2000/10/25

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衆院・政治倫理・公職選挙法改正特別委員会

1時から3時過ぎまで、衆議院特別委員会で、参考人として意見陳述と委員からの質疑を受けました。長い国会議員の経験でも初めてのことでした。実は与党は、私たち参考人の意見を形だけ聞いて、今日中に委員会で採決するつもりのようなのです。それではあまりに屈辱的だと抗議し、野党の立場を最大限主張しました。


○江田参考人 本日は、皆さんの審議の参考に意見を聞かせろということでお招きをいただきまして、大変ありがとうございます。私も議会は二十一年過ぎたところですが、こういう経験は初めてでございまして、いささか緊張しておりますので、よろしくお願いいたします。

 お礼は申し上げますが、どうも、新聞報道によると、きょうこの後にも採決があるとかいうことが出ております。私ども、皆さんの質疑の参考に意見を申し上げに来たのでありまして、聞いたからあとは採決だというのでは、これは質疑が形骸化してしまう。もしそんなことがあれば、これは私ども大変な屈辱でございまして、ひとつ冒頭、そういうことのないようにお願いをしておきたいと思います。

 さて、私が参考人に選ばれた理由というのは、一つは、参議院議員として今回の与党の暴挙を目の当たりにしたということ、また、ことしの二月二十五日の参議院選挙制度に関する各派協議会の報告書など一連の経緯の説明役、それに加えて、恐らく、現在の国会議員で、あそこに八代英太さんがおられますが、私と八代さんは同じときに参議院の全国区で当選をさせていただいたのですが、今、数少ない経験者ということも含まれているのではないかと思っております。

 まず第一に申し上げたいのは、今回の与党の暴挙、これは我が国の憲政史上例のないものであって、ついに、我が国の参議院で初めて、議長が国会不正常の責任をとって辞任するという事態を招いてしまっております。

 言うまでもなく、民主主義というのは、民意が国の行方を決めていく、主権者である国民がみずからの運命を自分で決める。ただ、そうはいっても、制度化されていないとそのことができませんので、選挙制度ということでこれを制度化する、これが選挙制度というものでございます。

 多数が自分たちの都合のいいように多数の力で選挙制度を変える、こうしますと、民意とその代表としての議会とがどんどん離れていく。ルールは形式的にはあっても中身がない、形骸化、こういうことにつながりかねないことでございます。議会制民主主義の土俵をつくる基本的なルールが選挙制度ですので、当然、与野党合意で、なるべく多くの合意をつくって仕上げなきゃならぬというものだと思います。

 例えば商法においても、会社の存立の基盤にかかわるようなことについては特別の多数決を定めているとか、そういう種類のことであって、選挙のたびに、勝った方が勝手に自分の都合のいいように選挙制度を変えるのでは、民主主義はおかしなものになってしまう。斎藤前参議院議長も、ここのところを最も憂慮されたわけです。

 そこで斎藤前議長は、ずっと、時間をかけながら、みんなの合意をつくり上げようといろいろな努力をしてこられました。ところが、今回、半数近い少数派の意見を全く無視して、選挙制度の改悪に与党が狂奔された。私は、強く糾弾をしたいと思いますし、また、有権者、国民の皆さんには、来るべき選挙で与党に鉄槌を下していただくことを強くお願いいたします。

 次に、参議院の各派協議会における議論の経過について御報告を申し上げます。
 昨年六月、参議院選挙制度改革に関する協議会が各会派代表者懇談会のもとに設置をされました。九回にわたって協議会での議論が行われて、本年二月二十五日に、各会派が一致して報告書が作成されました。

 その中で、拘束名簿式については、現行の拘束名簿式比例代表制の仕組みそのものを改めることとなると抜本的な改革となり、その実現は容易なことではないことから、当面は現行の拘束名簿式比例代表制を維持することを前提として議論を進めることとなったと明確に明記をされております。これは各会派の合意でございます。

 その実現は容易でないというのは、何もだれかが引き延ばすとかそういう話じゃないので、先ほど申し上げたように、民主主義の基本にかかわることだから、それはみんながとことん納得いくまで議論を尽くした上で決めなければいかぬ、そういう趣旨を与党も野党も皆しっかり理解をしていたということでございます。

 また、六月二日、これは衆議院の解散の当日ですが、斎藤前議長は、各派の代表者をお集めになりまして、選挙制度は来年は現行のままということを前提に、定数是正はやりましょうね、こういうお話をして、各代表者ともこれを受けているわけでございます。

 このように、参議院において、各派代表者の協議では、来年の参議院選挙は基本的に現行制度で臨む、こういう結論が出ていたにもかかわらず、総選挙終了後に突如、与党、さらに言えば自民党、さらに言えば参議院自民党の青木幹事長と村上会長から今回の改正案が飛び出してきたということでございまして、極めて動機不純の党利党略法案だと言わざるを得ません。

 その後の経過につきましては、私、実は毎晩多少の時間を割いてインターネットのホームページにその日の活動日誌を打ち込んでおりまして、関係のものを抜粋してきょうプリントアウトしてこちらへ持ってまいりましたので、どうぞ御参考にしていただきたいと思います。

 動機不純の第一は、いわゆる久世問題のすりかえ。もういろいろお話があったから言うまでもないと思いますが、二万人の名簿はある宗教団体から提供を受けて、党費一億円についてはあるマンション業者から提供を受けて比例名簿の順位を買った。この不祥事に対して、自民党の皆さんは、自分の党の矛盾、不祥事を選挙制度の問題にすりかえてしまった。KSD問題も同様のことだと思いますが、これが動機不純の第一。

 次に、動機不純の第二は、衆議院選挙で自民党の皆さんは、個人名では二千四百万票、しかし政党名では千六百万票、八百万票の開きがある。ここをどう埋めるか。これを埋めなければ次の参議院選挙で勝てない。こういうことから今回の票の横流し制度を出してこられたということが動機不純の第二であります。

 いかに悪いものか。全国区選挙は、私自身はいろいろな事情から残酷区、銭酷区ということを実際には体験をしておりません。しかし、あの全国区の制度がいかなるものであったか、これは多くの人が御存じのとおりで、参議院の村上さん自身が一九八五年の選挙制度改正のときにるる述べておられるわけです。あの選挙が終わった後亡くなられる、中には、投票日、開票日のその日に亡くなって、自分の当選を聞く前に死んでしまった、こういう例もあって、また、お金も大変。こういう全国区の悪い方式に戻してしまう。

 しかも、今度は公費助成で五十億円余計にかかるというのですから、何のためかわかりません。

 そして、第二の悪い点がいわゆる横流しで、顔の見える人で票を集めて、それを政党の方に落とし込んでおいて、顔の見えない人を当選させる。ですから、この顔の見える人が選挙違反で当選無効になっても、その人のとった得票はそのまま有効で、別の人の当選に使われるという大変な、国民の意思を無視した制度になっております。

 こういう制度を使ってでも、役所ぐるみ、業界ぐるみ、企業ぐるみ、そして地方自治体の首長さん方に大変な無理を強いて自民党型集票マシンをもう一度活性化させて、行政改革、規制緩和といった方向に逆行させようという悪法中の悪法だと言わざるを得ないと思います。

 私ども民主党は、そういうものでなくて、選挙制度のことは議論をするのだ、そういう意味で、広域選挙区制度というものを中心にした制度改革の案を衆議院の方で提案させていただいておりますが、これもぜひ議論をしていただきたいと思います。
 十分程度ということで、私の意見といたします。
 どうぞよろしくお願いします。(拍手)


○山花委員 参考人の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、急であったにもかかわらず御出席いただきまして、お礼を申し上げる次第でございます。

 さて、十月二十三日からこの審議に入っているのでありますけれども、我が党の堀込征雄委員からの質問に対しまして、この時間は参考人からの意見聴取ということで、提案者の方はいらしておりませんが、その中で、片山参議院議員から、この審議の経過に対しまして、「野党の皆さんには、与党は法案を出させてもらいます、国会の委員会で十分な審議を尽くしましょうと、」こういうことを言っておられます。「同時に、政党間の話も代表者懇を中心にやるのはいささかもやぶさかではありません、やりましょうと、話し合いを。」こういう発言をしておられます。また、「国会議員というのは国会に来て論議を尽くすんですよ。政党間の事前折衝も必要でしょう。それはあっていい。あっていいけれども、うまくいかないときは、国会で一方が法案を出して国会の委員会や本会議の中で議論を尽くして結論を集約していくんですよ。その過程で、国民の前に開かれた議論で国民の皆さんの批判をもらえばよろしい」と。さすが良識の府の選出された議員だと思われます。こういうことを言っておられますので、提案者がこのように議論をしようということを言っていらっしゃるわけでありますから、よもや本日、三日程度審議がなされた後に採決があるなどということはないものと信じておりますが、ぜひこの後も公聴会などを開いていただきたいということをまず冒頭に要請申し上げたいと思います。

 さてそこで、江田参考人にお伺いしたいと思います。
 片山議員でありますが、先日の発言の中でも、例えば、六十三年の参議院の中につくった超党派の検討委員会、平成二年の第三者の権威ある機関の第八次選挙制度審議会、あるいは平成六年のこれも超党派の参議院選挙制度検討会、あるいは去年からやっております代表者懇の下のワーキンググループ、あるいは、ことしの春ですが、前の斎藤議長が私的な諮問機関をつくられまして、そこで選挙制度も議論しているんですよ、こういうことをおっしゃって、決して今回の法案というものは唐突に出てきたものではない、こういうふうなことをおっしゃっておられます。

 また、さきに引用いたしました発言の中でも、野党が出てこないじゃないか、こういうようなことを言っているわけでありますが、このような発言に対しまして、特に野党の方は参議院の方では出てこなかったではないかということを言われているのでありますけれども、選挙制度という民主主義の根幹にかかわるこういった法案に対してなぜ参議院の方で出ていくことができなかったのか、審議ができなかったのかということについて、本来のあるべき審議のあり方ということの所感も御披露いただければということをあわせてお願い申し上げまして、御意見をいただきたいと思います。

○江田参考人 参議院で野党がなぜ審議に加わらなかったのか、本来あるべき審議はどういうものであるか、こういう御質問でございます。

 参議院の選挙制度についてこれまでいろいろな機関がさまざまな形で議論をしてきたこと、これは事実でございます。例えば、平成二年には、第八次選挙制度審議会において今回の非拘束名簿式のような提唱も確かにございます。

 しかし、よく考えてみなければいけないのは、第八次選挙制度審議会は、こういう方式を提唱する前提として、参議院とは一体何であるのか、衆議院と参議院と二院制になっているのはどういうことか、それをよく考えなさいよということを言っているわけですね。第八次選挙制度審議会がこういう提唱をした後に衆議院の選挙制度が変わった、そして今の衆議院の選挙制度になっているわけでありますから、第八次選挙制度審議会が考えたときと、衆議院、参議院の役割分担をよく考えなさいよという前提、これは変わっていない、しかし衆議院の選挙制度は変わったのですから、そのとき考えられていた参議院の選挙制度をそのまま持ってくるというのは、前提において大きく違っているということでございます。

 あれこれいろいろございまして、そういう議論をずっと詰めて、そして先ほど私が申し上げた本年二月二十五日の各派の合意ということになっているわけでございまして、これは党利党略の合意じゃないのです。

 さっきも言いましたとおり、参議院というもののあり方を十分考えた上で、なお議論をするんだ。私たちの党の中でも、どういう制度がいいのか、これは党内の議論もずっとやっていたわけで、そういう各政党間、各会派間の審議というものをまるで弊履のごとく捨て去って今度のこういう提案が出てきた。私どもとしては、そういう審議を無視する与党各会派のやり方に対して、そのまま受け入れるわけにはいかないということを考えたのがまず第一でございます。

 さらに、先ほどるる申し上げましたとおり、この出された案が非常にひどいということもございますね。

 それともう一つ、これはぜひ考えなければならぬと思うのは、確かに私どもも今回の参議院の野党がとったようなやり方が、あれが百点満点、有権者から何の批判も受けないものだというふうに思っているわけではありません。

 しかし、今、この長い間の積み重ねで、議会の審議のルールというものが物すごく厳しいものになっているのですね。厳しいというのは何かというと、はい、時間はこれだけです、はい、何日です、もうおしまいです、はい、どうぞと、一列で並ぶ以外にないエスカレーターのようになっていて、そこへ乗っかったら自然に二階まで持っていかれるということになってしまっているわけで、いらっしゃい、いらっしゃいと、まるで首切り役人が刀を振り上げて、さあそこへ座りなさい、すぐに首を切ってあげますよ、そういうところへ入っていくというのは、与党が行う審議拒否に対して野党が唯々諾々と従うという形になるわけで、形では私たちが審議拒否の形になっていますが、私どもの方は徹底した審議をしたいから、国民の皆さんにボディーランゲージでああいうことを伝えざるを得なかったということでございます。

 ということを考えますと、今後の審議のあり方はどういうものがいいか。従来型のいわゆる古い抵抗スタイルというものは、あるいは古い強行スタイルというものはお互いにもうやめようではないか、そしてもう一度、論争民主主義の原点にみんなで戻らなければならぬ。本当に論争して、論争し尽くす。どうせ生身の人間がやるのだから永遠にできるわけではありません。そういう論争をし尽くしたあげく、もっと議論の場にマーケットメカニズムを生かして、そして最後は選挙で有権者の判断をいただく、そういうものに戻らなければいかぬ。フィリバスターというものがございますが、例の「スミス都へ行く」という映画に出てくるものですね、ああいう論争の価値というものをお互いにもっともう一度再認識をして、議会のルールをつくりかえるべきだ、私はそう思っております。

○山花委員 江田参考人にお尋ねしたいと思います。
 ただいま、ぜひ議論というものをしっかり行うべきだという御発言がございました。私たち民主党は、この選挙制度の改正に対しては対案というものを提出しているわけであります。あるべき審議の姿からすれば、こういう対案を全く審議しないまま採決がされるということは決して好ましいことではないことだと認識する次第であります。

 さて、片山参議院議員ほかが出されております案でございますけれども、先日の委員会でも、片山参議院議員は、全国区の復活、再来は断じてこれは慎みたい、こういうふうな発言をされております。そしてまた、今回の法案について、全国区とは違うのですよ、こういうことを言いまして、この比例代表非拘束名簿方式はまず党を選ぶのです、まず党を選んで、党の中でだれを当選させたいかを選ぶのですよ、まず選ぶのは党なのですよというような発言をされております。

 私は、さきの総選挙で当選したばかりでございますので、昔の全国区というものがどういう選挙であったのか、体験したわけではありません。そして、理屈の上で違うという話を聞けば、まあ理屈の上では違うのかなということになるのでありますが、しかしながら、今回の法案を見させていただきますと、まず個人名を自書する、これが原則になっていて、ただし書きの形で、政党に対して投票しても構わない、こういった制度になっているわけであります。

 法文を見る限り、やはり個人を選ぶということが優先しているわけでありますけれども、そうであるとすると、旧全国区と、法的な難しい言葉を使えば違うということになるのかもしれませんけれども、事実上、その実態は旧全国区と全く同じものになるのではないかという印象を受けるのでありますが、全国区の時代の経験者としましての御意見をお伺いしたいと思います。

○江田参考人 確かに、比例代表制度ですから全国区制度とは違う、形式的にはそれはそのとおりです。しかし、そのために余計悪くなっているとも言えるわけですね。

 八代さん、あそこでしきりにやじっておられますが、確かに、私も八代さんも全国区制度を比例制度に変えるのに反対をいたしました。それは、比例制度になるとますます参議院が政党化するからということで反対をしたのですが、だけれども、全国区制度というものが、先ほど言いました、残酷区と言われたり銭酷区と言われたり、大勢出てだれだかよくわからぬとか、いっぱい欠陥を持っていたこと、これは確かなことでございます。

 そこで、今度の参議院与党案というものを見ると、候補者から見ると、同じ党の中であっても自分の隣の人よりもたくさん票をとらなければ当選が保証されないわけですから、もうこれは、全国をまたにかけて、金は幾らでもかけて運動するほかないじゃありませんか。あの全国区と同じことになってしまいます。有権者から見ても、これだけ大勢の中で一体ちゃんと選べるのか。

 先ほど情報コストという問題のお話がございましたが、そういう問題が出てくるので、全国区の悪い点をそのまま復活させてしまう。いわゆる役所ぐるみ、企業ぐるみ、業界ぐるみということもそうだし、また地方自治体の首長さん方が大変苦労する。ここでちゃんと票を出しておかなきゃ、陳情へ行っても、補助金をもらおうと思っても全部鼻であしらわれる、そういうことが復活する。これでいいのかということなんですね。

 それに加えてさらに、個人名でとったものを政党に落とし込んで別の人間を当選させるのに使うというわけですから、より悪くなっているわけでございます。

 そのほか、先ほどの、例えば選挙違反があった場合にどうなるかとかいろいろございますし、しかも今度の制度で、比例区ならばまだしも、先ほどもお話ございました、こういう女性の良識を議会に反映させようと思って政党が努力する、そういう努力はできなくなってしまうわけです。その上、私も八代さんも、当時私は政党ではありましたが、今回は比例制度ですから無所属で出るということができないわけでしょう。

 それやこれや考えますと、全国区ではないんだ、比例区だというのは単に言ってみるだけの話で、いい悪いということを考えますと、これは全く改悪以外の何物でもない、私はそう思います。


○塩田委員 自由党の塩田晋でございます。各参考人におかれましては、非常にお忙しい中を時間を割いておいでいただきまして貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 まず、江田参考人に二つほどお伺いします。
 一つは、先ほど証言されました問題でございますが、参議院におきまして各党各派の協議会がある、そこで報告書が提出されて、その報告書につきましては、次の参議院選挙については時間的な関係から定数の削減のみで、あとは現行の方式でいこうということが結論的な内容であったというふうにお話をされました。そして、それを再確認するような形で、本年の六月二日に参議院議長が各会派を集められてそれを再確認された、こういうふうに今お伺いしたわけでございます。

 提出者の参議院の皆さんからは、そういったことが言われているけれども、約束はしていない、それは全然なかったんだと。報告書についても、両論併記というか三者併記して書いてあるんだ、こういうお話があり、参議院議長のところでも約束はしてない、したがって、これはその後の状況変化によって、いろいろな事情からこの法案を出すのだ、こういうお話でございます。

 その点につきまして、国務大臣もやられ、また参議院の野党第一党の責任者であられます江田五月議員のお言葉というのは非常に重いものがあると思いますが、ひとつはっきりと確認しておきたいと思います。

○江田参考人 参議院の方の提出者が衆議院に来てどのようなことをお話しになったか知りませんが、参議院の方では、ここに私も持っておりますが、参議院選挙制度改革に関する協議会というものをつくりました。これは、議長のもとにある各会派代表者懇談会、このもとに置かれた実務者の協議会でございまして、私ども、やはり議長というものの権威は議会人として最大限に尊重しなきゃならぬ、そのもとにちゃんと設置をされた協議会でございます。そこで九回協議をいたしまして、その協議のたびの議事録というものもしっかりとできているわけでございます。

 そういうものを踏まえて、平成十二年、本年二月二十五日にこの協議会の報告書というものが採択をされています。これも、議事録を見ますと、いろいろ文章の細かなところまで議論をして、その上でこういうことにしようといって出しているものでございます。

 I が「この協議会の経緯」、II が「参議院の役割と在り方」、IIIが「当面の改革」として、その1が「拘束名簿式比例代表制と選挙区制について」、(1)でいろいろな意見が書いてあって、(2)のところで「拘束名簿式比例代表制について」、その中で、ああいう意見もある、こういう意見もあると書いて、最後に「いずれにしても、現行の拘束名簿式比例代表制の仕組みそのものを改めるとなると抜本的な改革となり、その実現は容易でないことから、当面は現行の拘束名簿式比例代表制を維持することを前提として議論を進めることとなった。」こう明確に書いてあるわけですから、これが合意でなくて何が合意か。もう本当に、印鑑証明つきの契約書みたいなものですよ。これを平気で破るというのですからひどい、こう言っているわけでございます。

 六月二日の、議長が各会派の代表者をお呼びになってお話をしたときも、これを前提にして定数是正をやりましょうというお話をされているわけでございます。

○塩田委員 責任者の江田参考人がそのようにはっきりと申されるわけでございますし、また、報告書もそういうふうに書かれていることでございます。それの確認をここでさせていただいたわけでございまして、ありがとうございました。

 江田議員にあともう一つお伺いします。
 先ほど、この選挙法の改正案というのは非常に不純な動機、そして思惑から、また前回の衆議院選挙の結果を見てこういう法案を突如出してきた、こういうお話でございました。そして、その法案の中身から見て、有名人、タレント等が大量得票をして、それが、本人のみならず他の当選者に横流しと言われるような、あるいは人によっては、移譲するような形、おすそ分けとかいろいろ表現されておりますが、そういったことを指摘されて矛盾を突かれたわけでございます。

 それはそれとしまして、こういうことも起こらないでしょうか。例えば、全国区でございますから、これはしかも短期間に当選を目指して、各個人が個人票を集めるということになるわけです。そして、それがその個人の所属する党の票になり、また、個人を選択しないで党を選択する投票もできるわけですから、この双方の合算をしてその党の得票数になる、こういうことですね。その場合に、横流しというよりも、むしろたくさんの候補者を各党が出す。たとえ一万であろうと二万であろうと、何人も出せば何十万票になるかもわからない。もちろん供託金没収等の問題はあるでしょうけれども、それにも構わずある党がどんどん各地で候補者を立てる、そういうような状況が起こらないでしょうか。二百人とか三百人、あるいは四百人ぐらい立つんじゃないかと言われていますけれども、それどころか、票を集めるためには、例えば県会議員、市会議員を落選した人とか、あるいはそういった地方議員の任期の間際にやめて立候補する、こういったことをどんどんふやしていけば、銭金にかかわらずやっていけば、その党の票はふえる。だから、有名人でなくても、そういう立候補をすれば確実に党の票としてプラスされていく、こういう面が起こるんじゃなかろうか、このように思います。

 その一つは、全国区といっても、走れ走れ孝太郎のような、全国を走り回って、そのために亡くなるような、そういうことでないようにするためには、大体七十万票をとれば当選じゃないかと言われていますね。一億人近い有権者に対しまして七十万票とればいい。そうすると、全国を駆けめぐる必要はないわけですね。ある県だけでも七十万票や百万票をとった人もありますし、またそれ以上の人も出ておるわけですが、ある県あるいはある地域に特化して、そこで選挙運動をやるということにもなりかねないですね。そうすると、全国区で、事務所の数を十五から一カ所に減らしたり、ビラの数にしたって、あるいははがきにしても、到底、全国でそんな十五万や二十万じゃ、これはもう話にならない。そうすると、どうしても特化していく。ということになると、全国区といいながら、実態は全国区でなくなるんじゃないか。そういった問題が起こり得ると思うんですけれども、これについて、江田議員はいかがお考えでございますか。

○江田参考人 全国規模で個人名を書かせるわけですから、全国できるだけ走り回って票を集めよう、そうやって自分の所属する政党の名簿の順位を自分の努力で上げよう、これをみんなやることは、それはもうそうなると思いますが、もちろん、全国走り回るのは大変だから、私はここでとれるからここでとるんだと言って努力する、そういうことも出てくるでしょう。現に、全国区のときには、全国から集票ができる人たちはそれはそれで一生懸命やりました。しかし、政党によっては、全国を自分の党の中でブロックに分けて、このブロックはだれそれ、このブロックはだれそれといってやったようなところもございます。そうなると、全国民の良識を集めて当選するというものとはまた性格が違ってしまうわけですね。さまざまそういう問題が出てくる。

 私どもは、ブロック制というもので、全国規模の選挙運動をやらずに個人名投票で選挙を行う、そういう新しい広域選挙区制度というものを提唱しているわけですが、仮にこの非拘束名簿式の比例代表制でやるのだとしても、例えば、まず政党名を投票させるんだ、政党名は書いてもらうんだ、これは必須なんだ、政党名を書いた上で、さらにその政党の名簿の中で自分はこの人がいい、これによって順位を決めていきたいというなら、それはそれで一つの考え方かもしれませんが、今度のようにどちらでもよろしいとなると、これは、今先生おっしゃるようなさまざまな問題点が出てきて収拾がつかなくなる。

 参議院の方で私も指摘をいたしましたが、この法案をお出しになるときに、参議院の調査室で試算をしたこの法案に係る予算措置、これがあるんですね。これによりますと、公費助成で恐らく五十億円以上のものがかかるであろう。こういう資料をつけてこの法案を提出しているわけで、国民の税金のむだ遣いという点でも甚だしいものがあると思います。

○塩田委員 もう一つお伺いしたはずですが、各政党で候補者をどんどん立てるという問題についてはいかがですか。

○江田参考人 これもそういうことが起きると思いますね。もちろん供託金の問題などありますから、それぞれの政党は自己責任でそういうことを、有権者の批判も覚悟しながらやられたらという話ですけれども、しかし、普通考えれば、候補者が多ければ、たとえ一万、二万でもその政党の得票は多くなるわけですから、まことにもってわけのわからない、むちゃくちゃな選挙ということになるんじゃないかと思いますね。

○塩田委員 ありがとうございました。野党第一党の責任者として非常に重いお言葉をいただきまして、ありがとうございました。


○児玉委員 江田参考人にお伺いしたいと思います。
 参議院で野党会派結束して努力をなさった。先ほど下さったこのインターネットのものを拝見しておるんですが、十月十一日のところについてなんですが、「野党五会派の統一要求」という二段目のところです。参議院からおいでになった発議者の諸君は、繰り返し繰り返し野党に対して話し合いを呼びかけたのに一切拒否したということを言い張りました。ところが、この江田参考人のメモによりますと「二月二十五日まで九回行われた各派協議会を再開し、そこで選挙制度改革の議論を続けよう、協議の間は委員会審議は凍結しよう」云々、こうなっています。

 私は、非常にこれは道理にかなった提案だったと思うんですが、こういう提案をお出しになった経過と、それに対する与党の側の反応はどうであったのか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。

○江田参考人 私のホームページの抜粋を見ていただけばおわかりのとおり、非常に緊迫したやりとりがずっとあったわけですね。私どもも、もちろん審議に加わらないこと自体が目的じゃないので、十分な審議をしたいことは当然の話でございます。そこで、野党の方から一体どういうふうにすれば審議にしっかり加わることができるか、そういうことを考えて、野党からもひとつアクションを起こそう、提案をしようというので、十月の十一日にこういう提案になりました。

 野党五会派、ずっといろいろな話し合いをしながら、お互いにもちろん意見の違いは時々ありますが、その意見の違いを乗り越え乗り越えして共同の行動をとってきたわけですが、ここで言っているのは、各派協議会で二月の二十五日に、来年の選挙制度については現行で、こういうことになっているので、あえてそのとおりてこでも動かないとは言わない、そうではなくて、その議論をもう一遍そこでやったらどうですかと。そして、これは、もちろんそこで議論をやって成案を得ることができればそれを実現するということになるわけですから、そういう二月二十五日の審議に反する今回の提案については、これを凍結して、そして協議会の意見がまとまるのを待とうじゃないかと。

 ちなみに、これは一項目めにこの二つのことが書いてあって、二項目めではそういうことが合意できればクエスチョンタイム、これもやりましょうということまでちゃんと書いてあったわけでございます。

 与党の方は、これを半分のみながら半分拒否した。すなわち、この協議会で議論することはどうも頭からノーだと言うわけにはいかない、しかし委員会の審議の方はそのまま続ける、こういうことです。

 ですから、これは、与党の言っていることをそのままうのみにしてしまうと、現にもう出されているものはそのまま通ってしまうという話になってしまいますから、私どもは、この提案はこのままちゃんと了解をしていただかなければいけないということで、与党のそういう逆提案ではだめだということになって、残念ながらこういう私どもの統一要求に従った打開というのはできなかった、こうなった次第でございます。

○児玉委員 参考人の四人の方にそれぞれ、まだ私の質問時間は約十分ありますから大体お一人二、三分でお答えいただければいいんですが、きのうの朝日新聞に、今度の非拘束名簿式なるものについての世論調査の結果が出ております。

 例えば、人気のあるタレント候補を立てると言われる、そのことについてどうかという質問に対しては、問題がある七六%、問題ない一五%。さっき永井さんからおすそ分けという女性らしい表現がありましたが、こういう一つのアンケートの結果が出ています。そして次に、来年夏には参議院選挙がある、非拘束名簿式は自民党に有利になると思いますか、有利になる四四%、そうは思わない二八%。そして、全体として非拘束名簿式を導入することについてどう思いますか、賛成九%、反対三八%、どちらでもない四五%。

 この結果をごらんになってどのようにお感じになったか、恐縮ですけれども、永井先生から順にお答えいただければと思うのです。

○永井参考人 実は、今回の参考人の呼びかけが、実はきのう一日朝から出ておりまして、夜、お通夜から帰りましてからお呼びかけをいただきまして、新聞を読んでおりません。申しわけございません。

 ただ、今の御発言ですと、国民の今回の改正案に対して賛成が九%ということですね。それは、国民は自民党が眠っていてくれればいいと思っているほど眠り込んでいるわけではないということを示しているのだと思います。

 これほど国会が機能を失い、政治家として示してほしいと国民が負託しているような仕事をきちんとしていない、まして国会が言論の府として機能していないということを日常的に見せつけられれば、国民も眠り込んでいるわけにはいかないということは次第にわかってくると思います。そのことを示している数字がこの改正案に賛成九%ということだろうと思います。
 以上です。

○志田参考人 私は、このアンケートの結果を見て、国民は非常に賢明なんだなというふうに思いました。賛成は九%しかいない。制度の内容がわかれば反対、けれども選挙制度の問題というのは非常に難しいのでまだわからない。国民の中では、国会の審議の内容がまだ十分に知られていないということの結果のあらわれであろうと思います。

 そういう意味で、非常に国民は賢明なんだなと思います。審議を十分尽くされるようお願いいたします。

○加藤参考人 私は野党の推薦でここに立っているわけですが、何かこの答えについてはちょっと御期待と違うかもしれませんが、私が拝見した限りでは、この調査は、前文がかなり長い文章が続いていましてその後で聞いていますので、果たして調査された方がどの程度わかってきちっと答えたものかどうか、やや疑問が残るものであります。そういう点をまず感じました。

 もう一点は、わからないというのがもっと多いかなと思って読みましたら答えが多かったのですが、その解釈は非常に難しいと思います。ですから、全般に国民の方で、賛成、反対を決めているというよりは、まだわからないまま何か事態が進行しているということの方が、調査のやり方によっては出てくるのじゃないかなというふうに印象を持ちました。

○江田参考人 私もちょっと加藤先生と似たような印象を持ったのですが、今の段階でこの世論調査は大変難しかっただろうな、それでもなお世論の動向を知るために質問を随分苦労されているなということをまず感じました。

 この質問で答えが多少誘導されているかもしれないなということは思いますが、それでも賛成九%、反対三八%、どちらでもない四五%というのは、やはりこれは世論の傾向をちゃんと示している、そのことははっきり言える。大変難しい世論調査ですが、国民は賢明だということはこれであらわれていると思っております。


○今川委員 三番目に、江田参考人にお伺いをしたいのです。
 先ほど江田参考人の方から、参議院でのあの出来事は、国政史上かつて見ない非常に重大な汚点を残す問題であるという趣旨のことが述べられましたが、実は、衆議院におけるこの特別委員会の審議の中でも、自民党など与党側の答弁の中に、あるいは与党の議員さんの中に、これは参議院における選挙制度の問題であるし、しかも参議院で採決をした案件であるから衆議院では粛々とという表現は使っていますけれども、そこそこに審議をして性急に結論を出したいというふうな声が聞こえてくるわけでありますが、この二院制のもとで、参議院で決めたら衆議院ではそこそこにというふうな与党側の考え方に対して、江田参考人のお考えを聞かせてください。

○江田参考人 私ども、参議院の方がああいう審議の形になってしまったことは、与党、野党を問わず、参議院として大いに反省をしなければならぬと思っております。しかし、参議院の選挙制度だから衆議院は関係ない、逆に、衆議院の選挙制度なら参議院は関係ない、それはそういうものではない。やはり、二院制というものをとって、一方が行き過ぎがあった、おかしなことになった、そのときにもう一つの院がしっかりと役割を果たす。それができなかったら二院制というものは意味がないわけですね。

 以前、衆議院に小選挙区制、比例代表制を導入するときに、参議院は随分、私どもからすると大変な事態ではありましたが、しかし役割を十分に果たされました。私も、細川内閣の閣僚の一人として、本当に参議院の大変な力をまざまざと見せつけられましたが、今回、参議院、私はこれは本当に代議制機関としての役目を果たし損なっていると思います。ひとつ衆議院の方でこれはしっかりとした議論をしていただきたい。そして、願わくは参議院の方にまた戻していただくというような、そういうことだってあるわけですから、ぜひ二院制の妙味をここで生かしていただきたいとつくづく思います。

 参議院の方の提案者が、参議院の与党第一党、自民党の国対委員長がその役に当たられて、衆議院にまで来て、みずからそれ行けどんどんということをやられるというのは、私は大変遺憾に思っているところです。


2000/10/25

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