1992/04/22

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衆院・商工委員会

○江田委員 本日審議されております中小企業流通業務効率化促進法案、これは私たちも賛成法案でございますし、また先日の特定債権法案、リース、クレジット、ああいう問題点も余りないと思います。もちろん、我が国の物流問題は、既に同僚委員からいろいろ御指摘があったような大変な問題を抱えていることは、これは私も承知をいたしておりますし、いずれ改めて議論したいと思いますが、本日は視点をちょっと変えまして、現在の不況、そしてこれに対して中小企業対策を一体どうおとりになろうとしているのか、こうした質問をしてみたいと思います。

 まず大臣に伺うのですが、現在の日本の経済の実態というものを一体どうごらんになるか。日本経済は、昨年来の政府の見通しと大きく違って不況だということになりました。株価は暴落する、地価は下落をする、これはいいことだと思いますが、百貨店の売り上げはダウン、在庫はたまる、設備投資は進まない、そういうようなことで日銀が公定歩合を〇・七五%下げて、また政府は緊急経済対策を発表された。ところが、発表直後に株価はさらに下がった。これはもう考えられないことだというわけですが、これはどうも政府の政策は信用されていないのではないかという議論が出てまいりました。経済不振は政治不信が原因なのではないか、同じフシンですが、経済の方は振るわない不振で、政治の方は信じられない不信ですけれどもね。あるいはもっと進んで宮澤不信ではないかとか、景気対策のためには総理大臣を取りかえる必要があるのではないかという、こんな議論まで行われている。まあ取りかえてどうかなるものなのか、いや、それはちょっと違うということなのか、それはいろいろ議論があると思いますが、しかし政府不信ももちろん私あると思いますが、もうちょっと角度を変えた議論をしてみたい。

 それは、不況ですが、不況のすべてが悪いということになるのか。不況の中のこれこれこういう部分は、これは例えばさっきの地価の下落のように、これは当然のことであるんだとか、あるいはこれは経済を健全なものにするために耐えていかなければいけないことであるんだとか、そういうようなこと、あるいは時代の大きな変化が一見不況というように見える形であらわれているんではないかとか、いろいろあって、一種の複合不況だと私は思います。

 一つは、言うまでもなく、バブルの崩壊、これはある意味で必要なことなので、バブルにまた戻るような、そして景気がよくなったと喜ぶようなことではいけないんで、バブルが崩壊していく、それはそれで必要である、副作用が起きないようにしていけばよろしいですということだと思う。もう一つは、通常の在庫循環、これはある意味で時間が解決するという面がある。もう一つは内需の不振だ。財政出動、公共投資の前倒し、あるいは補正予算に有効性がある。そしてさっきの政治不信、証券不信、これは政治改革とか市場改革とかで社会的な公正を確立する必要がある。

 さらにもう一つあるんじゃないかと思うのです。それは消費者の意識の変化、消費行動の変化、こうしたものがあるんだろう。百貨店の売り上げがダウンした、こういうわけでもちろんバブル時代の高額商品が売れなくなったのはこれは当たり前ですね。そんな変な、やたら高いものばかりがいいというのが続くわけがないので、バブルの崩壊による消費行動の変化もあるけれども、それだけではなくて、消費者が求めているものが大分変わってきつつある。例えば車。新車がよろしいというんで、今は最初の車検三年ですから、二度目の車検五年ごとに買いかえるとか、あるいは三年でもう買いかえるとか、しかしどうもそういう消費のあり方というのは違うんじゃないかというので、しばらく自分の愛車として七年なり九年なり乗ってみようという方向に消費者の行動が変わってくるとか、あるいはデパートヘ行ってとにかくいいものを、ブランド商品なんといって、いろいろあるわけですが、そうでなくて、ちゃんと使えれば、そして長もちすればいいじゃないか、そういう選択に変わってくる、いわば地味ではあっても堅実な消費行動に変わってくる。これはある意味で本当の生活の質の高さを求めようという消費者、生活者の態度の変化でもあるわけで、どうもその辺で何か不振だ、景気が不況だ、これを何とかしてもう一遍景気よくしなきゃならぬという、そういう政府やあるいは我々や、それと実際の日本経済の中での消費者の求めるものと、その辺がミスマッチがあるんじゃないかという気がするのですね。そのミスマッチをそのままにして、公定歩合を引き下げるとか公共事業を前倒しするとか、それだけで果たしていいのだろうか。例えば四百三十兆円の公共投資はこれからやっていかなければならぬ。大きくこれも見直して、生活中心に思い切ってこの公共投資の配分の比率を見直さなければいけないんじゃないだろうか。建設省予算ばかりではなくて例えば厚生省とか文部省とか農水省とか通産省とか、最終的に消費者に買ってもらわなければいけないわけですから、消費者が真に求めているもの、生活者が真に求めているものにマッチした公共投資でなければならぬ。消費者が真に求めているものをつかまないと減税をしても設備投資をしても効果が上がらない、こういうことになっていく。

 いろいろ申し上げましたが、こういう消費者の意識の新しい変化、消費行動の新しい変化というものについて、大臣はどういう認識をお持ちになり、これをどう評価をしておられるかということを伺いたいと思います。

○渡部国務大臣 今先生からいろいろお話がありましたが、これはまさに先生御指摘のとおり現在の我が国の経済は過去、明治以後も、また戦後四十六年経験したことのない状態で、恐らくケインズもヒックスも予測できなかったであろうと思います。一般的に不況ということを我々物の本で読んでおるのでは、まずレイオフが行われ、失業者が町にあふれるという状態であります。ところが現在、不況の中で時短が叫ばれ、また人不足が最大の政策課題にもなっております。しかし一方、基幹産業、主要産業のほとんどが減益、減収、在庫がたまる、また御指摘の中小企業も残念ながら前年より売り上げも落ちる、収益も落ちる、こういうことですから、商売をしている者にとって去年より売り上げが減って在庫がたまって収益が減れば、これは不況でないと幾ら説明しておったってそうですかということになるはずのものではありません。また、今日本の経済そのものがもう一国経済では成り立たない。成り立たないというよりは、世界全体の経済に対して日本の大きな責任、もっと言うならば日本の経済が世界の経済に大きな影響を持っておるわけであります。

 こういう前提に立って今後の経済運営を考えますと、まず三・五%の成長率は達成させなければなりません。輸入の促進も図っていかなければなりません。そのために私どもは今御指摘のようないろいろの景気対策をやっておるわけでありますけれども、先生御指摘のようになかなかそれが目に見える形でまだ反映してない状態で、一番大きな問題はやはり昨年の金融、証券等に対する不祥事、しかもその後の状態として今の株式の大幅下落。戦後の日本の資本主義経済が、あの厳しい円高あるいは円安といった為替相場の変動、あるいは第一次、第二次のエネルギーショック、そういうものを越えて今日まで来れたのは、いわば大衆の証券市場への投資が企業体質を強くして、技術開発が行われ、設備更新が常に行われて強い国際競争力も持つことができたわけであります。ところが、三百万円で奥様方がへそくりをはたいてやっと買ったNTTの株が六十万前後になってしまうということになれば、これは株式市場に対して大衆の気持ちが冷え込んでしまう。金融も、私がいつも言っておるのですけれども、本来は企業の将来に対してお金を貸すということは銀行として褒められるべきことだったわけでありますけれども、一連の不祥事件から、何か銀行に金を貸すことが悪いことだ、何か株を買うことが悪いことだ、こういうような雰囲気が出てまいりました。やはりこれは健全な形に直して、証券市場あるいは金融、こういったものの信用を取り戻して、やはり投資環境、金融環境というものは取り戻していかなければならない。

 先生から政治に対する不信も大きな原因だというお話がありましたが、私はあえてこれも否定するものでありません。ただ幸いにこの方はおかげさまで、昨年の十一月、十二月ごろまでの時期は、一体予算がいつごろ通るものか、内閣もいつまで続くものか、私なんかも今ごろ通産大臣としておるものかというような雰囲気の時期もありましたけれども、おかげさまで予算も通していただき、国会も順調に審議をさせていただいて、ようやく政局は安定しつつありますので、これらの政局の安定を踏まえこれからどうしていくか、こういうことで、今先生の最後に御指摘になった消費者の求めるニーズの変化、まさしくこれはそのとおりで、かつて食べることに精いっぱい、着ることに精いっぱいという時代から今この国の国民の皆さん方は豊かな生活環境、これは公の面でも個人の面でもゆとりのある生活環境というものを求めてきておるわけでありますから、こういう消費者の新しいニーズにこたえて、例えば住宅環境をもっと快適なものにしていく、あるいは豊かな生活環境と福祉、教育あるいはレクリエーションの場、スポーツ、こういった面で豊かさを求める国民の消費ニーズにこたえる中で、残念ながら不振を続けておる経済にこれから新しい意味での活力をつくり上げて、国際社会への我々の責任も果たし、また国民の皆さん方の二十一世紀の新しい時代への生活のニーズにもこたえていくという方向での経済政策を進めてまいりたいと存じます。

○江田委員 ちょっと私の質問も長過ぎたのですが、答弁の方が委曲を尽くしていただきまして、若干ミスマッチもあったような気もするのですが、私が言いたいのは、やはりサプライザイドの景気運営、経済運営の考え方だけでなくて、ディマンドサイドといいますか、消費者、生活者の方から見て景気という経済の状態をどう見なければいけないのかという問題があるだろうということ、消費マインドが冷え込んでいるからこういう消費にしかならないというのではなくて、何か新しい志向というものが消費者の中に起きてきているんじゃないかといったこと、これは割に大切なところじゃないかということを指摘したかったわけです。だから、例えば建設省主導の公共下水道をだあっとつくるというのもいいけれども、そうでなくて、例えば消費者の皆さんに合併浄化槽に対する補助金をもっとどんと出せば、そういうところで消費がふえていくとか、いろいろあると思うのですが、最近中小企業が、やはりそうはいってもなかなか大変なことになってきている。

 BIS規制をクリアするために銀行の貸し出しか極めて厳しくなって、しかも地価の下落で担保価値の評価も厳しくなる。もしかしたら夏のボーナスに影響が出てくるかもしれないということが言われ、その中で政府の緊急経済対策でも中小企業の金融についての対策も盛り込まれているわけですが、銀行の貸し出しか難しくなる一方で、郵便貯金が個人貯蓄に占める割合が増加していて、そして財政投融資の意味が大きくなっておる。予算にもそれがあらわれておるわけですが、ところがなかなかこの郵貯の資金が産業界に適切に活用されていないのじゃないか。

 現在、私も実は余りよく知っていなかったのですが、中小企業金融公庫、国民金融公庫、こういうところで事務が停滞をしてなかなかさばき切れない。一方で、これは何というのですか、代理店制度というものがあって、市中のさまざまな金融機関を中小企業金融公庫などの代理店にして、いろいろ郵貯の資金なども流すような方法はあるということなんです。したがって、そっちの方で郵貯の資金も十分産業界に流れるようになっているということではあるのですが、しかしどうも実際を聞きますと、なかなかこれが活用されていない。

 一方で国民金融公庫の方は、もう今申し込んでも話を聞いてもらうまでに一カ月ぐらいかかってしまって、そうしておると、これはボーナスに間に合わない、こんなことにもなりかねない、そんな不安が今ずっと中小企業者の中に広がっておるというのですが、これは、例えば代理店制度をもっと拡充するとか、もっと活発に利用するように指導するとか、あるいは国民金融公庫その他の窓口の手続をもっと何かいい指導をするとか、いろんな指導がきめ細かく行われる必要があるんじゃないかという気がするのですが、いかがですか。
    〔委員長退席、竹村委員長代理着席〕

○桑原政府委員 まず、政府系中小企業金融機関の代理貸してございますけれども、かなり利用されているのではないかというふうに我々は見ているわけでございます。これは言うまでもなく政府系金融機関が少ない店舗数しかございませんので、それを補って中小企業者の利便の向上を図るということも目的として設けられているものでございます回最近の代理貸しの伸び率も相当高くなっておりますし、中小公庫の場合をとらせていただきますと、直接、直貸しと代理貸しというものの比率でございますけれども、代理貸しの比率が四二・五%ということでございますので、半分弱でございますが、これが代理貸しを通じて中小企業に融資されております。

 国民公庫と商工中金に関しましては、いろいろな事情がありまして、この率が一〇%以下になっているということでございますけれども、我々は、この代理貸しにつきましてはこれからも有効に活用していくように指導していきたいというふうに思っているわけでございます。

 また、この政府系中小金融機関が中小企業に対してきめ細かい配慮をした貸し付けというものをやっていくべきではないかという御指摘でございましたけれども、これは我々も全く同感でございます。先般決定されました緊急経済対策におきましてもこういう点がうたわれておりまして、我々はその中小政府系金融機関に対しまして、既往の貸付金の返済猶予であるとか担保徴求の弾力的な運用というものを行うように通達を既に出しておりますし、また同時に、民間金融機関につきましても、大蔵省と一緒に同じような細かい配慮をするようにということで通達を出したところでございます。

○江田委員 時間が参りましたが、日本経済の中で中小企業が占める役割というのは、どんなに強調してもし過ぎることがないという状況です。流通業務効率化促進法、これも一つのそうした対策のあらわれだと思いますが、ひとつ大臣、これからも決意を持って中小企業の育成のために努力をしていただきますようお願いをして、質問を終わります。


1992/04/22

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