2004年12月1日

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161 参院・法務委員会

 ・ 裁判所法の一部を改正する法律案(閣法第7号)

13時から16時半まで、法務委員会で裁判所法改正案の質疑。司法修習生の給費制を貸与制に変えようというもので、司法制度改革推進本部提出法案で成立を迎える最後の法案です。千葉景子さんと私とで、90分質問。推進本部は昨日で解散となっており、事務局長さんだった山崎潮さんは、今日は内閣審議官として答弁に立たれました。衆議院で施行を4年延長する修正をした上で、民主党も賛成し可決しました。


平成十六年十二月一日(水曜日)

○江田五月君 司法制度改革関連のいよいよ仕上げの段階に入りまして、裁判所法の一部を改正する法律案について質問いたします。

 この法律案が、これが司法制度改革関連の制度設計の最後の法律案だと確信をしておりますが、今日でもう、昨日で推進本部も終わりで、更に何かちょろっと残るというようなことはないと。これはだれに聞くというわけにもいかないんで、むしろ国会の方ですので、委員長や与党の理事さん、質問するわけにもいきませんが、そう確信をした上でこの法案の質疑に入ります。

 昨日まで山崎潮司法制度改革推進本部事務局長、肩書変わって今日から内閣審議官ですか、先ほど冒頭に感慨深いお話がございました。本当に御苦労であったと思っております。一時はもう何かやせ細ったような感じになっておったこともありますが、是非この仕事を終えて更に、裁判所にお戻りになるんでしょう、いい仕事を続けていただきたいと思いますし、推進本部の事務方を預かっていただいた多くの職員の皆さんの労もねぎらいたいし、さらにまた、その前に司法制度改革審議会をずっとやっていただいた審議会の委員の皆さんもそうですが、樋渡事務局長、そして職員の皆さんのこれまでの御苦労もねぎらっておきたいと思います。もう一度山崎さんに何か感想を言ってもらってもいいんですが、まあまあ、どうぞ現場にさらりとお帰りください。

 しかし、しかし、やはり聞いておかなきゃならぬことがある。私どもは、この司法修習生の給費制を貸与制に改めるということに対して基本的に大きな疑問を持っておりましたし、今も持っていないわけでありません。しかし、司法制度改革をここでスタートをさせる、そのために法整備というものをとにかく仕上げまで持っていこうと。さらにまた、いろんな角度から疑問点をただしながら、衆議院の方で修正が行われてこちらに来たということで、修正されたものを賛成をするということにいたしました。

 私たちが持っていた疑問、それはこの給費制から貸与制にするその本にある司法修習ということについての理念は一体何なんだと、こういうことなんですね。理念に裏打ちされずにお金勘定だけであれこれ制度がいじられるということであっては、これは見過ごすわけにいかないというので、山崎審議官、先ほどの答弁についてもう少し突っ込んでおきたい。

 先ほどは千葉委員が、司法修習生には職務専念義務というのはあったんじゃないかと。そうすると、いや、法律上はそれ書いていないと、しかし給費制だからその反対解釈として職務専念義務というものがあったと。今度は給費制でなくなるんだったら、職務専念義務というのは、法律に書いてなかったら職務専念義務ないんですか。

○政府参考人(山崎潮君) いや、職務専念義務はございますけれども、それを明確にしないとその修習資金との関係がはっきりしなくなるということから、法律上明文の規定を置くということでございます。

○江田五月君 そうすると、ますます私は聞きたくなる。修習資金との関係で職務専念義務が出てくるんだったら、今度の制度では修習資金要らないという修習生もいるんでしょう。こういう皆さんには職務専念義務はないんですか。

○政府参考人(山崎潮君) ちょっと説明が悪かったかもしれませんけれども、そもそもその法律家、将来公の仕事をするわけでございますので、そこで十分なその倫理観とそれから実務的能力、これを備えて巣立っていってほしいというところから元々は出るわけでございます。で、そこが変わるわけではないということでございます。法文上は不明確になるからそれは手当てをしたと、こういうことでございます。

○江田五月君 私は、やはりこの職務専念義務というのは、書かれているのは正に確認的なものだと、司法修習というものの元々の性格から出てくるものではないかと思うんですよ。で、そういう性格を持った司法修習というものがなければ、やっぱりきっちりした法曹が育たないという、それが私たちの信念ではないかという気がするんですが、そこは共有できるんですか、できないんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 正にそのきちっとした人間を育てるという意味で必要な修習でございますし、それに修習生もきちっと修習をしてほしいというところから修習専念義務というものが出てくるわけでございます。で、これが大切であるからこそ国でその修習を行うと、こういう政策を取っているわけでございますので、そこの大切さというのは今後も変わらないということでございます。

○江田五月君 私は、今司法修習というものをなくしてはどうかという、そういう制度設計を論ずる人たちもいます、その皆さんが考えていることも分からないわけじゃありません。ありませんが、やっぱりロースクール、法科大学院だけでは本当にこのプロフェッショナルとしてのスキルとマインドを持った法曹というのは育ち上がっていかないんだろう。どっかにやっぱりそういうプロを育てるプロセスというのは要るんだろうと。

 で、もし修習というものをなくするんならば、そうするとやっぱり法曹一元で、弁護士の中にとにかく全部入れて、弁護士の実務をやっていく中で、こういうそのスキルもそしてマインドも育つ、あるいは育てる、そして育った者を裁判官の方にしていくという、そういう制度にするという、これは一つの考え方と思いますよ。しかし、そういうそのスキルやマインドをきっちり育てるというプロセスなしに、法科大学院を卒業して司法試験通ったから、はい、もうあなたは一人前の判事補でございます、検事でございます、これはできない。

 だから、もし、私どもももう判事補制度はなくそうと、判事補の採用をやめたらどうですかという提案を一時その審議会のプロセスの中で言ったことあるんです。そのときに私たちが考えていたのは、法科大学院出たらすぐに判事になれる、とんでもない。やはりそれは弁護士として法曹一元の中で養成されるという頭があったわけで、ここは、司法修習というものは今のこの制度の下ではやっぱり必要なんだと。司法修習はこの統一的に法曹三者が、期間はいいです、それはたくさん育てるわけですから、多少短くなることはあるかもしれない。しかし、やっぱりそこで私たちも貸与制というものを認めますから、ただしすぐにじゃないですよ、しばらくたって、認めますから、その代わり、修習の中でプロとしての法律家の素養を身に付けてほしいということをもう念じて言うんですよ。

 これはまあ一般の人になかなか分かっていただけるかどうか、私も必ずしも自信がないんですが、やっぱり南野法務大臣、聞いておいていただきたいと思うんですけどね、世の中のっぺらぼうじゃないんですよ、いろんな人がいるんです。で、そのいろんな人の中には、看護師さんとしてのその職業倫理をしっかり持ってやられる人もいる、あるいは法律家としての倫理をしっかり持って法律の仕事に携わる者もいる。いろんな役割分担がある。別にだれが偉いとかの話じゃない。それぞれの役目なんです。国会議員もそれぞれの役目なんです。

 そうすると、法律家の中へ入っていくと、これ分かれるんですよ。ある人は裁判官です、ある人は検察官です、ある人は弁護士です。検察官は、たとえ総理大臣といえども逮捕をしたりすることは必要なことがある。弁護士は、たとえもう極悪非道、あんな者はというのだって弁護をするという大切な仕事が出てくる。裁判官はそれをぐっと引き受けながらいろんな話を聞く、それぞれの役目で。お互いそこでは敵対をし合うわけです、検察官と弁護士というのは。あるいは弁護士同士が原告、被告で敵対し合う。敵対し合うけれども、法曹という、あるいは司法を動かすという、そういう共通のマインドを持ってこの仕事に携わる。それを育てるのがこの司法修習で、だからここはアプレンティスシップという。

 ですから、私たちも、裁判官だったらちゃんと法廷の上にいるわけですよ。現に裁判官の合議の中に入って意見を言うわけです。検察官だったら、あえて取調べするんですよ、取調べ修習が違法かどうかという議論はありますけれどもやるんですよ。弁護士だったら、あえて拘置所に入っているその被疑者のところまで行って現実に面接してくるんですよ。そこまでやるんです。そういう中で、お互いの法曹三者のある種の共通理解、これ下手をしたらギルドになるんです。国民から見たら、もうあの三人の中で、三者の中で適当にやってということになる。しかし、それは解体しなきゃいけない。だけど、そこの共通の理解は要るんだと。それが修習だと。

 法務大臣、私と山崎さんのこのやや厳しいやり取りを聞いて、今の、私が今言っていること自体のことはいいですけれども、この雰囲気についてはどういうふうにお感じになりますか。

○国務大臣(南野知惠子君) 専門性ということを貫いていき、しかも人間性をその中に包含しながら、国を又は人をという、命を大切にしていく一つの形として大切な役割をそれぞれ分担していっているんだな、それが専門職であり、また司法であればそれだけ崇高な人たちが、またそれだけ熟練された人たちが人の命を預かっていくというところのお仕事をしていただいているんだなということを理解しております。

○江田五月君 山崎審議官、いかがですか。私の司法修習というものについての理解はちょっと思いが入り込み過ぎていますか。どう思われますか。

○政府参考人(山崎潮君) 思いは入っておりますけれども、正しいことだと思っております。

 もう一つ、私は、法曹三者それぞれの立場をよく分かるということと、勉強をずっとしてくるわけでございますので、そこでやっぱりじっくり物を考えるという期間でもあるということでございまして、同じかまの飯を食って、いろんな方と議論をし、そこで人間性を学び、それから将来自分の進路をどうしようか、それからどういう役割を果たしていくかということをじっくり考えてもらう、そういう期間でもあるということでございますので、そういう意味でますますこの修習が大事であるというふうに理解をしております。

○江田五月君 これは、是非今のことはお忘れにならないようにしていただきたい。つまり、司法修習というものは、これから司法制度改革が実施過程に入って、恐らく私はまだまだ荒波に揺られるんだろうと思うんですよ。ですから、やっぱりそこは、ここは大切だというところはちゃんと押さえておいてほしいと、本当にそう思っております。

 いよいよそういうわけで推進本部も解散をいたしましたが、南野法務大臣、この司法制度改革推進本部の本部長は小泉内閣総理大臣だったわけです。法務大臣御自身はどういう立場であったかというのはもちろん御存じですよね。お答えください。

○国務大臣(南野知惠子君) 副本部長を務めさせていただいております。

○江田五月君 副本部長を昨日までおやりになっておったと。どうですか、いよいよ今日は、副本部長という仕事は、これは特に辞令か何かあったんですか、今は解かれているんだと思いますが。

○政府参考人(山崎潮君) 法律で三年間と設置期限が決められておりますので、私も辞令もらっておりませんので、自動的になくなるということでございます。

○江田五月君 なるほど、自動的になくなった。どういう、感想をちょっと一言。

○国務大臣(南野知惠子君) 本当に先生の情熱を今察知させていただきました。司法というものの大切さを理解しながら頑張っていきたいと思っております。

○江田五月君 小泉本部長から南野大臣に、副本部長に当然に法務大臣になったら当然なるわけですが、そのときに司法制度改革の副本部長としてこういうことをやってくれとかいう指示はございましたか。

○国務大臣(南野知惠子君) 法務大臣の役割をいただきますときに四つの項目をいただきましたが、その中の一つに司法制度の問題についてはリーダーシップを発揮してやれということが一行入っております。

○江田五月君 一行入っております、はあ。
 どうも、やっぱり私は本当にこの最後の締めくくりに小泉本部長に来ていただきたかったんですよ。それは、ここでともかくこの数年ずっとやってきたんですからね。それが何か一行入っておりますという、ああ、そんなものだったんですかと言われると私どもも困ってしまうんですがね。

○国務大臣(南野知惠子君) ちょっと済みません。
 一行入っていたということは、これは取り消させていただきたいと思いますが、総理の念がその中に、四つの項目の中の一つがそれを占めていたということでございますので、御理解よろしくお願いします。

○江田五月君 私は、司法制度改革は本当にある意味で身を入れてやってきたつもりでおります。私自身、一九六九年から七一年まで、これは最高裁判所の御好意で留学をさしていただいて、そしてイギリスで、イギリスの司法制度改革の現場に、実際見たり聞いたりというわけでもないけれども、そういう雰囲気の中にいたことがあるんです。

 イギリスの司法制度というのは、まあ、やたら複雑怪奇で、宗教裁判所があってみたり、それから普通のコモンローの裁判所もあるけれども、巡回裁判所があったり、何とか裁、まあ、いろんなものが重なり合っていて訳が分からぬ。そこで、王立の委員会ができて、そこで報告書が出されて、そしてそれを実行すると。その報告書を、今、まあ三十何年も昔のことで、一億円の小切手でもないのでもう忘れてしまったんですがね。今かすかに覚えているのは、今最高裁判事の島田仁郎さんと二人でそのレポートを翻訳をしたようなこともあったりして、司法制度の改革というのは、自分自身が身を置いていた場所でもあるし、何としてもやっていきたいと。

 それだけじゃなくて、司法というものに対する国民のある意味ではブーイングですよね、期待がどうも裏切られるということを様々聞いて、何としても改革をしたいと思っておりました。

 今、思い出すんですが、二〇〇〇年の二月十八日に日弁連が主催で東京の読売ホールで司法制度改革のシンポジウムをやったんですよ。そうすると、何と有楽町の改札口から読売ホールの入口まで行列でつながっちゃったんですね。まあ、それだけ大勢の人がこの司法制度のシンポジウムというのに、普通だったらそんなもの、とにかく来たんですね。

 そして、その中で議論をした、私もパネリストでしたが。田原総一朗さんが、まあ、ある意味でいえばもうはちゃめちゃな発言をされた。はちゃめちゃというのは、要するに司法の世界にいる者からすると、とんでもない、そんなことというような発言をして、裁判官というのはもっと市民の中へ入っていかなきゃ、市民の中に入っていくというのはどういうことだといって、あるとき裁判官の家に近所の人がやってきて、私こういう事件にかかわってきたんだけれどもどうしたらいいんですかと、裁判官、質問されたらどうするんだと。そうすると、それはもう今までの常識でいうと、私は裁判官ですからそういうことはかかわれませんと。それじゃ市民のすぐそばにいるということにならぬじゃないか、どうするんだというようなそんな議論をして、これはそういう議論の中から、やっぱり裁判官だから、うっかり入ってきたら、おまえはもう出ていけ、出ていかなかったら不退去罪で警察呼ぶぞ。それではいけない。そうではなくて、やっぱりそのときに、いや、すぐ向こうに行ったら司法ネットというのがあるから、あそこへ行けばちゃんと弁護士さんが親切に話聞いてくれるから。できれば、私は裁判官という立場で公平にこの対立する皆さんの話を聞いて判断しなきゃならぬ立場だから、あなたの話は、ごめんね、聞けないんですというような、そういう裁判官になっていかなきゃいけないというような、その辺からずっと始まってきたんです。

 そこで、南野法務大臣に伺いたいんですが、法務大臣、司法制度改革推進本部の副本部長になられる前に司法というものに対してどんな感じを持っておられたか。これ通告、別にしているわけじゃないけれども、是非ひとつ率直な、法務大臣としてそんな答えでいいとか悪いとかという話じゃないですから、率直なところを聞かせてほしい。

○国務大臣(南野知惠子君) 突然のお話でまだ意見はまとまりませんが、司法という問題については一番身近で考えていましたのは、やっぱり弁護士の方々、さらに裁判所でいろいろと裁判をしてくださる方々、それと事件が起こったときにそういった人たちに対応してくださる検事の方々、いろいろなそういう方々を想像いたしておりましたが、司法というところの大きなポイントの中には、やはり治安という問題もあり、またそれを大きく包含している人権問題というのがある。そこら辺の課題からいろいろと枝葉が出ていくのかなというふうに思っております。

 そういう意味では、国会議員という形の中で、法律を作っていくという立法者としての立場の中からは、やはり弱い人たちの問題を特に中心にかかわりを持っていこうというところでいろいろな法律にも手掛けていき、そして先生方のこの情熱ある法務委員会の方に来て、ああ、やっぱり司法というのは国を大切にしていかなければならない、国を守るものだなと、人間を守るものだなと、そのようにも思ったところでございます。

○江田五月君 司法制度改革は、推進本部は終わりましたが、どういう制度設計にしたらいいのかなというのでこれまでずっと苦労しながら案を作り、それを法律にし、やってまいりましたが、実はこれからなんですよね。裁判員制度にしても、法科大学院もまだ揺れている、司法ネットはさあこれからなどなど、全部これからなんです。しかも、さっきの、今後どういう体制でいくかということで、内閣官房に司法制度改革推進室、そして法務省の中に推進会議、これはもう今度は副本部長じゃなくて、もう法務大臣がその司法制度改革の実施の重大責任を負うということになるんですが、財政のことはさっき千葉さん、千葉委員がちょっと伺いましたが、どういう覚悟を持ってこの推進に、実施に当たられるか、改めてもう一度聞かせてください。

○国務大臣(南野知惠子君) いろいろな国民の情報も取り入れながら、多くの人の意見を聴きながら、また国会でこれだけ審議していただいております。これをどのように成果を出していくかというのは、もちろん先生方のバックアップもございましょうし、司法にかかわる三者、これが共々に大きな活躍をしていただけるもの、しっかりスクラムを組んでいっていただくという方向に持っていきたいと思っております。

○江田五月君 法曹養成なんですが、一点突破型の司法試験で養成をされるという、これがいい面もあるんですよ、制度としては。それはあるプロセスの中でというと、プロセスの間に、プロセスにいる間じゅう何か教官の顔色をうかがっていなきゃならぬとか、そうじゃなくて、ふだん、それはもう自由奔放な活動をしていても、ここはというとき一点突破で試験を通ったらそれで法曹になれるという、そういう制度の持っている魅力もあるんですけれども、ところが現実にはその魅力がきらめくということにならずに、逆にその一点突破の試験を目指して、もう集中して受験勉強をする。その間、もうそこへ集中しているから世間のことがどうであろうと私は知りませんという、そういうある種の専門ばかといいますか、そういうことになって、しかもその試験が通ったら、おれはもうこれで勝ち組だということで、特にそのまますっと裁判官になっていくと非常にいびつな裁判官になっていくということがあってこの養成制度を変えるということをやったわけで、やはり今までの司法試験を目指して努力しているそういう皆さんはもちろん、もうあなた方は全部はしご外しますよというわけにいかないから、これは大切にそれなりのことは考えて、次第次第になくしていくという制度の移行期に当たっての配慮は要る。しかし、やっぱり新しい制度で新しい法曹養成で新しい法曹を作っていくということで制度をスタートさせている、そこに対する思いというものは、愛情というものはやっぱり一緒に共有してほしいと思っておりますが、どうです、その愛情。

○国務大臣(南野知惠子君) 愛情は人一倍あるというふうに思っておりますが、やはり一つの物事を今ここでやっと土台を作り掛けているわけです。その土台を作った以上、それがすてきな形になるまでこれは見ていかなければいけない。ある形を作った後にも、それがしっかりと歩いていけるかというところを見ていかなければならない。それはここにいる人の共同責任であろうかなというふうにも思っております。

○江田五月君 私なんかも法曹になろうとする者から相談受けたりして、君はどういう法曹になろうと思うんだと。法科大学院というのはこういう思想でこういう夢で今作ろうとしているんだけれども、それを共有できるなら法科大学院、そうじゃなくてやっぱり一発試験でということなら、それはあと二、三回まだ、もっとかな、あるから、そっちへと。そして、法科大学院に進んだ連中もたくさんいる。その皆さんが、この制度の今の移行期の受験生の数とかなんとかで、これはやっぱりもうちょっと、あともうちょっと予備校へ行けばあの一発試験通るかもしれないからというんでそっちへシフトすると、こちらの難しさとの兼ね合いでね。こちらというのはロースクール、新司法試験の、というのでこっち、旧来の制度の方へ移っていくようなことが起きたら、起きたら、それは法科大学院を通じてプロセスで法曹を養成するというもののスピリットを壊すことになるという思いで言っているわけです。

 最高裁に来ていただいているので伺いますが、裁判官が本当に今問われているんだろうと思うんですよ。私は、この司法制度改革室の一連の経過の中で実は弾劾裁判所の裁判官であったこともあって、ちょうどその当時に、もう名前は忘れてしまいましたけれども、ある裁判官が児童買春、児童ポルノ法で有罪判決を受けて、そして訴追委員会から訴追をされたというケースがあって、もちろん弾劾裁判所の裁判員全員で合議をして判決を書いたんですが、その判決の中に、弾劾裁判所としての裁判官の皆さんに対するメッセージというものを書き込んだつもりでいるんですが、これはあれですかね、現職の裁判官の皆さんに多少は、そういうことを弾劾裁判所として書いたことは役に立っているんでしょうか。インパクトはあったんでしょうか。どうなんでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(山崎敏充君) 平成十三年にただいま委員おっしゃられた大変残念な事件が発生いたしました。これは国民の司法あるいは裁判官に対する信頼を傷付けたものということで、極めて遺憾な事件であったと思っております。

 この事件、今委員おっしゃられましたように、弾劾裁判所の判決がございまして、これは官報に掲載して、だれの目にも留まるような形になっておりますが、そういうことを始めとして、広く報道がされました。様々な御指摘あるいは厳しい御批判、御意見もちょうだいしたわけでございまして、私ども裁判官にとっては大変ショックな事件であったということでございます。

 そういう御指摘の中で、今委員がおっしゃられました弾劾裁判所の判決の中でこういうことを申されております。単に裁判官が、その職務の遂行につき、事実認定と法律適用に職業的技量を備えているだけでは足りず、職務の内外を問わず、国民から信頼される人権感覚と識見を備えていることが必要であると、こういうくだりでございまして、ここでおっしゃられることは誠に御指摘のとおり、そのとおりであろうと思います。すべての裁判官が日々拳々服膺すべき御指摘であろうというふうに思っております。

 裁判所部内では、この事件を契機に、各裁判官、この問題を非常に重く受け止めまして、それぞれの裁判所あるいは司法研修所における研修等で十分意見交換をし、裁判官の在り方について議論をしてきておりまして、私どもとしても各裁判官の自覚を促してきたところでございます。

 今後とも、各裁判官一人一人が高い職業倫理を保持し続けるということは必須のことでございまして、国民からの信頼を失うことのないよう努めてまいりたいと考えております。

○江田五月君 是非、これはよろしくお願いをしたいと思います。

 例えば知財高裁を作った、これもまだこれから。あるいは行政事件訴訟法の改革もやった、これもこれからいろいろある。ADRも作った、これは更に個別法を作って実を、実体を作っていかなきゃいけない。

 そして最後に、これまでの、昨日もちょっと申し上げましたが、司法制度改革の中で、やはり今後の日本のこの制度の設計とその実施の過程の中で非常に重要な経験を私たちはしたと思うのは、やっぱり公開の問題なんです。司法制度改革審議会がリアルタイム公開、そしていよいよ推進本部が始まって検討会も非常に高い程度の公開性を持って議論をしてきて、そしてこれが一つの、模範と言うとおこがましいですが、形を示したわけですよね。

 おとといでしたかね、NHKで二十四時ちょっと前、あれは何だ、「あすを読む」でしたかね、あの中で若林誠一解説委員が、司法制度改革、これだけ、派手ではないけど、かなり大きな改革をやってきたということをおっしゃっていただきましたが、そうやってマスコミの皆さん、あるいは有識者の皆さんみんな、司法制度改革は、細かなところの意見の違いはあっても、これは大切だから精一杯応援しようと。裁判員制度だって、ほらね、国民の普通の人からいうと、裁判所へ呼ばれて裁判に裁判員として携わる、とんでもない話。それでもやっぱりこれをやろうと、みんなとにかく社会のある種のリーダーシップを持っている人たちが言ってくれるようになってきている。それはやっぱりリアルタイム公開でみんなと議論をしながらやってきたことだと思うんですよ。

 その公開性、透明性、このことについて法務大臣、最後に、これからいろんな行政をやっていく上で大切なことだと思うんですが、お考えを聞かしてください。それで質問を終わります。

○国務大臣(南野知惠子君) 本当に今、先生が熱くお話しになられました。そのことについては私もいたく心に刻んでおるところでございますが、司法の難しさ、また司法の大切さということもありますが、それ一つ一つの物事が国民の中に見えていく、国民に開かれていく、そして速く、頼りがいのあるというところもそこに含まれてくるかも分かりませんが、そういう開かれた司法の在り方、国民とともに歩く司法の在り方ということは、これ目指していかなければいけませんし、大切に育てていかなければならないというふうに思っております。

○江田五月君 もし、山崎審議官、最後に何かありましたら一言。

○政府参考人(山崎潮君) 今回のその改正につきましては、国民の視点から物を考えるということでやってまいりました。過去に一度大きなつまずきがあったわけでございます。これは臨時司法制度調査会でございますけれども、そのときのやはり反省点は、やっぱり国民の視点からのテーマではなかったということと、実行の組織をきちっとしなかったという反省が残りました。その後、いろいろごたごたがあった後、法曹三者の内部だけで協議をするという期間が何十年と続いたわけでございます。これは国民から見れば全く見えない世界でございまして、物が言えないという時代がずっと続きました。

 今回、先ほど御指摘ございましたように、開かれた組織で、法律家以外の方も多数参加をしていただきまして議論をいたしました。そうしますと、やはり法曹に対する注文はもう山ほどあるなということがよく分かりました。そういうものを今回取り入れて、その成果としてお示しをしたわけでございます。

 そういう意味では、今回の改正はそういう意味では開かれた司法というその玄関口になったんではないかということで、十分な意義があっただろうと思います。今後、この玄関口だけで終わるんではなくて、大いに開かれたものにしていきたいというふうに考えております。
 どうもありがとうございました。

○江田五月君 終わります。


2004年12月1日

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