1998/10/06

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参院金融特 総括質疑


○江田五月君 民主党・新緑風会の江田五月です。

 きょうは、テレビを通じて多くの国民の皆さんに今、国会で与党と野党が当面する我が国の金融危機、そして経済危機に対して一体何をどう議論しているかということをわかっていただくそういう非常にいい機会ですので、まず、私たち民主党のこの国会に臨む基本的な考え方というのを申し上げておきたいと思います。

 七月の参議院選挙で国民の皆さん、当時の橋本内閣に対して、特にその経済政策に対して不信任のレッドカードを突きつけたわけですね、自民党が大敗。その結果、橋本総理は退陣をする。そして小渕さんが自民党総裁になられ、衆議院では小渕さんが総理大臣に指名をされる。しかし、参議院の方はちょっと違っておりまして、私たち民主党の菅直人代表が多くの野党の皆さんの協力をいただきまして、百四十二票対百三票というかなりこれは大差、こういう大差で菅直人さんが総理大臣に指名をされるということになりました。

 憲法の規定で衆議院の方で指名された小渕さんが国会の指名ということになり、内閣をおつくりになるということになったわけですが、今の国会の状況は、衆議院の小渕総理大臣と参議院の菅直人総理大臣と二人の総理大臣がいるというそんな感じになっている。したがって、私たちは次の衆議院の総選挙までの間に、小渕チームともう一つの菅チームとこの二つのチームが国民の前でどちらの方が本当に政権担当能力があるのか、どちらの方が本当に国民に信頼して政権を任せてもらえるのか、その競争をする、信頼獲得競争をやっている、そういうときだと思っております。

 そういうわけで、私どもも従来の野党とは違うと、政権獲得競争をしているんだから、今の小渕チームがお出しのものに対して単に反対という態度じゃなくて、それなら菅チームならどういうことをやるのかということを堂々と示していく、そういう立場で対案を出し、議論を尽くし、そして結論を出していく、そういう方針で今日までやってきているわけでございます。

 特に、今焦点になっている金融問題について、これは我が国だけでなくて世界の重要問題になってきている。しかも、極めて短時間のうちに誤りのない正しい結論を出さなければならない。随分おくれて、この国会もあすが会期末でございますが、やっときょうからこの委員会での実質審議が始まったということでございます。しかし、私ども参議院の側でも、これはそんなに時間はないんだ、だらだらやっているわけにいかない、こういうことは十分我々は認識をしてやっていきたいと思っているわけです。

 しかも、それはこれまで失敗を重ねてきた政府の従来型の考え方を改めて、新しい原則のもとに確立される、そういう政策でなきゃならぬ。なかなか大変な議論の結果、結局政府案はまだ取り下げてはいないんですかね。しかし、政府案はわきに置いて、野党三会派の案にみんなで手直しをして衆議院を通過させて今参議院に来ている、そういう状況。

 つまり、この野党三会派の案にみんなで手直しというときには、あそこにおられる津島さんにも、あるいは先ほど御質問なさっておられた塩崎さんにもいろいろ加わっていただいて英知を集めたというふうに聞いておりまして、私はこれはなかなかいい政治の動きになっていると思っております。ポイントは、内閣が責任を持って出した法律案を内閣がみずから引っ込める、そして野党の方がみんなでまとめた案をみんなで手直しをして成案にしていく、そういう時代になっているということなんです。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、なかなかここに来るまでに時間もかかりました。その時間のかかったことについては、私どもは政府・自民党はなぜもっと早く結論を出してくれないんだ、こう言いたいところですが、これはほかの見方もあるいはあるかもしれません。

 しかし、いずれにせよそういう過程で時間がかかりましたが、時間をかけてここまで来たことについては成果も随分あった、なかなかいい案ができたとか、あるいはそのほかにもこのプロセスの中でこんなことができましたよという、いろんな成果が上がっているんだと思うんです。

 民主党の提案者の方に、簡単で結構ですが、この間の総括といいますか、こういういい点があったということを、ぜひ国民の皆さんにわかりやすくお話しいただきたいと思います。

○衆議院議員(池田元久君) お答えをいたします。
 まず、この金融再生法案の審議といいますか、作成、提出、審議、修正、いずれの段階でも今回は政治主導でやることができたのではないか。もちろん、修正協議の段階で直接の当事者の陰の方には多少役所の影が見えないことはなかったんですが、おおむね政治主導を貫くことができたということがまず一つ挙げられると思います。

 それから、現在の大変な金融危機に対して、私たち三会派としては、とにかく本格的、包括的な危機対応策を立てようということで提出をしたわけでありまして、政府提出のブリッジバンク法案と異なりまして、本格的、包括的な処理スキームができたことが二つ目に挙げられるのではないかと私は思います。

 それから、現在の金融行政はばらばらです。預金保険機構は大蔵省の監督、そしてその中に金融危機管理審査委員会がある、そしてもともと大蔵省には金融企画局がある、それから金融監督庁はできましたが主務大臣は総理大臣、等々ばらばらでございまして、この危機に当たって、金融行政の一元化へ向かって大きく前進できたということが第三点であると私は思います。

 以上三点、とりあえず挙げさせていただきました。

○江田五月君 三点挙げられました。政治主導、それから包括的な本格的なスキームができた、さらに金融行政の一元化、財政と金融の分離と言ってもいいかもしれませんね、そういうものについて道筋が描かれた。

 私はさらに、この間、確かに野党もしつこく抵抗、抵抗ばかりじゃないんですが、それじゃだめだと強く言ってきた面もあって、臭い物にふたというのがなかなかできなかった。そのためにいろいろ、ふたがとれてきて、例えば長銀はどうであったか日本リースはどうであったか、そういうものが明らかになってきた。明らかになってくることによって、これではいけないというので、銀行の中でも自助努力という芽が次第次第に出てきているんじゃないか。今までの護送船団でとにかくもう大蔵省にすがっておけばよろしいということではだめだという、そういう感覚というのが次第に銀行、金融機関の中でも出てきているんじゃないかという気がします。

 あるいは、例のこの三月の安定化法による資本注入十三兆円、まことに国民から見たらけしからぬというスキームが廃止をされる方向がちゃんとできてきた。それにかわって、十三兆円の安定化スキームの換骨奪胎の早期健全化スキームになったんでは次のスキームはいけないので、ああいうものの欠陥をしっかりと補って、本当に意味のある早期健全化スキームをみんなの責任でつくらなきゃならぬ。ただ、どうも津島先生が換骨奪胎という言葉を使われて物議を醸したようですが、換骨奪胎風のことが今行われているんじゃないかとちょっと心配ではありますが、そういう状況で、私はこのみんなでつくった案というのはなかなかよくなってきていると思うんです。

 ちょっとパネルを示します。(図表掲示)こういう案なんですね。金融再生委員会というのがありますが、これをつくる。ここが中心になって、その中に金融監督庁も入り、この委員会の委員長は国務大臣。この金融再生委員会が、こっちにあります破綻金融機関、これは被管現金融機関であるとかあるいは特別公的管理銀行とか、そういう方向に移していく。それだけでなくて、破綻のおそれという、この下の方にありますが、こういうものについても特別公的管理に移していく。そして、公的ブリッジバンクというのも入れて整理していく。整理してだめなものはきれいに整理を済ませて清算に向かっていく。ちゃんと生き残るものは生き残るで民間の金融機関に渡していく。不良債権は整理回収機構、この辺にありますか、こちらへ全部集めて回収していく、こういう案。これはどこでも出ているわけですが、きょうは国民の皆さんによくわかっていただこうと思ってつくってきたんです。

 こういう案になってきたということ、これはなかなかいい案になってきたなと、総理、いかがですか、そう思われますか。それとも、泣く子と地頭じゃなくて泣く子と野党にはかなわぬというので筋が曲がってしまったなと思われますか、いかがですか。

○国務大臣(小渕恵三君) まず、ただ一人の内閣総理大臣として、責任を持ってこれから全力を挙げて努力をさせていただきたいと思っております。

 現下、憲法によりまして両院がございまして、すばらしい衆参両院の議院の中で政治が行われている現状を十分認識しながら対処していく必要があろうかと思っております。

 そこで、段々の経緯はございますけれども、党首会談を行いまして、その結果、今回それぞれ大変御苦労をいただきまして修正案が出てまいりまして、こうした形での御審議をいただいておるということでございます。

 政府といたしましては、当初提出をいたしました法案はそのままの形に相なっておりますけれども、現在提案されております衆議院で通過いたしましたこの案につきまして、一日も早くこれが成立をさせていただきたいと心から念頭いたしておりますと同時に、あわせまして早期健全化スキーム、これまた極めて重要なことだと心得ておりますので、ぜひ与野党ともこの問題につきましての熱心な御論議もいただき、これまた政府といたしましては通過させていただいて、ともどもに一日も早く金融の安定を行い、日本から少なくともこうした金融の問題に発しての世界に対してのメッセージを明らかにしていかにやならぬ、このように考えております。よろしくお願いいたします。

○江田五月君 まことに私は残念なんですね。
 ちょっとごめんなさい。今の小渕総理のことは後回しにして一つだけ。

 宮澤大蔵大臣は、前の政府案に比べて今のこの案はよくなったというふうにお思いですか、それとも筋が曲がったとお考えですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) もともと衆議院で法案を御審議いただきました冒頭に、私は政府案が必ずしもベストとは申し上げません、新しい状況でございますから、いろいろお知恵が出て、その結果いいものができるという可能性は十分ございますので決してこだわりません、イデオロギーもございませんしと申し上げておりましたので、御審議の過程で確かに非常に有益な御指摘もありましたし、その結果として衆議院の多数の御意思としてできましたので、これは尊重して立派にこのとおりやっていかなければならないと思っております。

○江田五月君 大蔵大臣、所用だそうですがらどうぞ御退席ください。

 総理大臣、じゃ伺いますが、私は先ほどは確かに菅総理ということを言いましたが、現実に小渕さんがただ一人の総理大臣であることを否定しているわけじゃ全くありません。だからこそしっかりしていただきたいんですが、どうも今のお答えを聞くと、内閣が出された案は結局わきへ置かれて、そして野党三会派の案をもとにみんなで修正してここまで来ている。それはよくなったというふうに思われるのか、それともねじ曲がったと思われるのかということを聞いたのに、いっぱいいろんなことをお話しになりましたが、その肝心なことにはお答えになっていないんですよ。もう一度答えてください。

○国務大臣(小渕恵三君) 議会制民主主義のもとでは国会における御意思が最もたっとぶべきものだと心得ておりまして、政府といたしましては御提案はいたしておりますが、その後の段々の経過の中で与野党も真剣にこの問題にお取り組みいただきまして、衆議院におきましてこれが通過をして本日参議院で御審議をいただいておるわけでございますから、その内容につきましては、私自身も政府の責任者とし、かつまた自由民主党の総裁として、党の立場でのこの問題に対しての対処につきましてはこれを一任して御審議をいただいてきたことでございますので、その結果生まれましたことはこれはすばらしいことであるというふうに考えております。

○江田五月君 すばらしいことであると言われましたが、すばらしいものであるとはどうも言われなかったんです。

 津島さん、率直にお答えください。いいものになったと思われますか。

○衆議院議員(津島雄二君) 先生の絵と同じようなものを私ども描いておりますが、今びっくりしたのは、ほとんど全く同じように描いてあります。

 それで、私は、でき上がったものは大変立派なものになった。そして、この勉強の過程で与野党が本当にこれだけ真剣に議論して、それぞれ学ぶところが多かったと、かように思っております。
 以上でございます。

○江田五月君 そういうことだと思うんですね。やはり、そこは率直にみんなでお互い話を交わさなきゃいかぬと思うんです。

 私は、本当にこれまでの政府の金融問題に対する政策というのは失敗の連続だったと思うんですよ。住専問題から始まって昨年の山一証券、北海道拓殖銀行、今年三月の大手十九行に対する横並び公的資金注入、いずれもその場しのぎであって一貫した原則、ルールがない。六月の金融再生トータルプラン、ブリッジパンク構想、これはすぐに大手銀行に使えないということが明らかになってしまう。

 何が問題だったかといいますと、やっぱり今の金融情勢に対する認識の甘さですよ。例えば三月のときに、どの銀行も破綻のおそれはないといってずっとやっていくわけです。しかし、実際はそんなことはなかったんじゃないか。六月の段階では、もう本当に日本の金融の危機はかなり進行していた。それなのに、まさか大手が破綻するなんてことは夢にも思っていなかったんでしょうね。大手の破綻というのを想定しない。したがって、それに使えない、そういう案を出してこられる。それが今度の金融再生法案というか政府の方の案です。

 八月に、私どもは野党三党で、これではいかぬというので我々の対案を出した。その前の三月のときにも、私どもは、そういうやり方は違う、今の金融状況というのはそんなものじゃないということで批判をした。そして、九月十八日には党首会談で合意がなされた。ところが、やはりその基本にある今の危機についての認識というものがかなり食い違っていたのか、政府・自民党の方からはいろんな不規則な発言が出てきたわけです。

 今やもう大手も倒れるということが起き得ると。あるいは、国際社会の中で本当に日本の銀行の資金調達が苦しくなっておる。ジャパン・プレミアムというけれども、ジャパン・プレミアムを払ったってもう調達できないというような事態が起きておるとか、日銀総裁が週末にワシントンで開かれた一連の国際金融会議で、日本の銀行の状況は大変だ、四%を下回る大手銀行もあるとか、いろいろきょうの新聞も、あるいはロイターでしたか通信社もそういうことを報じておるわけです。

 この事態をしっかり認識してちゃんと対応策を立てるということが今までずっとなくて、今も一体小渕総理にそういう認識があるのかどうか私はいささか疑問に思っておるんです。

 今昭和の金融恐慌以来の危機だと。昭和の金融恐慌は我々だれも経験したことがない。それが今来ているので、これはもうすべての知恵を集めて乗り切っていかなきゃならぬということが言われているわけです。私は、例えば戦後改革、これはやはり大きな日本の改革だったわけです。軍国主義から平和主義へ、あるいは全体主義から民主主義へ、国家主義から基本的人権へと新しい原則を打ち立てて、私どもはあの危機を乗り切ってきたわけです。今、事は金融の問題だけじゃなくて、例えば財政のことでも行政のことでも地方分権のことでも、そういう新しい原則のもとに新しいものをつくっていかなきゃいけない。

 堺屋長官に質問は通告しておりません、質問じゃありませんが、十六年体制と言われる、あるいは一九四〇年体制と言われる、それを変えていくという、それだけの大きな原則を持った金融改革というものを今やらなきゃならぬ。恐らく、堺屋さんは同じようなお気持ちをお持ちだろうと。うなずいておられます。質問はしません。

 そういうことで、もう一つパネルをつくってまいりました。(図表掲示)こういう従来の原則というのをこちらに書いておりますが、大蔵主導で護送船団で情報非公開、責任追及はない、問題は先送り、破綻の場合はその場しのぎ、これでずっとやってきた。それを変えなきゃいけない、その原則を変えなきゃいけない、これがこちら側にあります金融再生委員会主導。これはもちろん政治が大いに関与していくわけです。あるいは、護送船団でなくて自己責任、情報は公開をしていく。もちろんそれはいろんな縛りはあるでしょう。しかし基本は、情報は開示をしていく、責任追及はするんだ、原則で迅速な処理をする。破綻については公的な管理をして、ちゃんと国が責任を持っていろんなシステミックリスクその他につながっていかないようにやっていくんだという、そういう原則の大転換をやらなければいけない、そういうときに来ているということだと思いますが、今度の野党共同案に対する共同修正案というのは、まさにそういう原則を打ち立てたということで私は画期的なんだと思っております。

 参議院で野党が多数だということもございますけれども、参議院で野党が多数だからその力でこういうふうになってしまったんだというんじゃなくて、従来の政府案というのは、今申し上げたような大蔵主導、護送船団云々という、こういう古い原則があった。しかし、今必要なのは新しい原則に基づいたものをつくっていくんだ、それが野党三会派案だったんだということで、私は、参議院の多数ということもさることながら、そういう原則の大違いということで政府案がわきに置かれ、この野党の案が今、日の目を見ようとしている、その必然性があるんだ、そう思いますが、小渕総理、いかがですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 現下の金融問題、再生問題、これが喫緊の問題であることにつきましては、私とて、江田先生を初め諸先生方と人後に落ちるものでないという認識をいたしております。さればこそ、この内閣を組閣いたしまして以来、最大の課題では経済再生であり、経済再生をするためには景気を回復しなきゃいけない。景気を回復するためには現下の日本の金融システムを安定化させていかなければならない。すなわち、体の中で最も心臓部分である金融機関、これを流しておる血液たる金融、こうしたものが健全化しない限りにおいては真の日本の経済の回復はあり得ないという認識のもとにおいて、政府として法案を提案させていただいて、この八月にも国会を開いて御審議をちょうだいしてきたわけでございます。

 そういう過程の中で、今回、与野党の話し合いによって今日こうした事態に対処しておるわけでございますので、先ほど来申し上げておりますように、一日も早くこれらの法案を成立させていただき、できる限り早くこの問題に対する日本側の姿勢というものを明らかにしていかなきゃならない、このように考えております。

○江田五月君 小渕総理、この野党の共同案に対する修正ができた。この案が間もなく参議院で成立します。そして、あなたはこの一番重要なところ、総理大臣なんです。あなたは総理大臣。わかりますね。いいですか。この野党三会派案にみんなで手直しをしたこのスキームをあなたはちゃんと動かす、そういう気概をお持ちですか。もしお持ちでないなら私たちは別の運転手をつくらなきゃいけない。いかがですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 今法案の御審議をちょうだいしておるところでございますので、法律案が法律案でなくして法律として話生いたしますれば、それに基づいて政府は行政的責任を負い、その行政の最高責任者は内閣総理大臣、このことは十分心得て対処いたします。

○江田五月君 私どもは、野党みんなで知恵を集めて最初の案を出し、それを基礎にして自民党の若手の皆さん方にも知恵をかり、立派な車をつくったと思っています。しかし、その運転手がだめだったらこれはどうしようもないので、ひとつ本当にしっかりしていただきたい、だめならかわっていただきたい、そのことを申し上げて、午前の質疑を終わります。(拍手)

○委員長(坂野重信君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。


○委員長(坂野重信君) 債権管理回収業に関する特別措置法案外十一案を議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。
 ここで答弁者の各位にお顎いがございますが、議事の進行上、答弁は橿力簡潔かつ明確にお願いしたいと思い、一言お願い申し上げておきます。
 質疑のある方は順次御発言順います。

○江田五月君 民主党・新緑風会の江田五月でございます。午前中に引き続いて質問をさせていただきます。

 パネルをちょっと。(図表掲示)午前中、このパネルをお示しいたしまして小渕総理にお伺いをしました、こういうものができますよと。これは、総理が内閣を代表してというか、お出しになったのは大蔵大臣でしょうか、内閣がお出しになった法案をわきに置いて、野党三会派の案にみんなで手直しをしてつくったものでございまして、こういう言ってみればすばらしい車ができた。運転手が本当にこの車を乗りこなせる運転手じゃなきゃ困るわけで、小渕総理、あなたが今運転手ですから。もし運転手がこの車を下手に動かしたら、私たちは運転手をかわりなさいと言わなきゃいけないのですが、それについて覚悟のほどはいかがですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 先ほども御答弁申し上げましたが、今この参議院におきまして御審議をいただいておるわけでございます。各党間でお話がまとまり、法律が制定されれば、それに基づきまして行政府の長といたしましてその責任を十分果たしていきたい、このように考えております。

○江田五月君 それで、長銀のことについて具体的に伺いたい、日本長期信用銀行、長銀をどういうふうにこれから処理していくのかについて。

 私どもは、このできたスキームで、ちょうどここのところに書いてある特別公的管理銀行というのがありますが、長銀はもうここへ移っていくしかないんではないかと思っております。また、党首会談のときにもそういう合意になっておると理解をしておるんですが、例えば総理のきのうの本会議の答弁を聞かせていただいても、与野党で一緒につくった新しい枠組みが早くできることを期待する、さらに長銀については適応可能な新しい法律で処理をすると、そういうようなおっしゃり方で、どうもそこがひとつあいまいなんです。

 長銀はこのただいまお示ししたスキームで特別公的管理銀行として処理をするということでこれはよろしいんでしょうね。確認をしておきます。

○国務大臣(小渕恵三君) 本会議でも申し上げたと思いますが、長銀問題につきましては、与野党合意において、これに適応できる特別公的管理の枠組みを確定し、新しい法律で規定した上で対処することとされたところでございまして、政府といたしましては、与野党合意を踏まえた修正された新法が成立されることを望みますとともに、新しい利用可能な枠組みの中で対処いたしていく、こう御答弁申し上げておりますが、そのとおりでございます。

○江田五月君 そのとおりというのは私が申し上げたとおりということでよろしいんですね。つまり、一番最後にこれに適応できる新しい枠組みというのがちょろっとつくと、それは何か別のことを考えているような、この間随分やりとりが、どうも微妙なところでいつも食い違いが起きて、それが後々議論になるということがあるものですから、そこをあえて重ねてもう一度確認しておきます。

○国務大臣(小渕恵三君) これは重ね重ね申し上げますが、今御審議をいただいておりますので、これは与野党で話し合った過程で、参加された政党もございますし、そうでない政党もあるかと思います。したがいまして、本院で決定されましたその法律に基づいて対処するということでございます。

○江田五月君 そうしますと、総理は、ちょっとくどいようですが、九月十八日の党首会談の後一も、長銀については債権の放棄をし、そして住友信託銀行との合併という形で処理をするということをその後もおっしゃったことがあるんですが、しかし日本リースのああいう状態などを考えるともうそういう道はないと、これは確認できますね。

○国務大臣(小渕恵三君) これは今提出者がそれぞれお答えをされておりますが、そうしたことのお答えの中で本委員会でも最終的な話し合いがまとまり、その法律によりまして対処するということでございます。

○江田五月君 長銀が関連ノンバンクに対して持っている債権を放棄するということは、もうこれは国民的にも許されないし、官房長官もそういうことはもうできない、国民にも支持されないということをおっしゃっているし、そうしたことはないんだと私は理解をいたします。どうもそこがまだすきっと答弁をいただけないんですが、そう理解をします。

 さて、新しい原則の中でも最も重要なものは、やはり情報公開といいますか情報開示だと思います。幾ら処方せんのメニューがそろっても、どうも検査結果のデータがちゃんと出てこないと診断のしょうがない。午前中にもいろいろそういう議論がございました。

 もう一枚パネルを実は用意しておりまして、これはこういうパネルなんです。(図表掲示)十月一日付の日本経済新聞の記事の一部をパネルにしてみたんですが、「大手十八行の自己資本比率」、本年九月末の速報値ということでございます。この括弧の中は三月末のもので、これは公表されております。

 これで見ると、日本の大手銀行はすべて国際基準を満たしておる、すべて健全であるということになるんです。どうも私たちとかあるいは世界の人々の認識とは大分違うように思います。

 これについて、宮澤大蔵大臣、先日、十月一日でしたか、衆議院の予算委員会で、我が党の鳩山由紀夫議員のこの点についての質問になかなか微妙なお答えをされておって、こういう数字は、まあ各行それぞれのやり方でやっているんだけれども、十分金融監督庁の検査の結果を見てみないとこれでいいかどうか、これが正しいかどうかわからぬ、これならそれはもう全然心配ないんだけれども、果たしてそんなものかなと、そういうふうに聞こえるような答弁をされているんですが、こういう数字をごらんになって、これはこういう認識でいいということですか、これは違うということですか、どちらですか。

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御紹介くださいましたようなことを鳩山委員に実は申し上げました。九月中間期の決算はまだ出ていないはずでございますから、それはある程度推測をしたのかもしれませんが、一般的な常識として今の日本の十九行の姿がああいう姿だというふうにはどうも正直言って思いにくいので、それであのように実は申し上げたわけでございます。

○江田五月君 いや、だから本当に困ったものだと思うんです。こういう数字で見ますと、これ三月のときの数字と、中にはよくなっているものもあったり、ほぼもう同じなんです。ところが、三月から九月までの間、経済状況は随分変わってきている、株価も随分低落した、景気あるいは企業実績悪化、倒産はふえている。数字がほとんど変わっていないというのはどういうことなのか。

 こういう自己資本比率ですと、それは確かに早期健全化スキームを急がなきゃなりませんけれども、しかし、きのう、きょうあたりの与党の方の焦りぶりといいますか、もう一時間を焦るというようなことではどうもない。しかし、あるいはひょっとしたらこうじゃなくて、もっとぐっと悪いのか。

 金融監督庁長官、この数字をごらんになってどうお感じですか。

○政府委員(日野正晴君) ただいま江田委員がお示しになっているのは日経新聞の記事であろうかと思いますが、世評いろいろなことが報じられていることは承知しております。ニューヨークタイムズの一面ではもっと悪いようなことが報じられていることも承知しておりますが、各行の平成十年九月期の中間決算についてはこれから確定作業を行うこととなっておりまして、当該中間決算を踏まえた九月期の自己資本比率については、現時点では公表している銀行はございません。通常、中間決算の概要というのは、各行多少まちまちでございますが、十一月下旬ごろに各行から公表されることになりますので、その結果きちっとした数字が出てくるだろうと思います。

 私どもとしては、今現在、自己査定結果を踏まえました外部監査によるチェックを経て公表された本年三月期の決算では、主要行の自己資本比率はいずれも八%が確保されているものと承知しております。

○江田五月君 大蔵大臣、これは善意に解釈すれば、各銀行のそれぞれこういう自己査定というものにいろんなやり方があって、そこが統一されていない。そして、金融監督庁がこういうことでなきゃならぬよというものにも合っていない。合っていないままで今日まで来ているから今こういう数字になっておるけれども、それは今後金融監督庁のしっかりとした基準でやっていけば、それが十月になるのか十一月になるのか、これより今回はがくっと下がるかもしれない。しかし、その後はまたずっと信頼できる数字で続いていくので、今回はちょっとそこのギャップがあるからこれだけ差があるんだというようなことかなとも思うんですが、いずれにしても事態が全く不透明なんですよ。こういう不透明な事態をそのままにしていわゆる早期健全化だ何だと言ったって、なかなか国民に十分説明できない、説明責任を果たせないという状況ではないかと私は心配をいたします。

 金融監督庁も、随分何か長いのでもう終わったというような話も聞いておるんですが、まだ本当に検査をやっているんですか。

○政府委員(日野正晴君) 大手十九行に対する検査のうち、金融監督庁といたしましては、第一勧業銀行等九行につきましては既に立入検査を終了しております。具体的に細かいことをいろいろ申し上げてもあれですが、八月二十七日には興銀、中央信託の立入検査を終了、二十八日には東洋信託、三十一日には住友信託、九月二日には第一勧銀、富士、安田信託、九月十六日には日債銀、九月三十日には長銀の立入検査を終了しております。

 しかし、立入検査を終了しているところは以上でございますが、それに基づきまして検査結果の現在取りまとめを行って精査を尽くしているところでございまして、検査は当該金融機関に対する通知をもって終了いたしますので、そういった意味ではどの銀行についてもまだ検査は終了していないということになるわけでございます。その後始めております東京三菱銀行等五行につきましても九月二十一日から立入検査をしておりますし、日銀の方でも住友銀行等五行について立入考査を終了しており、現在、考査結果の取りまとめをしております。いずれそう遠くない時期に全体の検査結果の内容というものがおのずから明らかになるものと思います。

○江田五月君 今るるお答えいただいたわけですが、九月三十日に長銀の立入検査を終わっておる。しかし、結果の通知についてはこれから先まだどのくらいかかるのか、いろいろネゴシエーションをやるというような話も前からお聞きをしたりしているわけですが、もうそうではなくて、ここまで来ているんですから、総理、これはひとつ、立入検査を終わったからすぐ出せとは言いませんよ、だけれども、やはり可及的速やかといいますか迅速にこの検査結果をまとめて公表するという、節目節目にみずから決断でしたかね、この節目にひとつ総理みずから決断して、そして金融監督庁早くやりなさいということをおっしゃったらいかがですか。

○国務大臣(小渕恵三君) 長官から御報告のような検査が終了しておるということでございます。大変、検査結果の公表ということに相なりますと、これは十分な精査をしなければならないかと思いますから、早急にそれを急がせるように努力をいたします。

○江田五月君 何か迫力が伝わってこないんですね。

 もう一つ、預金保険機構理事長お見えですね。
 三月に佐々波委員会の審査を経て資本注入されました一兆八千億、この議事録というのはどうなっていますか。

○参考人(松田昇君) お答えをいたします。
 先生御案内のとおりでございますけれども、現在施行されている法律では、審査委員会が適当と認めて定めた相当期間が経過した後に委員長が公表する、このように定まっておりまして、相当期間のありようについて現在いろいろ議論を審査委員会でいたしておったところでございます。

 なお、これは私が申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれども、現在御審議中の新法によりますと、附則九条の関係で、同法の施行前に作成された金融安定化法第五条一項の議決に係る議事録の公表については、審査委員会にかわりまして機構が適当と定める相当期間経過後に機構の理事長が公表すると、このようなことで今御審議をいただいているように承知をいたしております。

 そのような場合になりましたら、私といたしましては、情報公開の重要性をよく踏まえまして、審査委員会のメンバーにもよく諮りまして、それで諸外国の例とかこれまでの国会の御議論とか、あるいは委員の発言の確保の問題とか、本来の信用秩序への影響とか、十分に参酌いたしまして適切に対応してまいりたい、このように考えております。

○江田五月君 ということは、要するに三月の議事録はまだ作成されていないということですね。

○参考人(松田昇君) 法律で公表することが予定されている議事録は作成いたしておりますけれども、相当期間がまだ定まっておりませんので公表に至っていないということでございます。

○江田五月君 私がきのう事務局の方に聞いたときには、まだ作成が終わっていないというふうに答えておられましたがね。それはいいです。

 次に、「審査委員会が適当と認めて定める相当期間経過後に、これを公表しなければならない。」と。「適当と認めて定める相当期間経過後」、これはあらかじめちゃんといついつまでと定めるという規定だと思いますが、こういう定めはできておりますか。

○参考人(松田昇君) こちらで答弁させていただきます。
 この「相当期間」そのものがいろいろ議論の的でございまして、現在審査委員会において議論を始めて検討しているという段階でございます。

○江田五月君 三月からもう半年以上ですね。どのくらいの期間を置いて公表するかのその期間の定めさえまだつくっていない。議事録はつくっているかつくっていないか、これもどうも定かでない。そして、いよいよもうあとわずかで金融危機管理審査委員会は幕を閉じようとしているんですよ。

 さて、修正案の提案者にちょっと伺います。
 九条ですが、ちょっと細かなことで恐縮なんですけれども、「この法律の施行前に作成された旧金融機能安定化法第五条第一項の議決に係る議事録の公表については、」云々、この今の定めに従って公表しなきゃならぬというこの規定は、「なおその効力を有するものとする。」という規定がありますね。これは施行前に作成された議事録の公表についてですね。

 したがって、当然もう作成されていることを予定してあるんじゃないか。三月ですから、もう当然それは作成されているのは、予定されるのは私は立法者、修正案作成者として何の落ち度もないと思うんですが、いかがですか。

○衆議院議員(池田元久君) 私も衆議院の委員会で江田委員と同じように、この議事録はもう半年近くもたっておりますので、速やかに公表するように求めました。

 今お尋ねでございますが、我々提案者としてもそこはもう六カ月近く経過しておりますので、当然作成しているものという理解でありました。
 なお申し上げますと、私たちは情報開示の徹底という観点から、提案者としては相当期間というのは六カ月程度というふうに考えております。

 ことし三月に資本注入を行ったわけであります。しかも、一・八兆円という資金を投じたわけでございますから、これはもう可及的速やかに公表すべきであると考えております。

○江田五月君 金融監督庁の監督は総理でございます。

 総理、今お聞きになってどうですか。六カ月ですよ。どのくらいたったら公表するという、その期間の定めもまだしていない、議事録はつくっているかつくっていないかわからない。

 総理、ひとつこれはこの委員会の審議の終了までにやはり定めをつくってもらう。そして、公表はもう私はしてもいいと思いますが、せめて定めぐらいはつくり、そして議事録はちゃんと作成し、そして例えば預金保険機構に引き継ぐなら引き継ぐ、そこまでのことぐらいは、総理、やってもらわなきゃ、私はこれはとても情報開示に熱心だなんて到底言えない、そう思いますが、いかがですか。そういう決断をされたらいかがですか。総理、総理。――委員長、これはやっぱり総理に答えてもらわなきゃいけない。総理に答えてもらわなかったら、これはちょっと質疑続けられませんよ。あと一分。

○国務大臣(小渕恵三君) 現行法によりますと、預金保険機構につきましては、その中における一般的に言う佐々波委員会、これは大蔵大臣、日銀の総裁も入っておりますが、そこの預金保険機構につきましては、先ほども御答弁を申し上げておりますとおり、本件について内閣総理大臣として指示をするという立場ではございません。

○江田五月君 だって、預金保険機構の最終責任者は総理でしょう。それに国政全部。預金保険機構じゃありません、金融監督庁の。

 じゃ、ちょっと大蔵大臣。

○国務大臣(宮澤喜一君) 実は、どういう事情でおくれておられるか私もつまびらかにいたしておりませんけれども、少なくとも、今公表するしないではなくて、何カ月後にはそうするということあたりは委員の方々の御相談によって決めていただけるものではないかと思いますので、私よく事情存じませんが、そういうことを申し上げてみることにいたします。

○江田五月君 確かに、直接の監督責任は大蔵大臣の方ですから、今の大蔵大臣のお答えでひとつぜひこれをやっていただきたいんですが、総理も国政の最高責任者としてそこはしっかりと節目節目の御みずからの決断をお願いいたします。
 後は直嶋委員から質問いたします。(拍手)


1998/10/06

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