2002/07/31

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154 参院・本会議  小泉総理問責決議案賛成討論


 私は、民主党・新緑風会を代表して、内閣総理大臣小泉純一郎君問責決議案に、賛成の立場から討論を行います。

 賛成の理由は数限りなくありますが、ここでは絞りに絞って、五点だけを申し上げます。その第一は経済運営の失敗、第二は構造改革の挫折第三は政治腐敗の放置第四は外交課題の失政第五は悪法の強行です。順次、説明します。

 第一の理由は、経済運営の失敗です。

 小泉内閣の誕生から今日まで、景気回復の兆しは全く見られません。株価は今日も一万円の大台を割り込み、秋の金融危機の再燃が心配されます。経済政策に対する市場の反応は、冷たいの一語に尽きる。景気対策といえば、相も変らぬ効果のないバラマキ公共投資ばかりだからです。その結果、国民生活はどうなっていますか。

 まず雇用。先月の完全失業率はやはり五・四%で、高水準のままです。完全失業者数は三六八万人。小泉さんになってから、三十万人以上増えました。若者の就職難は、未来にとって由々しきことです。中高年の場合は、生活破綻に直結です。次に中小企業の経営危機。倒産件数は、五月には一七三〇件に跳ね上がっています。

 昨年一年間の自殺者は、三万一四一二人。四年連続で三万人を超えました。事業不振や失業などの「経済・生活問題」で、四十代、五十代の自殺が相次いでいます。

 それなのに、政府の景気判断は甘い。七月の月例経済報告は、「一部に持ち直しの動き」と言いますが、国民の実感は違います。リストラされたサラリーマンや、資金繰りに追われる中小企業者などの、怨嗟の声に耳をふさぎ、何時まで大本営発表を続けますか。

 景気回復にもっとも有効なのは、個人消費の回復。それには、国民の不安解消が不可欠です。ところが、医療費の一兆五千億円負担増の強行など、消費を萎縮させる政策を取り続けているのです。

 財政破綻はさらに深刻。今年度末で、国と地方の長期債務残高は六九三兆円。GDPの約一・四倍という、想像を絶する金額です。経済構造改革も財政構造改革も同時に達成している欧米諸国と、どちらも達成できない日本。対照的ですね。
 
 最大の景気対策は、"経済音痴の小泉首相"の退陣です。

 第二の理由は、小泉首相の一枚看板である「構造改革」が、全くのニセモノであったことが明らかとなったことです。小泉構造改革の象徴は、道路公団など特殊法人改革と郵政改革です。これはどうなりましたか。

 小泉さん、あなたは、道路関係四公団改革を特殊法人改革の目玉と位置付け、民営化する方針を掲げました。しかし、具体策は先送りで、民営化推進委員会を設置する法案を成立させただけ。あなたは、私たち民主党の修正案を葬り去り、道路族の抵抗に屈したのです。

 石油公団廃止法案は、単に看板の架け替えに過ぎません。私たち民主党は、調査団を出し、多くの役人の天下りを明らかにしました。無責任な元高級官僚に、法外な報酬と退職金を与え続けるような天下りを、未だに認めているような改革は、ニセものですよ。

 小泉首相は就任に際して、「旧郵政省のわけのわからない論理は、小泉内閣には通用しない。」と、大声を出されました。しかし、先日の信書便法案は、まさにその旧郵政省の「わけのわからない」法案そのものでした。郵便貯金、簡易保険の改革はどうしますか。総裁人事も役所の一存で決めるのでしょう。

 小泉さん、利益誘導と公共事業依存の自民党政治は、何も変わっていませんよ。あなたはかつて、「構造改革に取り組まないなら、自民党をぶっ壊す。」と豪語しましたが、今は「抵抗勢力は協力勢力である。」などと、わけのわからないことを言って、総裁の地位に居座っています。「改革、改革。」と絶叫して、国民を欺くのはもう止めて欲しい。抵抗勢力と妥協し、次から次へと後退する小泉首相が、真の構造改革の担い手でないことは、誰の目にも明らかです。

 第三の理由は、自民党政治の「政・官・業」癒着構造に対する、小泉首相の無責任な態度です。

 鈴木宗男容疑者は、金にまつわる黒い噂の人でした。しかし自民党は、彼を単独で、自民党の比例代表名簿の一位候補者としたのです。彼は、自民党と書いてもらって当選した人物です。ミスター自民党なのです。それなのに、総裁である小泉首相は、なぜ、議員を辞めろと言えないのですか。弱みを握られているのですか。

 今通常国会は、政治とカネで大荒れとなり、政治浄化が重大課題となりました。ところが、政府・与党は、いかにも及び腰でした。あっせん利得処罰法改正は、与党案が成立しましたが、これは適用対象を国会議員の私設秘書に限って拡大するだけのものです。

 野党四会派は、実効の上がる対案を提出しましたが、修正は拒否されました。官製談合防止法案も、利権をむさぼる自民党の抵抗で、中途半端。本当に残念です。

 また、小泉首相自らが指示した公共事業受注企業からの政治献金禁止は、どうですか。与党三党は、あなたの指示を全く無視しました。小泉さん、あなたの改革は、結局口先だけ。

 宮路副大臣の事件など、数え上げればきりがない。これでも小泉さんは、馬の耳に念仏ですか。政治改革という点からも、あなたは、内閣総理大臣には向いていません。

 第四の理由は、小泉首相が外交面でも失態を重ね、外務省改革に積極的に取り組んでいないことです。

 瀋陽の日本総領事館の事件では、政府は、毅然たる態度を全く示すことができませんでした。その後の韓国の対応と比べると、日本政府の無能さは目を覆うばかりです。

 京都議定書については、結局、米国の説得に失敗したのです。有事法制については、アメリカ追随で、世論の猛反発に遭いました。靖国神社の公式参拝でも、いたずらに近隣諸国との関係に緊張をもたらすだけ。小泉内閣の外交政策と安全保障政策は、無定見と不手際が目立ちます。

 外務省の不祥事は、この国会中も、次から次へと表面化してきました。ところが、政府・与党の「外務省改革案」は、いずれも場当たり的、局所的な対処に過ぎず、不祥事の病巣は温存されたまま。危機感ゼロで、最終報告の実行性すら危ぶまれています。この点でも小泉首相は、お得意の人任せで、リーダーシップは発揮されませんでした。機密費問題に至っては、小泉内閣は真実隠ぺい内閣ですよ。

 二十一世紀の国際社会の中で、重要な役割を担わなければならない、日本のトップリーダーとして、残念ながら小泉総理は適任ではありません。

 第五の理由は、小泉首相が、健康保険法改悪など国民生活を圧迫する政策を取り続けていることです。

 五年前、厚生大臣だった小泉さんご自身が、医療費の本人負担を一割から二割に値上げした際に、三年以内の抜本改革を約束されました。今振り返って、改革は何か実現したのでしょうか。医療や保険制度、医師の信頼回復のための改革は、すべて放置したまま、今回もまた国民に、改革なしの負担増だけを押しつけているのです。約束違反と言われて、反論できますか。

 また、BSE問題でも、農水族の抵抗で、実効ある対策はとれず、重大責任を負っている武部農水大臣をかばい続けました。国民の被害。莫大な税金。小泉さんは、何も感じないのですか。個人情報保護法案や人権擁護法案なども、ずさんさが目に余ります。

 最後に、八月五日から強行しようとしている「住基ネット」。これは、小渕元首相が、個人情報保護法の成立がなければ稼働させないと、国民に対し、国会の場で約束したものです。小泉さんあなたは、多くの反対意見を無視し、官僚の言いなりになって、小渕さんの重い言葉を、一蹴するのですか。ひどいですよ。

 以上、小泉内閣総理大臣には、責任を問う十分な理由があります。わが国は今、重大な岐路に立っています。国民は未来に希望を見出せず、将来の人生設計を描けないまま、流れに漂って不安な毎日を過ごしています。その最大の責任は、小泉首相にあるのです。国と経済の再生のため、政治の刷新のため、生活の再建のため、そして何よりも、子どもたちの未来のために、この問責決議案に賛同して下さい。心から訴えて、私の賛成討論を終わります。


2002/07/31

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