1991/02/20

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120 衆議院・商工委員会

オゾン層保護法改正案について


○江田委員 長丁場で御苦労さまでございます。しかし、もう最後の質問ですのでよろしくお願いします。
 どうも最後になりますと、もう大体論点は全部出尽くしているようなことでございますが、このオゾン層保護法改正案、議論をするよりも、とにかくできることを最大限やっていく、まさにやるっきゃないということだと思います。大変な事態になってしまっておるわけですが、モントリオール議定書改正の議論の中で、削減スケジュールについては一九九二年にさらに早める目的をもって見直しを行うとされたということですね。この見直しについて、これも既にもう質問がありましたが、重ねて我が国の基本的な態度を伺っておきたいと思います。

 見直しは本当にさらに早める目的である、しかもできる限り実際にも前倒しで早めていくんだという覚悟を聞いておきたいわけです。例えば今度のこの改正によりますと、九三年七月から九四年七月ですか、この部分については改正前よりも削減のプランは緩和されるというようなことにさえなる。しかし現実にはそうではなくて、前倒し前倒しでいくんだというように伺っているのですが、そのあたりの覚悟を大臣に伺っておきたいと思います。

○内藤(正)政府委員 九二年の見直し、二点あるかと思っておりますが、今委員御指摘の九三年、九四年というのが旧来の議定書に比べて八〇%削減から新たなものの一〇〇%になっておる、そこのところの見直しが一つのポイントでございます。それで、我々の運用といたしましては、旧来の議定書の線に沿って、したがって一〇〇%に緩和するのではなくて八〇%の運用を九二年の後半から実施をいたしたい、したがいまして、九三年を待つことなく八〇%の規制を実行いたしたいという考え方でございます。

 それから、全体の見直しでございますけれども、EC等一部に九七年ぐらいに特定フロンの全廃時期を繰り上げてはどうかという議論がございますけれども、これは消費構造も片目で見ながら、基本的には地球環境における実効をいかに上げるかという科学的知見の蓄積が前提でございますので、その段階における知見とあわせ考えながら、基本的には知見に沿って対応を議論をしていきたいと思っております。

○江田委員 科学的知見に沿ってということでもありますでしょうが、しかしわかったときにはもう遅いというようなこともあるわけですから、科学的知見についてある程度の先見性を持ってやっていかなきゃならないという気はいたします。

 その見直しをモントリオール議定書締約国の会議の中でやられるわけですね。そこで、国際的にどのようなイニシアチブを見直しという段階に果たしていかれようとするのか、これを伺います。

○内藤(正)政府委員 国際会議の通例といたしまして、その前に実務段階の作業部会が何回か開かれることになると思います。この段階で先ほど来のあらゆる知識を十分に議論をし、かつ可能な限りの前向きな、実態に即した対応を図ってまいりたい。その結果がまさに締約国会議で結論として合意に至るということで、基本的な方向としては積極的な対応を考えております。

○江田委員 ひとつ頑張っていただきたいと思います。
 それで、できることはすべてやっていかなきゃならぬということだと思うのですが、国際協力については基金をつくってやるんだというお話でした。それで、私はオゾン層保護に関しても債務・自然保護スワップ、これをやってはどうかというようなことをきのうちょっと環境庁の方と議論してみたのですが、債務・自然保護スワップの研究がまだ十分できていない、手をつけたところであってというようなお話なので、ではそれは質問はやめておきましょうと言ったのですが、地球温暖化防止行動計画にちゃんと入っているのですね。これは「第五 講ずべき対策」の「七 国際協力の推進」の中の「五 民間レベルでの国際協力の推進」のところに入っていまして、勉強に着手したばかりだというのにこの関係閣僚会議で決まった地球温暖化防止行動計画に入っているというのでは、どうもこの計画自体もまだ十分練られていないものがどんどん入っているのじゃないかという気もしたり、あるいは質問されたら困るから適当に言われたんじゃないかという気もしたり、ちょっとうろうろしているのですが、しかし、これはきのう質問しないと約束しましたから質問はしませんが、できることは何でもやってほしいと思います。

 そこで、できることは何でもやるということの中で、国内に既に出回っているフロンガス等々がいっぱいあるわけですね。冷蔵庫にもあるしあるいは自動車のクーラーにもあるし、これはもう出回ったものは出回ったものとして、大気中に排出されたものとして計面を立てているから、だから何もしないのだということではなくて、これを回収する努力は最大限やらなければいけない。既にいろいろなされていることもあると思いますが、国民に対する啓蒙という意味でもいろいろな努力をしなければいけないと思いますけれども、先ほどもちょっと質問がありましたが、どういう覚悟でおられるのか。既に出回っている特定物質の回収についてどういう覚悟を持っておられるのかを聞かせてください。

○内藤(正)政府委員 出回っております製品の中に含まれておるフロンの回収ということで議論になりますのは、車の回収及び冷蔵庫の回収ということになるかと思いますけれども、まず車のカーエアコンの中に含まれておりますフロンにつきましては、現実に車が使われている限りは回収をし再生利用する、あるいは大気中に放出しないで不足分だけを補充するという形を可能にするように高圧ガス取締法を改正いたしまして、昨年の十月来そういうことが実施されております。機械も相当に普及が始まりまして、来年度じゅうには一万五千台ぐらいの普及になると思いますし、それから系列系でない企業につきましても普及が急速に広がるということで、運輸省等で指導をしていただいております。

 それから冷蔵庫でございますけれども、これについては冷蔵庫が使われている限りフロンは外へ出ないという完全密閉方式になっております。したがいまして、これが廃棄されました場合にはその回収の方法が難しい、廃棄処理業者がそれを粉砕いたしますと大気中に出てしまうという問題点がございます。したがいまして現在は新たな、まずフロンの代替品を早急に使おうということで、141b、142bのようなもの等々を九四年ぐらいから製品化するということで、まず代替フロンの使用について急速に業界が動いておりまして、かつその場合も、廃棄されたものも回収が可能なような可能性を検討していこうということでございます。

 したがって、そういう方向で自動車あるいは冷蔵庫両方ともに努力をいたしておりますので、今後その方向でなお検討を続けていきたいと思っております。

○江田委員 これはおっしゃるように廃棄物、自動車の場合ですと廃車、冷蔵庫ですといよいよ廃棄されるときのことで、廃棄物というと厚生省と、こうなって、また縦割り行政がここでもという感じがするのですが、いろいろと努力はされていても実際には野放しになっているというのが実態じゃないかという気がするのですね。例えばPCBなんかでも、コンデンサーなんかはちゃんと取り外して廃棄をしなければならぬということになっても、現実には全部ごちゃまぜでやっているわけで、そこまできちんと目の届いた行政をやらないと、少なくとも国民の啓蒙ということにはなっていかないわけで、これはぜひ努力をしていただきたいと思います。

 さて、このオゾン層破壊の問題は、もう本当に手おくれかもしれない。しかし、手おくれだと言っていてはだめなんで、やはり努力をして地球環境というものを守る最大限の知恵を働かせていかなければいけないということだと思います。このフロンなどによるオゾン層の破壊だけでなくて、私たち人間の活動によって自然環境が今本当に危機に瀕しているということがいっぱある。GLOBEという組織がありまして、GLOBEというのはGはグローバル、Lがレジスレータース、Oはオーガナイゼーション・フォー、Bがバランスト、Eがエンバイロンメント、バランスのとれた環境のための地球規模の議員の組織、こういうのがありまして、これはアメリカとECと日本の国会議員が参加をしておるのですが、去年は春にブリュッセル、秋にはワシントンで会議があった。そこで、コロンブスという話が出まして、コロンブスは別にアメリカ大陸があることはわかっていて出たんじゃないんで、すべてがわかってでなきゃ行動を起こせないというようなことをやっていたらアメリカ大陸も発見できなかっただろうし、今はそうじゃなくて、すべてがわかっていなきゃ行動できないと言っておったら地球環境はだめになってしまうかもしれないわけですから、とにかくこちらは危ないという方向が出たらそちらへ行かないようにあらゆる努力をしなければいけないというときだと思うのです。

 これは余談ですけれども、例えばそういう国際会議に行こうと思うと、環境問題など、票にならないのは余り気にしないけれども、金になりませんで、出ていくのに全部自分の金でなんということになると、私なんぞは年二回も外国で会議されるととてもとても出席できないというお粗末な日本の状態というのがあると思うのです。それは余談ですが、こういう人間の活動あるいは人間の知恵について余りにも私たちは傲慢であり過ぎたんじゃないか、過信し過ぎたんじゃないか。もっと謙虚にならなきゃいけない。フロンの場合は、製造企業が五社ですか、ですから蛇口で閉めることができるけれども、もうかなり手おくれになっていることがほかにいっぱいあるんですね。そうしたことについて、環境問題ということについての大臣の、これは大所高所の議論で結構ですから、お考えを聞かせてください。

○中尾国務大臣 私は、江田委員の先ほど来のお言葉に大変感動を受けております。
 ある意味においては、人間のなせる力、わざというものは限られたものでございまして、やはり人間おのずから生きる上に、自分はオールマイティーなものだと思い上がった場合には確かに権力的思考になるでしょう。そしてまた同時に、それがいろいろの悪も生ずる起因にもなる、原因にもなる。その中にあって、人間には絶えず自分よりも偉大な大きな社会とか国家とか地球とか、そういうものがあるという存在感、これを知り得るところにおののき恐れる恐怖感というものがあるべきものだ、このように私も思います。

 そういう点においては、先ほどのGLOBEの話ではありませんが、今まで我々の体験の中にないエンバイロンメントというこの言葉そのものがもう既に我々自体の今密着した問題になってきたと言っても差し支えはございません。それだけに、私どもは、我々自身が今まで我々の人力において未踏であったこのエンバイロンメントに対してチャレンジをしていかなければならぬ、この点においては、あらゆる環境問題として含めまして考えていくべき問題かなと先ほどからお話を聞いて感じました。

○江田委員 環境問題、オゾン層以外にも熱帯雨林の問題であるとか酸性雨の問題であるとかさまざまあります。さらに、地球環境問題はそれでも政府は力を入れておられると思いますが、日本の足元の環境問題はどうも政府は随分後ろ向きだという気がいたしますね。 国立公園の中にゴルフ場をつくるとか、無制限な開発で海を汚すとか、環境保護団体の意見には耳をかさないとか、そうした態度も無視できないと思うのです。ぜひ足元の日本国内の環境問題にも目を向けてくださいますように心からお願いをして、私の質問を終わります。


1991/02/20

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