1998年12月 9日

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参議院予算委員会 江田質問 

 「自自連立」と2大政党制について

 衆議院の小選挙区比例代表並立制の導入によって、有権者に明確な政権の選択肢を提示することは、政党の責務となった。今回の「自自連立」が、理念・政策が明確な政権の選択肢となり得るものなのか、それとも従来通りのあいまいな「自民党」のままなのかを明らかにする。


平成十年十二月九日(水曜日)   午前九時開会

○委員長(倉田寛之)

 平成十年度一般会計補正予算(第3号)、平成十年度特別会計補正予算(特第2号)、平成十年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題といたします。
 三案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。江田五月君。

○江田五月

 おはようございます。
 民主党・新緑風会を代表して、総理大臣及び関係の大臣に質問をさせていただきます。
 同僚の委員と分担して、私は主として自民党と自由党とのいわゆる自自連立の問題とか、あるいは地方財政の危機とか、こうした問題を質問したいと思いますが、何といっても今の一番の課題、これはこの大変な不況をどうするかということでございまして、この臨時国会も政府のお出しの補正予算、これをどうするかというのが最大のテーマになっているわけで、ただいまの景気の状況をどう判断されているのか、これをまず伺っていきたいと思います。

 お仕事中ですが、堺屋長官、ちょっとお伺いをいたします。
 昨日の月例経済報告で、変化の胎動が感ぜられるとおっしゃった。長官の勘なのかもしれませんが、多少の根拠もあるのか、別の見方の根拠も何かあるという状況のようですが、今の景気の状況をどう判断されているか、御説明ください。

○国務大臣(堺屋太一)

 私は、昨日、閣僚会議で月例経済報告をさせていただきました。その中で、結論から申しますと、景気は依然として極めて厳しい状況にあるが、一部にはさらに悪くなる動きもあり、また幾分回復する状況もあると、こういうものをあわせてみると、厳しい中にも新しい胎動が感じられる、こういうぐあいに述べました。
 それで、厳しくなっている方で申しますと、例えば設備投資は、毎月、計画を調べますと下方修正をされている状態でございまして、まだ非常に厳しい状況が続くと思います。また、それに関連いたしまして、雇用関係も失業率が四・三%、過去最高の水準で横並びでございまして、改善の兆しが見えないのみならず、有効求人倍率等は減少傾向にあります。
 そのほか、生産、消費でございますが、依然として前年同期時に比べると低下しておりますが、下げどまりの傾向が出てきております。
 住宅に関係いたしましては、分譲マンションは在庫がふえたものですから減りましたが、個人住宅はこのところ少し回復しております。
 一方、いい方では、半導体を初めといたします電気製品、家電製品あるいは軽自動車、それから最近のスーパーの売れ行き等が前月に比べましてプラスになってきております。特に、政府の行いました中小企業に対する貸付保証枠の拡大、これがかなり効果をあらわしまして、中小企業者の動き、顔色あたりがよくなってきている、この辺が勘というところかもしれませんが、そういう影響を感じ取っております。

 夜明けの前が一番暗いと申します。これからしばらく設備投資がふえてくるというのは企業が利益を上げる自信を得たからでございますから、それまでにはやはりリストラという一つの縮みの段階がございます。これから数字の上ではなお厳しいものが出ると思いますが、新しい動きが出てきたという意味では、申し上げましたように変化の胎動があるんじゃないか、そういうぐあいに考えております。

○江田五月

 なかなか難しいところですね。いいのもあるけれども、悪いのもあるし、変化だけれども、さらに厳しくなるかもしれないし、しかしその後にはよくなるかもしれないしと、そういうことなのかもしれませんが、宮澤大蔵大臣はきのうでしたか、ああ見ればそうも見えるけれども、こう見れば別にも見られるというような御説明のようでしたが、どう判断されておられますか。

○国務大臣(宮澤喜一)

 私が申しましたことの表現が何か堺屋さんの御判断に水を差すように受け取られましたらそれは本意ではございませんので、確かにいい兆候が幾つか見えておりますわけですから、それを勇気づけていくということが大変に大事なことではないかと、そういう基本的な考え方でございます。

○江田五月

 総理はどう判断されていますか。

○国務大臣(小渕恵三)

 私は、表現としてどうかと思いましたが、記者の皆さんにお尋ねいただきましたときに、兆しの兆しが見えてきたのではないかとこう申し上げたわけですが、それは実は公共投資に対して十年度第一次補正予算の効果があらわれつつあるのではないかと、そのことの数字をお聞きいたしましたものですから、そのことが念頭にあったかと思います。
 御案内のように、公的固定資本形成、すなわち公共投資につきましては、十年の1-3月期でマイナス2.4、それから4-6でマイナス3.0、これが7-9になりましてプラスに転じまして3.6と、こういうことになってきておるわけでございまして、少なくともこれはおくれての投資効果があらわれてきたということかもしれませんが、こういう数字が続いてまいるということであるとすれば、やはりこれを兆しの兆しと考えてこの傾向を進めていかなければならないと、こう実は感じておる次第でございます。

○江田五月

 景気はもちろん回復をさせなきゃならぬし、していくことはいいことなので、いろいろいい材料を見ながらよくなるよ、よくなるよと皆さんがおっしゃりたい、そのことがまた気分を変えていくということにつながる、そんなこともお感じなのかもしれませんが、私どもは暮れですので地元へ戻る、何人かの仲間の皆さん、地域の皆さんと忘年会などをやって安酒を飲みながら話を聞いていますと、どうもやっぱり厳しい声の方が強いんですね。今いろいろ指標をおっしゃいますけれども、例えば第一次補正の消化率が一体どうなっているのか。これはもう既に衆議院の方でも議論があったことですので、あえて数字のお答えを求めませんけれども、十月末で二割台というんですかね。あるいは今、堺屋長官が信用保証の枠のこともお話しになりましたけれども、これなども後でちょっと触れますが、実態としては非常に厳しい声があれこれ返ってくるわけです。
 私たちももちろん景気が回復することを強く願っておりますが、しかしどうも今回の補正予算では極めて不十分だと言わざるを得ない。やはり本格的な恒久減税、これをこの臨時国会で実現すべきだったと思います。しかし、その恒久減税は先送りをされてしまっておる。金融の問題も、さきの臨時国会で金融システム崩壊を防ぐ手だてはできましたが、貸し渋りは依然続いている。

 ちょっとそこを聞いておきましょうか。衆議院の予算委員会でも、銀行が信用保証協会の二十兆の特別保証制度を悪用して旧債の振りかえ、すなわち新規の融資をこれまでの借金の返済に使わせているんではないかということが議論されました。横浜銀行のケースなどですね。金融監督庁長官、この問題の対応はどうなっていますか。

○政府委員(日野正晴)

 お答えいたします。
 信用保証制度の特別の枠が設けられまして、この制度を利用することになりまして間もなくのことだったでしょうか、十月の初めごろだったと思いますが、こういった問題が明るみに出ました。官房長官の御発言もございました。
 そして、私どもは早速、とりあえずはということで、十月の貸し出しの状況、特に中小企業向けの貸し出しの状況、信用保証協会の保証の金額、それから今御指摘がありました旧債の振りかえの金額などが十月現在でどの程度のものかということを十一月に調査させていただきました。
 その結果、金額的には都市銀行を中心にしまして約十九億円の旧債振りかえが認められました。大手十八行だけを中心に今調査させていただきました。信託銀行あるいは長期信用銀行といったところは余り中小企業に対する貸し出しがございませんので、旧債振りかえといった事例は認められませんで、主に都市銀行を中心に旧債振りかえが、十月だけでございますが、約十九億円認められました。
 しかし、一昨日でございますか、横浜銀行の問題が表に出てまいりまして、私どもといたしましては、これはむしろ都市銀行あるいは大手の銀行よりも、もっと地方銀行でありますとか第二地方銀行といったところも調べた方がいいのではないかということになりまして、早速、銀行法の二十四条に基づいて調査を開始させていただいたところでございます。
 ところが、昨日になりまして、今度は信用金庫にもそういった問題があるぞということを民主党の先生から御指摘いただきましたので、また早速でございますが、その信用金庫に対しまして今調査の指示を出したところでございます。
 これはどちらかといいますと、山は上の方よりも下の方にそういった事例がむしろ多いのかなといった感じを今のところ持っているところでございます。

○江田五月

 横浜銀行の例は、通達というのが私の手元にあるんですが、「当行としては、本制度を「貸出資産内容健全化の千載一遇の機会」ととらえ、最優先課題として徹底推進する。」と。まあすごいことを言うもので、千載一遇というのはいつかも聞いたことがあるなという気がいたしますが、庶民が困っているのを千載一遇の機会ととらえて自分のところがもうけるとか改善するとかという、まさにあってはならぬことでございますが、十九億円が旧債の振りかえと、今ちょっと調べただけでということなんだと思いますけれども、信用保証協会連合会の幹部の方はこれを公金横領ではないかとおっしゃったというようなことも聞こえてくるわけです。
 信用保証協会の約定書のひな形を私は手元にいただいておるんですが、これは通産大臣ですか、ひな形ですから全部がこのとおりになっているんじゃないけれども、恐らくこういうことを例にしながらつくられている。
 この手元にあります第三条は、「乙は、」、「乙」というのはこれは銀行です、「甲」というのが信用保証協会です。銀行は信用保証協会の保証に係る貸し付けをもって銀行の既存の債権に充てない。銀行が持っているこれまでの債権に充当しないものとする。「但し、甲が特別の事情があると認め、乙に対し承諾書を交付したときは、この限りでない。」と。特別の事由があって承諾書を、特に銀行に信用保証協会がこれは従来の債務の返済に充てていいですよという承諾書を出している場合だけはそうしていいですよということになっていて、しかも第三条の本文、つまり既存の債務に充てないものとする、これに違反したときには代位弁済を否認できる。
 十一条の「責を免れるものとする。」というところに「第三条の本文に違反したとき。」というのがあるんですが、これがきっちり守られているかどうか、調査をどういうふうにされていますか。実情をどう把握されていますか。

○国務大臣(与謝野馨)

 今、江田先生が御指摘になった約定書の一部でございますが、その条文の趣旨は、私どもが理解しておりますのは、要するに旧債の振りかえであっても借り手に有利になる場合には旧債振りかえということはあり得るだろう。借り手に有利になる場合は多分二つケースが考えられて、一つは借入期間が延びる、そういう場合と、もう一つは借入金利が下がるというように、専ら借り手側に有利に働く場合に旧債振りかえということがあってもいい。その場合、そういうことが起きたという承諾書をつけてくださいというのがその全体の趣旨でございまして、そういう場合に限って実は旧債振りかえという形になると私どもは思っております。それ以外は、やはり銀行がみずからの債権を形を変えて回収したにすぎないということでございまして、その場には、先生御指摘のように、約定に書いてございますように代位弁済を行わないケースもあるというかなり厳しい約定になっているわけです。
 しかし、実際にはそれぞれの個別の契約の間でどういうことが起きているかということは、こういう場合ですから、借り手の方が弱い立場にありますから、よほどきちんと調査をしませんと本当のことがわからない、多分それが江田先生の御趣旨だと思います。
 そこで、我々としては、もちろん中小企業庁を中心に地方の通産局、地方自治体の商工部関係あるいは商工会、商工会議所等々を通じましてあらゆる苦情、あらゆる御相談を受けておりますし、また相談を受けたものだけではなくてやはり時々はサンプル調査を行う、あるいは積極的に打って出て調査を行うということをやろうということを昨日通産省の中では決めたわけでございます。今までのように受け身で、こういう事例があったということではなくて、積極的に中小企業や借り手の立場を守るために行動しよう、そういうことを昨日までの衆議院の予算委員会の議論等を通じまして、また商工会あるいは商工会議所の既に出されておりますいろいろな報告書に基づいて、やはり受け身の相談ではなくて、むしろ積極的に関係機関が出ていって中小企業を守る、そういう立場で調査をし、指導をしていく必要があるのであろうと、そういうふうになったわけですし、また金融監督庁にも御協力をいただかなければならないと思っております。

○江田五月

 弁済期が延びるとかあるいは金利が下がるとか、それは借り主にとっては有利なことに違いないんですけれども、しかし旧債を振りかえすればそのくらいのことは起きますよね。新しい融資を受けてそれを旧債の返済に充てて弁済期が近寄るなんということは考えられないわけで、やっぱり弁済期は延びます。こういう時代ですから金利も下がるでしょう。ですから、その程度のことで債務者にメリットがあるんだから旧債振りかえはよろしいなんと言っていたら、それはどんな場合だって全部旧債振りかえがどんどんどんどん行われてしまいます。
 この約定書にある「特別の事情」というのは、相当きっちり考えて、それに大体債務者の方は、承諾しろと言われて、いや、承諾はしませんなどとはなかなか言いがたいもので、そういうときの承諾はしたけれどもいろいろな不満がある。これが私ども地元で酒を飲んでいたりしたらどんどん聞こえてくるわけですよ。
 今、信用保証協会特別保証枠二十兆、このうち既に七兆を超える貸し出しがあったということなんですが、このうち旧債振りかえがどのくらいあったか、これは今お答えはできますか。

○国務大臣(与謝野馨)

 今、先生言われた中で、期間が延びる、金利が下がるということを形だけでこれは旧債振りかえではないと言えるのかと言えば、そうではなくて、やはり旧債振りかえがあって、なおかつ借り手が有利になる、明らかに有利になる、そういう場合のみを認めているわけでございます。
 ただ、古い債権債務関係が新しい債権債務関係にどう変わったかというのは、一つ一つの事例の積み重ねをやらないとわかりませんので、やはり悪質なケースというものをどんどん指摘し、摘発していくということが私は現在とり得る手段であろう、そのように思っております。

○江田五月

 私は、二十兆の枠のうち既に七兆を超える貸し出しがあった、そのうち旧債振りかえは幾らあったか今お答えできますかと聞いたんですが、違う角度からのお答えになっていました。
 今のお答えですと、弁済期が延びるとか金利が多少下がるとか、その程度では債務者にメリットがあるから旧債振りかえを認めるということにはならない、そうお答えになったと解釈していいですか、それと最初の質問をお答えください。

○国務大臣(与謝野馨)

 形どおり有利になったということではなくて、やはり借り入れを起こす人が主観的にも有利になったという判断がなければならないと私は思っております。

○江田五月

 七兆のうちの幾らが旧債振りかえか。

○国務大臣(与謝野馨)

 それは、申し上げましたように、一つ一つの契約の内容を精査して積み重ねませんと出てこない数字だと思っております。

○江田五月

 今はまだわからないですね。お調べください。年末ですから、皆さんほかの仕事もいっぱいあるでしょうから、これを急いで調べろなどということは言いません。ぜひきっちり見て、監督をしっかりしていただきたい。
 いや、本当に総理、信用保証協会へ飛び込んで、特別融資があるというのでいろいろお願いをしたらやっと一千万認めてくれた、ところが、いや、おたくは前に七百万あるからこれを引きますよ、あと三百万ですよというようなことを言われる、特別融資、特別枠の意味ないじゃないかなどといって、もう怒られるわけですよ、僕らが酒を飲んでいますと。それで、いやあなたそれはと言って、これは僕の責任じゃないですけれども、そういう事例があるんです。それは現場の扱い方が、例えば不親切で説明がきっちりできていないのかもしれない、あるいはだれかの誤解があるのかもしれない。しかし、そういう上から見ているだけでは見えないことがあるんです。
 総理、今の中小企業の皆さんに対するこういう制度の運用についてどういう覚悟で御指導されるか。ちょっと総理としての決意を聞かせてください。

○国務大臣(小渕恵三)

 この内閣としての施策につきましていろいろ御批判をちょうだいいたしておりますが、そもそも今御質問になっております中小企業に対する貸し渋り対策に対しては、実は八月二十八日に対策大綱を設けまして、御承知のように四十兆の枠組みの中でこの問題を処理いたしておるわけでございます。
 特に、中小企業金融安定化特別保証制度につきましては、この二十兆円につきまして、今委員御指摘のように、既に七兆二千億を超えるお申し込みをいただいておるという状況でありまして、この点につきましては実は各党からも大変その施策についての評価をいただいておることは大変ありがたいと思っておるわけでございます。
 しかし、実際やってみますると、今のような旧債振りかえの問題等が起こってまいりまして、御指摘にありましたように、ある銀行などは千載一遇のチャンスだから旧債をすべてこの中で処理しようというような、もってのほかな行為が行われてきておりまして、野中官房長官が、前々、この問題について本当にはらわたが煮えくり返る思いがするというようなことを当時、その発端を見通しながらおりましたが、今なおそのことが大きく問題になっていることはまことに残念至極であります。
 我々は中小企業がこの困難に立ち向かって乗り越えるためにこうした措置を講じておるのが、ある意味では銀行救済のためになるのではないかなどということに相なりますれば、全くその本旨を外れることでございますので、今御指摘をいただいた点も含めまして、関係省庁挙げまして、通産省あるいは金融監督庁さらに一層の努力をしてこうしたことのないように、実際に中小企業の皆さんが資金繰りに困っておられるということに対してこの制度が十分生きていくように最善の努力をいたしていきたい、このように考えております。

○江田五月

 いろいろ修飾語がつきますとややこしくなるので、旧債振りかえをやったら信用保証協会は代位弁済しない、それが原則、そのくらいぴしっとお答えできませんか。総理、いかがですか。これは総理の所管じゃないけれども。

○国務大臣(与謝野馨)

 今後どう対応していくかということを概括的にお話し申し上げますと、まず第一は、やはり広範な調査を継続する必要があると思っております。第二は、やはり既往貸し付けの回収に利用されているケースが認められた場合は先生言われたように代位弁済を行わない、その旨を信用保証協会から各金融機関に改めて警告をするという必要があります。
 それからもう一つは、今は大変現場が込み合っておりまして、銀行員が保証の申請書を五通も十通も書いて保証協会の窓口で奮闘しているんですが、銀行員のみが旧債振りかえを含む保証案件を持ち込む場合には、書類だけで確認するのではなくて、中小企業者に対し保証協会が本人の意思を確認する必要があるという、その用心深さが必要だということにいたしたいと思います。
 また、金融監督庁と協力をし、サンプル調査を定期的に実施します。保証後の金融機関の融資状況をフォローし、組織的に問題のある金融機関については政府系金融機関、関係特殊法人の業務委託等から外すと。例えばお金を預けてあるのを引き揚げるとか、そういう厳しいことをやらなければなりませんし、また金融機関名を公表することも含めて検討しなければならないと思っておりますし、これは場合によっては自治省とも調整させていただいて、自治体の預託業務委託先から外すことも検討をしていいのではないかと思っております。
 また、金融監督庁にはお願いしなければならないんですが、銀行法に基づく業務改善命令の発動も含めて検討をしていただく場合も出てくるんだろうと思っておりまして、この問題は江田先生御指摘のとおり、口だけで言っているだけでは直らない。やはり公の機関はこの問題に厳しく対応するということを示さなければならないと思っております。

○江田五月

 この問題は実はあと平田委員にお願いをしておったところで、ちょっと深入りし過ぎまして、済みません。本論。
 さきの臨時国会の金融経済特別委員会で、私は、参議院選挙後の政治状況、これは衆議院で首班指名を受けて総理大臣となった小渕さんのチームと、参議院で首班指名を受けた、これは受けただけですが、我が党の菅代表のチームとこの二つのチームが次の総選挙までの間どちらが国民の皆さんの信頼を獲得するか、その信頼獲得競争の時期だと申し上げました。そういうつもりで私どもも私どものチームの信頼獲得に全力を挙げなきゃならぬ。最近ちょっとこちらのチームも国民の皆さんの信頼が揺らぐような問題も起きておって、これは私たちも大いに反省をします。きょうの新聞も支持率急落になっていますから、大変だと思っています。一生懸命頑張りますが、皆さん方に対する追及も一生懸命やっていかなきゃならぬと思います。

 小渕チームの方も大きな動きがございましたね、自民党と自由党の連立合意。これはどうもまだよくわからないんですが、つまり自由党と皆さんが政権をともにして新たな理念、政策を打ち出して新しい政治をやっていくんだというのか、それとも、何か高いハードルはあったけれども、だんだん下がっていって、何か自由党というものを上手に自民党の巨大な胃袋の中にのみ込んでしまって消化吸収して最後は種をぴっと吐き出すというような、小渕流というんですか、総主流派体制をつくって、来年の自民党総裁選での再選、その方便として、政略としてやっていらっしゃるのかよくわからない。
 いろいろおっしゃることがどこまで信頼できるのかということがわからないからということなんで、最近の事例で重要閣僚お二人のおっしゃることがどうも相当変わっておられるんではないかということを感ずることがありますので、まずそういう点から聞いていきたいと思います。
 重要閣僚お二人がともに信義にかかわることで閣僚を辞任されると受け取れるような発言をしたかに報道されているわけで、宮澤大蔵大臣が派閥の会長を加藤紘一さんにお譲りすると。それに当たって、蔵相の職にとどまることは信義にもとることになるのでやめる、そういう発言をしたと報道されているんですが、どういうことですか。

○国務大臣(宮澤喜一)

 これは、私が私的な事情を述べましたことからそのような報道になりまして、これは申した私が悪いんですが、いろいろ御心配をおかけしたことを申しわけなく思っていまして、小渕総理大臣に対して私はそのようなことを一度も申し上げたことはございません。
 したがいまして、職責を与えられております限りは、全力を尽くしまして国政に遅滞のないように努力をいたすつもりでございます。

○江田五月

 派閥の会長を譲ってそれでもなお閣僚にいるということは信義にもとるという、その信義というのはよくわからないので、何が信義でどうもとるのかをちょっと説明してください。

○国務大臣(宮澤喜一)

 それは申すべきことではなかったのでありましょう。私が心の中で思いましたことは、将来、若い人を守り立てていかなければならない立場にあるので、そういう立場で小渕首相にお仕えすることは自分としてちょっと気持ちが相済まぬところがあるということを、口に出して言わなくてもよかったことであったと思いますが、そういう気持ちであったわけです。

○江田五月

 口に出して言わなくてもいいことだけれども出しちゃったわけですから、心の中はそういう信義にもとるなという気持ちがおありだということなんですね。

○国務大臣(宮澤喜一)

 そこは、私の気持ちと公のこととを政治家として整理をしなければならない問題だと思います。

○江田五月

 つまり、よくわからなくなってくるわけで、それがどうも国民が政治家というのはよくわからぬなという、そういう気持ちを持ってしまう理由になると思うんです。
 野中官房長官の場合はもっとすごいんですが、「私は闘う 野中広務」「小沢一郎、大蔵省、オウム真理教」というなかなか立派な本で、この中で、これも信義なんです。
 115ページというところで、「政策が似通っていようが、政治の原点は信義であり、それが政治をやっていく芯である。従って自民党を脱走したような信義をわきまえないような人たちと再び手を組んで、この国の将来を一緒にやっていくことは政策以前の問題である。」云々と。そして、「先輩の梶山静六さんにも会って私の考えを伝えておいた。「いくら梶山さんかて、あれだけ大きな内輪もめで世間に迷惑を掛け、日本を混乱させた連中と手を組むようなことには、わしが一人になっても反対しまっせ」」と、こうお書きですが、このときの信義、これと今、自自連立は野中さんがずっと推進をされたと言われるんですが、これは信義はどうなるんですか。

○国務大臣(野中広務)

 政党と政党が連携したり連立をする場合に、いろいろなケースがございます。私どもも、江田先生初め、それぞれ細川内閣を樹立され、あるいは羽田内閣になってきた経過を知っておりますけれども、そのときに一々他の党から、私どもから連立のあり方について質問をしたことはございません。自由党の皆さんから私の問題について御質問をいただくならば、それは私はお答えをするべきこともあろうかと存じておるわけでございます。
 いろんな表現が今使われましたけれども、私は、自分の一回きりの人生でございますから、そしてその人生も残り少のうございますから、一日一日を自分の責任の持てる立場で歩んでいきたいと考えております。

○江田五月

 細川内閣でも羽田内閣でもいろんなことがありました。批判をしたことはないとおっしゃりますが、そんなことはありません。批判もされました。それはいろいろあります。ありますが、問題は信義ということなんですね。信義にもとるんだと、小沢一郎という人と腕を組むとと、こう書いているんです、本で。それで一日一日を精いっぱい人生を生きていくんだと。これは過去のことだからもうほごだと。この本を買って読んだ方々には何とおっしゃるんですか。もうどうぞ古本屋にでも持っていってください、シュレッダーにでも入れてくださいと。これはほごですか、この本は。

○国務大臣(野中広務)

 私は自分の言葉と自分の行動に責任を持っておるつもりでございます。

○江田五月

 野中さんは、その後自自連立の合意後に、小沢氏と対決してきた自分が変節して自由党と一緒になったと批判を受けている、これは自分みずから歩んだ道にけじめをつけなければならない、講演などでそういうお話をされた、辞任を示唆されたというふうに報道されているんですが、おやめになるんですか、ならないんですか。

○国務大臣(野中広務)

 自分の言葉と残した活字に責任を持って行動をしてまいるつもりであります。

○江田五月

 つまり、そういう責任を持つといったって、どう責任をとるのか。まあもうちょっと見ていてください、ちゃんととりますからということかもしれませんけれども、まさに信頼が置けない。何をどう信用していいかわからない。
 ここに合意書をちょっと大きくしてみました。(図表掲示)
 小渕内閣総理大臣・自由民主党総裁、片や小沢一郎自由党党首と、いずれもなかなか字がお上手で立派な字をお書きになっていますが、書いてあることは果たしてどこまで信義というものがこの中で貫かれているのかどうか。
 まず幾つか聞いてみたいんですが、もう時間の方がどんどん来ておるんですけれども、小渕総理、これは特にもう一つ別の政策の方です。(図表掲示)

 小沢さんは、国連軍への参加、これは認めるということなんだ、憲法の解釈は変えるということなんだ、こうおっしゃっている。小渕総理は、そうじゃないとおっしゃっている。それは、両方の認識は違うということなんだろうけれども、お二人でお話されたときには、その国連軍という言葉は、憲法解釈という言葉、こういう言葉は出たんですか、出ないんですか。

○国務大臣(小渕恵三)

 公にすべきことはすべてこの合意書にしたためられております。その合意書の前提は、「いま直ちに実行する政策」として、小沢党首からお預かりいたしました三点にわたる諸点につきまして、私は基本的方向としては一致をし、そして合意をもって両党首が署名した、こういうことでございます。

○江田五月

 公にすべきことはここにあると。公にすべきでないことがほかにあるという意味ですか。

○国務大臣(小渕恵三)

 今の点について触れますれば、政策として御要請のありました第二点、「国民の命を守るために」、すなわち安全保障ということでございますが、その(1)のA、「国際連合の総会または安全保障理事会で国連平和活動に関する決議が行われた場合には、国連の要請に従いその活動に参加する。」。すなわち、国連の平和活動ということにつきまして合意をして、この平和活動なるものはいろいろな諸点があります、逐一この点ということですべて過去にさかのぼって、戦後の安全保障全体にわたりまして諸問題について一つ一つテーマを定めてその合意をしたと、こういうことではありませんで、総括的に、このことを踏まえて、ともに安全保障に対する基本的姿勢としては、お互いにこれから十分協議をしながら進めていこう、こういうことになった次第でございます。

○江田五月

 よくわかりません。
 二つだけ最後に聞いて。この「いま直ちに実行する政策」の中で、Tに「国会の政府委員制度を廃止し、国会審議を議員同士の討論形式に改める。」、それから「大臣、副大臣、政務次官あるいは政務補佐官として政府に入り、」云々というこの二つがあります。私ども基本的に賛成です。二つ聞きます。

 一つ。この小渕内閣の閣僚の皆さんは、Tの点、国会議員同士の討論形式を行う、政府委員制度は今あるけれども、政府委員に答弁を振るということはしないかどうか。これはもうやらないと言えばそれですぐできること。それが第一点。

 二点目。大臣それから副大臣、政務官、政務補佐官、こういう関係について、それから政務次官制度をやめることについて私ども民主党は昨日法案を提出いたしました。賛成をしてくれるかどうか。
 その二つの点を伺います。

○国務大臣(小渕恵三)

 きのう提出したから今賛成しろと言われましても、余りに早急過ぎることでございますので、十分検討をさせていただきたいとは思います。
 それから、私は基本的にこの問題について深い関心を寄せておりますことは、やはり基本的には従前いわゆる官僚中心の政治が行われておったのではないかという批判があります。我々も長らく国会に籍を置かせていただいて政治家としての任務を懸命に務めてきた立場からいえば、いわゆる政治優位といいますか、そうした形でなければならない、こう考えておるわけでございます。
 そういった意味で、この副大臣制度等につきましても、かねて民主党でもそういうお話でいろいろと御検討されておったことは承知をいたしておりますし、私も、そうした観点に立ちましてイギリスの制度その他勉強させていただきますと、極めてこの問題については本質的な問題があろうかと、こう考えておりますので、この点につきましても、自由党からの考え方を承りましたので、現在、政府といたしましてはこれは総務庁長官にもきちんとその問題について検討を命じておりますが、同時にまた党としても、十分この問題について真剣な勉強をしていただくようにお願いをしておるところでございます。

○江田五月

 政府委員に答弁を振るようなことはいたしません、閣僚にそういうことはさせないようにちゃんと申しますと、そのことはいかがですか。

○国務大臣(小渕恵三)

 私も、みずからのことを申し上げて恐縮ですが、三十五年間国会におります。そういう中で、与党にも、ほとんど与党ですが、野党になりました場合もあります。やっぱり国会での論戦その他を通じまして、大臣あるいは政務次官がみずから御答弁申し上げられること、これは基本的な政治的な考え方については当然かと思いますが、詳細な数字その他にわたりましてすべてこれを答弁することはなかなか難しいことだと思っておりまして、その点については参考人というような形でできるかなという気は実はいたしておりますが、こうしたことも、国会のあり方等のことも含めまして我々も真剣に考えていかなきゃならない問題だと、こう考えております。

○江田五月

 この両党党首の合意は、内閣総理大臣という肩書も入っていますが、単にお二人が何か合意したと、また会って、いやあそこはまずいから変えようねとか、ここはもうやめにしておこうねとか、そういう種類のものじゃないと思うんです。やはり小渕内閣はこういう方向で政治をやるんだということを公党と公党の代表で合意をし、国民に約束をしたものじゃないですか。約束をされているんですから、やるべきことはやってください。やっていけないことは我々が批判をし、そして抵抗し、やめさせます。別の方向を示します。ぜひそういうめり張りのきいた政治をやっていただきたい。

 私の質問を終わります。


1998年12月 9日

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