1993/10/21

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衆院・政治改革に関する調査特別委員会

○西川委員 私は、東京第六区から初めて国会に出させていただきました新人でございますので、上手に質問ができるかどうか大変心配でございますけれども、持ち時間三十分、一生懸命関係大臣にお尋ねを申し上げたいと存じます。

 質問に先立ちまして、昨日突然お倒れになりました皇后様の御平癒を心からお祈りを申し上げたいと存じます。

 また、極めて遺憾なことでありますが、ロシアの放射性物質の海洋投棄、これに対して日本政府、各党の御努力もこれあり、第二次投棄が延期をされたということは、国会議員の一人として、その御苦労を多といたしたいと思います。引き続いて、その御努力をお願いしたいと存じます。

 さて、そこで本題に入らせていただきますが、まず初めに、今回の政治改革につきまして、いろいろな具体的な御議論は、報道でも国民の皆さん数多く接する機会があるわけでございます。いわく小選挙区制、比例代表制、そして、今最大の関心事は政治家も含めて区割りがどうなるのかというような本質的な問題、技術的な問題、いろいろ報道されております。しかし、私は今一番大切なことは、冷戦終えん後の世界の新秩序の構築の中で我が日本がどういうふうな国として行動するべきであるのか、そのためになぜ現行の選挙制度ではそれができないのか、もしくは不都合なのか、なぜ政治改革を行う必要があるのかという、この本質的な理念をもっともっと国民の皆さんにお訴えをしていく、PRをしていくということが大変重要なのではないかというふうに思っている一人でございます。その国民的なコンセンサスが得られるならば、私どもは、この政治改革の議論がもっと熱心な、国民の皆さんの注視の的になるのではないか、不景気を退治するということは大変重要でありますけれども、しかし、それも実は政治改革が根底にあって初めてできるんだというようなことも、国民のかなりの方々が認識をされているのかどうかということも、実は疑問ではないかと思っております。

 五五年体制が終わって、いわゆる短期的な利益や小さな地域の利益に国政が精力を集中するのではなくて、もっと幅広い、いわゆる政治家に自由裁量をもっと与えられるような、メジロ押しに迫っている国家に対する難問、これに政治がクイックレスポンスできるような、そういうことが必要なのではないかというふうに考えているわけでございます。
 そこで、きょうは御関係の山花大臣、佐藤自治大臣、ほかに党首であられます石田総務庁長官、大内厚生大臣、そして江田科学技術庁長官にもお出ましを願いまして、党首として、特に今まで野党にあられて、大変失礼な言い方でありますけれども、政権の座に着かれ、国政に責任をより大きく持たれるお立場になった党首として、ただいまのこの理念についてどのような御認識で当たられているのか、御高見をお聞かせ願えれば幸いでございます。

○山花国務大臣 問題の認識については西川委員とほとんど同じ気持ちでございます。何よりも、新しい時代に向かう我が国が、内外の山積する課題に対して、ではこれに対応する政治の対応があるかということについてみずからを省みれば、これまでの国民の極限にまで達したと言われた政治不信、この政治に対する信頼を回復することなくしてこれからの政治はあり得ないのではなかろうか、こう考えてまいりました。

 国民のコンセンサスを得る、こうしたテーマにつきましては、過日の総選挙の結果こそが国民の示すところであったと私たちは受けとめたところでございます。そしてそれは、政権交代を含め日本の政治の抜本的な改革をこの機会に何としても仕上げなければならない、こうした強い国民の要請というものがそこにあったものと受けとめています。したがって、与党、野党ともに今日の国政の場にある者はこうした国民の皆さんの期待にこたえることがなければならない、こう思っているところでございます。

 私も、閣僚といたしましては政治改革四法年内実現のために全力を尽くしてその責任を果たしたい、こう思っている次第でございます。

○石田国務大臣 お答えを申し上げます。
 冷戦構造が崩れまして、大きなそういったイデオロギーの対立が徐々に解消して、世界は今新しい時代を迎えようといたしておるわけでございます。その中で、日本が今後どんな国際的期待の中で国際社会における役割を果たしていくのか、大変大事な、大きな課題だと思うわけでございます。また、国内の状況を見ましても、まさに今細川政権が一つの改革論議として経済改革を主張をいたしておるわけでございますが、やはり経済社会も諸外国のいろいろな関連の中でまた新しい立て直しをしなければならない、そういう時期にも差しかかっておるというふうに認識をいたしております。

 そういう中にありまして、そういうようないろいろな諸課題を推進をするについては、政治が国民の皆さんの信頼をから得るような、そういう状況でなければ、新しい時代に対応する政治能力を発揮することはできないというふうに思うわけでございます。しかし、先生も御存じのとおりこの数年大変な政治汚職の連発でございまして、それに対する国民の怒りの声、不信の声というのは大変厳しいものがあるわけでございます。そういうような国民の信頼にこたえ得る、まさに政治改革のチャンスが今やってきているわけでございますので、まずこれをなし遂げることによって基本的な国民との信頼関係をつくらなければならない、こう思うわけでございます。

 ただ、いろいろな批判の声を聞いておりますと、選挙制度が変わったからといって本当に政治は信頼できるようになるだろうかというような声もございます。しかしそれは、それだけ国民の不信の声が深いし、また強いというふうに理解をすべきであって、それにこたえるのがいわゆる国会、政党、政治家の責任である、私はこういうふうに思っているところでございます。

 そういった意味におきまして、まさに緊急の課題としてこの政治改革、何としても成立をさせなければならない、このように決意をいたしているところでございます。

○大内国務大臣 お答えいたします。
 政治改革について国民のコンセンサスを得ることが重要であるという御指摘は、もう全く同感であります。

 政治の任務は、言うまでもなく、当面する諸課題を的確かつ迅速に処理するという問題にとどまらず、将来に対して、やはり国民に対して期待と希望を寄せられるような一つの目標を掲げながら、それを着実に実現していくということが大事であると思っております。しかし、そういう中で一番大事なのは、政治に対して国民が信頼感を持つ。かつて日本に亡命されました中国の孫文は、民意によって国を建て、民意に逆ろうて国を滅ぼす、こうおっしゃいましたけれども、私は、これが民主政治の基本だと思っております。

 ところが、リクルートから始まり、昨年の金丸事件、そして昨今のいろいろな不祥事件によりまして、やはり政治というものが国民から大変な信頼を失ってきた。しかし、前方を見ますと、日本は、まず生活水準という面で先進国の域に達しなければならない、つまり生活水準という面で先進国を形成しなければならぬ。また、自分だけよければ人はどうなっても構わないという式の利己的な精神構造ではなくて、お互いに助け合い、文化を大事にしていくというような、文化先進国も同時につくっていかなければならない。その中に地方分権という問題もある。そしてさらには、五百兆に近い経済大国、GNP国家になりまして、国際社会の中で積極的に貢献できるような国家をつくっていかなければならぬ。
 そういう幾つかの大きな目標があるわけでございまして、そのためにこそ、やはり政治が国民から信頼され、そして、クイックレスポンスという言葉をお使いになりましたけれども、まさに迅速かつ的確に対応できるような政治体制をつくる、それが政治改革の今日的な課題ではないかと思っておりまして、その点について国民の皆様の御理解を得なければならぬ、こう考えている次第でございます。

○江田国務大臣 西川委員御指摘のとおり、つい先日まで、我々野党の立場で政治にかかわってきたわけです。野党の立場で見ていますと、確かに便利のいいことではありますが、政権党の方に次から次へと不祥事が起きてくる。野党の方は確かに追及をしていればいいけれども、しかし、そういう不祥事にそれに対する追及でこの数年日本の政治は全然動いてこなかったわけですね。これで一体いいのだろうかということを私たち野党としても随分考えました。何とか日本の政治全体をこういう状態から脱皮をさせていかなければならぬ。そのためには、政治資金規正法を変えることも必要だろうし、あるいは政治腐敗防止法をつくることも必要だ。しかし、やはりこの構造というのは、これは選挙制度にも一つ由来をしているんじゃないかと考えていたわけでございます。

 中選挙区制度がもう制度として初めから話にならぬ悪い制度だという、そう言うつもりは毛頭ありません。しかし、長い間やっているうちに、その中選挙区制度、例えば典型的な選挙区でいえば、五人なら五人を選ぶ、投票率も考えると、有権者の一二、三%の得票を集めれば通るわけです。そうすると、どうしてもそこに族議員構造ができる、利権の構造ができる。一方で野党の側からいえば、構造的な支持層さえしっかりつかんでおけばそれで大丈夫だという、そういう構造になって、政治が停滞し切ったわけですね。

 ところが、その与党、野党というのも、言ってみれば冷戦構造の投影であったのですが、世界の冷戦構造が終わってしまって、もうこの構造自体も要らなくなった。そこで、選挙制度も含む政治改革はどうしてもやらないと二十一世紀の展望を開けない、こう思うに至って、いろいろ努力をしてまいりました。自民党が政権与党、我々が野党、こういう時代には、しかしこれが動いていかなかった。

 しかし、いろいろな御承知のような事情で今回政権交代が起きまして、今こそ選挙制度改革をも含む政治改革の絶好のチャンス、この機を逃してはまたできなくなってしまうので、委員各位の御理解をお願いしたい、こう思っているところでございます。

○西川委員 ありがとうございました。

○増子委員 それでは江田長官、先ほどのをちょっとお答えいただきたいと思います。

○江田国務大臣 各党首の閣僚の皆さんから答弁がございましたが、私も同じ考え方でございます。

 そうですね、まあ私なりの整理の仕方をしてみますと、七〇%というような大変な高い支持率、一言で言えば期待値だと思うんですけれどもね。今までの自民党政治のもとでは、内閣の支持率というのはもう五割を切ることはもちろん、三割台、二割台、一割台あるいは一けたにと、それが七〇%、八〇%というんですから、これは単なる数値の違いというよりも、もう質的な違いがありますね。

 これまでは国民の皆さんが政治にどちらかというと背を向けていた。しかも逃げておった。それが、国民の皆さんが政治に顔を向けてこっちへ寄ってきているという事態だろうと思います。政治の質が変わりつつあるんではないかと思っておりまして、これは、細川内閣としては、責任重大だと思っています。

 理由は一体何だろうかということを考えますと、まあ私なりの整理をすると四つぐらいあるかと思いますが、一つは、長く続いた一党政治から政権交代が起きた。単に一つのグループの中でかわるのではなくて、別のグループが政治を担当するようになったという違いですね、政権交代、何か新しいことが起きるんじゃないか。

 二つ目は、そうですね、その政権交代がこれまでの国の基本重要政策は継承していくんだという形で、ある種の安心感を与えている。そこに期待が起きているということもあるだろうと思います。

 三つ目に、しかも、その新しいグループというのはいろんな人たちが集まっているわけですね。一つのグループだけというのは、余り実は今国民にまずなじまないんですが、いろいろな人たちが集まって、七党一会派、中にいろんな意見の違いがある。これがやはりある種の国民にわくわくさせるような、まあ、わくわくと言うと変ですが、そういう政治のおもしろさ、魅力、これを増しているんじゃないか。

 それにあと加えるなら、細川総理を初めとする新しい政権のキャラクター、まあ、よちよち歩き風ではあるけれども、しかし何か新鮮さがある、透明さがある、そんなところがあるかと思っておりまして、繰り返しますが、責任重大だと思っております。


○細田委員 ここに大変教養あふれる江田代表がおられまして、それはなぜかというと、イギリスにも住まわれて御勉強もされた。

 イギリスにいい例がありますね。保守党というのは、どなたかも言っておられましたけれども、このところ勝ち続けておりますが、支持率は五割を超えていない。そして、労働党と自由党を合計すれば五割超えています。そして、労働党と自由党が選挙協力、日本でおっしゃっているような選挙協力をすれば、かなり、五割を超えておるわけでございますから、議席をとれるけれども、それはやらないんです、イギリス人は。そして、日本人のちょっとあさはかな人が質問を発したのですよ。あなたの党は、自由党と労働党で選挙協力すれば勝てるじゃないかと、どこかの国で今話していることを言ったんですよ。勝てるのに何で協力しないかと言ったら、ばかにされた。何言っているんですか、あなたは。日本人はあなた、そういう考えしているんですかと。政治というものはそういうものじゃない。我が党は、こういう党是を持って、そしてこういう方針で選挙民に訴えているんだ、したがって、党是の違う自由党と、あるいは自由党から見れば労働党と、選挙協力をすれば勝てるから協力をして、自由党の支持者は、党員は、この選挙区においては労働党に投票してください、よろしく。よろしくなんというのは大体日本語ですがね、英語にならない。労働党の党員には、ここの選挙区では自由党が候補に出ることにしましたので、労働党は立てませんのでよろしく、そんなことはやらない、そういうように聞いていますが、それはどうしてでしょうかね、江田先生。

○江田国務大臣 それぞれの国にそれぞれの事情があり、それぞれの政党にもそれぞれの事情があると思いますから、日本は日本の事情でやるべきだと思うのですがね。

 ただ、申し上げておきたいのですけれども、今度、選挙制度も含め、政治改革をやろうと、改革になった後、どういう選挙の取り組みをするか、それは別として、従来の中選挙区制度のもとでどんなことをやってきたかといいますと、私は、これはしつこいほどに言ってきたのですけれども、五百十一の定数、二百五十六以上候補者を立てずに政権を担当させてくれといっても、これはだめなんですね。政権の提案になっていないわけですよ。そうすると、残念ながら、今の党がそれぞれ選挙に取り組む限りでは、自民党しか政権の提案になっていなかったのは事実なんです。そこで、野党がちゃんと腕を組んで、選挙協力をやって、こういう政権を野党は一緒につくりますから、国民の皆さん、やらしてくださいというなら、それは提案にはなり得るわけです。

 そこで、八九年の参議院選挙のときにそういうことをやったら、そこに国民の理解と共感があって、参議院選挙で自民党は惨敗をする、野党が圧勝して、参議院は与野党逆転になったわけですから、私は、選挙協力というもの、あるいはこの政党の連立政権というもの、これは、国民に理解を得られる要素は、日本の中では、現に実例もある以上、あり得ると思っています。

○細田委員 私は、お言葉ではありますけれども、イギリスの昔から伝統ある民主主義を学んできた方の御発言とは余り思えない御発言であったと思います。

 参議院選挙のときは、確かに選挙協力をして勝ったところもありますよ。連合の人が出たということもある。しかし、戦ったところもあるというように、個々に考えてきたのですよ。

 そうして、もっと大事な御発言があったのは、政権をとるために政策をあらかじめ調整して立候補するようなことを言ったでしょう。そんなことで、何の政党の意味があるのですか。

 私は、山花大臣が国会で苦労して御答弁になっているのは、個人的には理解しているのですよ。つまり、社会党として、社会党の綱領に従って立候補をして、自衛隊はやはり今の問題は憲法違反だとか、PKOはやはり反対だと言いながら当選してきたのですから、東京で。そうして、しかし、当選した後、会派がどうやって連立政権を組むかといって、そこで妥協せざるを得ない面があるから、内閣の一員としては私は妥協しましょうという、それは私は、ある意味では、まあ人によって違うけれども、五割ぐらいは理解できるのですよ。

 しかし、今の江田さんの言ったことというのは、全然違いますよ。最初から、選挙民に対してどっちを言うのかということをはっきりしないで選挙をしようというのですから、あなたがもし、例えば山花さんは東京何区、二十一の選挙区の中で何区かで、幸い皆さんの御理解を得て統一候補の一人にしていただいたとしますね。いただくに当たっていろいろ条件がつくかもしれないけれども、日本社会党の前委員長として、ではパトリオットを導入する予算については本当は賛成なのかどうかとか、自衛隊についてどう思うかということは何にも言わないで、あたかも最初から内閣の一員であるかのような、連合政権、連立政権という、国会で当選してみなければ、選挙結果がわからなければわからないような前提のときに、あらかじめ妥協して立候補するのですか。ここにいる社会党の皆さんもそうやって立候補するのですか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そんなことないと言っていますよ。それはちょっと、もっと立候補のときの公約のあり方について、どういうふうに立候補するのか、教えてください、山花前委員長。

○山花国務大臣 先ほどお答えを省略した部分を含めて、若干発言させていただきたいと思いますが、例えば今回の選挙の際に、私たちは、何よりも最大のテーマとして、ここにパンフレットがありますけれども、新しい政権で政治改革を実現しようと、この選挙に至った経過を振り返っていただきますならば、政治改革について激しい対立の中で、不信任案提出、これが御承知のとおりの経過で可決された、そこで選挙に突入したわけでありますから、何よりも政治改革を実現しよう、このことを最大のテーマといたしました。

 そのためには、新しい政権ですから、社会党単独で政権をとることはできない。それならば、非自民の皆さんと腕を組んで政権をとろう、こうして私たちは選挙の協力について合意をしたわけであります。合意の内容については、内外に発表いたしました。

 そして、選挙のさなかにおきましても、私、当時委員長でしたから、社会党の固有の政策は一体どうなるんですかということを含め、今御質問の内容に関連して、ずっとマスコミから質問を受けてきた立場でございます。

 そのとき、私はこう答えました。連立政権の構想については、既に八九年に連合政権の構想を発表し、昨年暮れ、連立政権の構想を発表し、そうした連立政権の構想を踏まえての今度の選挙だけれども、自分たちの政策を、それぞれの党の固有の政策を有権者の皆さんに訴えて、その審判を仰いだ中で、その結果に基づいて連立政権の可否が決まります。もし、そこで改めて連立政権についての合意をつくることができれば、政権が誕生するでしょう。それができなければ誕生しません。私たちは、誕生させるために努力をしたいと思います。こう言いながら、社会党の政策がどこまでその政権で生きるかということについては、単独政権ではないので、議席の数によってそのことについての濃淡は出てくると思います、こう説明をしてまいりました。

 社会党が圧倒的多数ならば、社会党の政策が非常に中核的になるでしょう。そうでなかった場合には、やはり議論して合意をつくる、そうした努力になりますので、濃淡ということになれば、必ず濃、濃いというわけにはいかないかもしれないけれども、しかし、連立政権をつくる国民の皆さんの期待にこたえますと、こう言って選挙を行ってきた次第でございます。終わってから、改めて合意をつくりました。

○細田委員 それはそうじゃないのでございます、残念ながら。我が自民党は、いろいろ大変だけれども決まったことはもちろんやろうと思っているのですね。決まったことをやろうというのは、これはしょうがないでしょう、民主主義で。二百五十名の定数でも三百の定数でも、それだけの候補者しか立てられないのだから、それ以上立てたってだめでしょう。それはしょうがないですね、選挙だから。

 しかし、今の与党の方々が考えているのは、その枠を超えているということが問題じゃないですかと。もちろん、二百五十でも社会党は厳しいというようなことは、この表からわかりますよ。しかし、だからこれは私は三百にしたらどうか、早く社会党さん、三百で妥協しなさいよと言っているつもりはないのですよ。むしろ選挙民を欺くような選挙になっちゃいけないな。そして佐藤大臣が今言われたように、今度こそおれは勝つぞと思っているわけですよ。そして、勝つぞということは、今言われた東京都では十人の前職が落ちていて山花さんだけが通っているという実態のときに、山花さんだけが公認になって、あとの方は残念ですが、上田さんも常松さんも長谷さんも、皆さん我慢してくださいというような選挙をしてはならない。これだけの党員に対する裏切り行為になるのじゃないか。

 それは、私は社会党の内部の問題として言っているのじゃないですよ。政党政治というのは――政党政治というのを目指しているわけですよ、二大政党制にしよう、小選挙区にしようというのは。政党政治というのは、党員が小選挙区において我が党所属の人を投票できるということを原則とするのですよ。それを原則として、多党化しておる場合には、残念ながら例えば二大政党にとりあえずいかない場合は、三党でも四党でも、共産党さんがどんな制度になっても多分これまでどおり全地域に、全選挙区に候補者を立てられるように、基本的には全選挙区に候補を立てようということを考えて最善を尽くすというのが私は民主主義であって、これだけの大勢の社会党員がいるにもかかわらず、あるいは日本新党だって同じことですよ、民社党だってたんさんあるんですよ。

 そのために比例区がありますと言いますけれども、比例区は半分なんですよ。何といっても半分なんです。その小選挙区という、それは政府案の場合ですよ。だから私は、自民党案の、小選挙区が多い方がいいということにもつながるわけですけれども。その半分で我慢すればいいということじゃなくて、やはりこの今の法律を考える段階からある程度明確な政党再編成の方向が示されなければ、国民は一体何を国会で議論しているかわからないのですよ。ああなるほど、週刊誌を読むとどうも七会派は全部やるのだなと。(発言する者あり)

 自民党はどうするのかなんてやじが飛びましたけれども、自民党ははっきりしているのですよ。自民党はすべての選挙区に自民党の候補を立てる、それも二名立ちたいという人もあるかもしれないけれども、あきらめてもらって一名立てる、これしかないに決まっているのです。もう人材が多いですから、自民党は。だから二百五十だろうが三百だろうが、いや、与党から見て人材がどうか知りませんよ、そんなものは。しかし、これから、まあ長老などは引退してもらうかもしれませんが、我が党の精鋭を二百五十なり三百なりの選挙区に全部立てますから。それはだれも反対していませんよ。それは当然ですよ。

 そして、どうしても比例に回らざるを得ない者も出るだろう。それはしょうがないですよ。今まで何しろ五百十一人の衆議院議員がおるのですから、与党も野党も含めて二百五十人が小選挙区になるのだから、あるいは三百人が小選挙区になるのだから、これはどうしてもはみ出る人が出るのはやむを得ないんです。そのときに、はみ出た人は残念ながら比例に回ってもらおうということで一やらざるを得ないでしょう、それは党内ですから。ところが皆さんは、何か聞いてみると、それは大変だ、それじゃ各党で相談しましょう。それでも余るということが出ていますけれども、これは東京と愛知だけ配りましたけれども、神奈川でも兵庫でも北海道でも福岡でも、もう大余りですよ、皆さん。大余りの中で、党首が会談して決めるのですか、そんなことを。そんなことをやることは、僕は有権者に対する犯罪行為だと思うのですね。

 石田委員長、どう思われますか、その点は。

○石田国務大臣 お答えいたします。
 これは細田先生の独自のお考えのもとで議論が展開されているわけでございますから、この法案が成立をして、そして政界全体がどうなっていくのかということがいわゆる選挙の時点で明確にならないと、ほぼそういう姿が見えてこない限りにおいては、これは具体的にどうこうするという手段というのは生まれてこないんじゃないでしょうか。私は、そういう情勢の中で考えるべき問題だと思っております。

○細田委員 少なくとも選挙を実現するまでにはそういう問題をちゃんと整理できる、そうしてその方向はこういう方向だということは言えなきゃおかしいのですよ。でも、やはり今皆さんのおっしゃったことには、いろいろな思惑があることははっきりしています。最初に言われたでしょう。選挙協力はどこでもやっています。これまでもやっているのです。勝つためにはしょうがないんです、そういう言い方ですね。

 そうすると、ある選挙区では社会党の人が出てきた。そうしてその人は、党の綱領に従って自衛隊の現状は違憲だと言っている。しかしこれは与党の統一候補である。だから自分はこの人には投票したくないな、前この区から出ていた公明党の何とかさんの方がいいなと思っても、公明党さんも何か指示を出して、いや公明党としてはほかの選挙区で立てておりますからまげて社会党の方に投票してくださいというような選挙になるのじゃないか。

 日本の選挙制度、私もやってみて一番問題だと思っていますのは、まだ個人個人の投票に対する行動が、自分はこの会社の社員だからとか、この宗教団体の一員だから、あるいは自分の地域がこうだからこの人に入れるとか、あるいは自分の親戚や配偶者がこうだから入れるというふうに、帰属する社会なり地縁血縁などによって投票行動を決めるということが色濃く出ているわけですね。そうすると、これはもちろん今みんな我々が抱えている問題点なんですよ。しかし、選挙協力をした場合の問題点というのは、またそういう地縁血縁を利用しながら、あなたの信念とは違うかもしれませんが頼みますよという選挙が行われる。これはたまらないのですね。

 私はそういう選挙にならないように、一つの綱領で一つの政党として七会派が合併するなら大歓迎だと思っているのですが、本当に合併するならやってほしいし、それから、その候補を選定するときに、この人は確かに立派な人だから、もとは社会党であるがこの人、もとは公明党であるがこの人、この人は民社党だかとか、社民連であるがというふうに選挙をやってほしいのですよ。それが、我が国民が二十一世紀、二十二世紀に向かって選挙を通じての民主主義というものを育てる基本である。これまでのあり方は、金権とか腐敗とかいろいろありますよ。それはもちろん全員がやったとは言えない。しかし、我々は何でそういうことが起こったのかということをもちろん反省しなきゃならないですよ。しかし、反省したような顔をしてまた次の誤りを犯してはならないなということを私は考えているわけです。そして、その青写真が全くできていない段階でどんどんどんどん選挙協力の話が出てくるということ自体が、私はおかしいな、これでいいんだろうかというふうに思うもとになるわけです。

 それは私の考えでありましょうと言われますけれども、まだそういう論調を余り新聞でもテレビでも言われてないですよ。それで、決められたものはしょうがないし、私は反自民だから反自民の党に何でも入れますよという人は、それは確かにいるかもしれない。それはいいですよ、どうせ投票なんだから。しかし、私はやはり、政党中心の選挙をするということになるんならば、政策というものをしっかり打ち立てて、その上で党の合併なり共同作業というものができて、そして政策のすり合わせが出た上で選挙をしてもらいたいんですよ。そう思われませんですか。羽田党首、どうでしょう。

○羽田国務大臣 もうおわかりの上でお話してございますけれども、現在のこの連立政権というのは、まさにああいうハプニングの中でひとつでき上がってきたということ、これはもう間違いない事実なんですよ。しかし、この間に、お互いにいろんな難しいものを乗り越える、あるいは単なるイデオロギーの争いというものもだんだんなくなってきておる。そういう中に、私どもはこの政権を維持していく中にあって、いろんな経験をいたしております。こういう経験をこれからの新しい政治にどんなふうに生かしていくのか、これは与党の中で存分に話すし、またそういう中で新しい選挙制度に対してどう臨むのか、私たちはこれから十分な論議をし、そしてそれに向かっての体制というものをつくり上げていくということであります。

○細田委員 そういう提携の接着剤になられた江田代表は、どうでしょう。

○江田国務大臣 連立与党のことについていろいろ御心配をいただいて、大変ありがたく聞かしていただいておりましたが、二つ三つ。

 談合とおっしゃるんですけれども、やはり基本は有権者の審判なんですね、民主主義というのは。その審判をしていただく有権者にいろいろな提案をしていくわけですよ。各党の固有の政策というのもその提案でしょうし、こういう選挙協力で、こういう体制で政権を担当しますという提案もそういう有権者に対する提案の一つでしょうし、そういうものがいろいろ有権者の最後の投票によって審判を受けるわけです。ですから、談合などというようなことは、それが本当に談合であるならば、それは有権者にむしろしっぺ返しされるわけでして、そこは自民党の皆さんも十分御注意をいただきたいと思います。

 それからさらに、今大きな政治の変動期なんです。確かに連立与党、八党派ということですが、私どもも八党派がいいと別に思っているわけじゃありません。現に私の社民連というのは、この政治改革ができ上がったなら社民連という形で選挙ができないだろうと御心配いただくと思いますが、私もそうだと思っています。したがって、これはほかの政党のことを言うわけじゃありませんが、私どもは、政界再編成は私にとってはこれはもう不可避だと思っておりまして、そのときには今の状況、さらに二十一世紀の世界、日本をどうつくるかということを真剣に論議をして、離合集散していくことになると思います。

○細田委員 さすがは江田代表でございます。私は、後段の部分は非常に立派だと思う。だけれども、前段の部分はやっぱり私は余りよくないと思っています。

 なぜかというと、談合とはいうが有権者の判断だとおっしゃいました。しかし、小選挙区になると、もう大きな会派を代表してこれが推薦候補ですよということにならないと通りませんからね。通りませんから。そして、その候補者がたまたま社会党のある種の考えを持った人であったり、公明党のある種の考えを持っておられる方であったり、いろいろですね。つまり、今まではいろいろなメニューから、自民党の中でも好きな人、好きでない人もあって選ぶというメリットもあったかもしれないが、それよりももっとメリットがあったのは、各党のメニューを選べたんですよ。だから、今回でも日本新党やさきがけがいいぞということになれば選ぶし、社会党からちょっと風が離れると社会党が減ったりするわけでして、やっぱりこれは民主主義の基本からいうとその選択の幅をうんと縮めちゃう、事前の調整だから。だから、それがいいとは私は言えない。それは建設の談合だって、三分の理ぐらいはあるんですよ。ちゃんとあらかじめA社、B社、C社と決めておいてやれば変な工事はしないだろうと言う人もありますよ。しかし、それはいけないんだ、すべての人に門戸を開放されて、自分のコストを比較して安い人に入るような制度でなきゃいけないというのと同じように、そして政治の世界ではもっとさらに重要なことは、どういう主張の政党に投票するかということが一番大事なわけでございますから、こんなことは釈迦に説法でございますけれども、それに反するようなことを考えておられる節があって、これは困ったもんだなと思っているわけです。


1993/10/21

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