1991/03/13

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120 衆議院・商工委員会

独占禁止法改正案について


○江田委員 独占禁止法改正案について質疑を行います。
 今回の改正案、独禁政策全体についてこの程度でいいのかという不満もいろいろとあるのですけれども、しかし、前へ進むということは悪いことでないので、私ども基本的にこの法案には賛成をしたいと思っておるわけです。

 違法なカルテルに対する課徴金をこれまでのざっと二倍から四倍に引き上げるとか、課徴金の算定上の実行期間は三年を限度とする、終期から数えて三年ということでしたね。実際に得た不当な利益を取り上げるというのですと、カルテルが発生してからの初めの三年の方がいいのではないかという感じもしたりとか、あるいは課徴金のいわゆるすそ切り額を五十万円未満とするという内容、いろいろあるわけですが、ぜひ公取にはこれからこれらの改正を生かして、内外から期待されている我が国の経済社会における流通、排他的取引慣行、系列、価格メカニズムなどについて競争政策を強化して、我が国の政府規制や商慣行、いわゆる談合や共同ボイコット、排他的な系列取引、内外価格差などの問題点の是正に頑張っていただきたいと思います。

 さて、今回はいわゆるSII、昨年四月五日に発表されたいわゆる日米構造問題協議の中間報告を受けてということだと思いますが、その中間報告の中に、公取の関係についていえば、これは「排他的取引慣行 U.対応策」の「1.独占禁止法及びその運用の強化」の(1)、ここに「また、外国事業者からの独占禁止法の違反事案等に関する通報、苦情の申し出について、公正取引委員会に相談・苦情窓口を設置し、迅速な処理を行う。」こういうところがあるのです。実はこれは英語で見ますと、「In addition,an Ombudsman system will be newly established in the FTC」云々、こういうことになっておりまして、「オンブズマン・システム」ということになっている。

 これは私は去年の四月十八日の本委員会で、おかしいのじゃないか、日米構造問題協議、日米の食い違いがいろいろとあって、その食い違いをなくしていこうというのに、言葉の認識の食い違いをそのままにしているのではどうしようもない、英語では「オンブズマン」と言う、日本語ではそれを「相談・苦情窓口」と言うというのでは、これはかなり意味が違うのではないかという質問をしたことがあります。そのときの答弁はたしか、英語で「オンブズマン」というニュアンスは、日本語「相談・苦情窓口」と言えば一番よくニュアンスが伝わるからそう訳したのだという御説明だったのです。

 そこでお尋ねしたいのですが、昨年の六月に設置をされました、「外国事業者からの相談・苦情窓口を設置し、専任の担当官を設置した。」という、ここで言われる相談・苦情窓口、専任の担当官、これがこの中間報告の中の「アン・オンブズマン・システム」と言われている部分に当たる、こう理解していいのですか。

○矢部政府委員 今、江田委員が御指摘になりました中間報告におきましては、外国事業者による「相談・苦情窓口」、「オンブズマン」となっておりましたが「最終報告ではこれの訳を変えておりまして、「オフィサー イン チャージ オブ フォーリン コンサルテーション アンド コンブレイント」となっております。ですから、相談、苦情を受け付ける窓口というように改めております。

○江田委員 なるほど、最終報告でそう改まったから、そこのそごはないのだというわけですね。やはり認識の違いというのがあっていろいろな問題が起きるということがあってはいけませんので、これはちょっと念のためにということですが、よろしくひとつお願いしたいと思います。

 さて、それでは外国事業者からの苦情・相談窓口、この担当官というのはどのくらいおられるのですか。そして、昨年の六月に設置されたということですが、これまで何件ぐらい、どのような相談があり、どのように処理されたか、報告してください。

○矢部政府委員 この外国事業者による苦情・相談窓口と申しますのは、課長補佐クラスの者が担当としてこれに従事しておりまして、その下に数名のスタッフが、専任ではございませんけれども、従事しております。

 それで、この外国事業者の苦情・相談窓口の設置の目的でございますが、これは外国の事業者が我が国の独占禁止法やその運用について必ずしも熟知していないことから、独占禁止法に関します各種の相談それから苦情の申し出、違反事案の申告を行いやすくするということを目的といたしまして昨年六月に設置したものでございます。

 設置以来、これまでに外国事業者から約十件の相談が寄せられております。その内容は、公正取引委員会の施策一般に関する問い合わせのほか、並行輸入の阻害等の不公正な取引方法それから景品表示の規制に関する相談など広範囲にわたっておりますが、いずれにつきましても事案に応じまして迅速に適切な対応を行っております。

○江田委員 外国の事業者ばかりでなくて、我が国の消費者や一般の市民がカルテルなどの違反行為や不公正な取引を発見した場合に、これは公正取引委員会の審査部の情報管理室や総務課の広報あるいは直接担当課に相談に行けばよろしい、例えば独禁法四十五条にあるように、書面で事実を報告すれば公正取引委員会は適当な措置をとるか、とらない場合は報告した人にその旨を通知をしなければならない、そういうことになっているということだそうですが、これはオンブズマンといいますか、公正取引委員会に今の外国の事業者に対して提供されているような苦情・相談窓口機能を期待するというふうに考えてよろしいのですか。

○矢部政府委員 日本の消費者その他企業の場合には、公正取引委員会のどこに相談あるいは申告を持っていったらいいかというのは比較的わかりやすいものですから、今先生から御指摘いただいたようなところで全部受け付けております。ただ、外国事業者だけにこういうのを設けましたのは、英語でも直接来られるようにということで、それぞれの現場では必ずしも英語での対応が十分でないものですから、特に外国事業者に限って設けているものでございます。

○江田委員 そうじゃなくて、今の去年の六月に設けられたものは特に外国人のために専門に設けられたものだ、それだけでなくて、日本人の場合にはどうするか、我が国の消費者や一般の市民がカルテルなどの不公正取引を発見した場合にどうすればいいのか、苦情・相談窓口風のものが日本の場合にはちゃんと用意されているのかどうかということについて伺ったのですが。

○矢部政府委員 違反事件の端緒になるような事実あるいは申告につきましては、審査部の中の情報管理室というところで受け付けて、これは本局でございますが、そのほか各地方事務所にもそういう申告を受け付けるところがございます。その申告の内容が具体的な事実を提示してきた場合には、どういう措置をとったかということも通知するようになっております。そのほか、独占禁止法の一般の相談につきましては、官房の中に独占禁止法相談所というところもございます。それからまた、事業者団体の相談につきましてはまた専門の窓口も用意されております。

○江田委員 近く我が国の流通、取引慣行等に関する独禁法の運用を明確にするためのガイドラインが作成されるようですが、これなども活用して我が国の消費者や市民が消費者利益を確保し、経済活動における社会的公正を実現するために公正取引委員会をいわば消費者、市民が活用する、これが期待できると考えたいのですが、それでよろしいですか。

○梅澤政府委員 今、江田委員が御指摘になりましたこのガイドラインというのは、私どもが今後の独占禁止政策の重要な柱にしております抑止力の強化と、もう一つ、今仰せになりましたような透明性といいますか、内外ともに日本の競争秩序というものについてよく理解してもらう、同時に、特に国内事業者についてはこれをよく御承知おき願って、違反行為の未然防止に役立てるということでございますが、いま一つ、これは消費者の方々にもぜひ御理解をいただくということは非常に意味があると考えるわけでございます。

 というのは、消費者あるいは事業者もそうでございますけれども、独占禁止法の違反事件というのは具体的な取引によって発生するわけでございますから、それによって被害なり悪い影響を受けた人たちがそれは独占禁止法のルールに反するのだ、相手方はそういうことを知っているのだということが秩序を維持する上での大きな抑止力になるわけでございます。その意味で、事業者はもちろんでございますけれども、消費者も含めまして、このガイドラインというものが競争秩序の維持のためのいわば民間抑止力のような形で私は機能するということは期待をしているわけでございます。

○江田委員 公正取引委員会という役所は、もちろん公正な取引慣行の確立のために責任を負っている役所ですが、国民みんながそういう意識を持ってふだんから不公正な競争のないように注意をしておくという必要があるわけで、ぜひ公正取引委員会としても、そういう消費者や市民が活発に独禁法違反事例などに対して摘発するような活動を行うことを触発していただきたいと思います。

 さて、今回の改正案では、大企業のいわゆる建設談合ですね、土木建設工事の談合については課徴金が一・五%から六%と最大幅四倍に引き上げられることになっているわけですね。そこで、建設談合の摘発について、告発したり課徴金をかけたりした過去十年間の事例、これを御報告いただけますか。

○柴田政府委員 今御質問の官公庁等の発注する建設工事の競争入札に当たりまして、事業者が共同してあるいは事業者団体があらかじめ受注予定者を決定するいわゆる入札談合でございます。

 一定の取引分野における競争を実質的に制限いたします場合は独禁法三条あるいは八条一項一号に違反するということで、従来、公正取引委員会で重点的に審査を行ってまいりました。昭和五十七年以降の建設業関係の受注予定に関する談合事件の審決等でございますが、件数八件、課徴金の合計で七億九千四百九十八万円でございます。

○江田委員 何件ということと金額しか今御報告なかったのですが、その中身は、簡単で結構ですが御報告いただけないですか。

○柴田政府委員 八件の中身でございますけれども、一つが静岡の建設業協会の件でございます。これは、静岡市内における静岡県、静岡市発注の建設工事について、受注予定者を決定した案件でございます。五十七年九月の審決でございます。二番目が、清水建設業協会でございます。これは、静岡県の清水地区において静岡県及び清水市発注の建設工事について、受注予定者を決定した案件でございます。それから三番目が、清風会の案件でございまして、これは、沼津市における沼津市発注の建設工事について、受注予定者を決定した案件でございます。以上三件はいずれも五十七年九月の審決でございます。

 それから四番目は、旧米軍工事安全技術研究会の会員等という件名でございまして、これは、米軍の発注工事の受注予定者を決定した案件でございます。これは、対象になっておりました事業者団体が解散をいたしておりまして、課徴金の納付命令のみを命じたものでございますが、六十三年十二月の案件でございます。

 それから、四国電気・管工事業協会の電気工事部会の件でございますが、官公庁等が入札により発注する四国地区の特定電気工事について、受注予定者を決定した案件。それから、同じく四国電気・管工事業協会管工事部会という案件がその次ございまして、これは、官公庁等が入札により発注する四国地区の特定管工事について、受注予定者を決定したものでございます。電気と管ということでございます。それからその次が、香川県電気工事業協会の件でございますが、これは、香川県等が入札により発注する電気工事について、受注予定者を決定した案件。それから香川県管工事業協会でございますが、香川県等が入札により発注する管工事について、受注予定者を決定した案件。以上八件でございます。

○江田委員 いろいろまだ伺いたいのですが、談合というのは英語にもなっているようですね。DANGOなのか、あるいはDONEしてGOするから談合で、ちょうど英語的感覚も語感としていいのか。特に建設関係の談合は我が国の最もあしき経済社会の慣行になっていると思いますが、これまでの公正取引委員会の実績は、この程度では、実態のところと比べてみるととても談合の摘発抑止に成果が上がっているとは言えないと思います。

 最後に、今回の法改正を生かして、我が国の建設談合を根絶するということについて、公正取引委員長の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。

○梅澤政府委員 独占禁止法違反に対する措置を強化する上で、御指摘になりました談合に対する対応が一つの大きな課題であると考えております。

 ただ、この談合と申しますのは、一般の不公正な取引あるいはカルテルと違いまして、非常に閉鎖的な集団の中で行われます。同時に、発注者の方も、入札状況をよほど子細に注意深く検討をしてもなかなか見つかりにくいという点で、一般の独占禁止法違反事件についてよりも違反の端緒が非常につかみにくいわけでございます。

 したがって、私どもといたしましては、今後情報収集の活動というものをより効率的な方向に持っていくべくこれからも努力しなければならないと考えております。同時に、今後違反事件が明るみに出ました場合に、それが重大悪質な事件である場合には、昨年六月の公正取引委員会のステートメントにもございますように、課徴金のみならず、刑事責任を求めるというふうな強い姿勢で臨みたいと考えております。

○江田委員 まさに今のお話で、今回の法改正、課徴金の割り増しだけではとても効果のあるものにできないので、昨年の六月の体制の拡充ということが行われたわけですが、それだけでもまだ足りないということでしたら、どんどん注文も出していただいて、公取委員会が大いに活躍されることを心から期待をして、質問を終わります。


1991/03/13

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