2004/04/15

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159 参院・法務委員会

 ・ 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(閣法第61号) 
 ・ 難民等の保護に関する法律案(参第14号) 

10時から2時間、法務委員会。まず、自民党の岩井國臣さんの民主党案に対する質問につき、私が答弁。次に私が30分、政府案につき質問。主として外国人労働者の劣悪な生活実態につき、雇用状況、社会保障、教育などを質しました。この改善がなければ、入管行政の厳格化だけでは、状況は改善されません。

その後は、千葉景子さんが30分質問し、民主党案につき私が答弁。


○委員長(山本保君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び難民等の保護に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○岩井國臣君 難民認定とは、条約難民と偽装難民を差別する作業であるかと思います。難民を偽装して入国を企てるテロリストは断固排除しなければなりませんけれども、そういう仕事は言うまでもなく入国管理行政そのものではないかと思います。また、私は、条約難民にしろそうでないにしろ、合法的に我が国に滞在する外国人に対してはしかるべき保護政策なり管理政策が必要だと考えております。
 そこで、法務省にお聞きいたしますけれども、難民認定と出入国管理行政との関係についてどのようにお考えなのか、御説明願いたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 難民認定は、おっしゃるとおり難民の地位に関する条約に定められている難民に該当するかどうかを判断するものでございますが、迫害から逃れてくる難民にとりましては、単に我が国で難民として認定を受けるだけでなくて、我が国への入国や在留が認められ庇護を受けられるかどうか、これが重要な関心事項であると考えられます。
 我が国では、これまで難民認定をした人につきましては基本的にその在留を認めており、この点は今回の改正におきましても、難民と認められる人については一定の除外事由に該当しない限り一律に定住者という在留資格の取得を認めることとしております。難民の認定と我が国での在留をこのように密接に結び付けているわけですが、これは我が国における庇護を求める難民の目的とも合致する取扱いであると考えております。
 それから、難民条約上の難民に該当しないということで難民と認定されなかった人に対しましても、人道的な配慮から在留の特別許可を与える場合がございますが、こうした判断も、どの範囲の外国人を受け入れるかという出入国管理政策と密接に結び付いているものでございます。
 このように、出入国管理行政は外国人の適切な受入れを図るための業務を行うものでございますから、真に難民である者を適切に判断してその在留を認めるため、出入国管理を行う機関が難民認定業務を行うことには合理性があると考えております。
 それから、おっしゃるとおり、テロリストが我が国に難民を装って入ってくる、あるいは現にテロリストが入ってきて難民として我が国に庇護を求める。このような場合は、これは難民条約上も、また最近の国連決議によりましても、テロリストには難民としての認定を、庇護、保護を与えてはならないというのが言わば国際的な合意となっております。そうすると、そのテロリストについての関連情報などの収集に努めている入国管理局がこの点については適切に判断して難民を排除できるものと考えております。

○岩井國臣君 難民認定が法務省以外の省庁が行うべきだとの主張がなされるのは、強制退去にかかわる業務を法務省が所管しているために、同一省庁では公正中立が保てないのではないかという危惧に基づいているものと思われます。
 そこで、法務大臣にお尋ねいたしますが、難民認定に関しまして法務省は公正中立が保てないという批判に対する法務大臣の御見解をお尋ねします。

○国務大臣(野沢太三君) 法務省の入国管理局におきましては、これまでも公正中立を旨といたしまして難民認定業務を実施してきたものと承知をしているところでございますが、今回の改正案では、現在の行政上の不服申立て制度を前提としつつも、審理、判断の公正性、中立性をより一層確保するため、法務大臣は不服申立てに対する決定を行うに当たりまして、必ず第三者である難民審査参与員の意見を聴いた上で決定を行うこととしております。
 また、異議申立て棄却等の場合には、難民審査参与員の意見の要旨を理由付記の中で明らかにし、これは、このことによりましてこの考え方が世の中に公表されるということになりますので、委員御指摘の御懸念については解消されていくものと考えております。

○岩井國臣君 行政改革に当たりましては、一般的にですけれども、中央省庁等改革の推進に関する指針というのがございまして、その指針に基づいて既存組織の合理化を図るということになっているかと思います。そういう政府の原則的な立場を私は当然支持したいと思います。

 そこで、私と若干立場が違うかも分かりませんけれども、民主党にお尋ねしたいと思います。

 一昨日の参考人質問で横田参考人は、人権を尊重、強化するために新しい組織を作ることができるのであればその方が好ましいという、そういう趣旨のことも述べられました。一方で、行革の流れの中で新しい組織がいいのか、現行組織の改正で対応できるのか検討する必要があると、今回は法務省に難民認定業務を残しつつ改善を図ることで対応できると考えたと、そういう趣旨の発言をされていたかと思います。

 民主党といたしましてはそのような見解についてどのように思われるのか、お尋ねしたいと思います。

○江田五月君 冒頭、野党の議員立法に対して与党委員が質問をしてくださるということについて大変感謝を申し上げます。国会を議論の場にしてよりいいものを作ろうという、そういう委員の気持ちだということで、真剣な議論の中でいいものを作っていくために私どもも真剣に答弁をしたいと思っております。

 横田参考人が、もし別の第三者機関が作れるならその方が好ましい、しかし一方で行政改革という要請がある、したがって新しいものを作るというのはなかなか困難、そこで今までのものをブラッシュアップすることによってよりいいものになるならば、それはそれでいいのではないかということで、努力をしたらいいものになる可能性ができたのでこれでよろしいと、そういう御発言だったわけですね。そして、今の法務大臣の答弁でも、これまでの難民認定行政も公正中立を保ってきたと思っておるという、そういう御発言もございました。この二つを併せて考えてみると、私たちはやっぱり見解を異にすると言わざるを得ないんですね。

 今までの難民認定業務がいかに難民申請をしている人たちに対して冷たかったか、あるいはいかに行政内部にいろんなこの、行政内部というか、行政過程の中でいろんな無駄な衝突を作ってきたか。難民申請をしている皆さんが入管センターの施設に拘束されて、そして絶望的な気持ちになっていろんなことを、イレギュラーなことを行う。それを制圧するために職員が大変またこれ苦労する。その間に無駄な憎悪が生まれ、無駄な事故が起き、こんなことがたくさんあるわけですから、私どもはやはりこれは公正中立なやり方ではなかったと言わざるを得ない。

 そこで、行政改革の必要というのはもちろん私たちも認めます。そのことはおろそかにすべきでないと思っております。しかし一方で、やはり人権を保障するということ、外国人についてもですよ、これもやはり我々の今の行政の立場からすると大切なことであって、ここは第三者機関を作ることが必要だと。むしろ、今までの入管難民行政に携わってきた皆さんの専門的な知識を生かして難民認定業務をやっていただくことが本当に難民申請者に対して温かい庇護の手を差し伸べることの障害になっているという事実がありますので、第三者機関を作るということに、あえて行政改革の要請を乗り越えて、その必要性があるということで踏み切ったわけでございます。
 是非御理解をお願いしたいと思います。

○岩井國臣君 まあ、そうですね、今までの入国管理行政で中立公正は保ってきてないんだとは言えませんから、政府としては。しかし片方で、やっぱり本当にそうは言うけれども、胸張って言えるのかという批判もあるわけでありますので、やはり政府としてはというか、法務省としてはそういう批判に対して謙虚に耳を傾けるべきだと思います。
 次の質問に移りますけれども、私は、物事というのはすべからく両義性の論理というものが大事であるというふうに考えております。入管政策について言いますと、私は、差別化という問題と共同化という問題、そのどちらに偏ってもいけないのではないか、そのように感じるわけでございます。
 罰金の引上げと出国命令制度は一見相反するようにも見えるわけでございますけれども、やはり若干誤解を生むおそれはないのかなと心配しております。趣旨につきまして再度確認させていただきたいわけであります。また、政府は、変な誤解を生まないよう特段の広報を行うべきと考えますが、そういった広報の関係につきましてもどのようにお考えになっているのか、御説明願いたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 今回、新設する出国命令制度は、比較的悪質ではない不法残留者が自ら出頭した場合に、その身柄を収容することなく簡易な手続で迅速に出国させるとともに、そのような人については、上陸拒否期間を従来の五年間から一年間に短縮することによってそのような人の自主出頭のインセンティブを強化しようとするものでございます。
 これに対して、入管法七十条違反の罪について罰金額の上限を引き上げますのは、我が国で不法に就労して経済的利得を得ることを目的として不法に本邦に入国、上陸する不法在留者やいわゆるリピーターなどにつきまして、罰金刑の併科による経済的制裁をも加えて反対動機の形成を図り、もってこれらの悪質な不法滞在行為を抑止することを目的とするものでございます。
 したがいまして、今回の罰金額の引上げは、出国命令の対象となるような比較的悪質ではない不法滞在者をターゲットにするものではなくて、現実の出入国管理行政の運用としましても、出国命令に該当する人は早期の国外退去を図るため原則として捜査機関に告発されることはないと考えられますので、出国命令制度の導入やあるいは上陸拒否期間を短縮することと罰金を引き上げることは矛盾するものではないと考えております。
 もっとも、委員御指摘の趣旨を踏まえまして、罰金額の引上げが悪質性の高くない不法残留者の自主出頭のインセンティブ強化に悪影響を与えることのないよう、今回の出国命令制度の趣旨などにつきまして政府広報やあるいは入管ホームページへの掲載、また地方入国管理官署におけるチラシの配布、在外公館、日本語学校等へのチラシの配布、さらにマスコミにお願いしての報道などを通じまして広報に努めてまいりたい所存でございます。

○岩井國臣君 一昨日、角田先生が不法滞在者の在留特別許可について誠に鋭い質問をしておられましたけれども、私も全く同感でございます。
 そこで、大臣にお尋ねしたいと思いますが、NPO等しかるべき善良な組織が支援しているような場合など、今後大幅に特別許可を与えるべきであるというふうに考えます。そのための客観的なルールを作るべきではないかと、そう思うのでございますが、大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。

○国務大臣(野沢太三君) 不法滞在者に対して在留特別許可等によりその在留を認めるか否かにつきましては、これまでは個々の事案ごとに在留を希望する理由、家族状況、生活状況、あるいは素行、内外の諸情勢、その他諸般の事情を総合的に考慮して運用してきたところであります。今後、委員を始めこの委員会の皆様から大変的確かつ鋭い御指摘をいただいております点も踏まえまして、これまで集積されてきた在留特別許可の事例を整理分析しまして、各案件の処理の公平性や、今後の不法滞在者数に対する影響等に考慮をしながら、積極的に在留特別許可を与えることを検討してまいりたいと考えております。
 この許可の方針につきましては、これから個別の案件を十分分析していかなければなりませんが、そういったこの事例を判断する目安というようなものが作れれば、それについては公表をしてその対象者の方々が御判断いただけるようなものにしたいものだと、その方向性につきましてはまだこれからの課題でございますが、私はやはりこの人権上の配慮、あるいは人道上の配慮、それに加えまして我が国の国益に資するかどうかと、こういった事柄も十分検討すべき事柄と考えております。

○岩井國臣君 先般の参考人質問で、難民認定と出入国管理行政について、諸外国の例をちょっと私はお聞きしたんですけれども、まあいろいろありますよというちょっと答えだったんでございますが、少し具体的に法務省の方でお分かりになっておれば教えていただきたいと思うんです。

○政府参考人(増田暢也君) お尋ねの難民認定と出入国管理行政の関係につきましては各国千差万別でございますが、入国管理局で承知している範囲で幾つかの外国の制度を御説明させていただきますと、例えばアメリカにおきましては、九・一一の同時テロを受けて国土安全保障省が設けられましたが、それまでは司法省が所管しておりまして、難民認定の一次審査は司法省の移民帰化局、二次審査は同じ司法省の移民再審査執行事務所において審査されておりました。
 その後、昨年三月以後は国土安全保障省が設けられたことに伴って、移民帰化局を引き継いで出入国管理行政を統括することになった国土安全保障省の下にある市民権・移民サービス局、これが一次審査を担当していると承知しております。
 それから、イギリスでございますが、同じく一次審査は出入国管理行政を所管している内務省の移民・国籍局において行われております。二次審査は出入国管理関係の行政処分を一括して取り扱っている入国管理不服審査機構という機関において審査されていると承知しております。

○岩井國臣君 終わります。
 ありがとうございました。

○江田五月君 内閣提出の出入国管理及び難民認定法の改正案について、質問をいたします。

 やはり、この出入国管理行政とそれからこの難民認定行政と、この二つは本当は峻別しなきゃいけないんですが、こうして一緒に議論していますと、私自身も頭がこんがらがるんですね。つい十分ほど前、私は向こうの答弁席にいて、難民のことを頭で考えていまして、私どもの提出した難民保護等の法案についての答弁をした。こちらへ移って今度は出入国管理ということに頭をめぐらすと、そうしますと、やっぱり出入国管理の方が何といっても今の日本の国民の立場からいうと重要ですから、どうしてもそっちの方が頭の中を占めるようになってきて、難民のことというのはどうしても片隅に追いやられてしまうということに私自身の頭の中でもなってしまうということを考えますと、これはやっぱり出入国管理、難民認定、この両方を一つの法律で規定して、しかもその両方を一つの法務省入国管理局が行うというのは無理があるなということを今実感をしつつ、入管の関係について質問をいたします。

 今回の政府の改正案の政策目的というのは、これは一体何だろう。いろんな精神障害者の関係のことなど懸案を解決するということもありましたが、そのほかに入管行政を適正化するということによって不法滞在者を半減させるという、そういう、実際そこまで行けるかどうか、これは大変だと思いますが、ある種の数値目標まで入った政策目標があって、その政策目標を達成する目的というのは何かというと、これは治安状況の改善だと、すなわち今回の入管難民法改正というのは日本の治安状況の改善、これが政策目的であると、こう理解をしていいんですかね。そこはどうなんでしょう、法務大臣。

○国務大臣(野沢太三君) 私はといいますか、政府はと言ってもいいと思いますが、日本のこれまでの発展それから将来の発展を考えますと、諸外国との良好なお付き合い、出入国を含め、これも健全な関係がどうしても必要でございますし、これはますます拡大強化されるべき方向であると、こう考えております。

 それを預かります出入国管理の仕事が適切、適正に行われることによりまして、そういった外国との交流が活発にかつ適切に行われると、こういうことでございますので、出入国管理の仕事というのは極めて重要な仕事であろうかと思います。

 具体的には、ビジネスでの往来あるいは観光客を倍増させようというような施策、さらには留学生を大いにひとつ増やして将来の懸け橋となる人材を育成する、そういったことからいたしましても、何としてもその意味で適切、適正な出入国管理の業務が行われることが大事でありますが、あわせまして、やはり我が国における最近の治安状況の悪化という点を考えますと、その一つの大きな要素になっております外国人犯罪、さらには不法滞在者の犯罪もこれまた防止せねばならない。言わば一見矛盾するようなふうに見えるかと思いますが、その間には共通の課題としての我々が外国人の皆様とどう付き合っていくかという一番大事な点があるわけでございまして、その政策目的を実行、実現するための一つの具体的な御提言を今申し上げていると、こう申し上げてよろしいかと思います。

 そこで、出入国管理行政の遂行に当たりましては、歓迎すべき外国人の円滑な受入れと好ましくない外国人に対する厳格な対応、これはいずれも重要な要素でございますが、これを両立させることが非常に重要であると考えております。

 法務省といたしましては、昨年十二月に犯罪対策閣僚会議で策定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画におきまして、今後五年間で不法滞在者を半減させるという目標が掲げられたことを踏まえまして、不法滞在者対策を推し進めるために様々な取組を行っているところでございます。

 他方で、今申しましたように外国人観光客や専門的、技術的分野の外国人の受入れなど、我が国が歓迎すべき外国人についてはより積極的に受入れを図ってまいりたいと考えておるわけでございます。

 不法滞在者半減に向けた取組も、我が国が歓迎すべき外国人を受け入れやすい環境作りにむしろつながるものでありますから、不法滞在者を減少させるための努力は外国人の受入れの拡大にも併せてつながっていくんだと考えておるところでございます。

 今後とも、委員御指摘のような観点も十分踏まえながら不法滞在者対策を、治安の安定を求める国民の声にこたえていくというのと併せまして、大多数の善良な外国人の方々の円滑な受入れの実現のための基盤作りだと、こういうことを念頭に置いて適切な出入国管理行政を遂行してまいりたい、かように考えております。

○江田五月君 御丁寧に各方面にわたった、配慮した答弁をいただいたんですけれども、まあなかなか、しかし、一つの措置を取ったらあっちもこっちもすべてがうまくいく、これがもう問題解決の、どういいますか、魔法のつえだみたいなものがそうあるわけじゃないんだと思いますよ。

 歓迎すべき外国人に大いに来ていただくという、そういう手当てを講ずるというのは、今回の法改正の中では特に目立ったものは、一部あるかもしれませんが、ないんで、そうではなくて、やはり入管のチェックを適正にし、厳格にし、そして、国内にいる二十二万人に上ると言われる不法滞在者に対してこれを半減させる、そのことによって治安の状況を改善すると、こういうことだろうと思うんですが、まず第一に、本当に二十二万人というのが、こういう高水準で推移しているという事実があるのか。どうもこれあるようにも確かに思いますが、その根拠はそんなに明確でもないなという感じはしますが、まあそれはおいておきましょう。一方で、不法滞在者の犯罪が増加をし、これが外国人犯罪の増加となって日本の治安を悪化させていると、この点はもう少し、これはよく事案を精査を、事態を精査をしてみないと、そうかなという感じもあるんですが、まあおいておいて。

 確かに、我が国の入管法規に違反をして不法な残留がたくさんいるという事態が好ましいわけじゃもちろんないんで、これはそうしたものを減らす努力をする、そのためにいろんな行政手法を用いるということは、それはそれで認めるにやぶさかじゃありません。

 ただしかし、一方でそういう不法滞在者が高水準で推移をしていること、他方で外国人の犯罪というのがどうも無視できない傾向を今示しているということ、これは片方が原因で片方が結果ということになっているのか。逆に言えば、不法滞在者をじゃ半減すれば外国人の犯罪というのがぐっと減ってくるのか。どうもそこの関連性というのは証明されていないというか、むしろないんじゃないかという気はするんですね。

 これはやはり今、日本にいる外国人、とりわけ滞在期間が切れてもなお日本で働いて、オーバーステイという状態になって、しかし、いろんな、いわゆるきつい、汚い、危険という、そういう職場で大変な悪条件の下、大変な低賃金の下で働いている、そういう人たちの生活実態というのはやっぱりちゃんと見なきゃいけない。その生活実態をどうするんだと。彼らは日本にとって歓迎すべからざる者だから出していけということで本当にいいのか。そこのところを考えないと、だって、そういう皆さんによって、まあ言い方は悪いですが、ある種支えられている、そういう業種というのも実は日本の社会の中にあるんじゃないか。それを、もうすぐ出ていけということだけで一体日本社会が本当に健全になっていくのかという問題が私はあると思うんですね。ですから、これは考えようによっては不法滞在者が高水準で推移をしていること、そして、外国人の犯罪がどうも増加傾向が確かにあるということ、同じ社会的な事実から出てきている二つの病理現象だというように見た方がいいんじゃないですか。

 そこで、私はここで、今日は厚生労働省、文部科学省の皆さんにも来ていただいておりますが、一体、例えば雇用の場、あるいは社会保障の場、あるいは教育の場で外国人、特に不法残留となっている外国人の皆さんあるいはその家族の皆さんがどういう状態に置かれているかということについて幾つか聞いてみたいと思っております。

 外国人の労働環境は今言ったように三K職場に集中しているというようなことがあると思うんですが、労働基準法で保障される水準以下の雇用環境に置かれている外国人の労働実態、これがどういうふうになっているかということを厚生労働省としては把握をされておりますか。

○政府参考人(新島良夫君) 御指摘のように、不法残留者の数、平成十五年一月現在で二十二万人ということでございますが、その多くが不法就労者であろうというふうに考えられているわけでございます。

 不法残留そのものは就労が認められないということでございますので、その就労の詳細な実態についてはこの把握は極めて困難であるというふうに考えております。ただ、平成十四年に退去強制手続が取られた不法就労者約三万二千人についてこの就労内容を見ますと、男性につきましては工員であるとかあるいは建設作業員というのが多いと。女性につきましては接客従事者が多いという結果が出ております。何分、不法ということでございますので、この実態の把握については非常に困難だということでございます。

○江田五月君 不法就労者と言うんですが、確かにそれは不法残留者は就労の資格がないから不法就労だと、就労していれば、それは論理的にはそうだろうけれども、彼らにとって見たら、だって仕事をしなきゃ生きていけないんですから、仕事自体は現に仕事をちゃんとやって、仕事が違法だという仕事じゃない。もちろんそれは違法に従事、違法な仕事に従事している人もいるかもしらぬけれども、それはまた別の話でして、今の挙げられたような仕事自体が不法な、違法な仕事ということではないんですよね。ですから、それはやっぱりそこに彼らの生活実態があるわけですよね。それが不法残留者ですから把握ができませんというので一体、厚生労働省、労働現場というものを預かる役所としてそれでいいんですかね。もうちょっと、そんなものは統計上出てきませんからというんじゃなくて、実態を把握する努力というのをされたらどうですか。

○政府参考人(新島良夫君) 御指摘の労働環境につきましては、我々の立場といたしましては、不法就労をいかに防止していくかという立場でいろいろ行政取り組んでおりますけれども、事業主に対しまして、やはり外国人を雇った場合にどういう条件、雇用の条件あるいは労働条件、これについては指針を作っております。この指針に基づきまして事業主に対して周知、指導をしていくと。場合によりましては、労働関係法令違反ということがあれば、それは外国人であろうと日本人であろうと、あるいは不法であろうとなかろうと、労働関係法令に従った厳正な措置を取るという方針で対応しております。

○江田五月君 私はその辺りの頭の切替えを一度する必要があるんじゃないかと思うんですね。不法残留者というのは、オーバーステイの人たち二十二万人と言われる、これは社会的な実態なんですよね。法が認めていないんだからそんなものはないんだというわけにいかない、現に社会にある、一定のカテゴリー、一定の類型の人たちとしているわけですよ、そういう皆さんが。そして、そういう皆さんがある種の日本の社会の動きの中の部分を担っているという実態があるわけですね。それを、雇用主はそういう者は雇っちゃいけないとかいうようなことにして、どんどんどんどんこういう皆さんがどこかに追い詰められていくということになったら、それはまとめてぽんと外へ切り捨ててというのは、やはり日本がこれから先世界とつながっていくやり方ではないと思うんですね。

 ですから、そういう皆さんに対して、例えば雇用の労働条件をもっとしっかりと労働基準法に合うように確保しなさいとか、あるいはいろんな社会保障の関係についても、あるいは教育の関係についても、あるいは住居の関係についても、そういう皆さんを日本社会の中でちゃんと受け入れる、受け入れるということになるとこれは日本社会はそういう人たちのことをちゃんと把握できるわけですから、そうすると今のオーバーステイについてはそれじゃこういう方法でオーバーステイでなくするようにしましょうと、そういうことが一方でちゃんとなければ、それは行政としては私は幾ら厳しく不法残留者を摘発をしようといったって効果は上がらないと。むしろ逆に、そういう皆さんを追い詰めて大変な生活苦の中で好ましからざる行動にどうしても出てしまうというようなことになってしまうと。その辺りのある種の洞察力といいますか想像力といいますか、こういうものがなくて行政をやっていけるんですか。やっぱり行政は冷たいということに、厚生労働省の雇用労働行政というのは不法残留者に対しては極めて冷たい、こう言わざるを得ないと思うんですけれども。

 もう一つ、そういう三K職場にいる不法残留者をどんどん排除することによって、三K職場を嫌でも抱えているそういう企業あるいは業種、そういうものは一体どういうことになっていくかということをお考えになったことありますか、厚生労働省。

○政府参考人(新島良夫君) 厚生労働省におきましては、毎年六月に外国人雇用状況調査というのをやっておりまして、これは適法就労という前提で統計取っておりますが、やはり賃金面等でいろいろ問題があるものもございます。

 そういった中では、我々仮に外国人でなければということになりますと、どうしましても労働条件、労働市場においては二重構造化という問題が生じます。やはり企業としての構造改革であるとか、あるいはそういった企業の生産性の向上というような努力も併せてやっていくべき問題であると思いますし、そういった部分におきまして、行政といたしましてもその業種においていろいろ適切な助成等を考えてまいりたいと思っております。

○江田五月君 もう一つ厚生労働省に伺いますが、社会保障といいますか、いろんな社会保険の関係。医療保険、これは不法残留の皆さんは医療保険ということになるとどういう扱いになるんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) まず、医療保険の適用原則でございますが、我が国におきましては、日本人か外国人かを問わず、適用事業所に使用される常用的雇用関係にある者につきましては健康保険法、それ以外の者であって市町村に住所を有するという者につきましては国民健康保険法を適用しております。

 ただしかしながら、現在不法滞在者につきましては、強制退去の、退去強制の対象になるという者であり我が国に適法に在留し生活活動する法的地位を有さないということ、そして相互扶助、強制適用という社会保険の原理になじまない、こういったことから適用の対象とはいたしておりません。

○江田五月君 不法残留者でもけがもするんですよね、病気にもなるんですよね。日本の国内に居住する、生活する人が病気になったときに、けがをしたときに、あなたは保険の適用はありません、なぜならビザの期限が過ぎていますからというようなことでいいのかどうかというのは私は極めて疑問なんですが。

 百歩譲って、今これはもう質問しなくても前提として置いていいだろうと思うんですけれども、法務省の法定受託事務として市町村が外国人登録事務を行っております。その外国人登録については、不法残留者であっても登録を受け付けているんですね。そういう外国人登録までしている人たちにまで、健康保険、あなた方はいつ外へ追い返されるか分からぬから入れてあげませんよという、その政策判断というのはこれ行政としてどうです、冷たいなと自分で思われませんか。

○政府参考人(辻哲夫君) この不法滞在者の問題、大変社会保障にとっても大きなテーマだと存じますが、基本的に適用対象とするということは、適用対象となれば、なった方についてはすべての方について保険料を強制的に適用しなければならないと。病気になったからといって逆選択で医療を受けるということは許されない。連帯の義務を常時果たさなければならない。そして、市町村もその保険料を適用しなければならないという中の下での仕組みでございまして、やはりこの不法滞在という方につきましては、国際的にも社会保険の国ではやはり不法滞在者については社会保険を適用しておりません。そういう状況の下で、私ども誠に困難なことであると考えております。

○江田五月君 それでは、保険制度によって病気になったりけがをしたときの医療費をカバーしていくという、そういうことは不法滞在者に認められないというんならば、日本が提供していく教育、これはやっぱり不法滞在者、不法残留者には日本の教育はもう提供しないと、こういうことになるのかどうか、文部科学省いかがですか。

○政府参考人(永野博君) お答え申し上げます。
 不法滞在しております外国人の子供でありましても、義務教育段階にある外国人の児童生徒が公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合でございますけれども、国際人権規約などを踏まえまして、日本人児童生徒と同様に無償で受け入れておりまして、教科書の無償配付や就学援助を含めまして、日本人と同一の教育を受ける機会を保障しております。

 また、文部科学省では、市町村教育委員会に対しましては、公立の義務教育諸学校への入学を希望する外国人児童生徒がその機会を逸することがないように、その保護者に対して入学に関する事項を記載した就学案内を発給するように指導しております。また、その際、不法滞在の外国人につきましては外国人登録が行われていない場合が多いじゃないかと思っているんですけれども、そういう場合でも、市町村教育委員会におきましてそのような児童生徒の居住地が確認できれば、就学の機会がなくならないように、同じような就学案内を発給するように指導しているところでございます。

○江田五月君 何か嫌々やっているみたいな言い方の答弁でしたけれども、そんなことはないですよね。

○政府参考人(永野博君) ずっと前からこういうことで、たくさん入っております。

○江田五月君 本当にこれ、喜び勇んでやっていただきたいと思うんですが、教育はやっぱりそれは子供たちのために必要だと。どこの国にいたって、それはどんな国籍であったって子供ですから、やはりそこで教育はちゃんと提供していかなきゃならぬということで、不法残留者の子供であれ、外国人登録していなくても、とにかく積極的に教育委員会でそういう子供がいることを把握をして、そして学校へいらっしゃいと、教育を受けましょうよと、こういう姿勢でおられるわけで、健康だって同じことじゃないかと思いますが、どういうバックグラウンドがそれはあるにしても、病気になったりけがをしたりしたときに安心して医療が受けられるようにするというのはそれは当たり前の話じゃないかと思うんですが、学校教育の方もまだまだいろんな、さはさりながら問題もあるんですが。

 法務省の方に今度は戻って、ホームページ上で不法在留者の通報を求めていますよね。これは私はやめた方がいいと思うんですが、やめた方がいいと思うんですけれども、しかし、例えばさっきの法定受託事務で外国人登録を各市町村でずっと受け付けていると。むしろ、不法滞在の人たちがどんな生活状況にあるかというのを法務省の入管局に、しかも匿名で情報をくださいというようなことじゃなくて、これは法務省の仕事じゃないと言われれば法務省の仕事じゃないのかもしれませんが、むしろそれぞれ外国人登録を受け付けてもらっている市町村のところに不法滞在者、こういうふうにいます、その皆さんを地域社会で支えながら法的資格についてもみんなで知恵を絞りましょうよ、あるいは就労の関係、あるいは健康の問題、子供の問題など、地域社会でそういう人たちをちゃんと違法、不法の状態でないように、そして健全な地球市民の生活になっていくように支えていくという、そういうようなことも法務省、考えてみたらどうですか。

 法務大臣、これは、なかなか法務省の所掌ということになったりするとややこしいんですが、閣僚の一人として、今の日本における外国人の状態、とりわけ不法になっている、滞在が不法になっている皆さんのことを考えると、今、私は文科省とそれから厚労省とこの二つを言いましたが、総務省なんかでもあるんです。ひとつ省庁を超えて関係の閣僚の皆さんと相談されて、何か抜本的な対策を法務大臣が音頭を取られるというような気持ちはありませんか。

○国務大臣(野沢太三君) 私も法務省へ参りましたときに、いわゆる不法滞在あるいは不法残留、こういった皆様方がどこで何をしているのかよく分からないということもございまして、外国人登録という制度がしかも十全には機能していないということを考えますと、これはやはりできる限りそういった皆様の情報がどこかではっきり分かるということがこれはやっぱり必要なことかなと。

 そしてまた、これまた例の個人のプライバシーとか権限とか人権とかということにまたなっていくと、またここで一つの問題が出てまいりますから、今御指摘のような、実際病気になったらどうするか、あるいは学校へ行くときにはどうするか、さらには帰国、出国という大きな問題になればさあどうするかを含めて、各省庁がそれぞれの分野で今別々にやっていることをまとめてやはり議論する場は当然あってもいいかと思っておりますが、これまでのところ、労働者問題につきまして一応連絡会議をやっておりますけれども、更にそれを拡大いたしまして、今申しました全科百般にわたる事柄について総合的に調整し、審査し、問題の解決を図る場は当然これは必要であると思っておりますし、及ばずながらまたそのために力を尽くしてまいりたいと思っております。

○江田五月君 入管法の改正の部分について、この入管法改正で、外国人が日本に残留する、滞在する、その制度を適正化していくということをやる、それは私どもは否定するものではありません。そのことが日本の社会にとって一定のいい効果をもたらすということもあるだろうと思いますが、そのことだけやっていれば外国人問題、特に不法滞在者の問題は解決付くということではないということ。そうでなくて、それはもう本当に問題の一部分の対処方法でしかすぎないと、もっともっと大きな問題があるんだと。

 法務省だけでこれは済まないことでありますが、法務大臣が最後にそういうこれはひとつ政治家として大いに研究してみたいという積極的な御答弁をいただきましたので、是非そのこと、そういう方向で努力されるよう期待をして、しかしこの法案にはいろんな問題もあるということで私ども賛成するわけにはいきませんが、最後に期待を申し上げて、私の質問を終わります。

○千葉景子君 江田五月議員に引き続きまして質問をさせていただきます。質問の時間もいよいよこの法案についても限られてきたようにも思いますので、今日は私は難民問題の方に絞らせていただきまして質問をしたいというふうに思いますが。

 今、入管法にかかわる問題、議論がございました。この間、私も法案の、入管にかかわる法案の改正などに何回か議論に参加をさせていただいてきた経過もございます。その都度、オーバーステイあるいは本当に悪質な者を何とか出国をしてもらい、そしてでき得る限り適法な人、歓迎すべき人には日本に残っていただくんだと、こういうような趣旨で何回かこういう改正が重ねられてきたのではないかというふうに思っています。

 ただ、その目的は結果的には必ずしも達成をされず、むしろやはり日本にどんどんどんどん外国の方がやはりいろんな目的を持って、あるいは自分の生活の糧を求め、あるいは日本大好きということも含めまして来日をすると、こういう状況が生まれてきているわけではないかと思います。

 そういう意味では、今回の改正も、確かにこの改正によってオーバーステイなどの解消を図っていくやな目標もあるようでございますが、私は逆に、こういうことを積み重ねていても、結局はやはり日本に滞在をする多くの外国人の皆さんのまた出国を促すということにはつながらず、むしろ厳しくすればするだけそれを避けようとする、あるいは表ざたにならないように潜在化していく。まあ、潜在化することによって、やはり不安とか、あるいはまた自らの権利の主張もままならず、そんな厳しい生活を余儀なくされていく外国人の方がむしろ本当に増えていく、こういうことが私は懸念されるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、本当に日本におられる外国人の皆さん、滞在をしている皆さんの問題というのは、これからも本当に抜本的に議論をしていかなければいけないことがたくさんあろうというふうに思いますので、その点はこの法案の審議にかかわりませず、今後ともまた大臣にも関心を持っていただき、私どもも議論を続けていきたいというふうに思っておりますので、冒頭それだけ今日は指摘をさせていただきたいというふうに思っております。

 さて、先ほど江田議員からも話がありましたように、入管の問題を議論をする、これから急にといいますか、難民の問題についてと、本当に頭を何か切り替えなければならないということになってしまいますが、限られた時間ですので、まず法務省の方に何点かお聞きをしておきたいというふうに思っております。

 このところやっぱり懸念をされているのが、難民認定をわざわざ申請をされている、そういう人について、やっぱり非常に厳しい対応が取られている、それがむしろ厳しい傾向になっているのではないかということでございます。

 抜本的には、やはり難民申請の手続と退去強制手続が並行して行われると、こういうところに基本的な問題があろうかというふうに思っておりますけれども、特に指摘をされておりますのは、難民認定申請しているにもかかわらず、やはり退去強制手続の方では全件収容というようなことが原則とされているがゆえに、摘発によって収容をされる。そういう事例が大変増えているという指摘もあり、それからこれも指摘、既にさせていただきましたけれども、家族がばらばらに収容される。親は退去強制手続で収容され、子供は児童相談所などにやむなく送られると、こういうケースなども指摘をされておりますし、それからこれは新聞報道などですけれども、病気で病院に入院をしている、そこから出た途端に収容手続に付せられたと、こういう問題もありますし、それから仮放免の許可、これなども医師から、収容していたら病気が悪くなる、命にもかかわると、こういう指摘があるにもかかわらず、仮放免の許可がなかなか認められないと、こういう状況なども指摘をされ、むしろこのところ、できるだけ難民には、申請している人それから国際社会の中で庇護を求めている人には温かく門戸を開こうという何か触れ込みとは反対に、むしろ厳しく厳しく、何だ、これじゃ日本に庇護を求めても本当にこれはとても庇護をしてもらえないんじゃないかと、こう思わせるような、こういう状況がむしろ強まっているのではないかと、こんなことを感じます。で、そういう指摘が大変多くなってきております。

 こういうことを一体どう認識をされ、そしてやはりここで難民を受け入れる、こういう温かい気持ちをもっと世界にアピールをしよう、きちっと示していこうということであれば、こういう今指摘をされているような事態、起こっている事態に対して、やはりもう一度真摯に対応を見直していくということが必要ではないかというふうに思いますが、その点、大臣どうでしょう。こういう指摘がたくさんございますが、御認識はございますでしょうか。そして、でき得る限りやはり温かい適切な対応が取られるべきではないかと思いますが、その点について御見解をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(野沢太三君) 我が国は、難民認定手続と退去強制手続とはそれぞれ別個独立の手続でございますが、退去強制事由に該当する者については、従来から難民認定手続が行われている場合であっても、退去強制手続をこれと並行して行っていることは委員御承知のとおりでございますが、この場合、難民認定申請中であるからといって厳しく対応したり人権侵害を招くような対応をしていないことは言うまでもございませんで、法にのっとりまして適正な手続が取られていると承知をしております。

 また、被収容者の情状等を考慮しまして、仮放免を弾力的に運用するなど、人道に配慮した取扱いもしていることは御存じかと思います。

 今後とも、法にのっとりながら、人道に配慮した対応をいたしまして、今回御提案しております制度を更に活用しながら適切な処置を進めてまいりたいと思っております。

○千葉景子君 今、大臣から人道に配慮したというお言葉がございました。是非、そこをきちっと踏まえていただきまして、多くの皆さんが心配ないよう、そして庇護を求める皆さんが、やはり日本は人道に温かい社会なんだと、こういう気持ちを持っていただくように、そこはしっかりとその人道に配慮した、この言葉をかみしめていただきたいというふうに思っております。

 さて、やはりこの難民に対して日本が温かい姿勢を持っているかどうかということは、やっぱりその申請者に対して、あるいは認定を受けた者に対して、どういうサポート体制、生活的な支援なども含めて行われているか、そしてそういう受入れ体制があるか、こういうことがやっぱりその温かい受入れの気持ちを持っているかということの反映になるのではないかというふうに思います。

 現在は、残念ながら、この生活の支援等については統一的なシステムというものではなくして、内閣官房に連絡調整というセクションはございますけれども、あとはそれぞれの省庁において担当すべき支援を行っていると、こういう形になっております。

 そういう中でも、難民認定申請中に保護費という形で一定の援助がなされていると、こういうことはなされているわけですけれども、是非こういうことがこれからもむしろ強化をされ、そしてもっとシステム的に行われるような、そういうことを求めておきたいというふうに思いますが、この保護費の支給については外務省の方でどういうわけか行っているということになります。なぜ外務省なのか、よう分かりませんけれども、この保護費の支給ですけれども、今後も、今度仮滞在の許可制度というのができます。この仮滞在の許可制度とどう連動するのか、あるいはこの仮滞在の許可、まあ万が一にも受けられなかったようなケースでも、保護費の支給サポートというのはまさかストップするというようなことはないのだろうというふうに思いますけれども、そこは確認をしておきたいと思います。外務省、よろしくお願いいたします。

○政府参考人(石川薫君) ただいまお尋ねがございました難民認定申請者に対する保護措置でございますが、これは人道的観点から行っているものでございます。生活に特に困っている方であれば、仮滞在許可の有無にかかわりませず今後とも適切に支援していくこととしております。

○千葉景子君 是非そこは、でき得る限りサポート体制が怠りなく行われますように、きちっと対応をしていただきたいと思います。

 本来であれば、こういうサポートは、難民認定申請中、そしてこの難民認定手続というのは、申請をする、そしてそれが審議をされる、それが駄目な場合には司法の場にまで続いてこの認定の是非が問われるわけでございます。

 前回、参考人の横田先生のお話の中でも、やはり司法の場が最後に残っているんだから、日本の難民認定手続というのはそれなりのやはりきちっとした適正な手続が取られているという御指摘もありました。そういう意味では、司法手続などまでもを念頭に置いてサポートというのは本来なされなければいけないだろうというふうに思っております。

 訴訟中なども本来は保護あるいは生活支援ということがなされるべきだと私は思います。今は、訴訟に至ると、それはもう難民認定手続が終わったということによってこの生活保障というのがなかなかやれていないという状況のようでございますので、是非これは裁判手続なども含めて生活支援がきちっとなされますように、これは要望として申し上げておきたいというふうに思っております。

 さて、もう一点ですね、難民認定申請者が在留資格を持っているというケースがございます。難民認定申請中にこの在留資格の更新というのは認められるのかどうか。これ、仮滞在を受けた場合には仮滞在という資格ができるわけです。在留資格を持っていたけれども、仮滞在を受けられればその資格になる。仮滞在が受けられなくて在留資格がちょうど期限が切れちゃう、これはそうすると、そこで仮滞在は認められないけれども在留資格の更新というのは認められると、こういう仕組みになるのでしょうか。

 この在留資格の問題と仮滞在での資格との整合性というか関連はどういうふうに整理をしたらよろしいのでしょうか、お答えを求めておきたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) まず、従来から難民認定を申請している人が在留資格を持っている場合に、その人から在留期間の更新の申請があったときには原則として許可する取扱いをしております。

 今回の難民認定制度の見直しの主要な目的の一つは、この難民認定申請中の人の法的地位の安定化を図るということにございまして、出入国管理政策懇談会からも、難民認定申請者については、安心して審査が受けられるよう、法務大臣による難民認定の許否の決定が下されるまでの間は、退去強制事由該当者であっても退去強制されないよう法的に保障することなどの提言がなされました。

 このような制度見直しの趣旨にかんがみまして、在留資格を有する人が在留期間更新の申請を行った場合につきましては、難民不認定処分を受けた後に、異議申立てをしている場合を含めまして、その人の我が国での在留状況を踏まえて、特に問題があれば別ですが、その方の在留は原則として継続するということを認めることになると思います。

 それから、この在留資格を持っていることと仮滞在のことをお尋ねがありましたが、仮滞在の許可というのは、そもそも在留資格を持ってなくて、言わば不法入国しているとか不法上陸、不法滞在の人に対して与えるのが仮滞在許可でございます。

 この二つがつながることが考えられるケースとしては、正規に在留資格を持っていて、その人について期間更新を認めなかったと。そうなりますと、その人は在留資格を失いますから、今度は仮滞在許可を与えるかどうかの検討の対象になります。そうすると、六十二条の二の四の要件に当たれば仮滞在許可を与えることになると思います。

 その仮滞在許可の要件に当たらない場合、当たらない場合にさかのぼってまた在留期間更新を認めるかというと、これはそうはならない話ですね。つまり、元々在留期間がないから仮滞在許可を与えるかどうかなわけですから、仮滞在許可を与えない場合に、元に戻って、もう既になくなっている在留期間を更新する、在留資格の期間を更新するということはあり得ないことです。

○千葉景子君 その関係というか、整理は分かりました。
 そういう意味では、でき得る限り申請をしている者の資格があれば滞在の更新をする、そして、そうでない場合には仮滞在の許可を出して、そしてやっぱり安心して難民認定手続を受けられるように、そういうことを是非念頭に置いていただきたいというふうに思っております。

 さて、難民保護法についても何点か改めて最後に確認をしておきたいことがございますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 この難民保護法、参考人等の御指摘の中でも若干言われておりましたけれども、この保護法では、難民認定制度の濫用の防止とか、あるいは偽装難民対策のようなことが若干薄いのではないか、そういうことを防ぐ措置は取られているのかと、こういう御指摘などもあるようでございます。この点について、この難民保護法の方ではどんな形で濫用などを防止をされているのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

○江田五月君 御指摘のとおり、難民に手厚い制度を作る、しかしそれが濫用されてはいけない、あるいは偽装難民が来るのをこれを排除をするという、これは当然やっておかなきゃならぬことですね。

 そこで、私どももこれはもちろんそういう意識はきっちり持っておりまして、本法案では、難民認定申請者の法的地位の安定のために、難民申請者に対して上陸の特別許可、それから在留の特別許可を与えますが、しかしその濫用、悪用を避けるために、一定の場合にはもちろん特別許可を与えないということは定めております。

 これは、例えば難民申請者上陸特別許可についていえば、上陸拒否の事由があるという場合、これはいろいろ書いてございまして、もう法案の方を見ていただければ一目瞭然でございますが、様々な、犯罪のことあるいは病気関係のこと、いろいろございます。

 それから、難民申請者在留特別許可の場合には、退去強制手続によって収容されている者の申請とか、あるいは刑事手続により身柄を拘束されている者の申請、あるいは何度も繰り返して難民認定の申請をしている者、こういう者についてはこれは与えられないということにしておりまして、こういう者の申請は退去強制を免れるためにする濫用の蓋然性が高いと考えられますので、そういう制度をきっちり設けております。

 それともう一つは、難民申請者の上陸あるいは在留特別許可の申請については、これは自ら出頭して行うということにしておりまして、その際、もちろん写真を提出することを予定をしておりまして、こういうことによって他人に成り済まして申請するいわゆる偽装難民、これを防止するという措置も取っております。

 さらに、許可を与えるに当たって、住居あるいは行動範囲の制限といった、こういう条件を付すことができるようにしておりまして、この条件に違反して逃亡すれば、これは罰則もきっちりと、懲役又は罰金あるいは併科、これがございまして、こういうことによって難民申請を口実に我が国に残留し就労しようとすることなどは防止をすることができると思っております。

 また、さらに上陸あるいは在留が認められる期間の制限というものもございまして、この特別許可によって認められる期限、期間、これは難民認定の申請に対する結果が出るまでに必要な期間というものを想定しておりまして、一方で、この結果が出るまでは原則として六か月以内という、そういう期間制限も設けておりますので、この期間経過後はもし難民として認定されなかったら退去強制の対象となる、なり得るということになっておりまして、ここでも防止措置が取られておると。

 さらにまた、調査官の制度をちゃんと設けて、難民の認定又は取消しに関する処分のために必要がある場合にはすべて専任の難民認定調査官に事実の調査を行わせると、これも法定しておりますので、偽装難民を見分けるといったことについては現行よりも更に適切に調査ができると思っております。

 最後に、偽りその他不正の手段によって難民の認定を受けた事実が判明すれば難民認定を取り消すという、これも制度として条文を設けておりまして、難民認定制度を不当に利用しようとしたものであり、難民として保護する必要がないということになってこれを取り消すということになれば、これはもう在留することを認める必要はないわけですから退去強制の対象者となると。こうしたことによって濫用防止が図られると思っております。

○千葉景子君 分かりました。きちっとした体制の下で受け入れる、しかし濫用などにはやはり私たちも歯止めを掛けていく、こういうことが法案の中で整理をされているということが分かりました。

 さてもう一点ですが、これも参考人、たしか横田参考人だったと思いますが、司法手続、難民認定については司法手続も備わっているということによって政府案の一定の評価ができるんだということをおっしゃっておられました。そうすると、司法手続の部分もやはり十分に備わっておりませんと、その評価というのはマイナスになってしまうのではないかと思います。

 この難民保護法では、行政不服審査法による異義申立てがきちっとできるという形になっているのではないかというふうに思います。この辺りの、七日間という政府案に対して、六十日以内であれば異義を申し立てることができるという形で司法の場での権利の確認、こういうことができるようになっているかと思いますけれども、その点についての趣旨をちょっと確認をしておきたいと思います。

○江田五月君 出入国管理行政と難民認定行政というのは、行政手続法では行政手続法の適用除外とされているんですね。それから、出入国管理行政については、行政不服審査法で適用除外とされているんですね。さらに、難民認定行政については、出入国管理難民認定法で行政不服審査法の適用除外とされているんですね。何だかこう訳が分からぬ制度になっているんですが、行政手続法の方はちょっとおいておいて、行政不服審査法が出入国管理について適用除外としていると。これは一定の理解ができないわけではない。

 それは、出入国管理行政については、いわゆる三段階で行政手続の中で不服審査をきっちりやっていくというものを用意していますから、行政不服審査法上の不服申立ての手続を設ける必要はないということ。しかし、難民認定について出入国管理難民認定法で行政不服審査法の適用除外する理由はどこにあるのかというのがどうも分からないんで、私どもは、難民認定行政については行政不服審査法の適用を除外する理由がないから、ないからこれは適用をするということにしております。

 ところで、政府の方の法案は、適用除外というのを改めて、難民認定については行政不服審査法の適用ありとしたんですね。ありとしながら、なお異議申立ての期間についてだけは七日という特例をそのまま残すというので、これまた何だか全然分からない。私どもは、六十日というのは行政不服審査法上の異議申立て期間ですから、これをそのまま行政不服審査法の適用ありとしたことによって残したということでございまして、その辺のややこしい何だか訳の分からぬものを整理をしたということでございます。

○千葉景子君 ありがとうございました。

 もう時間がほぼなくなってまいりました。最後に指摘をしながら、難民保護法を提案者にお聞きをしておきたいと思います。

 やはり日本の社会が、本当に難民申請をする人、庇護を求めてくる皆さんに温かい受入れ準備あるいはそういう気持ち、こういうものが備わっているのかということを考えますときには、甚だお寒い状況だという感が私はいたしております。しかし、決してそれは日本の市民がそういう気持ちでいるわけではございませんで、むしろ市民の皆さんは、庇護を求めている、くる人たちがいれば、やっぱり一緒になって悩み、そしてそれを応援しサポートをしながら日本の社会の中でともに手を携えて生きていこうじゃないかと、こういう気持ちを持っているわけでございます。

 前にこの委員会でも指摘がありましたキン・マウン・ラットさんという方、最終的には法務大臣から特別在留許可を出していただいたということでございますけれども、そこまでに至る道のりというのは、難民認定の申請をしたのが一九九四年、それから退去強制手続が並行されて行われ、収容がされたり国外退去の命令が出たり、それを何とか引きとどめてまた再度の審査を受けたり、こういうことを本当に繰り返して二〇〇四年三月に、三月五日、法務大臣から在留特別許可が出たということでございます。この間、厳しいながらも、例えば多くの皆さんが署名をされたり、あるいは連合傘下の皆さんがサポート体制を作ったり、本当にそういう働く仲間の皆さんやあるいは市民の皆さんが支えながら、こういう庇護を求めて日本の社会で頑張ろうという皆さんに温かい心を寄せているということでございます。そういう意味では、やはりこの際、国、政府等がやっぱりそういうものにこたえてきちっとした受入れ体制を備えるということが大事だというふうに思います。

 そういう意味で、やっぱり保護法の中に生活支援ということをきちっとうたったということは、やっぱり温かい気持ちでお待ちしているよと、受入れは大丈夫だよということを示したものではないかと思いますけれども、その辺のこの法案の本当に根幹といいましょうか、そこだけ確認をして、終わらせていただきたいと思います。

○江田五月君 難民等の権利、利益の保護というのは、単に法的資格の問題だけではなくて、やはり日本社会にきっちりと定住をしていく、そのためのいろんな支援体制を作るというのは非常に重要だと思います。

 キン・マウン・ラットさんについては、これは難民の関係ではないので、難民の文脈の中ではちょっと違うんですけれども、しかし、やはり不法滞在者であっても、市民がしっかり支え、日本社会に定着していくという、そういうプロセスというのはやっぱり生活支援が市民によって行われたからできたことなんですね。

 そこで、私どもは、これはやはり単に行政の裁量で行われるだけじゃいけないと、予算も、予算措置として付くだけじゃなくて、やっぱり法的にそういう制度ができていかなきゃいけないということで、難民申請の段階あるいは上陸の段階から、例えば相談員も置きますとか調査員も置きますだとかやって、そして受入れ段階も温かく、さらに定住して安定した生活を始めるところまでしっかりカバーするために生活支援というものを法律上定めました。

 政府が総合的かつ計画的に残留難民等の生活支援に関する施策を推進することを法文で位置付けまして、そして具体的に日常生活に関する相談その他の支援事業を実施をするということにしておりますし、また、その実施に当たっては、国、地方公共団体及び民間団体がそれぞれ適切に役割を分担するとともに、相互に密接な連携を図りつつこれを推進していくということにしておりまして、ここの部分は私どもの法案が正にこれをやりたいと思っているところでございまして、言わば私どもが強く政府に対しても求めていきたい部分でございます。


2004/04/15

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