1992/05/29

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衆院・商工委員会

○江田委員 国民も注目をし、また世界も注目をしている独禁法改正でございます。きょうは閣法と衆法と両方組上に上っております。

 私は今回の政府案についても一定の評価をしておりますが、その政府案が決定にこぎつけるに当たってはやはり社会党の皆さんの大変な御努力が大きな影響を与えたんだと考えております。独禁法改正に強い意欲を持って積極的な行動をとられた、そして対案を提出されるに至った。できれば野党共同の統一案をまとめることができたらよかったんですが、私どももその作業に入ったんですけれども、時間が残念ながらなくて間に合わなかったということでございまして、次の課題にしたいと思います。

 そこで、まずきょうは衆法の方について伺っておきたいと思います。
 既に趣旨の説明もお伺いをし、また本会議で質問と詳細な答弁もあったわけでございますので、繰り返さないようにしたいと思いますが、まず何といっても九十五条で罰金の上限を現行の百倍、すなわち五億円に引き上げられる。政府案の方は一億円というわけですが、これは幾らがいいのかというのはなかなかこうだという方程式のような数字があるわけではない、理由があるわけではないと思いますが、五億円に引き上げられることの趣旨、あわせて政府案の一億円というものの評価について伺います。

○小岩井議員 御質問いただきましてありがとうございました。
 この罰金の上限を現行の百倍、五億円に引き上げることの趣旨、あわせて政府案一億円に対する評価、この点について簡潔にお答え申し上げたいと思います。

 これは、実は公正取引委員会の委員長の私的諮問機関であります刑事罰研究会が行ったこの調査の報告書を参考にいたしております。法人と個人の資力格差、これはフローで九十二倍、ストックで五十倍ないし百七十倍ということを重視いたしました。さらに証券取引法改正案、これは百倍でございまして三億円であります。それから先進国の罰金の水準、特にアメリカでは十三億円でありまして、これらをすべて勘案をいたしまして、刑事罰研究会の結論のちょうど中間あたり、五億円が適当ではないかということでその水準にするというふうに考えたわけであります。

 政府案については、一億円に圧縮する合理的理由がない、これは断言してもいいんじゃないかというふうに思うわけであります。これは法人等の資力に比して十分な感銘力、経済的打撃を持つものにはならない、したがって抑止力にならない、こういうふうに考えているわけであります。
 以上であります。

○江田委員 私は、これからの、特に先進国の独禁法政策というのはやはり国際的通有性がなきゃいけないのじゃないかということを強く感じているのですが、そういう点からすると社会党案の五億円の方がむしろ妥当なのかなという感じがしますね。

 次に、社会党案の二十九条、公正取引委員会の委員長及び委員の任命要件を加重するという点について伺いたいと思います。

 まず大企業、まあ大企業ですね、その社長であった者は委員長や委員になれないとし、また委員長及び委員三人以上が国の行政機関出身者となってはならない、いろいろな具体的な規定があるわけですが、具体的にどのような委員構成が望ましいものだと想定されているのでしょうか。例えば、消費者団体などから消費者団体のリーダーを入れるべきだというような主張もあったりするわけですが、これは法律上そういうことをどう書くかなかなか難しいかとも思いますが、どのような委員構成をビジョンとしてお持ちになっているかを伺います。

○小岩井議員 お答え申し上げたいと思います。
 今回の社会党・護憲共同の提案は、現行規定の要件、三十五歳以上、法律、経済学識経験者にさらに要件を加重するということであります。積極的に特定の職域から選出を固定する考え方ではありません。もちろん法律要件にかなう限り、今江田委員おっしゃるとおり、消費者団体のリーダー等で学識の経験を有する者の中から委員の任命があってもよいとは考えておりますけれども、私どもイメージとして一般的に想定をしているのは法曹界、裁判官であるとかあるいは弁護士であるとか学者の中から登用するということを考えているわけであります。
 以上であります。

○江田委員 八十五条、これは東京高裁の専属管轄というものを一般の高等裁判所にも広げようということですが、私も裁判官経験者として関心があります。

 ちょっと意地悪質問になるかもしれないのですが、御趣旨はわかるのですけれども裁判所とどういう相談をされたかですね。東京高裁というのは、これは先ほど来るときに名簿を調べましたら裁判官が九十九人。前の年の暮れの裁判官会議で事務分配をきちんと決めて行う。特別部が四つあって、例えば海難審判とか人身保護とかそういうような特別部があって、そのうちの一つがこの独禁法、こうやって受け入れ体制をしっかりつくっているわけです。しかしその他の高裁ということになりますと、例えば高松高裁だと判事は十一人。あるいはまた各支部ということになりますと、仙台高裁秋田支部、広島高裁岡山支部、なかなか大変だというので、これは具体的に実現可能性について検討されておるかどうか。

○小岩井議員 お答え申し上げます。
 江田委員の場合には裁判官の御経験があり、極めて貴重な御意見、御質問をいただいているわけでありますけれども、八十五条改正の趣旨については、従来東京高裁にしか提起できなかった二十五条の損害賠償訴訟を各高等裁判所に提起できるようにした。ものであります。このために各高裁に専門的な判断能力を有する裁判官の合議体を設けることにしたものでありまして、この合議体の設置については司法行政に関する問題であります。したがって、支部を置くか、あるいは事務配分を具体的にどうするか等、これは裁判所内部の問題として処理をしていただきたい、このように考えているわけであります。具体的には裁判所との協議はいたしておりません。

○江田委員 司法部の中のことですから、法律を決めればそれは何とかやっていただくほかないのですが、それでも余りきりきり舞いさせても困りますので、よろしくひとつお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。

 次に、閣法について若干の質問をしたいと思います。
 公正取引委員会に対して少し伺いたいのですが、いかに新しい罰則ができてもそれが活用されなければ意味がない、もう何度も言われたことです。しかしどうも国民から見ても、また国際社会から見ても、我が国の公正取引委員会は弱いというふうに見られているんじゃないか。既にこの委員会でも多くの質問のありました今回の埼玉県の建設談合問題、これはどうも公取が自民党と談合したのではないかというような見方さえあるわけで、まことに情けないと思います。

 この埼玉県のことでちょっと伺いたいのですが、二条六項に該当する事実があって三条に違反をする、そこで排除措置はとった、しかし行為者が特定できなかったから、そこで告発はできなかったんだ、こうおっしゃったわけですね。それでいいですね。後でいろいろ言い逃れされても困るのですが、今のことでいいですね。

○梅澤政府委員 法律の御専門家の江田委員にお答え申し上げるわけでございますけれども、今仰せになりましたことは大筋にそのとおりでございます。

 ただ、一言付言させていただきたいのですが、繰り返しになりますけれども独占禁止法の行政上の措置としては、これは法人がその……(江田委員「それはわかっています」と呼ぶ)それで、我が国では刑事罰としてこれを犯罪として構成するためにはその基礎としての個人の刑事責任を問うに足る事実の行為の確認が必要であるということでございます。

○江田委員 二条六項に該当する事実があって、これは三条に違反をするんだ、そうすると、これはもう八十九条一項一号で犯罪はその限りではそこにあるわけですよね。犯罪はあるんで、あなた方は、公正取引委員会としてはこの法律の、独禁法の規定に違反する犯罪はあったと思料されたのですかされないのですか。犯罪があった、というふうに考えたのか考えてないのか。

○梅澤政府委員 犯罪ありと思料するに至らなかったということでございます。

○江田委員 犯行を犯した者がだれであるかという特定はできなかったと。しかし、犯罪がなければあなた、こんな排除措置だってできないんじゃありませんか。土曜会というものがあって、そしていろいろな土木建築事業について不当な取引制限をやっておる、その事実ははっきり認定されたんじゃないのですか。犯罪はあった、しかし、だれがやったかがわからなかったから告発できなかったということじゃないんですか。

○梅澤政府委員 申すまでもございませんけれども、犯罪の場合には違法性という構成要件と責任要件という問題があるわけでございます。行政措置の対象になります独占禁止法の三条違反としては事業者の違法性があればそれで十分足りるわけでございますが、犯罪ありと思料するためには、やはり個人の行為者の特定、刑事責任を問うに足る相当の事実が前提になるというのが私どもの考え方でございます。

○江田委員 七十三条ですが、犯罪があると思料するときは告発義務が生ずる。しかし、普通に刑事訴訟法で考えれば、告訴、告発というのは、被疑者を特定しなくても、犯罪を特定して処罰の意思を求めればそれで成立するわけです。犯罪事実の特定と処罰の意思、それで告訴、告発は成立するのですよ。被疑者を特定しなくて犯罪事実を特定することはできるのです。もしあなたがおっしゃるように違法性とか責任まで全部きっちり証拠を固めてやらなければ告発できないということになったら、検察庁はもう何もすることないじゃないですか。そうじゃなくて、犯罪事実があったらそれで告発し、あとは検察当局がきっちりした捜査をやって、専門的に刑事司法の観点から違法性や責任の問題までちゃんと捜査した上で起訴をすればいいということにならないと、そんなことを言っていたら、刑事犯罪なんというのは告訴、告発、全くできないことになる。そこがさっきからずっと言われていることじゃありませんか。一体なぜ埼玉のこの建設談合事件で犯罪があったと考えないのか、もう一度明確に答えてください。

    〔額賀委員長代理退席、委員長着席〕
○梅澤政府委員 専属告発権の発動につきましては、法理論上は公正取引委員会の裁量に属するわけでございます。しかしながら、それは適正、厳正に行われなければならないということは言うまでもないわけでございます。

 そこで、我が国の行政告発で最も効率的かつ機動的、厳正に行われておるのは国税の脱税の犯罪でございます。これは、なぜこれだけワークしているかと申しますと、やはり検察当局と告発当局との事前の連絡体制がきっちりとできておりまして、機動的に告発権を発動しておる。私どもも、今後独占禁止法の告発というものを継続的かつ機動的かつ適正、厳正に行うためには検察当局との協議体制がぜひ必要である。今後これを強化する考えを持っておるわけでございますが、私どもが検察当局と意見を交換いたしますのはあくまで公訴提起あるいは公訴維持の専門機関である検察当局の専門機関としての意見を聞くわけでございまして、そのときには、我々が審査をした事実、それに対する独占禁止法上の構成、あらゆるものを示しまして意見を聞くということでございます。そのときに公訴提起あるいは公訴維持の専門機関の意見をよく聞いて、やはり告発というものを厳正かつ機動的にやることがこれからの公正取引委員会の七十三条の活用のための基本的な条件であろうと私は考えるわけでございまして、その点はぜひ御理解を賜りたいわけでございます。

○江田委員 そんなことをおっしゃったら私は、自民党とだけじゃなくて、公取は検察庁とも談合したのじゃないかと言いたくなりますよ。そうまでは言いませんけれども、確かに七十三条、それは告発しなければならない、しかし、そこに公取当局の裁量というものが働くと思います。思いますが、もう少し毅然たる態度で厳正にやってもらわなければいけないと思います。

 もしも公取の方がスタッフの数が足りないんだ、検察庁の方ももうちょっと人が足りないので今は困ると言っているんだとか、そういうことがあるならば、今度はそっちの方でちゃんとしていけばいいことでして、しっかりしていただきたいと思います。

 きょうは、加藤官房長官がお忙しい中をこちらへ出席してきていただいているということなので、まだ私の時間はもうちょっとありますが、加藤長官への質疑があるので、私はこのあたりで終わりにいたします。


1992/05/29

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