2002/06/12

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154 参院・政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会


○委員長(沓掛哲男君) 次に、江田五月君外四名発議の公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案について、発議者江田五月君から趣旨説明を聴取いたします。江田五月君。

○委員以外の議員(江田五月君) ただいま議題となりました民主党・新緑風会、日本共産党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)並びに社会民主党・護憲連合の四会派共同提案の公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容の概要を御説明申し上げます。

 国会議員を始めおよそ政治家たる者は、高度な倫理観、正義感に基づき職務を遂行すべき責務があることは言うまでもありません。選挙によって選ばれた者は、主権者たる国民、住民から政治に関する厳粛な信託を受けているのであり、国民全体、住民全体の奉仕者として行動すべき責務を負っていることも、また当然であります。特定の個人、団体等一部の利益のために行動し、しかもその対価を得るがごときは、そもそも政治倫理にもとるものであります。

 このため、一昨年の第百五十回国会において、与野党それぞれがあっせん利得の処罰に関する法律案を出し合い、熱心な審議が行われました。その際、私ども野党が何よりも訴えたことは、あっせんは政治家本来の仕事なので見返りに金品を受け取るのは当然だという風潮を断ち切り、特定の者の利益のためにあっせんをし、その報酬として金銭等を受け取ることがあってはならないという政治倫理の確立でありました。そして、私どもは、公設秘書と私設秘書の区分は極めて困難であり、両者は一体となって公職にある者の政治活動を補佐していることから、私設秘書も処罰の対象に加えるべきこと、また、与党案は、あっせんの対象となる公務員の職務を契約の締結と行政庁の処分に限定し、しかも、権限に基づく影響力の行使や請託を要件とするなど抜け道が多く、法の実効が期し難いことを強く主張いたしました。しかし、残念ながら、私どもの主張は受け入れられず、与党案のとおりの法律が成立したことは御承知のとおりであります。

 しかしながら、本法が施行されてから一年余り、その後も政治と金銭をめぐる事件、疑惑は後を絶たず、現行法が適用された事例がわずか一件であるにすぎないことは、この法律の実効性の乏しさを何よりも雄弁に物語っております。

 とりわけ今年に入ってからは、公設、私設を問わず、秘書による公共事業等への口利き等の不祥事の頻発は目を覆うばかりであり、三権の長までが議員辞職を余儀なくされるという正に異常な事態が生じております。国民の政治不信は今や極限に達していると言っても過言ではありません。

 国民の政治に対する信頼を取り戻すために我々立法府が取り組むべき課題は山積しておりますが、中でも、このような口利き政治を根絶するためのあっせん利得処罰法の改正は、野党が衆議院に出している政治資金規正法等改正案の速やかな審議入りと並び、焦眉の急であります。そして、この法律を真に実効あるものに改めるに当たっては、犯罪の構成要件を含め、法律全体を抜本的に見直すことが、口利き政治から決別するためにも不可欠と言わなければなりません。

 与党の自民党、公明党、保守党は、私ども野党四党が衆議院において改正案を出した後で、ようやく国会議員の私設秘書を処罰の対象に加える改正案を提出されましたが、これは正に本法制定の際の我々の主張が正しかったことを与党自身認めざるを得なかったということであります。しかるに、与党三党は、いまだに自らの非を認めないのみならず、衆議院において私ども野党四党の行った八項目に上る修正要求に対しても、一顧だにしないというかたくなな態度を取り続けており、このような与党各党には猛省を促さざるを得ません。

 以上のような見地から、私ども野党四党は、真摯な協議を行い、改めて参議院においてもこの改正案を提出いたしました。

 そこで、次に、私どもの提出した法案の概要について御説明申し上げます。

 第一に、与党案では、国会議員の私設秘書に限り処罰の対象に加えるとしておりますが、私どもは、それだけではなく、公職にある者全般の私設秘書並びに父母、配偶者、子及び兄弟姉妹を加えることといたしております。

 第二に、現行法では、犯罪の成立を「その権限に基づく影響力を行使」した場合に限っておりますが、権限とは、法令に基づいて有する職務権限に限られ、政党幹部として有する権力は含まれないこと、しかも、ただ単に頼むだけでは足りず、その影響力を積極的に利用しない限り犯罪は成立しないこと等から、あっせん利得防止の実効を期し得ないものとなっております。このため、この「権限に基づく影響力を行使して」という構成要件は削除することにいたしております。

 第三に、現行法では、犯罪の成立に請託が要件とされておりますが、あっせんに係る請託は立証が極めて困難で、実効性のない法律となることから、この要件を削除することといたしております。

 第四に、現行法は、あっせんの対象となる公務員の職務を契約の締結と行政庁の処分に限っておりますが、これでは、予算措置や公共事業等の箇所付け、租税の特別措置や補助金交付要綱の制定などは、たとえ特定の者のためにするあっせんであっても処罰の対象になりません。このため、改正案においては、このような限定を設けず、公務員の職務全般を対象とすることといたしております。ただし、広く国民一般のための制度改正の要望などが不当に制限されることのないよう、「特定の者に利益を得させる目的で」行うあっせん行為に限ることといたしております。

 第五に、現行法には第三者供与を処罰する規定は設けられておりませんが、公職にある者は、一般公務員と異なり、資金管理団体関係や政党支部に供与させるという抜け道を悪用しやすいことから、第三者に供与させる場合も処罰することといたしております。

 第六に、現行法は、処罰の対象行為を収受に限っておりますが、改正案では、刑法の各種収賄罪と同様、収受のほか、その要求、約束も処罰の対象としております。

 第七に、現行法では、あっせんの報酬の範囲を財産上の利益に限っておりますが、これを賄賂に改め、例えば、あっせんの見返りとして選挙運動に従事してもらった場合も処罰の対象となるようにしております。

 第八に、以上の改正内容を踏まえ、法律の題名を公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律に改めることといたしております。

 最後に、改正後、その施行状況等を勘案し、必要があると認められるときは、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすることといたしております。

 そのほか、所要の規定を整備することといたしております。
 以上が、この法律案の提案の趣旨及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

○委員長(沓掛哲男君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 両案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。


2002/06/12

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