1993/10/29-1

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参院・科学技術特別委員会 1

○委員長(中川嘉美君) 次に、江田科学技術庁長官から科学技術振興のための基本施策について、その所信を聴取いたします。江田科学技術庁長官。

○国務大臣(江田五月君) 第百二十八臨時国会における私の所信を申し上げます。

 今日、私たちの周りには驚くほど数多くの科学技術の成果を見ることができます。電気、通信、工業製品等々、枚挙にいとまがなく、科学技術の成果や恩恵と切り離した生活は想像すらできません。他方、科学技術が生み出した豊かな現代文明そのものが、人類の未来に対する制約要因と化する場合も見受けられるようになりました。

 しかし、考えてみると、地球環境問題、エネルギー問題、食糧問題等、現代社会の前に立ちはだかる問題を解決し、質の高い実のある社会を創造するためには、さらに一層科学技術の力に期待しなければならないのもまた事実です。私たちが、現代の豊かな社会をよりよいものとして、私たちの次の世代に誇りを持って引き継いでいくためには、哲学のある科学技術政策が求められています。

 本年八月、単なる歴史の通過点でなく、新しい歴史の出発点を画するとの決意で細川内閣がスタートし、私がその閣僚の一員として科学技術行政をお預かりして以来、私は、国家の枠を超えた、生活本位の科学技術という視点に基づく政策のかじ取りこそが求められているという認識で、科学技術振興の重要性、必要性を訴え、また各般にわたる政策を推進してまいりました。

 以下、科学技術行政が直面しております個別課題について、具体的に申し述べます。

 我が国の科学技術水準は、これまでの関係者の努力によって、今や多くの分野において欧米に比しても遜色のない水準に達しています。しかし、人類の新しい可能性を求める独創的な研究や、すべての分野の基盤である基礎研究の分野では、いまだ十分ではありません。長期的視点に立った独創的な基礎研究は、民間には期待しにくく、国が役割を発揮すべき分野ですから、今後とも政府の研究開発投資を着実にふやすよう努めます。

 研究機関の施設設備が老朽化したり、時代おくれのものとなっているようでは、基礎研究の十分な成果は期待できません。このため、研究の基盤となる施設設備の整備を図ってまいります。

 つい先ごろも、基礎研究の推進のため、若くて有能な研究者があこがれるような世界に誇れる卓越した研究機関、いわゆるセンター・オブ・エクセレンスの育成を目指した制度を開始しました。独創的な研究を行っていくような創造性豊かな研究者、技術者等の人材の育成のための諸制度も着実に拡充しています。現在、科学技術会議で科学技術系人材の確保に関する議論、検討を進めていただいておりますが、私としても、次世代を担う人材問題について積極的に取り組んでまいります。

 さて、今日の国際社会はますます相互関係を深めており、どの国も地域も相互の協力や協調がなければその生存が困難になっています。その中で、我が国は、豊かな経済力と世界有数の科学技術力を持つに至った国として、それにふさわしい責任と義務を国際社会の中で果たしていくことが求められています。科学技術の成果は時代を超えた人類全体の共通財産ですので、科学技術の成果を世界に向けて積極的に発信することこそ、我が国に最もふさわしい国際貢献の形であると思います。

 中でも、人類が共通して直面している地球環境やエネルギー等の問題については、我が国の科学技術力を生かして積極的に取り組んでいく必要があります。このため、人工衛星による地球観測や海洋における観測研究等、地球環境問題に総合的に取り組むほか、宇宙ステーション計画、国際熱核融合実験炉計画やヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム等の国際協力プロジェクトを積極的に推進してまいります。

 科学技術政策の眼目は、次の世代にどのような幸せな生活の可能性を引き継ぐかにあると言うことができます。このような観点から、生活者としての人間に直接役立つ科学技術分野、例えばがん・エイズに関する研究、長寿社会に対応するための研究、地震予知、火山噴火予知等防災・安全を充実させるための研究などに力を注いでまいります。

 がん研究につきましては、過日、放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療装置が完成し、現在、難治性のがん治療の臨床試行の準備を進めております。

 人類の新たなフロンティアヘの挑戦であり、いわば夢への挑戦である宇宙開発にも積極的に取り組みます。来年初頭には、いよいよ我が国が独自に開発を進めてきたHUロケットが打ち上げられる予定です。また、夏には日本人女性として初の宇宙飛行士の誕生が予定されるなど、未来への夢が着実に開花しつつあります。

 さらに、人間活動のもう一つのフロンティア、海洋の開発につきましては、有人潜水調査船「しんかい六五〇〇」等による深海調査研究、地球規模の環境変動に深くかかわる海洋の観測等を総合的に進めてまいります。

 現在及び将来にわたりエネルギーを安定的に確保することは、豊かな生活を私たちの子孫に引き継いでいくための基本条件です。我が国がこれまで推進してまいりましたエネルギー政策につきましては、政権の樹立に際し、他の重要基本政策と同じく、原則として今までの国の政策を継承するというのが連立与党間の合意です。この考え方に従って、今後ともエネルギーの安定的確保を図る上で不可欠な原子力の開発利用を、安全確保を大前提として着実に進めてまいります。連立の合意に新エネルギーの開発も掲げられております。新エネルギーは、供給面での制約があるものの、いずれも大切であり、また核融合研究も着実に進めてまいります。

 核燃料サイクルの確立は、資源小国である我が国にとり、原子力発電を長期にわたる安定したエネルギー供給源とするために必要なものです。現在、原子力委員会で進められている原子力開発利用長期計画の改定作業の推移も見定めながら、今後とも国民の一層の理解と協力を得つつ、また安全確保を大前提として、放射性廃棄物処理処分対策も含め核燃料サイクルの確立に向け努力をしていきたいと思います。

 原子力の開発利用を進めるに当たっては、安全確保とともに平和利用が重要な課題です。このため、原子力安全対策や核不拡散対応の充実強化の分野で国際的な協力に努めます。

 本年九月、私は国際原子力機関の総会に政府代表として出席する機会を得ました。その場において一私は、核不拡散体制の維持強化の重要性を指摘し、また、核兵器の廃絶と国際的軍縮についての我が国の立場にも言及しつつ、核不拡散条約の無期限延長支持を表明するとともに、同条約が原子力平和利用による利益の享受を最大限保障するものであることを再確認いたしました。また、プルトニウム利用の透明性の確保等のため、国際管理体制について我が国が役割を発揮し、今後国際的な検討を重ねていく方針を明らかにいたしましたが、今後とも世界的な核不拡散体制の充実強化に積極的に貢献してまいります。

 さらに、旧ソ連、ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄に関しては、東京サミットやエリツィン大統領の来日の機会をとらえて投棄への懸念と停止を求めてきましたが、先般、低レベルとはいえ何ら管理がなされないような状態で投棄がなされたことは極めて遺憾であります。私は、ロシアのミハイロフ原子力大臣の来日の折にも、今後このような事態が発生しないよう、ロンドン条約締約国会議の決議に反した海洋投棄の停止を求めました。ロシアは投棄の中止を表明しましたが、まだ乗り越えなければならない課題は多く、今後ともこの問題の解決に向け、技術協力等さまざまな努力を重ねてまいります。

 以上、美しい自然と環境を将来に引き継ぐとともに、文化の薫り高い生活環境を築き上げるために不可欠な科学技術に対する私の基本認識と当面する諸課題につきまして所信を申し述べました。

 人類のたゆまぬ創造的活動の所産である科学技術の振興は、百年先、二百年先を視野に入れた総合的なものでなければなりません。そして、これは国民の理解があって初めて可能になるものと考えております。委員各位の御協力を心よりお願い申し上げます。

○委員長(中川嘉美君) 以上で所信の聴取は終了いたしました。
 それでは、科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興の基本施策に関する件を議題とし、所信に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○志村哲良君 志村でございます。江田大臣のただいまの所信表明に関して質問を申し上げます。
 初めに御容赦をお願いしたいと思っておりますが、実は私は江田大臣の科学技術政策あるいは原子力にかかわる政策などに関する見解をかねて余りお伺いしたことがなかったものでございますから、きょうの質問に備えまして若干の資料を探しました。その中で、「月刊社会党」という雑誌における大臣の対談、並びに大臣がかつて衆議院の商工委員会におきまして委員として時の中尾大臣でしたかに御質問なさった資料等々、これらをある程度参考にさせていただきながら、一昨日、私の質問の内容をいろいろあれこれまとめてみたわけであります。

 ところが、ただいま所信を拝聴いたしまして、さらに「エルエーインターナショナル」という雑誌、この中におきまして、「「変革の時代」だからこそ原子力の役割は高い」という、これも何がしという経済学者との対談でございますが、これを実は昨夕手に入れました。拝読させていただきましたが、実は申しわけないことでございますが、ただいまの所信あるいはこれに載せられた大臣の御発言、これと私が資料として拝読したと申し上げた「月刊社会党」の今年十月号における対談の内容、あるいは以前の商工委員会における御質問の御発言などとは大分乖離がございます。これを昨晩帰りましてから何とか調整しなくちゃいけないかなと思いましたが、今さらどうにもなりませんので、若干その点で今度は私の方に乖離が起こるかもしれませんが、お許しをいただきながら御質問をさせていただきます。

 新政権が誕生いたしまして約百日を経過いたしました。私は私なりにその経緯を見ておりまして、江田科学技術庁長官が誕生いたしましたことを実は喜んでおります。お世辞を申し上げるつもりもありませんし、そんな必要もありませんので、これは率直な私の心境でございます。ではありますが、多くの閣僚あるいは与党内の実力者と言われる方々などの発言をあれこれの機会に見聞きいたしておりますが、時折、一体これはどういうことなんだろうと大きな疑義を持つことがしばしばでございます。

 消費税、自衛隊、PKO、国旗、原子力、その他いろいろございます。ありますが、どうもたれかれの発言を伺っておりますと、何となくこの方々は戦争のときには戦争的に、平和のときには平和的に、そしてもし革命でも起これば迷うことなく革命的に思惟をいたして、疑うこともはばかることも恥ずることも全くないのではないか、私はそんな思いが実はしてならないものであります。そのような考え方、そのような生きざまは、民族にとりましても国家にとりましても、孜々営々として生き続ける民衆にとりましても極めて有害であり、裏切りですらあるということは疑いない。これは江田大臣や我々、いやというほど経験をしてきたことであるかと存じます。

 その点、諸般の問題に関し造詣も深いと伺っております大臣から、今申し上げたような私の考えに関して率直な御意見をお伺いいたしたいと考えております。

○国務大臣(江田五月君) 人生の大先輩からいういろおしかり、御注意をいただくことに謙虚に耳を傾けなければならぬと思います。

 私は、それほど大それたことを言う資格があるかどうかわかりませんが、自分の信念というものをしっかり持っておくということ、これは一つ人間として大変大切なことだ、疑いのないところだと思います。しかしまた、一方で過ちを改むるにはばかることなかれ、これもまた大変大切なことですね。その辺を一体どういうふうにやっていくのかというのは、これはそれぞれの人生観、世界観でいろんなあり方があるんだろうと思います。

 ですから、今志村委員おっしゃった、戦争中は戦争を謳歌し、戦後は一転して民主主義に、そういうのは信用できないじゃないか。しかし一方で、やはりそれだけ時代が変わったから、そういう自分自身が持っていたそれまでの信念をひとつ大いに疑って新しい立場で生きていこうという、これもまた人間として別に恥じることではないという場合もあると思うんですね。

 それはさておき、今回のこの政権交代に伴って多くの政治家が一体どういう対応をとってきたか、これはまあそれぞれ一人一人についていろんなチェックがなされてくるのかと思いますが、私自身につきましては、志村委員これまでの私の言動をいろいろお調べいただいて大変感謝もいたしますし恐縮にも存じますが、今お挙げになった消費税、自衛隊、PKO、国旗、原子力など、いずれも政権の前と政権に入ってからと、私としてはそれほど心の中で良心に恥じるような大きな変化をしているというふうには思っておりません。ただ、野党にいるときの野党の役割と、それから政権を支える与党になったときの役割と、そこは多少の違いはやはりあるので、これはひとつぜひ御理解をいただきたいと思います。

 それから、細川内閣の中にそういう考え方を変えて、閣僚としての立場と所属する政党の立場と個人の立場と、立場によっていろいろ違うことを言う人がいるではないかというお話もあるいは今の質問の中に含まれておるのかと思いますけれども、これはひとつ御理解いただきたいのは、連立政権というものはいろんな政党が集まって連立の合意をして、そして政権を運営するというものですから、おのずとそれぞれの政党が持っている政策と連立政権の政策との間に違いがある場合は出てくる。我々は連立政権の政策で政権を担当いたしまして、あとその連立政権の政策と固有の各党との政策との違いというのは、それぞれの党でひとつこれは十分そしゃくをし、消化をしていただかなければならぬことだと私は思っております。

○志村哲良君 ありがとうございました。
 ただいまの大臣の過ちを改むるにははばかることなかれというような御決意、御心境、これを拝見いたしまして、私もまさに同感であります。冒頭に申し上げましたように、そういう江田大臣を科学技術庁がお迎えしておりますので、ひとつこれから御努力をせっかく願いたいと考えるものであります。

 先ほど申し上げました、ちょっとこれは旧聞になるような思いもして恐縮ですが、「月刊社会党」の「五閣僚に聞く」という対談の中で、全文は省かせていただきますが、

  そういう意味から言うと、科学技術庁というのは、連立与党の中で意見の違いが最も大きい分野に関わっている。いわゆる四つの基本政策と言われるもののうち、三つまでは、議論は分かれていても現実にはだいたい解決がついたようなものですが、原子力に関しては国民の意見にも非常に大きな幅があるし、連立与党の中でも意見の違いが大きい。これをまとめる、そういう意味でこのポストをやれということを選択されたのだろうと思う。まあ、僕が科学技術にたけているとは到底言えないけど、いままでやってきたことの続きで、適材適所という意味があるのかなと思ったりします。と述べておられます。

 無責任な申しようで恐縮ですが、私も何となくそのような気がするななどと思った反面、具体的にはどのような対処をなさろうというおつもりなのか判然としない点もあります。もう少し私たちにわかるように具体的にこのくだりを御説明願いたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) 私は、政党という意味においては社会民主連合という政党の代表を務めておりまして、社会党と党は違います。しかし、国会の中では衆参ともに社会党と院内の統一会派を組んで日本社会党・護憲民主連合という会派に所属をしておりまして、「月刊社会党」はその友党であります日本社会党の機関誌ですから、比較的といいますか仲間うちというような気持ちで取材に応じて、いろんなことを勝手にしゃべったという向きがあるいはあるかと思います。

 四つの基本政策と言われておりますのは、これは日米安全保障条約、それから自衛隊問題、それから韓国政策、それと原子力政策と、この四つなんですね。日米安保条約については、これは議論はこれまで随分ありましたけれども、もう今おおむね米ソ冷戦が終わった時代に、日米安保条約があるかないかで日本の運命は大違いだと、これがどうかならないと夜も寝られないというような、そういう国民はそう今いるわけではないんで、大体国の進むべき方向について、政治家なら大体の合意はある。自衛隊についてもまあおおむねそのようなことで、韓国の問題についてはもう違いは乗り越えられたも同然。いや、もう乗り越えられたと言っていいかもしれません。

 しかし、原子力の問題については、これは連立八党派の中にいろんな意見がいまだにあるのは事実でございます。ある人々は、原子力発電というものはもう日本がむしろ中心になって世界に広げていかなきゃならぬとあるいはおっしゃるかもしれません。あるいは別の人々は、もうこれは人類にとっては手にすべからざる危険な技術であるから直ちにやめなきゃとおっしゃるかもしれません。それがこの連立八党派の中にいろんなグレードで入っている。これは事実です。

 私どもは、今回の政権交代は、国民の原子力発電というものに対する意見の表明によってでき上がったものというふうには思っておりません。原子力発電に対する懸念が今回の政権交代をつくり出したというふうには別に思っていないんで、そうではなくて、長く続いた一党支配による政治の停滞とかあるいは大変な腐敗とか利権構造とか、そういうものに対する国民の怒りがこの政権交代をつくったものだと思っておりまして、そこで国の基本重要政策についてはこれまでのことを引き継いでいくんだ、こういう合意でスタートをしたわけです。

 ですから、連立与党の中に意見が大変大きく分かれてはいても、それはこれまでの国の基本重要政策を引き継いでいくという中でひとつエネルギー政策、原子力政策についての方向づけは決めていきたいというのが連立の合意でございますから、したがって意見は分かれていてもその方向はこうですよという合意は既にできておる。方向はできているけれども、意見の違いはありますから、そこはいろいろ調整をし、お互いの意思疎通もし、共通の了解をつくっていかなきゃならぬ。

 そこで、私今まで、野党時代ですが、野党の腕組みが大切ですよということで、野党の接着剤と評してみたり、あるいは調整役と言ってみたりしながら野党間の腕を組ませる仕事をやってまいりましたので、原子力についてこれまでやってきたことをさらに続けてやっていきたいと、こういうことを申し上げた次第です。

○志村哲良君 次に申し上げたいと思いましたことなどは、先ほど来の御発言あるいは所信、この対談などによりますと大分乖離が申し上げたようにありますので、ちょっと私も釈然とせずに申し上げる点もありますが、原発の問題に関してであります。

 大臣はこの雑誌の中で「僕もこれまでは原子力に関して批判的な側にいたのですが、いま話したように、とにかくこの連立内閣がちゃんとやっていけるということでなければ、どうにもならないので」云々と述べておられます。ここは率直に申して私にはどうも理解いたしかねるのですが、ある閣僚が予算委員会の答弁で、「今、私は閣僚として答弁をしておりまして、将来、党に帰る場面というのはさまざまなケースがあると思っておりますけれども、そのことについてお答えすることについては予測と推測もございます。差し控えることではなかろうかと思っております。」というような答弁をしておられました。

 大臣、私はこの「エルエーインターナショナル」を拝見しまして、昨晩、その懸念は実は非常に薄らぎました。薄らぎましたが、ただここで念を押してお伺いしたいと思いますが、もし大臣が再び党に戻られたときには、言うなればまたまた党の立場でというような理由の中で原子力批判の側に立たれるというふうなことがあるとすれば、これはどうしても納得ができないわけでありますが、その点はいかがでございますか。

○国務大臣(江田五月君) 批判的な立場にいたというように言ったと思いますけれども、しかし原子力発電というものを直ちにやめるべきだというような、一言で言えば反原発といいますか、そういう政策を私が主張したということは私自身はないと思っております、これは詳細に見ていただきたいと思うんですけれども。ただ、原子力利用というものは同時に大変危険性も伴いながらやっているもので、したがって常に安全第一、安全の確保を最重点でやっていかなければならぬということは事実です。

 私は、国会議員になる前には裁判官なんかもやっておって、その当時からつくづく感じておったんですが、役所の目で見て見えるところと見えないところがあるんです。役所の目でここまでは見える、しかしそこから先は役所ベースでいくとある壁があってどうしても見えないというふうな部分があって、そういうところは例えば現場の働いている人々とかあるいは市民運動や何かいろいろやっている人たちは、そういうところの間にいろんなものが見えている。しかし、なかなか役所からはそこヘアプローチできないというような部分があるんです。

 ですから、そういう現場で働いている人たちとかあるいは市民運動なんかやっていろんな情報を手に入れている人たちとか、そういう人たちのいわば批判とか警戒とか反対とかという立場からいろんなことを言ってくる。そういう意見や情報、これも大切にしていかなかったら安全な原子力行政というのはできないんじゃないか、そういうふうなことを思ってこういう批判派、反対派の皆さんのことも大切にしていきたいということを私は繰り返し言っているわけでございます。

 私ども、野党の立場のときにはむしろどっちかというと、そういう人たちのいろんな声を聞きながら、その声をよりよい行政をつくるために政策決定の場につないでいくという、そんな役割をしてきたものですから、だから原発に対していろいろ反対をする皆さんといろんな仲のいいつき合いがあった。それは事実で、別に私は恥じてもいませんし、隠すつもりもありません。

 今、連立与党の中の一員に我が党も入って政権を支える立場ですから、政党としてはそういう反対派の皆さんのことも大切にしながら、しかし現実に原子力行政を前へ進める立場ですから、その立場に立って原子力の安全な、そして着実な開発利用というものを進める、こういうことでございまして、私が今の科学技術庁長官という立場を離れても政権を支える与党にいる限りは私はそういう立場で頑張りたい。さらにまた、不幸にして野党ということが仮にあったとするならば、そのときには野党としてまた政府の目に届かないいろんな情報を政策決定の場に伝えていくために努力をするということも必要だろうと思っております。

○志村哲良君 ただいまの御答弁なども非常に興味ある御答弁でございました。例えば、その問題に関しましても、確かにおっしゃったように大衆の御意見に率直に謙虚に耳を傾けるということは、政治家にとっても官僚の皆さんにとっても私はぜひとも必要なことであるとは思います。同時に、これが無原則な追随になったとしたら、これはまた大きな過ちであろうと考えておるものでもありますが、今この場ではそのことの討議に終始するわけにはまいりませんので、今のようなお考えをお持ちの大臣がかつて野党におられましたときに原子力に関して批判的な立場におられたということ、私はこのことは若干理解もいたしますが、まだまだ率直に言って了解はし切れないようなものを持っております。

 先ほど申し上げましたようにちょっと旧聞に属しまして恐縮ですが、平成三年二月十八日の衆議院商工委員会において、時の通産大臣に江田委員からこういう湾岸戦争という機会にもっと省エネルギーを進める、CO2排出量の削減も進める、原子力発電をどう位置づけるかというのは、これはなかなか難しい問題がありますが、石油の消費を減らしていかなければならないいろいろな施策を講ずべきだと思います。具体的に数字で見ると、どうもこういうきしみの時期に、そのきしみを禍を転じて福となすというような社会構造の変革あるいは生活パターンの変化、こういうものに生かし切っていない。生かし切っていないところか、実は何も政策的な知恵を発挿していないような気がいたします。という指摘をなすっておられます。

 ちょっと長くなって恐縮ですが、これらに関しての御説明を簡単にお願いしたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) これはけさほど、私も委員がこういうあたりのことに言及をされるのであろうというので読み返してみたところで、当時の質問の趣旨を十分まだ思い出していないんですけれども、歴史のそれぞれの時点でいろんなことが起きます。いいこと悪いこと、いろいろあります。しかし、私たちは常に何かいいことが起きたときには、これがまた次のときの足をすくわれるもとになるんではないかなと反省をし、大変困ったことが起きたときには、このことを契機にひとつ何か次にいい方向で生かす道はないかと考える、そういう必要があるんだろうと思うんです。

 ですから、例えば石油危機が起きましたら、その石油危機をきっかけとして石油に依存し切った、石油づけになってしまった国のあり方をどうやったら変えていくことができるかをみんなで考えていくとか、そういう意味で湾岸戦争というのも、あのときには世界のあり方をどう考えるかということの一つのきっかけにもなる出来事でしたし、また同時に、今までの石油依存型のやり方をどう考えるか、やり直すかということを考えるきっかけにもなるべき出来事だったと思うんです。

 石油危機のときには、我が国で省エネルギーあるいは代替エネルギー、随分いろんな議論を行いました。国会でもひとつ省エネルックでというようなことで、みんなもう夏はこんな長いカッターシャツに長い上着なんかやめて半そでで、通産大臣、江崎先生でしたか、率先してというようなこともありました。しかし、今はもうそういうことが何か昔のことになってしまっているようなので、それではいけないんじゃないか。省エネルギー、代替エネルギー、そんなことを真剣にこの機会にまた議論をしようということを頭に描きながらこういう質問をしたのであります。

 今、政権というものの中に入ってみて、連立の合意の中には新エネルギーということを書いてあります。私も先ほど所信の中で新エネルギーのことに触れました。しかし、新エネルギーに対する施策というものが本当に十分にできているかというと、まだそう十分であるというふうに思っていません。これからも一層そういうことに力を注いでいかなければならぬと思いますという意味でこういうことを申し上げたということでございます。

○志村哲良君 次に、例のIAEAやNPTの問題に触れられまして、この中で我が国がイニシアチブをとっていかなくちゃいけないんだというようなことにも触れておられますが、ちょっと時間がなくなりますので、これはまた後日の楽しみに譲りまして、大臣が新エネルギーの問題に触れておられますので、これに関してちょっとお伺いをいたします。

 新エネルギーの問題はもちろん御案内の、この所信にもありますように、太陽熱その他の問題があります。大臣のおっしゃっておられる核融合などももちろん大切な一つであるとは思うものであります。だが、私は非常に現実的でしかももしそれが成功した暁には革命的とも呼べるような省エネ対策ともなると思われるものがあると実は考えております。これは常温において機能する超電導物質を一日も早くつくり出すことではないかと実は期待をしております。幸い科学技術庁におきましても研究開発局の中に超電導材料研究マルチコア・プロジェクトですか、そんなものができまして努力を続けておられると伺っております。これを支援し強力に進めることは極めて大切ではないかと思います。

 そこで、ちょっと時間がないので急ぎますが、大臣の絶大な御努力の中でこれらに最も関係の深い科学技術関係に関する予算、とりわけ科学技術振興調整費等々を含めた予算の目を見張るような増額、これにひとつ腹を据えてお取り組みをいただけないか。その点では、私は予算においても先ほど来お話にもありました発想の転換というようなものが必要なんではない。かなと考えております。大臣、ひとつこのたびの内閣の中で腹を据えてこの問題に取り組んでいただけないかということをお伺いしたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) 超電導研究、これはこれからの極めて可能性の大きな重要な基礎的科学技術であるというふうに認識をしております。

 超電導状態では電気抵抗がなくなるというので、極めて強い磁場の発生あるいは半導体素子の動作速度の向上等が可能になるというわけで、私もつい先日筑波の金材研ですか、金属材料技術研究所へ行って見てまいりました。また、核融合の研究にもどうも超電導研究というものがその前提になるようなところもあったりで、これはやはり力を入れなきゃならぬと思っているところで、来年度の概算要求にもこれは六・一%ふやした要求をさせていだだいていると思いますが、またこれで今の腹を決めたということになるかどうかということになりますと、もう少しやらなきゃならぬという感じもいたします。全力を挙げて頑張る決意でございます。

○志村哲良君 実は私は十月十三日に放医研で重粒子線がん治療の設備が完成なさったのを拝見してまいりました。原子核を専門になさった先生がおられまして、大変親切に説明をしていただきましたが、全くすばらしいものでございました。重粒子線は従来の放射線に比べてがんに対する殺傷力が極めて強く、抵抗性の強いがんにも有効であると伺いました。一日も早く臨床試行を本格化していただけたらよいと期待をしておりますが、今後どのようなスケジュールで進められていくのか、お聞かせを願いたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) 済みません、先ほどの超電導の概算要求の数字はちょっと正確でないようですが、もし必要なら後で答弁させますが。

○志村哲良君 後で結構です。

○国務大臣(江田五月君) 重粒子線の方、これは先ほども所信で申し上げましたようにスタートいたしました。先日十月十三日に開所式を行いまして、委員にもお出かけくださいまして大変感謝を申し上げます。一同大いに勇気づけられたところでございます。

 この重粒子線がん治療装置というのは、委員御指摘のとおり大変に画期的なものでございまして、スケジュールでございますが、本年度じゅう、つまり来年の三月末までの間にこの装置を用いた重粒子線がん治療の臨床試行と、こう言っておりますが、これを開始する予定でございます。これからいろいろと順次試験を積み重ねていって、そしてぜひ早期に実用化したいと思っているところでございます。

○志村哲良君 次に、例の情報整備に関して若干の意見がございますが、時間が足らないかもしれません。

 太平洋戦争の終結した後に、当時の学術会議等のあり方に満足できなかった少壮の学徒たちが相集まりまして、大学や研究機関の既存の枠を超えて研究や情報交換の団体研究を行うことを図ったことがございました。諸般の状況の中でこれも後退をしておるようでございますが、私は特に昨今のコンピューター等の発達の中で、国研や大学等を結ぶ情報ネットワークの整備は極めて肝要になっておると実は考えておるものであります。これはまた同時に、省庁や国の枠を超えた中で発想の転換がぜひとも必要になってきたとも考えておるものでありますが、これらに関しまして具体的な方策があったらお聞かせを願いたいと思います。

○国務大臣(江田五月君) 創造的基礎的研究の振興のために省庁や研究領域、あるいは国の枠さえも超えたいろんな研究情報の流通というものが必要であると。これは今委員歴史を概観されながら御指摘くださいましたが、そのとおりであろうと思います。そのためにネットワークやあるいはデータベース等の研究の情報基盤の整備、これは不可欠な課題だと思っております。

 我が国のこれまでの取り組みについては、あるいは政府委員から答弁させた方がいいかと思いますが、今の認識では大学あるいは国立研究機関等の機関内のコンピューター、LAN等の情報流通基盤は大幅に整備をし始められている。しかし、省庁の枠を超えた機関間を接続するネットワークの整備はどうも進んでいない。諸外国に比べると大きくおくれておって、特にアメリカと比べますと百分の一程度の低速のものが部分的に運用されているだけだというような状況のようでございます。専門家によると十年程度のおくれがアメリカからするとあるんではないかということでございます。

 研究機関や研究者から強い要望がございます。この点については、本年六月に科学技術庁、文部省、通産省それから郵政省が合同でアメリカの状況を調査いたしまして、七月に科学技術会議の政策委員会に研究情報ネットワーク懇談会を発足させ検討を進めてまいりましたが、中間的な取りまとめが行われまして、昨日、十月二十八日の科学技術会議の政策委員会に報告をされたところでございます。

 研究情報ネットワークの早急な整備、あるいは研究データ、文献等のデータベース化の推進、こうしたことが強く指摘をされておりまして、平成六年度に科学技術振興調整費に研究情報整備・省際ネットワーク推進制度を創設して、各省庁協力のもと国の研究機関等を接続する省際研究情報ネットワークの本格的な整備に向けて、試行的運用を行いつつ、関連する調査研究を行う、こういう概算要求を行っているところでありまして、一層努力をしていきたいと思います。

○志村哲良君 それでは、時間もなくなりましたので質問の最後に。
 どうも繰り返しになりましたり、若干釈迦に説法のような思いがいたしまして恐縮ですが、私が冒頭に申し上げました、現在の新政権の閣内におきまして一部閣僚の皆様方にどうも残念ながらお見かけをする、戦争のときには戦争的に、平和になれば平和的に支持する。黙ってそのような状況を見ますと、さっき申し上げたように革命で乱が起きれば革命的に支持して毫も恥ずるところがないんじゃないかという、そんな行き方をされたんじゃ、これは本当に私は日本の国民、本当に営々として生きている民衆に対しての大きな罪悪があると考えますので、先ほど大臣の御答弁を伺って非常に安心をいたしましたが、ぜひ新政権においても江田大臣はその点をしっかりとお見詰め願いたいというようにお願いを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

○国務大臣(江田五月君) 先般の総選挙において、国民は長く続いた金権腐敗の政治、利権の構造に汚れ切った政治にとにかく終止符を打ちたい、何とか政治を変えたいということで、委員にこういう言い方をして大変恐縮ですが、自民党を過半数を大きく割り込ませる、非自民を過半数を大きく凌駕させるという、そういう結果をつくってくれたわけでございまして、私は今、大切なのはその国民の声にとにかく耳を傾けて、その国民の声を政治の中で実現をしていくことだと思っております。

 各党あるいはそれぞれの政治家、いろんな思いがあると思いますし、いろんな主張もあるでしょうが、今は私ども、今のこの連立政権を支える連立与党各党あるいは一人一人、自分の党があるいは自分一人が目立つことよりも、この連立政権をとにかくうまく機能させることが一番大切だと思っているところでございまして、そういう政治家としての今のこの時代における国民に対する責任というものを十分踏まえていきたいと私は思っております。

 さらに、一人一人の政治家あるいは一つ一つの政党、これはまたいろいろこういう時代に反省もし、あるいは乗り越えなきゃならぬ、そういう課題もたくさん今背負っているんじゃないか。これはお互いにということですが、というので、この転換の時代にすばらしい政治をつくっていくためにお互いに努力をしたいと思っております。

1993/10/29-1

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