですが、なかなか御同意が得られなかったのは、一つには公平などの観点から問題があるのではないか。
 どうして高裁の支部がこの六カ所に決められたかといういきさつも実はよくわからないんですね。例えば、沖縄に福岡高裁の支部がございます。これについては、沖縄の方がわざわざ福岡まで来なければならないというのはまことに不便な話とは思うんですけれども、もう一つ、広島高等裁判所の支部が、江田先生は岡山ですけれども、岡山にあるんですね。この辺になるとちょっと近過ぎるのかなという感じもあったりして、確かに問題がある。
 でき得べくんば、私は今のお話のように、立法政策上の問題だとすれば特例中の特例としてもう一つ、沖縄にはせっかく那覇に裁判所があるんですから、ここでできるようにしたらどうか。あるいは、日本海側が全然ないんですね。ですから、せめて名古屋高裁の金沢支部あたりでもできるようにしたらどうかというようなことはあったんです。しかし、衆議院の段階ではいろいろ検討した結果、結局高裁本庁所在地八カ所ということで合意ができたということでお送りしたわけでございます。
 この辺についても、参議院でまた十分御検討いただきたいと思います。

衆議院議員 (植竹繁雄君) ちょっと補足説明をさせていただきます。

委員長 (竹村泰子君)  時間が過ぎておりますので。

衆議院議員 (植竹繁雄君) はい。実は、公平の原則、これは立法府の特例措置の問題でございます。それが第一点。それからもう一つは、今沖縄の問題がございましたが、福岡高裁の場合、那覇支部の場合は沖縄はいいんです。奄美大島の場合は宮崎支部でございます。これは宮崎支部ですと同じようなことになりますので、そういう公平原則から考えまして八つの箇所に求めた、そういうわけでございます。

江田五月君 時間が参りましたが、管轄とか移送とかという問題については、私も法律家で法律論をがたがた言い出すとちょっとうるさい。そうすると、この修正どうだということになってしまうからそれは言いません。言いませんが、長官、これはやっぱり立法裁量ですから、立法府の方でひとつこうやると言ったら、それはもう当然認めてくださいね。
 質問を終わります。

情報公開法案 総務委員会 質問 


1999年3月11日

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