1993/10/29-5

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参院・ 科学技術特別委員会  5

○大久保直彦君 大臣の所信をお伺いいたしまして、二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 先ほど来、同僚議員の質疑の中で大臣の政治家としての基本的スタンスにかかわる問題がやりとりされておりましたけれども、私も長官とは長いおつき合いでございますが、野党のリーダーとしまして、こういう例えがいいかどうかわかりませんけれども、今、日本シリーズが真っ盛りでございますので、野球に例えますと長官は外野手で言うならばレフト、左翼手というポジションではなかったのか、ややセンター寄りの左翼手だったと思いますけれども。それが最近の御発言やらきょうの質疑をいろいろ伺っておりますと、左翼手はもうやめましてセンターに所がえをされたのかな、このような認識を持ちますが、それもやや右翼寄りのセンターになられたかなと。長官の御感想はいかがでございますか。

○国務大臣(江田五月君) 大久保委員とはいろんなところで一緒にいろいろなことをやってまいりましていろんな思い出がございますが、確かに当時は大久保監督のもとでセンター寄りの左を守れということですからそういうところをやっておったかと思いますが、今政権というものを担うということになりまして、やはり国の将来のためにどういう役割を果たすかというのは多少違った役割になっているかということは感じます。

 それは率直にそう思いますが、しかしいずれにしても、例えば世界の平和を守っていくとか、環境とか人権とか生活とかあるいは今の日本の豊かな経済社会体制を間違いなく後世に引き継いでいかなきゃならぬとか、そういう点で私の基本的な物の考え方がぐらぐらしているということはない。これはぜひ御理解をいただきたいと思います。

○大久保直彦君 今科学技術の振興が求められている方面、テーマは非常に多岐にわたっておると思いますが、長官もみずからセンター・オブ・エクセレンスに象徴されます人材の確保の問題でありますとか、または宇宙開発の問題、国際協力の問題、がん・エイズに対する問題、地震予知、火山噴火、さらには宇宙開発、有人潜水調査船「しんかい六五〇〇」の問題、原子力の平和利用、安全確保の問題等々非常に各方面をテーマに挙げ、また関心が寄せられておりますけれども、私は一日も長く長官に御在籍で頑張っていただきたいと思いますが、この任期中、江田科学技術庁長官として特にこのことだけはぜひやりたい、重点的に取り組みたい、そういうお考えがありましたらお伺いをさせていただきたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) 科学技術庁としては今こういう課題がありますよというのは役所でちゃんとペーパーを用意してくれましてここへ書いてあるんですが、これを読み上げてもどうも仕方がないと思うので、私の長官としての個人の思いを申し上げてみたいと思います。

 いつまでやっているかというのはよくわかりませんが、来年の二月一日にはHUロケットというのを打ち上げるわけで、そのくらいまではやりたいなと思っておるんですけれども、それどころではなくてもう少しやっているとするならば、私は今幾つか気になることがあります。

 一つは、若者の科学技術離れというのが大変なことにこれからなってくるのではないかと心配をいたします。今の私たちの経済にしても社会にしても大変に高い水準の科学技術の上に成り立っているわけですね。これをこのまま維持していく、そういう人材がこれから供給できるんであろうかとか、あるいはこういう社会というものは、だんだんみんなが科学技術に関心も何もなくなってきますと、科学技術が社会を勝手にどこかへ持っていってしまうというような心配も実はあるわけですね。こういう国会というものを中心にした社会の民主主義的な動かし方というものも、また多くの委員各位を初めとするような科学技術に十分な関心も持ち、素養も持っている人間がこの民主主義社会を動かしていかなかったら、本当にどこへすっ飛んでいくかわからないというようなこともあるわけでございます。

 私は今、子供たちに科学技術というものは本当に夢があるんだよ、科学技術と出会い、知らないことを発見する、これは心躍ることなんだよ、そういう気持ちを植えつけていきたい。教育の分野でもそれは必要だと思いますが、科学技術庁としてもそうしたことをぜひ先鞭をこの辺でつけていかなければ、今までのように、今までのようにというとちょっと言い過ぎですが、科学技術がひとり歩きをするというようなことになっては困るというのが一つ。

 二つ目はやはり原子力の問題でございまして、私も責任の一端を担っていたのかもしれませんが、これまでどうも敵対関係のようなやっつけ合いの議論になってしまっていたんじゃないか。しかし、お互い長い人類の歴史の中のほんの瞬間にこの狭い日本というところで一緒に暮らすわけですから、やはりこれは原子力という重い課題をみんなでいい方向へ向けていくためにかみ合う議論、そういう先鞭を私の在任中につけることができたら大変ありがたい。

 さらに、それは過去の歩みを振り返ってこれからこういう方向でということですが、今後の日本の課題でいいますと、やはり国際社会の中での日本の役割というのが非常に重要になってくる。科学技術は国際社会共通の財産である、いわば国際公共財ですから、そういう意味で科学技術というものの世界的な展開の中で日本が役割を果たす、そうした方向づけもぜひ行っていきたい。この三点ぐらいを考えております。

○大久保直彦君 特に子供の問題については私は非常にすばらしい御見識だと思いますので、ぜひ長官御在任中に長官としての夢を行政の中で生かされていきますよう心から念願をいたします。ただお願いでございますが、質問よりも三倍ぐらい答弁をされますとどっちが質問をしているのかわからなくなりますので、ひとつ簡潔にお願いいたしたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) わかりました。

○大久保直彦君 今の原子力の問題について若干お尋ねをいたします。
 過日、私どもも委員長を先頭に大洗の動燃、原研の視察に行ってまいりました。長官もおいでになったそうでございますが、そこで常陽、高速増殖炉実験炉を拝見いたしまして、そこで将来日本のエネルギーがいかにあるべきか、国際的にも二十一世紀の前半には人類は八十億を突破する、また今の電力エネルギーも約倍近いものが求められている。そういう状況の中で、我が国のいわゆる電力エネルギー、特にまた原子力発電について我々はどういう基本的な方針を貫かなければならないのか。非常に大きなテーマだと思います。

 今いみじくも長官もおっしゃったように、原子力そのものが何か敵対関係の中で議論されているのではなくて、イソップ物語のアリとキリギリスではありませんけれども、安全性の問題よりもむしろ経済性の問題で論議される原子炉の開発の問題、これは、今我々は一生懸命苦労しながら将来に向けて原子力エネルギーの開発に取り進むべきであるのか、それとも諸外国の例に倣って、将来的ないわゆる先行投資は見合わせて今の現状からほぼ平行線のような路線をとるべきなのか。この辺については、ライト寄りのセンターに今おられます長官としてはどんな基本的なお考えをお持ちでしょうか。

○国務大臣(江田五月君) 答えが長くなって申しわけありませんでした。
 原子力が一体今どういう位置を占めておるかということはもうこれは委員御承知のとおり、しかも我が国は資源小国であってということも御承知のとおりのところでございます。やはり地球環境問題ということを考えますと、二酸化炭素をどんどん出すということを科学技術先進国が行っていいという時代はもう去っているんではないか、しかしもちろん原子力は原子力でまた別の危険があるから、そこは慎重にやっていかなきゃいけませんけれども。

 それから、世界の趨勢というのもこれも動いていくものなんですね。さらに、技術というもののリードタイムというのが非常に長いということも考えなきゃならぬ。現に高速増殖炉路線、核燃料サイクル路線というのは我が国の原子力開発利用の長期計画をつくった初めから文言として出てきているのに、常陽があってなおまだ高速増殖炉は「もんじゅ」、原型炉がやっとというあたりですから、私はこれは将来の世代に選択肢を広く残していくためにも我々は今着実に進めていかなきゃならぬ課題であろうと思っております。

○大久保直彦君 これから電力需要がますます盛んになるという一方で、現在の日本の電力供給量というのはある意味ではほぼ一つの限界に来ているのではないかなと。

 外国の友人が日本に参りまして、日本の夜は昼間よりも明るい、こう言う。どういう立場でおっしゃったのかわかりませんけれども、確かに我々が地方へ行きましてホテルに泊まりますと、ホテルは薄暗いですね。しかし、確かに外国の友人が指摘するように日本の夜は昼間よりも明るくなっておる。こんなに明るくする必要があるのかと思われるくらいかなり無制限に我々は電力を使っているのではないか。かつて石油ショックのときに省エネという考え方がありましたけれども、我々の電力に対する接し方というものはいかにあるべきかということは、私は科学技術の先進国としてある意味ではやはり国際社会の中で範を垂れなければならないのではないかと。

 長官がここでおっしゃっている「哲学のある科学技術政策」というのはどういう意味がよくわかりませんけれども、私はこれからの子供に対しても次の世代を担う人たちに対しても、日本で今電気がなくなってしまったならば全く我々の生活はパニック状態、一日も都会生活はもたないんじゃないかと思うんです。しかし、ある燃料を燃やしてそれを電力にして、その電力を使ってまたそれで暖房をとっているというようなことは、いかにもこれは利便に打ち過ぎた私たちのエネルギーの消耗の仕方ではないのだろうかということを考えますと、この辺についてもしかるべき論議があって当然ではないか、このように思いますが、この点はいかがなものでしょうか。

○国務大臣(江田五月君) 同じような感じを持ちます。たしか気象衛星か何かで世界の夜を連続的に写したそういうポスターを私は見たことがあるんですけれども、これを見ますと、もちろん雲や何かで隠れないようにずっと連続してポスターをつくるわけですが、日本列島はくっきりと白く写っているんですね。あとこんなに国全体が白く写っているようなところは世界じゅうにどこもない。明るいところは、あとは石油が燃えているようなアラブの方の地帯とか幾つかありますけれども、これはやはり日本は考えなきゃならぬことだなとつくづくそのとき思いました。

 考えてみると、私どもこれまで豊かな経済をつくり、豊かな社会をつくろうというので科学技術をどんどん、いわば開発のための科学技術を進めてきたような気がするんですが、それが例えば環境問題を引き起こすとかいろんな問題を引き起こしてきているわけで、しかし、それじゃもとへ戻ればいいかというとそれもできないわけで、そうしますと、今後はそういう我々が抱えた新たな課題を解決していくような科学技術、あるいは開発というよりもむしろ生活のための科学技術、そうしたことが重要になってくる時代が来ているんではないかと思っております。

○大久保直彦君 時間がありませんのではしょりますけれども、だからといって私は「もんじゅ」の、来年ですか、臨界を迎えることについて反対をしている者でもないし、非常にそれを歓迎して喜んでおる立場でありますことをあえてつけ加えておきたいと思います。

 関連して、今の国際協力の中で、クリントン政権が誕生しましてから宇宙開発の計画が一部見直しをされまして、A型のところで大体落ちつきそうであると。NASAの職員が約六〇%ですかカットになるというような非常に大転換でございますけれども、この宇宙計画、私は前々から、金があるからやるんだ、金がなくなったからやらないんだという代物ではないんではないかと。これからはいわゆる国際環境の問題を考えましても、この宇宙開発、特に宇宙ステーションの建設というのは非常に不可欠のテーマだと私は思っておりますが、これについて長官の御所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) 宇宙開発というのは、先ほど所信でも申し上げましたような新しい分野でございます。冷戦中は、やはり宇宙開発というのはどうしても軍事との結びつきが切っても切れなかったんだと思います。しかし、今冷戦が終わりました。宇宙が新しい可能性を持ってきたと思います。我が国は、冷戦時代は宇宙開発についてはまあ抑えて抑えて、余り行かないようにということでございましたが、もうそういう軍事という心配がなくなって、私はこれから日本も宇宙開発の分野で大きな役割を果たすことになるべきだと思っております。

 宇宙ステーションにつきましては、クリントン政権下でちょっとブレーキが踏まれた時期がございましたが、九月に見直しの結果がまとめられまして、最終的には従来の計画に近いものが採用されました。我が国あるいはヨーロッパあるいはカナダの意見などが反映されたものと思っております。これは、ロシアがこれからどうかかわってくるかというのが一つの課題でございますが、私は冷戦後という時代ですから、まあいろいろ技術的な問題、詰めをしなきゃならぬ問題がありますが、ロシアも含めて国際的なプロジェクトとしてみんなで一緒に汗をかく、その汗をかいていく中でまた国際的な信頼関係をつくり上げていくという、こういうことになればすばらしいと思っております。

○大久保直彦君 今度女性飛行士が誕生すると言われている向井千秋さん、たしか候補者になりましたときに、私の将来の夢は宇宙ステーションでレストランを経営することだということを私はお伺いしまして、世の中にはすごい女性がいるものだなと大変感動したことを覚えております。ぜひ我が国も引き続きこの宇宙開発、特に宇宙ステーションの建設には力を注いでいきますことを要望いたしておきたいと思います。

 関連して、この一両日に中国の人工衛星が墜落するというニュースが流れておりますけれども、何かニュースが入りましたでしょうか。

○国務大臣(江田五月君) 中国のこれは回収型衛星なんですが、どうも制御不能になって軌道を外れた、落ちてくるのではないかということでございます。いろいろ途中経過はございますが、それを全部省きまして結論で言いますと、最終的に衛星は二十九日、本日午前一時一分東部太平洋北緯二十二度西経百十六度で大気圏に再突入をし、そこからさらにずっと落ちていってペルー沖に落下をしたということでございます。ほっといたしました。

○大久保直彦君 私もほっとしましたけれども、ただ中国の宇宙総公司の発表によりますとまだ七カ月程度は落ちてこないと、こういうことが報道されておりましたが、この辺の確認ですね、後ほどロシアの海洋投棄の問題を伺いますが、この辺のいわゆる外交的な確認の問題は科学技術庁としてはどういうふうにとらえておられますか。

○国務大臣(江田五月君) これは外交ルートを通じてということでございますが、在北京の日本大使館からも、あるいは外務省から在東京中国大使館にもいろいろ照会をいたしましたし、また、このことのためにというのではありませんが、私は徐敦信大使とお会いをした機会に、必ずひとつきっちりした情報を我が方にも教えてほしいということを申し上げました。

 その結果、中国の方から外交ルートを通じて中国の見方というものが伝えられておるんですが、それがただいま委員お話しのようなことでございまして、落ちたというのはこれはアメリカのNORADですか、が言っていることですから、落ちたという方が正しいんだろう、中国から後ほど訂正のお話が来るんではないかと思っております。

○大久保直彦君 これはどういう意図で七カ月間まだ飛んでいると発表されたのかよくわかりませんけれども、これはいい悪いにかかわらず、やっぱり正確な情報をきちっととらなくてはまずいんじゃないかなと思う。ペルー沖で幸いだったと思いますけれども、この辺に落っこってきたらこれはえらいことになりますので、ぜひ今後ともこの宇宙関係の情報につきましては、いいこと悪いこと押しなべて、やはりきちっとした現状の認識だけは正確に把握するということを励行していただきたいと思います。

 最後に、時間もなくなりまして、海洋投棄の問題ですけれども、お隣にいる穐山理事の計算によりますと、今回十六日に投棄された量としてはJRの十トン車で約九十台分である、大変なものがどかんとそのまま海の中へほうり込まれてきているということで、そのこともさることながら、春の白書を拝見しますと、何か古くなった原子炉がそのまま海の中にほうり込まれていたり、何がほうり込まれているんだかわからぬというふうなことが明らかになってまいりまして、IAEAに五日ですか、ロシアから通報があり、それから約十日以上全くわからなかったということもけしからぬことではあると思います。

 しかし、これは事前にわかっていたからいいとかなんとかという問題ではないと思うんです。むしろロンドン条約の加盟国の間では、当面自粛というようなことで今日に来ているようでございますけれども、自粛ということではなくて、やっぱり海洋投棄は全面的に廃止するというふうなところに、やはり海洋国である日本がリーダーシップをもってそのことを推進していかなければならないときに今来ているのではないか。

 長官に先ほどミハイロフさんとのやりとりのお話がありましたけれども、これももう捨てるところはなくて満杯になっているんだと、しかし捨てませんよ、日本海には捨てませんと。考えてみると随分変な話で、それじゃオホーツクなり、カムチャツカ半島のあの近辺に投棄されても、日本としては海流の関係で非常に大きな影響を受けざるを得ない。そういうことを考えますと、やはり海洋投棄の全面廃止というところにリーダーシップをとられるべきではないのかということを思いますが、今後のロシアの海洋投棄の問題についての科学技術庁並びに長官のお考えと、今私が提案した日本がリーダーシップをとってこの地球環境を守る、こういうことについての御答弁を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) ロシアの海洋投棄は本当に私ども遺憾に思ったものでございます。ミハイロフ大臣とのいろんなやりとりもありました。

 お話しのロンドン条約の締約国会議という場で日本がどういう態度をとるかということですが、これまで八三年のモラトリアム決議には反対、八五年のモラトリアム決議には棄権という態度だったわけです。科学技術庁の専ら科学技術的な考え方からすると、それもあながちまるっきりでたらめな政策選択とも言えない点はあるんですけれども、しかし海というものの性格、これは私の感じ方かもしれませんが、やっぱりすべての生物がなかったときに海から生物が生まれてきたという、そういう海というものを大切にしていかなきゃいかぬなという気持ちを非常に強く感じます。

 科学技術だけで世の中成り立っているんじゃないから、そういう人の気持ちというものも大切にしながら、万々が一にも危ないものに海をしちゃいけないという気持ちで、今度の締約国会議では、日本はそういう決議が出てまいりましたときには反対とか棄権とかではなくて禁止に賛成をしていくという、そういう方向性をもって今関係機関の調整をやっているところでございます。そうなりますと、これは政策の変更ということになると思います。

○星川保松君 私も日本海の魚を食べております山形県の一人として、また、先日私どもの山形県漁協の方もこのロシアの放射性廃棄物の投棄について大変心配をしてきておりますので、このことについてちょっとだけ触れておかなければいけない、こう思っております。

 先ほどからいろいろ御議論があるわけでありますが、いわゆる薄いから、弱いから大丈夫だというようなことに今のところはなっておるようでありますけれども、これは長官も先ほどからお話しのように、海の中ではいわゆる生物の有機的な生命作用があるわけでありまして、言うなればプランクトンに放射性の物質がたまってそれを小魚が食べる、それだけでも何十倍、何百倍というふうに濃縮されるというふうに言われるわけでございます。それをさらに大きな魚が食べる、ずっとそういう食物連鎖の中で濃縮されていって、最後は大変濃度の高いものになって、それが人間が食べる魚になるというような作用が行われておるわけでありますから、薄いからといって安心しているわけにはまいりませんで、将来にわたって大変な危険を生ずるおそれがあるわけでございます。

 それで、捨てるなということで私たちはソ連に一生懸命警告をしておるわけでありますけれども、ソ連はまたどうも困った状況にあるようでありまして、もう処理に困ってどうにもならないというような状況にあるようでございます。こうなりますと、やはり隣で処理に困っているということになれば、もう仕方がありませんから、その処理の方法、うまいことひとつこっちの方でも考えてあげて、こういう機械を貸すからこれを使ってまず容量を小さくして、向こうは大変大きな国土を持っておるわけでありますから、シベリアのどこか一角でも、将来こういう廃棄物を処理するうまい方法を編み出すまでそこに保存をしておきなさいというような知恵をやはり提供していく以外にはないんじゃないか。そうするには、やはり科学技術庁あたりがその処理のうまい方法をやはり一生懸命編み出して知恵をかすということをしなくちゃいけないんじゃないか、こう思いますが、そのことについて一言お願いいたします。

○国務大臣(江田五月君) これはもうおっしゃるとおりでございます。一義的にはロシアの責任ということなんですけれども、おまえのところの責任だと言ったってできないものはしょうがないと。しょうがないと言ってそれでほっておくのか、こういうことですけれども、やっぱり心配になる、被害を受けるおそれがある。それは当方でございますので、こちらでできることはしなきゃならぬ。そこで、今委員がおっしゃるように、暫定的な貯蔵設備の整備とかあるいは陸上における処理設備、可搬性処理設備といったものもあるようですので、そういうものの提供とかいろんなことをこれから考えていく。

 いずれにしても、その前に、一体どういうことになっているのか、何がどういうふうにあるのか、こんなことをしっかり把握をしなきゃいけないわけですから、そうした事実の確認をまず行う。そういう方向で今、おととい、きのうと専門家の会合も行われた、きょう、あすと現地の視察もやる、十一月にはまた作業部会という会議もやる、こういうことで進めていくことになっております。

○星川保松君 そこで、長官のこの所信表明をずっと読ませていただきました。大変科学技術の将来についての格調高い所信であるというふうに承ったわけでございますけれども、格調高く、それは結構でありますが、余り格調ばかり高過ぎて現実ということを忘れては困る、こう思ったわけでございます。

 それで、私は日本の中でもいわゆる大変な豪雪地帯に生活をしておるわけでありまして、多いときは積雪二メートルぐらい家の周りに降る、山手へ行けば四メートル、五メートルという雪が降るわけでありますが、そういう中で生活をしておりますけれども、この雪国の我々の生活、これは半分以上あるんですね。日本では五二%が積雪地帯になっておるわけであります。科学技術が進歩したから雪国の人々の生活が楽になったというふうに思われがちでありますけれども、決してそうばかりは言えないのでございます。

 その一例を申し上げますと、いわゆる雪国の冬の交通手段としては、昔は雪の上をいわゆるそりで交通をしておった。といいますのは、雪というのは非常に滑るわけなんですね。その滑りを利用して荷物を運搬し、スキーを履いたり何かして通行をしておったわけですよ。これは非常に能率がいいんですね。米は十俵ぐらいそりに積んで悠々引いて歩けますよ、そのかわりこっちは滑らないようにわらじか何か履かなきゃいけませんけれども。そのぐらいに滑りを利用しますと非常な能率のいい運搬や交通ができるんですね。

 ところが、その滑りに最も弱い交通手段、これは車なんで、車輪なんですよ。これは滑りにとっては全く弱いんですね。その弱いものが入ってきたんですよね。その結果、いわゆる雪国ではどんな雪でも全部除雪しなければならないということになったんですよ。ですから、常にどんな雪が降ろうとも吹雪になろうとも完全に地べたを出しておかなければならないということになったんです。このいわゆる除雪の経費から労力やら人の難儀といいますか、これはもう大変なことになったわけなんですよ。

 そういうふうに、例えばそれが道路の場合は国道とか県道とか市町村道とかということで、それは公共事業としてやってくれるからいいようなものの、今度は我々の家の屋根の雪ですね。これは今までは、昔は道路の上に全部おろして、ただ交通の邪魔にならないように平らにならしておけばよかったんですよ。その上をそり引くなりなにして通ったものですから。

 今度は道路の上に雪を捨てるなど、こういうことになってきたんですね。そのために今度は道路に面して便利だと思っている家の屋根の雪は一たんおろす。おろしてもいつまでも置けないんですよ。もう次々とこれを運んでどこかへ捨てなければならないということになったんですね。それで、我々としては何とか屋根の上の排雪のいい方法はないかと思っていろいろ考えているわけなんです。

 ところが、そういういい方法をとこか、私の方も新庄に雪氷防災研究の支所がありますけれども、そういうところでも少しは研究なさっておるようですけれども、一般の我々が使えるような技術はどこからも出てこないですね。今なお出てきておりません。そういうことで、実は私もいろいろやってみました。全部失敗しました。

 一番最初は井戸を掘りました。地下水を上げて、それで屋根の上にパイプに穴をあけて、さあ雪が降ってきたと。そのときにスイッチを入れまして水をじゃあっと出したんですよ。そうしましたら、トタン屋根というのはこういうふうに接いであるわけですね。接いであるところというのは、ぴしっと閉めると中が汗かいてだめなんですよ。だから余裕をつけてあるんです。ですから、上から傾斜で流れる分にはいいんですけれども、今度は雪がとまるわけなんですね。雪でとめられますと、そこに水がたまるんですよ。そうするとそこのところから逆流してきまして、柱という柱からだあっと水が流れてきたんですよ。これはだめだということで、何十万をかけたそれを全部取っ払いました。

 それから今度はまた考えました。それは、なるべく屋根の傾斜を強くしまして、そして降っただけすいすいと落ちるようにしようと思ったんです。ただ、下が道路ですから、道路を通行中の人に目がけてこれが走っていきました。これはもう災害そのものですからね。ですから、屋根の下に全部押さえをつけたんですよ。これも何十万かかったんです。ですから、走ってきたのがとんと当たって、そして穏やかに下に落ちる、そして下に側溝があるわけですから、そこに全部落ちるという理屈でやった。

 ところが、そういうふうにいかないんですね。といいますのは、そういうふうにいくときもあるんです。ところが、春の雪と寒中の雲と、それからまた秋の雪と全部違うんですね。雪の形状が大体これ違うんですよ。それによって滑ってくるのと滑ってこないのとあるんですね。そして、たまってその支えを越えて飛んでいくんですよ。これは危ないということで、これ全部また取っ払いました。

 それから今度は、家のそばに全部雪をためておくわけです。そして、家の周りにパイプを通して、それからじゃあっとその地下水で解かそう、こういうことでやったんですよ。そうしましたら、隣との間に雪がいっぱいたまるわけです。そうしましたら、雪の圧力というのはすごいんですよ。解けていくまでにいろんな変化をするんですわ。そのパイプがばらばらになりました。これは大変なんです。解けて固まっていくときに物すごい力を発揮しまして、これはらばらに壊されました。これで何十万だめにしました。

 もういろいろやって、結局はだめだということで、やはりもとに返って、今は雪おろしの人夫さんを頼んでやっています。今、人夫さん一人頼みますと、夕方になると一杯つけて結局一万ぐらいかかるんです。それで、私は一回に四人頼むんですけれども、運ぶのに二人前かかりますから、機械頼みますから、トラックとで六人分かかる。一日六万かかります。それが二日かかります。十二万かかります。これを多いときは四回やらなくちゃいけないんですよ。

 だから、そういう雪国の中で難儀をして暮らしているところから見ますと、科学技術の進歩したときですから科学技術庁あたりで何とかうまいこと考えて助けてくれないかな、何かそういうことが書いてないんだろうかと、こう思いながら読んだんですが、大変格調が高いばかりで、どうも地上のことがさっぱりにおいも出てこないような感じがいたしましたので、地上のことについてひとつお願いいたします。

○国務大臣(江田五月君) お話を伺わせていただきながら思い出したんですが、私は岡山ですので、もう雪なんか降るとうれしいばかりで、本当に雪国の皆さんの苦労がよくわかっていないと思うんです。それでもこれはもう参議院のおかげでございますが、私も参議院議員であったことがありまして、その当時にたしか地方行政委員会だったと思うんですが、委員派遣でまさにもう雪の真っただ中の山形、秋田を視察させていただいたことがございます。いろいろと各地を回って話を聞いて、確かに雪国というのは、雪の降る間は経済活動がとまり、とまるだけじゃなくて今度除雪に金がかかり、まあ随分雪の降らないところと格差があるなということを痛感させられたわけでございます。

 そのときに私も、雪というのはやっぱり一つのエネルギーだから、このエネルギーを利用して何かできやせぬかなと。科学技術庁長官になったらとそのとき思ったわけじゃありませんけれども、何かないだろうかと思ったんです。しかし、今に至るまでまだ雪のエネルギーを利用して何かをやるということができてきていないようなことでございます。それでも近年の都市化による生活様式の変化とか、交通網の発達とか、高齢化の進展などに伴い、雪害への対応を何かしなきゃいかぬというので、科学技術庁として防災科学技術研究所の、お話の新庄雪氷防災研究支所、あるいは長岡にも同様のものがあるようですが、こういうところを中心にして、雪害に関し基礎から応用、開発まで幅広い研究を実施しているところでございます。

 科学技術振興調整費というものがございまして、これでもいろいろ研究しているんですが、資料を見てまいりますと、平成五年度に克雪・利雪技術融合化による生活空間の快適化技術に関する調査というものがあるんですね。これはどういうものであるのか後でよく聞いてみたいと思うんですが、克雪とか利雪とか、こういう考え方というのは、なかなかこれからの進むべき方向のヒントになるのかなと思ったりしているところでございます。

1993/10/29-5

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