2001/11/06

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153 参院・法務委員会

10時から法務委員会で司法制度改革推進法案の質疑。私が10時40分過ぎから75分間、質問しました。

まず、ハンセン病療養所入寮者の住民登録について。1952年の法務省民事局長通達があります。ハンセン病療養所長は入寮者の住民登録(現在の転入届)を代行し、受理した市町村は本籍地の市町村への通知を省略すべしというものです。従って、戸籍の附票には記載されないこととなりますが、「已むをえない」のであって、職権調査も避けることとなっています。1967年の住民登録法の廃止によって、この通達は失効したのに、いまなお「通達の趣旨に従い」(答弁)、この扱いが続いています。ハンセン病に対する差別と偏見が、こんな所にも表れています。この扱いは、法律の根拠がないので、続けられませんが、差別政策によって出来上がった差別の現実が続いている以上、単にこの扱いを止めてしまうだけでは、差別されているものは救われません。まず、当事者の意見をよく聞くべきです。

次いで、司法制度改革について。答弁は、森山法務大臣、堀籠最高裁事務総長、樋渡準備室長ら。基本的人権の擁護の視点、国民主権に基づく改革の視点、志を伴った抜本改革であって「ちょこっと改革」ではいけないこと、内閣の推進本部と3権分立との関係、内閣主導で行政訴訟改革が出来るか、最高裁は本気か、裁判官に対する人権研修、諮問会議・検討会・事務局の構成(弁護士を含む民間人登用の見通し)と透明度(会議のリアルタイム公開など情報公開の必要性)、最高裁の人事評価会議や弁護士任官協議会の公開、資料の公開、法科大学院の3年コースが標準型という意味、2年の短縮型は例外であること、奨学金を含む財政など、多岐にわたりました。詳細は会議録をご覧下さい。


江田五月君 おはようございます。
 きょうは司法制度改革推進法案の審議ですが、冒頭一つ、関連しないわけじゃないんですが、別件で質問させていただきます。総務省山名政務官、お越しいただいて大変恐縮でございます。

 実は、先週の金曜日、十一月二日付の山陽新聞というのがございまして、この新聞は私の地元岡山県の最有力紙でございますが、約五十年前の法務省民事局長通達によって、ハンセン病療養所の入所者の住所が本籍地に記載されない差別的な通達が今も生きているが、プライバシーの保護など、ハンセン病問題の複雑さもあって慎重な対応が必要という、こういう記事が出ておりました。

 私の地元岡山県には、国立の長島愛生園、邑久光明園という二つのハンセン病の国立療養所がありまして、東京、熊本などと並んで訴訟が提起され、ハンセン病問題の関心も強いところです。

 ちなみに、私も、一九七七年、国会議員になって以来二十年以上ハンセン病問題には取り組んでまいりまして、ライフワークの一つであり、現在、ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会の会長も務めておりますが、ことしの五月にハンセン病について熊本地裁の判決が出て、一つの判決がこれほど大きく国民の意識の深層まで揺り動かすというようなことは恐らくなかった。森山法務大臣も大変御努力をいただいて、小泉首相の決断で控訴断念ということになって、これまで長く我が国の行政の中で差別、偏見、この偏りの中で動いてきたハンセン病行政というものが大きく変わるというところになってきたわけですが、世の中に、ハンセン病の患者の皆さん、強制的に療養所に隔離をされて、もう本籍も消されるんだってねなんというようなことが言われていたんです。本籍が消されるということはない。しかし、何かどうも本籍のところで何かがあるんじゃないかと私は思っていましたが、どういうふうになるのか具体的なそこまでは知らなかったんですが、この記事である程度のことがわかってきた。

 法務省に事実関係を確認しますが、住民登録法というのがかつてあって、法務省所管の法律、一九五二年六月四日付で出された法務省民事局長通達、これは今も生きているんですか。また、この通達の趣旨、これをひとつ法務省の方から御説明ください。

政府参考人(山崎潮君) ただいまの御指摘の法務府民事局長通達というものでございますけれども、昭和二十七年に住民基本台帳法の前身でございます住民登録法が施行された際に発出されたものだと承知しております。

 この内容につきまして、ハンセン病の療養所に入所中の患者につきまして住民登録に関する届け出は特別の事情がない限り療養所の所長が代行すること、それから二番目に、住民登録に関する届け出を受理した市町村は戸籍の付票の記載のための本籍地の市町村に対する通知を省略することなどを内容とするものでございます。

 このような通達が発出された経緯でございますけれども、資料が十分に残っておりませんで必ずしも明確ではございませんけれども、ハンセン病の療養所に入所中の患者につきましては、その住所が当該療養所の所在地にあるものと認定されるということ、それからハンセン病患者についての特殊事情から本人やその家族のプライバシーに配慮したことなどによるものと思われるわけでございます。

 この通達の効力につきましては、住民登録法が昭和四十二年に廃止されたのに伴いまして失われたものと考えております。

江田五月君 なかなかおもしろい通達で、おもしろいと言うと変ですが、民事局長が各法務局長、地方法務局長に通達をしているんですが、その中身は厚生省所管の療養所長はこうしろと、あるいは自治省所管でしょうか、市町村はこうしろということを書いてあるんですね。

 それで、ちょろっとこの戸籍の付票のことが書いてあって、戸籍の付票は、伺うと、これは当時もそうでしょうか、今は戸籍に関係するものであるから法務省の所管であるが、同時に、今では総務省、前の自治省の所管で共管だということなんですが、ここでこの戸籍の付票中住所及び住所を定めた年月日の記載ができないことになるけれども、これはやむを得ないと。これらについて職権調査、職権記載を行うことも避けるのが相当、この部分だけ法務省と関係するというなかなかおもしろい通達ですが、今は失効しておると。

 そこで、山名政務官に伺います。
 昨日、総務省の担当課の説明では、現在ここに書かれている住所地市町村長が本籍地市町村に対して行う通知は省略することが適当であると、この内容は現在の事務でもそのように行われているということでしたが、そのとおりでございますか。

大臣政務官(山名靖英君) 大臣政務官の山名でございます。
 先生御指摘のように、ハンセン病療養所入所者の住所等につきまして、先ほど法務省の方から御答弁がございましたが、昭和二十七年制定の住民登録法に基づいて通達が出されたところでございまして、住民登録法の廃止によりましてその効力は失効をいたしていると、こういうように考えておりますが、御指摘のとおり、地方公共団体におきましては運用上この通達の趣旨を踏まえた取り扱いが現状でも一部なされていると、このように認識をしているところでございます。

江田五月君 趣旨を踏まえたということですが、その趣旨自体がおかしかったんだと。大変な差別行政が行われてきたんで、それは国は、国会も含めて間違っていたんで、国家賠償しなきゃいけないという判決が、それも一審判決に対する控訴を断念するという形で確定をした。ですから、これはその趣旨を踏まえたということにはなりませんね、今後は。そこはいかがですか。

大臣政務官(山名靖英君) そのとおりでございまして、したがって昭和四十二年に改めて新法として現在の住民基本台帳法ができたわけでございまして、それに基づいて、当然いわゆる戸籍の付票等についてもそのとおりの、新法に基づいた執行がなされる、こういうことが当然であろうかと思っております。

江田五月君 ところが、なかなかややこしい問題は、人権侵害というのは一度起きて、そしてそれが社会の事実、実態になってしまうと、やめたと言ったってそう簡単にやまらない。やめることによって今度は余計な人権侵害がまた起きるというようなことが出てくるわけです。

 ですから、ここはやはりそれは間違っていたから、今後、住民票の転入届を受け付けた市町村は本籍地の市町村に対してその旨を届け出をして、そして付票に記載するというのが普通のあり方、差別をしないということになれば当然そういう扱いをしなきゃいけないのだが、しかし差別実態、差別の社会的意識がまだ残っているとなると、そのあたりをひとつよく関係当事者、患者、元患者の皆さんの御意向も聞きながら、どういうふうにやったらいいのかということをひとつ考えなきゃならぬ。大変難しい課題だと思いますが、どういう対応をお考えなのか、お聞かせください。

大臣政務官(山名靖英君) こういう問題につきまして、今後十分関係省の皆さん、厚生労働省あるいは法務省の皆さん、そして今御指摘ありましたように、入所者の皆さんの御意見を十分お聞きいたしまして、十分な対応ができるように検討を進めてまいりたいと思っております。

 一部、やはりプライバシー等の問題もございまして、一つの壁といいますか、そういった問題もございますので、何よりもそういった、先ほど申しましたように、入所者の皆さんの御要望、御意見というものを十分配慮してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

江田五月君 ハンセン病問題最終解決、これを急がなきゃならない、二十世紀の人権侵害を二十一世紀まで引きずっちゃいけないということで、この問題も一つ最終解決の課題として残っているということを指摘しておきます。
 どうも、政務官、ありがとうございました。御退席ください。

 それでは、きょうの本題ですが、きょうは文部科学省池坊大臣政務官、それから最高裁堀籠事務総長にもおいでをいただきました。ありがとうございました。

 まず、司法制度改革の基本理念について伺います。
 私たち民主党は、今回の司法制度改革推進法、これはもちろん賛成という立場でございます。そして、審議会の意見書の内容が完全実現されるように、国民参加のもとで司法制度改革を推進する、こういう決意を固めておりますが、一方でこの改革に疑問や疑念を示す意見もございます。そういう方々の意見にも当然これは耳を傾けなければならない。

 十月十九日付で、「衆議院議員・参議院議員の先生方へ」と、こういうペーパーが届きました。「「司法制度改革推進法案」には重大な問題があります」という表題の文書でございまして、憲法と人権の日弁連をめざす会代表の弁護士、高山俊吉さんとおっしゃる方のペーパーですが、その中で、目的、基本理念について、基本的人権の擁護という視点が全くないと、こういう指摘があります。確かに、ないといえばない。ないのはけしからぬということになるかと思うんですが、これはどうしてないんですか、法務大臣。

国務大臣(森山眞弓君) およそ司法が、法の支配を通じて国民の基本的人権を擁護し、社会正義の実現を図るなどの役割を持っていることは言うまでもございません。この法案の第一条に言う、司法の果たすべき役割にもこのような内容が含まれていることは当然でございます。
 この法案は、これを前提とした上で、司法制度改革審議会意見にも指摘されておりますとおり、社会の複雑・多様化、国際化や規制緩和の進展等の内外の社会経済情勢の変化に伴いまして、このような司法の果たすべき役割の重要性がより一層増大するということにかんがみ、司法制度改革を総合的かつ集中的に推進することを目的とするというものでございまして、この改革は委員御指摘の理念を当然に踏まえているものと考えます。

江田五月君 今、司法改革に対する国民の熱望というものは大変強いんですよね。余り大きな声ということではないかもしれません。しかし、私は一つのランドマークといいますか、大変この象徴的な出来事というのは、私自身が経験したんですが、昨年の二月でしたか、日弁連などが主催をしたシンポジウムが行われまして、司法改革について。地味なテーマで、パネリストは、私も、それから自民党の保岡さんとかがパネリストになって、どのくらい人が集まるかなと思ったら、何と、会場が有楽町の読売ホールで、有楽町の駅の改札口から読売ホールまで人の列でつながってしまったんですよね。どんな人が集まっているのかなと思ったら、いや、弁護士事務所はなかなか動員力があるなと思ったら、そうじゃないんで、弁護士さんに対する批判の発言なんかがあったらわっと拍手が起きるというようなことでして、それは弁護士さんだけじゃなくて、もちろん裁判官にも検察官にも大変な批判を持っている。もう市民がいらいらしているという状況があった。そういう状況を受けて、司法制度改革審議会が六月十二日に意見書を出された。大変な御努力の結集であったわけです。

 この意見書の「司法制度改革の基本理念と方向」というのを一番最初に書いてあって、もう読むまでもないんですけれども、それでも念のため。この審議会は、「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、「この国のかたち」となるために、一体何をなさなければならないのか」、これが一つ。もう一つ、「日本国憲法のよって立つ個人の尊重(憲法第十三条)と国民主権(同前文、第一条)が真の意味において実現されるために何が必要とされているのか」、これが二つ目。この二つを明らかにすることが審議会の仕事だ、任務だと設定したと。

 そして、自由と公正を核とする法秩序が国民の日常生活において息づくようになるために、そのためにどういう改革をしなきゃならないのか、これを審議会がみずからに問うたんだと。こうして、「国民の一人ひとりが、統治客体意識から脱却し、自律的でかつ社会的責任を負った統治主体として、互いに協力しながら自由で公正な社会の構築に参画し、この国に豊かな創造性とエネルギーを取り戻そうとする志」、この志が大切だと。そして、最後のかなめとしての司法、これを改革するんだという大変な決意を書いてあるわけです。

 これは、当時、もちろん政府も政府声明をお出しになる、あるいは閣議決定もお出しになるというようなことで、これをもう最大限尊重して実現をしていくんだという覚悟を示されておりまして、この審議会の意見書については、例えば衆議院ですが、若林さんというNHKの解説委員の方、参考人として、「将来のこの国の形をつくるということで、一つの理念に貫かれております。私も、壮大な大河ドラマのシナリオ、その骨格ができたのかなという気がいたします。その意味では、審議会は十二分の役目を果たしたのではないかというふうに思っています。」、こういう表現もあって、そこのところが一番重要なこの意見書のもうコアなんですよね、志なんですよ。その志を実現するというのがこの法律案だと、これはこう理解していいですね。片思いじゃないですね。しっかりしてください。

国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革審議会の意見を最大限に尊重するという趣旨は、今おっしゃいましたように、その最初に高らかにうたい上げられたその司法の目的というものを実現するために勇気のある改革をしていこうということでございますので、おっしゃるとおりのことでございます。

江田五月君 最近、この改革にかかわるいろんな方々の中でちょっとした危惧がありまして、ちょこっと改革とか、ちょこっと方式とか、ちょこっと乗っけるとか、そういうことで済まされるんじゃないかという、そういう心配を口にする人たちがいます。

 例えば、既に先ほど同僚の佐々木委員からちょっと御指摘ございましたが、裁判員制度ですが、裁判員制度は、今の裁判のやり方にちょこっと国民の何か代表者を乗っけて、そして国民参加ができたできたと、こういうのじゃだめなんで、やっぱり裁判というものは国民が裁判するんですよ、国民主権の裁判ですよと。したがって、その裁判員というのは、例えば無作為抽出じゃなきゃいけないとか、あるいは職業裁判官の意見にどうしても引っ張られる気味はそれはあるんですよ。当たり前です、裁判をプロでやっている人が言うんですから。しかし、そうじゃなくて、国民の意見がその中にちゃんと通っていくようにするには、やっぱり数の問題、選び方のことなどなど、いろんな苦労はあったって志を持って裁判員制度というものの導入の意義を全うさせなきゃならぬということだと思いますが、裁判制度の設計をどうするかというのは、これは推進法に基づくいろんな組織が立ち上がってからということではありますが、その点は、法務大臣、内閣全体の意思としてこの志を大切にするということ、くどいようですが、もう一度確認をしておきます。

国務大臣(森山眞弓君) ちょこっと改革とおっしゃいましたけれども、本当にちょこっとでごまかそうと思うのであればこんな大騒ぎをする必要はないわけでございます。思い切って新しい時代の必要にこたえるために、今までの制度を根本から見直して基本的な改革をしていこうという気持ちをあらわされたこの審議会の答申を最大限に尊重するということで、でき上がりましたら、この推進本部におきまして大勢の方の御意見を十分聴取した上で新しい時代にふさわしいものをつくっていきたいというふうに考えます。

江田五月君 大騒ぎというお話ございましたが、まだ大騒ぎ足りないんじゃないかという気がしますよ。それは、最高裁、きょうは事務総長お見えいただいておりますが、最高裁を中心とする裁判所だってもっともっと大慌て、大騒ぎ、大変だと考えるようなものになっていかなきゃならぬし、弁護士会だってやっぱりそうだろうと。それほど大きく根底が揺らいでいくような大改革をやらなければ、今、司法制度というものが本当に国民主権に基づいた制度になっていかないところへ来ていると思っておりまして、ぜひ覚悟を持って取り組んでいただきたい。

 それからもう一つ、今の高山さんたちの文書には重要な指摘があって、それは、この法案にも示されているとおり、司法制度改革を内閣が推進する、それはどうも三権分立制度に反するんじゃないか、司法の独立を侵す危険があるんではないかという指摘でございます。

 私も実は裁判官を、十年弱ですが、やっておって、そのとき私なんかが持っていた志は、やっぱり外から、とりわけ政治の世界から、やれ、あの判決はどうだとか裁判がどうだとか言われるようなことはあっちゃいけない。それは、そういうことが仮に当たっているとしても、そういう指摘によって裁判なり司法なりが変わるということは司法自体の生命を損なうことになるんだから、司法というのはやっぱりみずから改革をしなきゃならぬという強い強い決意を持っていました。しかし、なかなかこれが変わらない。なかなか変わらない。

 そこで、国民の今のような大変な司法というものに対する不満があるときに、これは司法の中の自律的な改革だけにゆだねると言っていたんじゃなかなかうまくいかない。司法も立法も行政もあわせて国民にサービスする、国民が主体だと。国民がそういう司法、立法、行政という三つの国権を上手にバランスさせながら動かしていくものですから、その国民の皆さんがこれじゃいけないということになったら、やっぱり司法ももちろんですが、立法も行政もみんなそろってこの司法のあり方を変えようということになっていかなきゃいかぬというように思っております。

 そういう意味で、今回の司法制度改革というのを歴史的意義を高く評価する立場ですが、今の、それはさはさりながら、司法の独立を侵す危険があるという指摘、これについては森山法務大臣はどういうふうにお考えになりますか。

国務大臣(森山眞弓君) この法案の第三条では、最高裁判所及び国会も含めて、国は基本理念にのっとり司法制度改革に関する施策を総合的に策定、実施する責任を負うものとなっております。つまり、最高裁判所も、また国会も含んだ国というものが責任を負うという立場になっておりまして、最高裁判所においても司法を担う立場からみずから必要な改革をしていただかなければなりません。

 司法権の独立ということにかんがみまして、政府とは別個にみずからの立場で施策を策定、実施する責任を負うということになると考えられますけれども、委員御指摘のとおり、国会、内閣及び最高裁判所が国として行う施策が全体として総合的なものになるように、関係者は多岐にわたっておりますので、それぞれの立場に配慮すると同時に、適切な連携を図るためにこのような体制になっているわけでございます。

江田五月君 推進本部をつくると。ところが、その推進本部は、本部長が内閣総理大臣で、各閣僚が本部員になる。内閣総理大臣の指示により法務大臣が中心になっておやりになるということになるんでしょうが、内閣総理大臣と各閣僚ということになったら全部これは行政権ですよね、内閣ですからね。これが推進本部をつくってそれでやるということで、これで司法、立法、行政などを含むすべての国のあり方の改革ということになるんですかというふうに言われますと、やっぱりううんとちょっと考え込むんですが、そんなことはないですか。

国務大臣(森山眞弓君) この司法制度改革は、三権の一翼を担う司法の基本的制度を抜本的に見直すものでありますと同時に、社会経済の構造改革を進めていく上で必要不可欠なものであるというふうにも言われるわけであります。したがって、国の重要施策の基本にかかわる重要かつ緊急の課題であるという理解でございまして、その内容も多数の省庁の所管事項にかかっているというわけでございます。

 したがいまして、この改革につきましては、内閣自体がその責任のもとに総合的かつ集中的に取り組む必要があるということで、この法案では司法制度改革推進本部を内閣に置くということにしたわけでございます。

江田五月君 もちろん、国会が国権の最高機関でありますが、しかしやっぱり国のあり方について、日々の動かし方に関して一番責任を負っているのは内閣で、内閣は行政各部全部それを統合しているわけですから、内閣を挙げて取り組むということは、つまり国を挙げて取り組む、国民みんなで取り組むという、そういうことなんだと。何かかわりに答弁しているみたいですが、ぜひそういう決意のあらわれなんだというように考えていただきたい。

 ということは、つまり、それは口だけじゃだめなので、実際に推進本部の中に顧問会議であるとかあるいは検討会であるとか事務局であるとかいろんなものをつくっていく、そこは最大限国民に開かれた、あるいは国民の皆さんに参加していただく、そういうものにしなきゃいけないということにつながると思うんです、後からまた個別に聞きますが。そういう趣旨だということはよろしいですか。

国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりの趣旨でございます。

江田五月君 しかし、どうも口先だけじゃないかなと。恐縮ですけれども、口先だけじゃないということをひとつ示していただくために、行政権が挙げて取り組むのでは、やっぱり行政に対する司法チェックを大改革するということはできないんじゃないかという気がするんですよね。

 この意見書には、「司法の行政に対するチェック機能の強化」ということで、行政事件訴訟法の見直しを含めた行政に対する司法審査のあり方に関して検討を行う必要がある、政府において本格的な検討を早急に開始すべきであるということで、その中に例えば、「現行の行政訴訟制度に関しては、次のような指摘があった。すなわち、(T)現行の行政訴訟制度に内在している問題点として、行政庁に対する信頼と司法権の限界性の認識を基礎とした行政庁の優越的地位(政策的判断への司法の不介入、行政庁の第一次判断権の尊重、取消訴訟中心主義等)が認められており、その帰結として、抗告訴訟が制度本来の機能を十分に果たしえていない、」云々というようなくだりがあって、やっぱりこれを変えようというんですから、行政が優越的地位を持っているという、そこのところから変えなきゃいけないんだというわけですね。

 私は、これは本当にそうだと。今の行政に対する司法チェックというのは本当に制度上もう弱くならざるを得ないような仕組みになっている。これを内閣挙げて取り組む司法制度改革の中で変えられるか、今度のこの改革の中で行政訴訟改革というのはやるのかやらないのか。これは樋渡さんでしょうかね、お答えください。

政府参考人(樋渡利秋君) 司法制度改革審議会意見におきましては、「裁判所は、統治構造の中で三権の一翼を担い、司法権の行使を通じて、抑制・均衡システムの中で行政作用をチェックすることにより、国民の権利・自由の保障を実現するという重要な役割を有している。」とされているところでありまして、その重要性は十分に認識しているところであります。

 また、同意見では、「国民の権利救済を実効化する見地から、行政作用のチェック機能の在り方とその強化のための方策に関しては、行政過程全体を見通しながら、「法の支配」の基本理念の下に、司法と行政それぞれの役割を見据えた総合的多角的な検討が求められる」とされているところでございます。

 今後設置されます推進本部において、このような審議会の意見の趣旨を踏まえつつ、所要の検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

江田五月君 行政訴訟改革というのはテーマなんです。テーマなんですが、大変重いテーマでして、そう簡単にちょこちょこっと、ちょこっと方式じゃいかないんです、これは。そこでどうするかというのは、二年間の司法制度改革審議会の中でも十分深められるところまで行かなかった、だけれどもここには問題があるよ、これは改革しなきゃいけないよということで、この意見書では「総合的多角的な検討」と、政府においても早急に検討を開始すべきと、検討というところにとめているんですが、本当はとめちゃいけないんで、改革しなきゃいけないんだと思うんですね。

 これは検討なんですか、それとも改革をやるんですか、樋渡さん。

政府参考人(樋渡利秋君) 確かに、委員御指摘のとおり、非常に難しい大きな問題でございます。したがいまして、審議会もそういう検討の場を早期に設けろという意見になっているわけでございます。その点も含めまして、推進本部の中でさらに検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

江田五月君 検討ね。どうでしょう、検討というぐらいなことで本当に行政に対する司法チェックを行政を担当している内閣がやることができるかどうか。法務大臣、内閣を代表してこの大仕事にかかわる責任者として、難しいと思いますが、覚悟のほどを聞かせてください。

国務大臣(森山眞弓君) 今、室長の方から申し上げましたようなことで、改革推進会議の意見の中でもこれは非常に難しく重大な課題であるので検討を進めるようにというお言葉でございます。

 一方、この本部の設置期限も三年間と決まっておりますので、このような大きな問題ほかにもたくさんございますので、すべてが一〇〇%結論が出せるかどうかは非常に難しいところだと思いますので、少なくとも御指摘のとおり検討に取りかかり、かつ具体的にできるだけ進めたいというふうには考えております。

江田五月君 これはやっぱり危惧をします。もし本当に行政改革をやるんなら、行政訴訟改革をするのなら、内閣が挙げて取り組むということではありますが、この推進本部だけに任せていたらなかなかできない。本気でやるんならやっぱり相当外の声を聞かないと。行政がみずから変えるというのは言うはやすく行うはかたいことでして、しかし取り組んでほしいんですよ。先延ばししてほしいと言っているんじゃないんですよ。間違えないでください。ぜひ覚悟を持って行政事件訴訟についても改革する、そういう体制をつくってほしいと要望しておきます。

 さて、ところで、今の、司法権の改革なのに行政権がここまで出しゃばってきている、それで困るな、嫌だなと、そんなことをひょっとしたら最高裁思っているんじゃないかという声もあるんですけれども、そうじゃないと。これは、きょうは堀籠事務総長においでいただいていますが、この点について既に衆議院の方の法務委員会でも御発言がありますが、改めて司法権の独立ということとこの司法制度改革ということ、それはこういうふうに理解してそこのところを乗り越えようと考えているんだという決意を聞かせていただきたいと思います。

最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 今回の司法制度改革は司法制度の全般にわたる重要な改革でありまして、三権がそれぞれの立場から真摯に検討するとともに、互いに連携、協力して改革を推進していくことが重要であると考えているところでございます。本法案は、このような前提に立って、改革のための施策を実施するための所要の立法や予算の検討が不可欠であることを考慮し、法案提出権や予算編成権を有している内閣に司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するための体制を構築することとしているものと理解しているところでございます。

 裁判所といたしましては、内閣に置かれた推進本部の検討、さらには国会における検討に積極的に協力するとともに、みずからの立場で独自に検討すべき課題について司法権を担う立場から積極的かつ計画的に検討を進め、国民に対する責務を果たすよう努めてまいりたいと考えているところでございます。

江田五月君 これもやはり言葉に行動が伴わなきゃならぬわけですから、そこはよろしくお願いしたいんですが、やっぱり司法の自己改革だけでは司法制度改革はできないという国民の声が前提にある。そして、この審議会は、法律専門家よりもむしろ一般の人たちが加わって、そしてもう本当に詰めた議論をしてこういう意見をまとめられているのであって、最高裁というのはどうも司法制度改革については抵抗勢力であるというような説も聞こえてくるんで、そうじゃないと。いやいや、そうは言うけれども、司法のプロ、裁判所からすると、あなたそれは無理よとか、それは困るよとか、それはそういう意見もあるでしょう。あるけれども、もうそれで突っぱねるんじゃなくて、いや、それはよく国民の皆さんの声をとにかく聞こうと、そしてそのことを実現する方策は何かないか一生懸命になって寝ずに考えようという、そのくらいな覚悟を持ってこの意見書の完全実現のために努力をしていただきたいと思いますが、意見書の内容についてはどういうふうに事務総長、お考えですか。

最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 意見書は、二十一世紀における司法制度のあり方全般についてその方向性を示したものであるというふうに理解しております。

 裁判所といたしましても、国の機関でございますから、この法案に書かれている「国の責務」ということで積極的に司法制度の改革について協力するとともに、裁判所独自でできる点につきましては裁判所の方でみずから改革の実行をしてまいりたいと考えているところでございます。

江田五月君 みずからできることは実行していくのはいいんですが、しかし裁判所が完全に自分の手のひらの中でいろいろやれるような仕組みの中でやるのではだめで、本当に大騒ぎにならなきゃいけない。大騒ぎになるということは、国民に対して開かれるということでしてね。

 そこで、事務総長に伺っておきます。やっぱり情報公開というのが大変大切だと思うんですけれども、衆議院の方で佐々木秀典委員の質問にお答えになっておられますが、今、最高裁の関係で、裁判官の人事評価の在り方に関する研究会とか、それからもう一つ、弁護士任官についての研究会ですか、何会ですか、二つほど検討の作業が進んでいるということのようですが、これは会議の公開、会議録の公開、会議提出資料の公開、こういうことはお考えですか。事務総長。

最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 所管でございますので、私の方から答えさせていただきます。
 御指摘の最高裁事務総局に設置されました裁判官の人事評価の在り方に関する研究会でございますが、この研究内容は、司法制度改革審議会の意見を踏まえまして、評価の目的、評価項目、評価の手続、本人開示、不服がある場合の手続など、裁判官の人事評価制度全般にわたるものでありまして、こうした事項について多角的に調査検討することが予定されております。研究会につきましては、国民の信頼を高めるという改革の趣旨を踏まえまして、検討過程を国民にわかりやすいものとする必要があると考えております。

 その討議内容の公開につきましては、研究会におきまして次のように決定されているところでございます。すなわち、議事は、個別的、具体的な人事の事例や問題点に言及することがあることから非公開とするが、研究会の協議内容を記載した書面を公開するとともに、配付資料についても、プライバシー保護等の観点から問題があるものを除いて基本的に公開し、さらに研究会の最終的な検討結果を取りまとめた書面も公開するという決定がなされております。また、研究会の協議内容や配付資料につきましては、プライバシー保護等の観点から問題があるものを除きまして最高裁インターネットホームページに掲載する方向で検討中でございます。このような方策をとることによりまして、検討過程をわかりやすいものとして国民の信頼を確保するという要請に的確に対処してまいりたいと思っております。

 それからもう一つの、弁護士任官に関する協議の方でございますが、最高裁と日弁連で弁護士任官等に関する協議会を設置いたしまして、ことしの四月から月二回のペースで弁護士任官の推進に向けて精力的に協議を行っているところでございますが、協議会ではこれまで、弁護士任官の基準、手続等の問題について意見交換を行っておりまして、今後、弁護士任官の環境をより一層整備するという観点から、弁護士任官者の研修、配置のあり方等についてもさらに協議を進める予定になっております。

 最高裁といたしましては、司法制度改革審議会の意見書が提言いたしておりますように、裁判官に多様な人材を確保するために弁護士の任官を推進していくことが最も現実的であり意義のある方策であると考えているところでございまして、今後とも、日弁連との間での協議を鋭意重ねることによりまして弁護士任官を推進するための具体的方策について検討を進めたいと考えておりまして、こうした弁護士任官推進に向けての一連の協議につきましては日弁連との間で早晩取りまとめが行われる予定でございますので、その結果については速やかに公表されるようにしたいと考えております。

江田五月君 結果だけでなくて、過程が国民参加、国民に対して透明度を増す、そういうものになっていかないとなかなか本当に国民の皆さんに確信を持っていただく改革につながっていかないと思うので、その過程ということが非常に大切だと思っております。

 言葉だけじゃいけないんで、一つ事例を挙げたいんですが、国民主権のもとの裁判所、一番大事なのは国民の基本的人権ということに対してどれほど司法が認識をしっかり持つかということだと思うんですね。ところが、今、私は弾劾裁判所の裁判員もやっておりまして、この審議は、これは合議の秘密とかそういう部分がありますから余りあれこれお話しするわけにはいかないんですが、先日、第二回目の公判期日を開きまして、被訴追者本人尋問をやりました。もちろん裁判官です。その裁判官の言うには、あなたは人権に関する国際条約というものを裁判所の中で聞いたことがありますかと、こう聞いたら、いや、新聞などで読んだことはありますが、裁判所の中でそういうことを聞いたことはありませんと、そういうお答えでして、もう皆唖然としたんですね。

 先日もちょっと研修所のことで伺いましたが、司法研修所の中にセクハラ行為があっちゃいけないなんというのは当たり前の話で、司法研修所を巣立っていく皆さんがセクハラというものはいけないんだという、そういう本当の認識を持つような研修をしなきゃいけないということです。

 裁判所の中だってそれは当然でして、御存じと思いますが、一九九八年十一月五日に、これは国連の規約人権委員会ですが、日本政府第四回報告書審議後の規約人権委員会による最終見解というのがありまして、委員会は、裁判官、検察官や行政官に規約に定められた人権を研修させる法的条項が全く存在しないことに懸念を有すると、明確に懸念の表明があるんですね。

 どうもしかし、研修をしていないというのも事実と違うようなんですが、この点どうなんですか、人事局長。

最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 裁判官に対する国際人権規約の教育の問題でございますけれども、裁判所におきましては、この国際人権規約に基づく日本政府の第四回報告に対する規約人権委員会の最終見解の趣旨を踏まえまして、最終見解や規約人権委員会の一般的性格を有する意見を裁判官に提供する措置をとっております。

 また、司法研修所におきまして、国際人権法について、裁判官を対象とした研究会におきまして、国際人権規約、国際人権や外国人の人権等をテーマとした講義を行っておりますし、先ほど申し上げました規約人権委員会の最終見解や一般的な性格を有する意見についても言及しております。また、判事補任官直後の研修におきましてもやはり国際人権をテーマとした講義を設けるなど、その充実を図っているところでございます。

 なお、付言いたしますと、裁判官、検察官及び弁護士になるいずれの者も研修所で修習を受けるわけでございますが、その修習期間中に国際人権規約や規約人権委員会に関するカリキュラムが組み込まれております。

江田五月君 あるんだろうと信じたいんですけれども、しかし現に判事補任官、判事補として裁判官に任官してから十数年の経験を経た裁判官がそういうものは聞いたことがないと言うんですから、これは幾ら言っていても向こうには届いていないというんじゃどうにもならぬですね。児童の権利条約とか女性差別撤廃条約とかいっぱいあるわけですから、そうしたことが現にしっかりと裁判官の血となり肉となっていく、そういうことが、やっていても現にできていないんですから、やっていると言ったってだめですよね。

 そうした裁判所改革というものは、やっぱり中だけでやっているからいいんだということではないんだということをしっかりと認識をいただいておきたいと思います。

 事務総長、ありがとうございました。お帰りください。人事局長はちょっとまだ残っていてください。

 さて、この司法制度改革推進の過程、これが国民の皆さんに十分参加と監視の機会を提供する、そういう過程でなきゃならない。それは、すなわち完全な情報公開の実現ということだと思います。森山法務大臣、衆議院の方で御答弁がちょっとあるのではありますが、改めて司法制度改革推進の過程、過程ですよ、この過程で、司法制度改革審議会と同様の情報公開、これは約束していただけますね。

国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるように、国民に深いかかわりのある内容、テーマでございますので、国民の意見を十分に聞く、あるいはまたこちら、当方の作業の進捗状況もよく見てもらうということが必要だと思います。司法制度改革審議会自身も非常に努力されまして情報公開に努められたと聞いておりますが、それと同様の努力をいたしたいというふうに思います。

江田五月君 リアルタイム公開というのは、私も実は勉強不十分でよく知らなかったんですが、審議会の会議をやる、その場へマスコミの皆さんも参加していただくというのはスペースの関係なんかからちょっと無理だと。しかし、それをビデオというかテレビで撮って別の部屋でモニターできるようにして、そこでマスコミの皆さんにも見ていただいて、その場でもう直ちにだれが何を言っているかということがすぐわかる。後に会議録にするときには、ちょっとまあその場の雰囲気から発言が行き過ぎているとか何かある、それは訂正をするにしても、そういうリアルタイム公開をされたと。これは樋渡さん、それでよろしいですか。

政府参考人(樋渡利秋君) そのとおりでございまして、詳しく申し上げますと、今の……

江田五月君 詳しくはいい。

政府参考人(樋渡利秋君) ああ、そうですか。それでは、そのとおりでございます。

江田五月君 そういうリアルタイム公開というのはいいと思いますね。
 先ほどもちょっと言った若林さんというのが、この推進審議会がなぜこれだけの成果を上げたかというのは、第一にユーザー中心、第二が委員主導、第三が全会一致、第四が審議の公開、それもリアルタイム公開。リアルタイム公開というのはそこへ参加する委員の皆さんの同意がなきゃいけないという言い方もありますが、それは逆に言えば、そういうことがあってもそれでも本当に自分の意見が言えてやれる、本当に審議に参加できる、そういう人でなきゃ委員になってもらっちゃ困るという話なんですよね。ぜひともやっていただきたい。

 推進本部体制について伺います。
 事務局、これは衆議院での質疑で、現在の準備室三十五ですか六ですか、答弁では五となっていますが六というお答えもあるんですが、今度新しくつくる事務局はこれを五十数名にふやすということを想定し、そのうち民間の方が七、八名という、こういう答弁があるんですが、民間の方七、八名のうちの弁護士は一体何人くらい、弁護士以外の民間の方というのはどういう人を想定しておられますか。

政府参考人(樋渡利秋君) 現在の準備室の体制でございますが、当初は三十五名で発足いたしましたが、現在は三十六名でございます。

 司法制度改革推進本部事務局には、現在のところ五十数名程度の職員を置きたいと検討しておるところでありますが、その中には弁護士その他の民間人も七、八名程度参加していただきまして、その知識、経験を活用させていただくことを検討してまいりたいと考えているところでございます。弁護士等その他の民間人の内訳でございますが、まだ正式に決まったわけではございません。どちらもできるだけの人に参加していただきたいのでありますが、いろいろのことも考えましていろいろ検討させていただきたいと思っております。

江田五月君 細かなことまで詰めませんけれども、今までの私の質疑の流れの中で大体おわかりいただけるだろうと思います。しっかりした人選をしていただきたいと思います。弁護士が今の準備室は二人でしたかね、これをちょこっとふやすというんじゃなくて、やっぱりぐっとやっていただきたい。

 事務局の活動の情報公開ですが、メンバーの公表とか、あるいは事務局ニュースの発行とか、ホームページの開設、毎日更新など、やっぱりこれも考えたらいかがかと思いますが、どうですか。

政府参考人(樋渡利秋君) 司法制度改革を推進するに当たりましては、改革推進過程の透明性を確保しますとともに、国民各層からの御意見に十分耳を傾けつつ改革を進めることが重要であるというふうに認識しております。したがいまして、推進体制におきます情報公開に関しましても、委員御指摘の点も踏まえまして、インターネットの活用などにより、できるだけの情報公開に努めてまいりたいというふうに考えております。

江田五月君 次に、検討会。検討会についても、さらに伺う顧問会議についても、条文、法案には何も出てこないのですね。しかし、顧問会議を設ける、検討会を設けるということが言われていて、これはなぜ条文に出てこないんですかなどということはもう省略します。検討会ですが、どういう役目を担わそうとしておられるわけですか。

政府参考人(樋渡利秋君) 立案に当たりまして幾つかのテーマごとに学者、実務家、有識者等によります検討会を開催いたしまして、事務局と意見交換を行いながら事務局と一体となって作業を進められるような体制を構築する必要があるのではないかというふうに考えております。

江田五月君 心配なのは、やっぱり審議会がなかなかいい結論にたどり着いたのは事務局主導でなかったということなんですよ。委員が主導したんです。ここでも、事務局主導で、事務局がこれは検討会にかけても大丈夫だからかけましょう、これは検討会にかけたらパンドラの箱をあけたみたいになったら困るからかけるのはやめましょうとか、それじゃだめなんで、本当に検討会というもの、そこに一般の有識者の皆さんが入ってきてくれている、そのことを生かせる、そういう検討会の運営にしなきゃならぬし、人選にもしなきゃならぬ。

 そこで、今、事務局ラインというのは八つだそうですが、この八つに対応して検討会を設けることになるんですか、あるいは一つ一つの検討会のメンバーは十人くらいと言われておりますが、そのとおりですか、簡単にお答えください。

政府参考人(樋渡利秋君) 八つのラインをそのまま推進本部に引き継ぐか、あるいはふやすか減らすか、それも検討しなきゃならないところでございますが、少なくとも総務ラインもございますし、そこに検討会が必要だとは思いません。先ほど申し上げましたように、ラインというのではなしに、審議会の意見にのっとったテーマごとに検討会を開催したいと思っておりますので、あるいは場合によりましては、幾つかのラインを共同した検討会をつくることも考えられるのではないかというふうに思っております。

江田五月君 先ほどの若林参考人、衆議院の、ユーザー中心、委員主導、全会一致、審議の公開、検討会もやっぱりこの四原則というのは重要だと思うんですね。とりわけリアルタイム公開、これは森山法務大臣、どう思われますか。ちょっと細かなことですが、細かな答弁はいいですけれども、基本の姿勢としてどう思われるか、お答えください。

国務大臣(森山眞弓君) 先ほど来申し上げておりますように、できるだけ公開して多くの国民の皆さんに知っていただく、そして御意見をいただくということは重要だと思います。

 しかし、その参加されるメンバーの方々にも御了解を得なければなりませんので、どのような方になりますか。おっしゃいますように、そういうことを嫌う人では困るという御意見もございましたが、そのためにはやっぱり多少御説明申し上げるという時間も必要でしょうし、どのようなプロセスでそういうふうになってまいりますか、今のところ確たることは申し上げかねますけれども、できるだけそういう方向でいきたいというふうに考えます。

江田五月君 公開が嫌だという人はやっぱりそういう審議会には向いていないと思いますよ。

 次に、顧問会議ですが、この顧問会議というのは、審議会の意見を実現する方向に推進本部の作業が進んでいっているかどうか、これをいわば見張るといいますか、お目付役としてつくるんだということを聞いております。

 そうすると、審議会委員の皆さんは、今回はこらえてという方以外はみんなこの顧問会議に入っていただいたらいいんじゃないかと思いますが、いかがですか。

国務大臣(森山眞弓君) 顧問会議を構成する人選につきましては、適任の方にお願いできるようにこれから考えるわけでございますが、既に司法制度改革審議会の御意見は意見書としてまとめられておりまして、それを最大限に尊重するという姿勢を政府としても打ち出しているわけでございますので、この審議会の委員を務められた方をみんなまた顧問会議にお招きするというのも適当でないのではないかというふうに思いますので、やや第三者的なお立場も持ちながら適切な御意見を述べていただくことができる方をお願いしたいというふうに考えております。

江田五月君 審議会の委員はみんな排除するんですか。

国務大臣(森山眞弓君) 全員排除するということを決めたわけではございません。これから検討させていただきます。

江田五月君 審議会の意見に沿っているかどうかを監視といいますかオブザーブしていく、そういう顧問会議だということになれば、やっぱり審議会の委員が一番よくわかっている。それを排除するということはないですよね。一人だけ、それもちょっと違うんじゃないか。特に、司法制度改革審議会の中の法律家以外の人があそこに入っていたことは重要なことなんで、ぜひ法律家以外の人たちを大いにひとつ登用していただくようにしていただきたいと思います。

 どうも審議会の意見が何か大騒動になるような意見なものだから、なるべくあれを小さく小さくして、そして従来の司法、なるべく余り大ごとにならぬようにやっていこうという、そういう意図があるんじゃないかなと。それが邪推ならもういいんですけれども、私は邪推だと思いたいんですけれども。

 だけれども、例えば七月一日から準備室が活動を始めたと。委員の皆さんは七月二十三日まで任期があった。そして、その七月中に三回ほど審議会の日程がセットされていた。そこで推進体制について審議会の委員の皆さんから意見をちゃんと出していただくことになっていた。ところが、それを全部、その三日の日程をキャンセルしてしまったなどという話も聞くんですが、これは事実か事実でないのか、それだけ伺います。

政府参考人(樋渡利秋君) 少し説明させていただきたいのでありますが……

江田五月君 事実か事実でないかだけ。

政府参考人(樋渡利秋君) 非常に端的には言えないのでございまして、少なくとも七月に三回の会合が予定されていたということは事実ではございません。

江田五月君 端的に言えないということだけでいいです。
 時間がありません。次へ行きます。
 審議会委員に、しかし今後、最低月に一度ぐらいはどうなっているかという報告などはちゃんとやられた方がいいと思いますよ。

 ロースクールに行きます。
 ちょっと時間がなくなったので、後の小川君の質疑に譲りたいと思いますが、ロースクールについては、これからどういう法曹が求められるかということについて本当に詳細にいろんなことをこの意見書は書いているわけです。従来のような法律ばかりが頭いっぱい詰まって、その他のいろんな社会のもろもろ、人間についての深い理解、そういうものが欠けて、従来みんなが欠けていたわけじゃないけれども、そういう法曹じゃなくて、本当に俗なことにもよく通じた、そういう法曹でなきゃ困るということだろうと思うんですけれどもね。

 そのためには法学部四年間、そしてあと短縮型二年、それでもうロースクール卒業で、あとは司法試験、研修所、法曹と、そうではない人たちというのをもっともっと大切にするという、そういうロースクールでなきゃならぬと思います。

 標準型、標準修業年限は三年、短縮型二年、そういうのがこの審議会の意見書が示している制度設計なんですが、これは標準型というのは原則なんだ、つまり三年が原則なんだ、例外が二年なんだと。これはそういう理解でよろしいですか、法務大臣。

国務大臣(森山眞弓君) 審議会の意見では、法科大学院について、学部段階で専門分野を問わず広く受け入れて、社会人等にも広く門戸を開放する必要があるということを言っておられまして、このような御提言の趣旨を踏まえてこれからも各方面と相談しながら進めていきたいと思うわけでございますが、法科大学院の標準修業年限を三年とする一方で、法律学の基礎的な学識を既に有する法科大学院が認める者については短縮型として二年の修了を認めるという形になっております。

 この趣旨は、修業年限を二年のみとする法科大学院を想定はしていないというふうに考えております。

江田五月君 二年とする法科大学院を想定はしていないということですから、さよう伺っておきます。

 そこで言っていること、結構重要なことは、法律学の基礎的素養をちゃんと持っているということは、人間の頭というのはやっぱりだれも同じようなもので限界がありますから、法律学をよく勉強したということは、つまりその他のことは余り勉強しておらぬということにつながるわけですよ。それはやっぱり法曹としてはだめだというのが今の頭なんですよね。

 ですから、むしろ法律学の素養を持っている人間は五年ぐらいもうほかのことを勉強しなきゃならぬのだから修行しろというぐらいな気持ちで、しかしやっぱり法曹プロをつくるんだから二年でやろうということなんですから、そこを間違えないようにひとつ、法学部の勉強をずっとしてきた人が間違ってもロースクールの多数になってしまうような、そういう制度設計ではいけないと思っておりますが、池坊大臣政務官、お待たせしました。同じ質問、そういうお考えは文科省としてもお持ちですか、いかがですか。

大臣政務官(池坊保子君) 今、法務大臣から御答弁がございましたように、三年あるいは二年ですけれども、教育理念にもございますように、法曹界に生きる方たちは「国民の社会生活上の医師」ということでございますから、専門的知識はもちろん卒業いたしましたときに七割から八割の人間が司法試験に合格できるように、でもそれだけでなくて、大切なことはそういうことのみでなくて豊かな人間性を涵養することである。法曹界に生きる方々に必要な責任感とか倫理観とか創造的な思考力とか、あるいは事実を分析する能力とか、そういうものが私は高く評価され、そして問われていくと思っております。

 これは、三年を二年にいたしましてもこういうことは変わらずに教育されていくものでございまして、それぞれの各大学におきまして、これらの点を踏まえて法科大学院構想というのが今検討されているところでございます。

 中教審におきましても、平成十六年の四月から生徒を入れますので、基本的な基準の骨子を年内にまとめていただけるようにとお願いしているところでございます。

江田五月君 各大学などで今いろんな取り組みをしていること、その取り組みの状況などが耳に入ってくるんです。そうすると、やっぱり心配になるんですね。

 今までは、法曹養成に文部科学省は、前の文部省はかかわっていなかった、法学部教育ということではかかわっていましたけれどもね。その法学部教育の法学部の大学院というのはいわば教育の最終段階ですよね。そこを文部省、文部科学省が所管をしていたというのは、それはそれでわからぬわけじゃない。しかし、今度の法科大学院というのは、長い法曹としての人生のいわば初めの段階です。初めの段階を文部科学省が所管するのがいいのかどうかという、そういう疑問を私なんかは持つんですよ。むしろ、別の制度設計した方がいいんじゃないかと思いますが、今度の意見書の制度設計を間違うと、文部科学省と法務省と最高裁がそれぞれ全部自分の領域というのを抱え込んで、これはおれのところだといって、その間で法曹養成される人間というのは一体どこへ行くかわからぬというようなことになってしまう心配があるんですよ。そこをやっぱり気をつけていただきたい。

 審議会の意見書では、二十一世紀の司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚などの資質も求められると、こうされています。また、他学部、他大学の出身者や社会人等の受け入れ、あるいは経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ者や社会人等としての経験を積んだ者を含め、多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れるべきだと、こういうことなんで、言いかえれば、従来の法学部の上に大学院がくっついているという、そういうちょこっと方式はだめと。そうじゃなくて、全く新しい制度設計で法科大学院を考えなきゃいけないということだと思うんですが、文部科学省にそういう発想はおありですか。

大臣政務官(池坊保子君) 今までは司法試験という選抜的な点でございました。これからはプロセスとして、法学教育、司法試験、司法修習、これを連携してプロセスとして教えようということでございますから、当然その中に、司法試験に合格すればいいのだというようなことだけでなくて、今おっしゃいましたような豊かな人間性が涵養できるような科目も当然、法倫理としても入れてまいります。そのような趣旨で今度の法科大学院という構想が生まれてきたのでございますから、その教育理念に沿って私どもは教育してまいりたいと思っております。

江田五月君 カリキュラムの中にそういうものを含むことはこれはもう当然なんで、今現にいろんなところでやっている。だけれども、カリキュラムだけじゃなくて、どんなカリキュラムにしたって、さっきだってそうですよ、裁判所が国際人権についてカリキュラムをちゃんと組んで教えてみても耳に入っていないんですよ、頭に残っていないんですよね。それはそういう人間だけを集めてそういう人間だけでやっているからなんで、やっぱりいろんなところから集まってきたいろんな人たちがその中で切磋琢磨しながら法曹に育っていくということでなければ、新しい時代の法曹はつくれないということだと思います。

 最後に、そういういろんなところからいろんな角度で集まってくる人たちということになると、そういう人たちに財政的な支援をしっかりしておかなきゃならぬ。奨学金の問題ですが、池坊さんにその辺、奨学金、どういうふうにされるか。奨学金についての財政上の措置、これはもちろん大切。そうなると、やっぱり法務大臣にも最後、奨学金と財政上の覚悟と、その二つを聞いて、質問を終わります。

大臣政務官(池坊保子君) 奨学金制度に関しましては、私は今までも奨学金制度の強化拡充に努めてまいりました。学びたい人間すべてが学べるような公的支援ができたらこれにこしたことはございません。それは社会のやっぱり醸成が必要かと思っております。

 ただ、御存じだと存じますけれども、今、大学生は四十・六万人無利子で借りております。有利子の貸与は三十九・二万人。つまり、約八十万人の学生たちが今、奨学金制度を受けております。そして、修士課程においてはその四割の五万一千人の人間が受けておりまして、無利子では百二万円、有利子では百五十六万円を年間に受けておりますので、この法科大学院がどのような授業料になりますかはまだ試算されておりませんけれども、これで賄えるのではないか。

 もちろん、私たち、財政的には大変厳しい中ではございますが、その充実を図っていきたいと思っております。また、大学院の設置運営に関しましての人的・物的支援もしていくように努めてまいりたいと思っております。

国務大臣(森山眞弓君) 今の奨学金のお話を初め、この改革にはいろいろとお金がかかるということが予想されます。これは大変、今の財政事情を考えますと決して容易なことではございませんけれども、ぜひともこの改革が実効あるものになりますように、財政的な面でも努力をいたしていきたいと思います。どうぞ御支援くださいませ。

委員長(高野博師君) 時間です。

江田五月君 頑張ってください。応援します。
 終わります。


2001/11/06

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