1990/10/05

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118 衆議院・災害対策特別委員会

台風十九号の被害について


○江田委員 ことしは台風の当たり年といいますか、随分次から次とやってまいります。きょうは、十九号あるいは二十号台風について質疑を行うわけでありますが、冒頭、一連の台風被害で命を落とされた方も大勢おられ、また、さまざまな被害が生じているわけですが、被害者の方々に心からお見舞いを申し上げ、また、日夜を分かたずこの復旧のために御努力くださっている皆さんに心からお礼を申し上げておきたいと思います。

 今また台風二十一号の接近のおそれが伝えられているわけでありますが、質問の初めに、十九号、二十号で被害に遭った皆さん、今本当に冷や冷や、はらはらというところかと思いますが、二十一号への警戒態勢、十分なされていることと思いますが、一言伺っておきたいと思います。

○鹿島説明員 災害対策の基本は、まずもって事前の対応にあることも仰せられるとおりでございます。そういう中で、警戒の態勢をあらかじめ講じておくということが大変重要であろうと考えております。関係省庁こぞり合いまして、そういう対応をさらに進めてまいりたいというふうに考えます。

○江田委員 十九号、二十号の被害につき、一連の要望が既に同僚委員からもずっと出されました。また、関連の役所の皆さんのところにも各自治体その他からさまざまな要望が出ていることと思いますので、この点はもう一々繰り返しませんが、ひとつよろしく御高配のほどをお願いしたいと思います。

 さて、今回の特に台風十九号は非常に大型で強い台風で、日本を縦断し、そして各地で大きな被害を出しました。私の地元は岡山県でございますが、中でも大きな被害を出した地域でございまして、私もごく一部分だけですが被災地を回ってみました。住民の方々の話も伺いました。別に私が伺っただけではなくて、多くの皆さんが、とにかく災害の復旧については単なる現状の復旧ではなくて、現状のままだと、同じことが起きたらまた同じ被害が出るわけですから、そうではなくて、二度とこうした被害が起きないように改良復旧といいますか、今までよりも災害を防止する力が強化される方法で復旧させてほしい、こう希望しておられる。

 そこで、まず建設省にお伺いしますが、ぜひ基本的な復旧の考え方として、改良復旧、防災力強化で復旧に当たる、こういう考え方を持つことをお約束いただきたいのですが、いかがでしょうか。

○佐々木説明員 御説明申し上げます。
 今回の台風十九号は、先ほど来御説明いたしておりますように、極めて激甚であったと認識しております。民生安定のためには何よりも早期復旧、そして二次災害防止、さらに、ただいま先生御指摘のように再度災害防止ということが大切だと認識しております。

 私どもとしては、原形復旧だけでは事業効果が限定される地区につきましては、県または市町村等とも十分打ち合わせをしながら、未災箇所を含んだ一連の施設について改良復旧事業を行いまして、過去においてもそれなりの効果を上げているところはたくさんあることも我々認識しておりますので、そういった改良復旧事業をやっていくという決意でおります。

○江田委員 同じことを農水省の方にもお伺いします。

○岡本説明員 お答えいたします。
 被災農業用施設の災害復旧に当たりまして、再度災害を防止するため、未被災の脆弱な部分をあわせて改良する災害関連事業制度というのがございます。これを積極的に活用いたしますよう県、市町村を指導するとともに、地元の意向を踏まえて改良復旧を図っていきたいと思っております。

○江田委員 国土庁はこの事業官庁ではありませんが、国土庁の方が災害ということについては中心の役割を担っていただかなければいけないので、国士庁にも同じ質問をいたしたいと思います。

○鹿島説明員 再度災害発生防止のために、原形復旧だけではなしに改良復旧事業が行われることが好ましいということは仰せのとおりであろうかと思います。
 今回の災害に際しましても、九月二十五日でございますけれども、第二回の災害対策関係省庁連絡会議を開催いたしまして、再度災害の防止のため被災箇所の早期復旧等を図ることを申し合わせまして、現在、各省庁においてその推進に努めていただいておるところでございます。今後とも、現地の調査の結果あるいは地元の御要請等を踏まえまして、関係各省庁の御協力を得ながらそういう方針で推進してまいりたいと考えております。

○江田委員 先ほど、今回の台風十九号は激甚なる災害を引き起こした、こういうお話でございました。既にもう同僚委員から伺ったことかと思いますが、大きな被害を受けた地方自治体から災害対策基本法に基づく激甚災害の指定の要望が強く出されております。激甚災害というのはいろいろな指定の方法があるというふうに伺っているわけですが、例えば今年七月の九州北部の集中豪雨、これは農水の分野では激甚災害の指定、本激というのだそうですが、商工分野について大分県高田市が局地激甚災害の指定、局激というのだそうですね、これを受けたと聞いておりますが、こうしたものと比較をして今回の台風十九号の被害はまさるとも劣らない。

 そこで、今回の台風十九号の現段階での被害の概要は先ほど御報告がございましたが、そうした被害の概要にかんがみ、激甚災害の指定は一体どういう見通しになるか。繰り返して恐縮なのですが、農水関係、その他の関係、いわゆる本激というのですか、これの指定、あるいは局激の指定、そうしたことに分けて要約してお答えを願いたいと思います。

○佐藤国務大臣 江田先生にお答えいたします。
 まず、今回の災害により亡くなられた方々の御冥福を衷心よりお祈り申し上げますとともに、被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。

 先ほどの激甚災の指定の見通しでございますが、実は先ほどから同じ答弁を繰り返したということでございますので簡単に申しますと、もう少したたないといろいろな数字がはっきり確認できないと思っておりますが、今までの災害対策関係省庁連絡会議等を通じまして把握しておる被害状況からしますと、昨年の災害に対する適用例等から見ても、農地等の災害復旧事業については激甚災害としての基準を超える可能性が高いのではないか、こう考えております。被害額等の精査を急ぎ、指定については早急に関係省庁との協議を進めるなどしてまいりたい、こう考えております。詳しいのが必要ならば各省に答弁させますが、総論はそういうことでございますから、よろしくお願いいたしたいと思います。

○江田委員 詳しくは後、現段階ではこの程度という数字がいろいろ出てきたり、しかし鋭意調査の上というようなことになるのじゃないかなと思うのですが、それ以上に、こういうことだけは特にこの際お伝えしておかなければというようなことがあればちょっとお教え願いたいのですが。――これは今の段階ではそういうことだろうと思いますが、ぜひひとつ市町村単位のきめ細かな被害の把握、そして適切な対応というものを、言わずもがなですが、これは強くお願いをしておきたいと思います。

 さて、これはどうも自分の地元のことで恐縮なのですが、がけ崩れが起きまして、岡山市横井上という地区などで死亡者が出ているわけでございます。死亡者までは至らないのですが、例えば岡山県牛窓町などでも急傾斜地でがけ崩れが起きているとか、岡山だけではなく、ほかの地域でも起きている例がございますが、こういう急傾斜地などのがけ崩れ対策、あるいはこれと同様の地すべり、土石流、こうした危険箇所は今全国で一体どの程度把握をされておるのか、その対策の現状というものは一体どうなっておるのか、今後の整備の方針はどういうことになっているか、これをまず総論的に伺いたいと思います。

○小川説明員 御説明申し上げます。
 建設省におきまして、悲惨な土砂災害から国民の生命、財産を守り、かつ豊かな国土づくりを行うということで、従来から土石流、地すべり、がけ崩れの対策について推進に努めてまいったところであります。しかしながら、現在では全国に土石流の危険渓流が七万四百三十四渓流、地すべりの危険箇所が一万二百八十八カ所、それから急傾斜崩壊危険箇所が七万二百四十二カ所となっておりまして、合計では十六万カ所もあるわけでございます。また、その整備状況でございますが、それぞれ約二割弱というような極めて低い状況になっておるわけでございます。

 建設省におきまして、今後とも土石流、地すべり、がけ崩れの災害から国民の生命と財産を守るため、土石流対策と地すべり対策につきましては第七次の治水事業五カ年計画、それからがけ崩れ対策については第二次の急傾斜地崩壊対策事業五カ年計画に基づきまして整備の推進に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。

○江田委員 これは我が国の国土の特殊性ということもあるかもしれません。あるいはこういう狭い国土にこれほど多くの人間が住んで、しかも盛んな経済活動をやっているということもあるかもしれませんが、いずれにしてもこれほどたくさんの危険箇所があって、しかもそれがまだ二割弱しか手当てされていない状態というのは、とてもGNP世界第二位という経済大国の名にふさわしいとは思えませんので、ひとつこれは大臣、全力を挙げていただきたいと思います。

 ところで、そういう大方針のもとで具体的なことを伺いたいのですが、今回横井上地区、いわゆるマスカット団地という団地がありまして、この団地の土砂が崩れたわけです。私も行ってまいりましたが、土砂が崩れてその上に建っている民家が崩壊したということはないのですが、一つは崩れた土砂がその下の民家を押しつぶして、そこで三名の死者が出た。それから崩れた上ですが、民家が建っていて、その民家の庭先が崩れて、家の窓から下を見るとどっとがけが下へ落ちているわけですね。もちろんこれは大変危険ですのでこの皆さんは今避難をされておるということですが、しかしその周辺は危ないのじゃないかという場所でもまだ人が住んでいらっしゃるようなところもあるわけです。これは原因ということになるといろいろ原因があるかとも思いますけれども、とにかくこういう状態を放置するわけにいきませんね。土砂が崩れるのも自然の調整作用だから、しばらく崩れて安定するまでほっとけという考え方があるいはあるかもしれませんけれども、しかしそれにしても民家がすぐ上にあり、さらにその奥にはもっと民家がずっとあるわけでありまして、放置をしていたらこれはどこまでいくかわからないわけです。

 私は実は政治家になる前に裁判官という仕事をやっていまして、裁判というのは早くしろとかゆっくりやれとかいろいろ意見があるのですが、やはり被害の回復というのはおくれてから幾ら大金を賠償でもらったってだめなんですね。一番必要なときにさっと被害を回復しないと被害の回復にならないということがございまして、もう一刻も早く崩壊した箇所についてはこれを回復しなければいけないと思うのですが、どういう事業になるのですか、災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業というようなことをちょっと聞いたのですが、正しい名前かどうかわかりませんが、そうしたことでぜひやっていただきたい。地元の地権者の同意をとらなければならぬとかいうようなことを言われて町内会長さんが当惑しておったりというような状況があって、そんなことはひとつ役所の方でちゃんとやってもらいなさい、こう言ったのですが、伺いますと、現況の調査であるとかあるいは可否の判定であるとか測量であるとかいろいろなことがたくさんあって、手順も手間がかかるような、こんな紙切れもあるのですけれども、一刻も早く超特急で、地権者の皆さんの同意などはこういう場所を早く直すという迫力で、もう同意はいただくという気迫でこの工事はやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。

○小川説明員 御説明申し上げます。
 ただいま先生から御質問ございましたところは岡山市の小幸田地区ということで承っている地区かと思いますが、ここにおきましてがけ崩れによりまして甚大な災害をこうむったわけでございますが、現在岡山県におきまして早急に調査を進めているところでございまして、私どもといたしましても再度災害の防止という観点から県の調査に基づいて的確に対応してまいりたいと考えているわけでございます。

 それからまた、御質問の中の隣接の地域というようなところでございますが、これも県に調査をさせております。県の調査の結果を待って検討してまいりたいと考えている次第でございます。

○江田委員 隣接の地域はこれから質問をしようと思っていたところで、前もってお答えいただいてしまいまして、これは困ってしまうのですが……。

 調査、調査とおっしゃるのですが、どっちみちこれは調査の結果工事をしなければならぬわけですね、もう目の前で落ちているわけですから。一日おくれればそれだけ地元の皆さんも冷や冷やしているわけで、しかもこれで二十一号が来ているとか。ですから、調査を待ってというのですが、調査は調査で、しかし同時に、工法の検討であるとかあるいは予算の手続であるとかいろいろなことを進められたらどうですか。それだけの気迫が必要だということを言っているのです。

○小川説明員 先生の方から早急にというお話でございましたが、急傾斜の崩壊した場所というのは非常に危険でございまして、崩壊した後というのは測量にもなかなか近づけない、それから次に台風が控えている、豪雨になった場合に二次災害が生ずる、それを覚悟の上で県の方で計画なり測量なりそれから施工の仕方なり、現在早急に調査、計画を立案しているところでございまして、それを受けまして私どもとしても的確に対応してまいりたいと考えている次第でございます。

○江田委員 ひとつ気迫と迫力を持ってやってほしいと思います。
 そこで、そしてその次なのですが、このマスカット団地というのはかなり大きな団地で、今崩れているところは民家三家屋のすぐ足元が崩れているわけです。かなり広い範囲ですが、団地自体はもっと大きな団地で、しかも急傾斜地というのはもっとずっと広がっているわけですね。今現に崩れている場所が崩れているということは、ほかの場所もやはり崩壊予備軍だということだと思います。しかも、現に小さな土砂崩れが起きている場所、亀裂が入っている場所があるわけです。そうしますと、現に今崩れているところは直ちにということですが、同時に、その関連する箇所全体をよくにらみながら、先ほどの改良復旧という点でいうと、関連する傾斜地を一体として考えて改良復旧をしなければいけないのではないかと思いますが、その点を伺おうと思ったらお答えが先に出てしまったのですが、ちょっともう一遍伺わせてください。

○小川説明員 御説明申し上げます。
 先生の方からその周辺の箇所ということで、先ほど私、一歩先んじてお答え申し上げたのですが、その辺はまだ詳しく情報をいただいておりません。県の方としても、崩れていないところの周辺にも多少影響があるのではないか、したがいまして、これから調査することによりまして崩れたところと同等のところと扱えるかどうか、それも含めて的確に対応してまいりたいと考えておるわけでございます。

○江田委員 同じような急傾斜地がずっとあって、その上に団地がつくられていて、ある場所が崩れたわけですから、ほかのところも当然崩れるのではないかとみんなが心配するのは当たり前のことですよね。現に、今崩れている場所が崩れる前にその近くのところがちょっと崩れて、そこはすぐ市に通報して崩れた場所に排水の細いパイプを引きまして、細いといっても直径二十センチもあるでしょうか、それで水を通すことによって土砂崩れがどんどん起きるのを防止したという場所がありまして、ここなどは、そこへ住んでいる人が崩壊がちょっと始まった段階でまだ気がつかずに放置していたらそれこそやられてしまうかもしれない。そういう地域の皆さんの防災についての協力があって、幸か不幸か今の程度の崩壊で免れているようなこともあるので、ぜひひとつ地域の皆さんのそうした防災の熱意にこたえるためにも、その地域を一体として改良復旧をしていただきたいと思います。

 さて、これはまた別のケースですが、岡山県だけでなくて他の地域でも、個人の所有地、自分が持っている土地だからいいだろうというので、山を削って家を建てるとか沢を埋めて家を建てるとかやって、これが崩壊して災害となったというようなケースがあるようです。個人責任といえば個人責任ですが、しかし個人個人では危険箇所というものがよくわからないというケースがあるわけでして、そういう個人が自分の責任で小さな開発をしているというようなケースについてもぜひ危険箇所を十分調査し危険であることを周知させいろいろなアドバイスをする、そういう行政活動が必要なのではないかと思いますが、地域防災計画といったものもあるようですが、いかがでしょうか。

○小川説明員 御説明申し上げます。
 先生から今がけ崩れの危険箇所ということについて御質問があったわけでございますが、いわゆるがけ崩れの危険箇所、私どもは急傾斜地崩壊危険箇所と呼んでおりますが、これにつきましては従来から調査、点検を実施して危険箇所の把握に努めてきたところでございます。また、がけ崩れそのものの現象というのが、地形や地質、降雨等の複雑な自然現象が相互に関連し合っているため、メカニズムの解明については極めて難しいものと私どもも考えておるわけでございますが、建設省の土木研究所におきましてその辺のところを鋭意研究しているわけでございます。精度の向上にも努めてきたところでございます。

 それから、警戒避難という意味から考えますと、危険箇所の住民への周知というのが必要でございまして、地域防災計画書への登載など県への指導の徹底方について努めてまいってきたところでございます。これからもこの辺についての徹底方という指導を続けていく考えでございます。

 それから、社会情勢の変化によりまして人が住むところがふえ出してくる、そういったところで危険箇所がふえていくような状況もございますので、その辺も踏まえまして見直し調査の実施を検討しているところでございます。

○江田委員 次に、岡山県東備地区の河川災害について伺います。
 今回、岡山県では備前市、和気町、邑久町、牛窓町、長船町、一市四町が災害救助法の適用を受けて八千世帯以上の床上、床下浸水の被害が出ました。また、佐伯町でも道路が寸断をされました。

 そこで、建設省に伺いますが、この地域の油杉川、千町川、干田川、さらにその他中小河川の被害の状況と今後の改修方針について、地元からは河川激甚災害対策特別緊急事業の採択の陳情書も出ておりますが、初めに伺いました改良復旧という観点からもどういう方針で取り組まれるかを伺いたいと思います。

○日野説明員 御説明申し上げます。
 まず、千町川でございますが、実は五十一年に非常に大きな出水に遭われまして、激甚災害対策特別緊急事業、通称激特事業と言っておりますが、その採択をいたしまして、五十一年から五十五年度までの五年間で十トンのポンプを設置いたしました。また、吉井川への放水路が一・四キロほどございますが、これの暫定改修を実施してございます。その後もずっと河川改修を続けてきておりまして、昭和六十一年度までに局部改良で護岸をやってきまして、また六十一年度からは十二・二キロほどの区間でございますが中小河川改修事業にいたしまして、この改修で現在用地買収とか築堤、掘削を行っております。

 また、干田川の方でございますが、これは昭和四十四年から、下流の方から七・八キロほど中小河川改修事業で改修を進めてきております。この干田川も先ほどの千町川のように五十一年にやはり出水被害を受けられまして、同じように激特事業を採択いたしまして、こちらの方はポンプ十五トン、それから吉井川への放水路、それから一・五キロの河道改修をやりました。その後ずっと改修を続けておりまして、干田川の本線あるいは支線の香登川を含めまして中小河川改修事業で築堤、掘削、護岸等を実施しております。

 また、油杉川につきましては、昭和五十六年度から、二キロ弱でございますが局部改良事業でやってございまして、用地買収は完了いたしまして、下流から二百六十メートルの区間は河道が整備されでございます。

 今回の出水にかんがみてどうするかという御指摘でございますが、ただいま県と相談をしておりまして、再度災害防止のためにどうやったらいいのかということを今協議中でございます。

○江田委員 地元の皆さんは、昭和五十一年の第十七号台風で被害に遭って、今の激特事業ですか、それをやっていただいていることには大変感謝をしておりまして、この点はまずお礼を申し上げなければならぬと思います。ただ、これは下流から順次やっていくという、しかしまだ十分上流まで行き着かないうちに次が起きてしまったということなのですかね。全体の計画でいうと何%ぐらいのところが終わっていたのでしょうか、おわかりですか。

○日野説明員 御説明申し上げます。
 千町川につきましては大体一・四キロぐらいでございます。それから、干田川につきましては大体三キロ程度完成をしております。千町川の方、結構長うございまして、全体で十一キロぐらいですから十何%ぐらいになります。それから干田川の方は、全体七・八キロぐらいですから二十数%ぐらいになろうかと思いますが。

○江田委員 五十一年の台風、そこで激特事業にしていただいて、平成二年、何年たったのですか、十四、五年ですか。それで十一キロ中一・六キロというのですから、余りスピードが速いとはなかなか言えないことで、これはひとつ頑張っていただかなければならぬと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

 この地域の水害は、内水被害といいますか、溢水もしているわけですけれども、外水に特っていけない。とにかくどうしようもない。水を川へ流すといったって、川はさらに先へ特っていったらそこがもっとふえているので、どうしようもないという状態のようですが、こういう内水被害を防止をしていく分野というのは建設省、農水省、それから国土庁あるいは自治体、いろいろ権限が重なり合っているようですね。これは国土庁としてはやはり調整官庁、そういういろいろな役所の権限が重なり合っているところを調整をしていく国土庁としては、内水被害についてどんな大きな方針をお持ちなのでしょう。

 私は、国土庁はとにかくこれから四百三十兆の公共事業という大変な時代を迎えるわけですから、国土庁としてこういう内水の被害であるとか、あるいはさっぱり進まないというと怒られるかもしれませんが、急傾斜地等の崩壊防止であるとか防災行政、防災予算についてひとつ国土庁がリーダーシップを発揮して、大いに予算もとり、災害のない国土をつくるために力を発揮するという意気込みを持ってほしいと思いますが、いかがですか。

○鹿島説明員 我が国は、その自然的条件からいたしまして地震、台風、豪雨などいろいろ自然災害を受けやすいところに位置しているわけでございます。このような災害から国土と国民の生命財産を守っていくということは、これはまずもって国の基本的な責務でございます。

 そこで、政府におきましては、かねてから事前の対応といたしまして科学技術の研究、そしてまた災害の予防、そして国土保全事業の実施を行うとともに、万一災害が発生いたしましたときに、災害の応急対策、復旧対策を進めておるところでございます。そのためには前提といたしまして、先生が仰せられますとおり、もちろん予算を伴ってまいるわけでございます。各省庁とも十分連携をとり合いまして、治山、治水事業を初めとして災害に強い国土づくりを行うという見地から、防災関係予算につきましても充実、確保をしっかりと図っていきたいというふうに考えております。

○江田委員 世間では、国土庁というのは調整官庁で、実際に事業をやるのは建設省であったり、農水省であったり、予算もそっちがやることで、どうも国土庁があれこれ言えないのじゃないか、国土庁というのはやはり弱いのじゃないか。そんなようなことが言われるわけですが、しかし、これからはそうであってはいかぬと思うのですね。国土庁とかあるいは環境庁、こういうような調整官庁というのがもっとリーダーシップを発揮して、各省庁をいわば引っ張っていくような、予算も、予算の配分は大蔵省だというのじゃなくて、もちろん決定は大蔵省ですが、この防災関係、こういうことをしなかったら四百三十兆の名が廃るというくらいの意気込みでやってほしいと思いますが、これは大臣いかがですか。

○佐藤国務大臣 お答えします。
 実は先ほど先生のお話で、例えば急傾斜地の問題、地すべりの問題ですが、私の選挙区で尾道というところがございまして、やはりこれが実は地すべりを起こしまして、まず水抜きと土砂取りをやりました。約二千立米取りまして、あと水取りをやりまして地下水を少なくする、それで足りなくてまた四千立米取るわけで、これは建設省、非常によくやっていただいているわけです。

 これで考えますのは、十六万カ所あるわけです。そこの二割、約三万少ししかできていない、まだ危険箇所が十万幾らある、一体どうするかということなんですね。これは予算等の問題とかみ合うわけです。実際、私が考えておりますのは、この間も現地に行ってみまして、雨が降ったら水がしみる、それが地下水になるわけです。では雨が降ったら水がしみないようにしたらいいわけですね。そうすると非常に助かる。そんなこともございまして、そんな意見を述べる人もございますが、何らかのそういう方法を考えないと、今の予算では難しい。

 例えば河川ですが、これは実は笑い話で先生お聞き願いたいのですが、ある事務次官をやめたのがおりまして、係長のときに河川改修の現地に行ったそうです。それで彼が事務次官をやめてもう一遍行ったらまだ改修中であった、こういうわけですね。河川というのはまだできたのがないそうです。ただできたのは多摩川一つだそうでして、できた河川が同じに事故を起こす。そんなことでございまして、大変河川には膨大な予算がかかるわけです。そんなところを含めてどうするかということでございます。

 先生御存じだと思いますが、今度四百三十兆の構造協議から公共投資、あれは四百十五兆プラス弾力運用十五兆ですが、ずばり言って完成するものは、道路、河川一つもない。これをどうしたらいいかということを含めてですが、今先生がおっしゃったようなことですが、国土庁とすれば、そういう意味におきましては今度第四次全国総合開発計画、その中の整合性をどうするかということの中に、今先生がおっしゃったような問題を含めまして、これから大いに努力したい、こう思っておりまして、何分の御理解と御後援をお願いいたします。

○江田委員 時間が来まして、最後の質問です。
 先ほどの内水被害もそうなのですが、農地の宅地化といいますか、あるいは都市化といいますか、どんどん都市部が広がってきまして、今まで農村であったところが宅地になっていく。そうすると、残った農地に水がたくさん入り込んできて、農地は狭くなる、水はたくさん来る。そこでこれをどんどん外へ出さなければならぬというので、この内水被害、溢水被害というのが起きる地域が随分ふえてきているような気がするのですね。これはどんどん外へ水を出せばいいということなのか、それとも日本の国土というのは広い水田があって、そこに水が十分保たれて、そういう水田の保水能力というものがあって国土が守られてきた。今それがどんどん都市化していく状況では、また別の何か考え方が要るんじゃないか。水を外へ出すだけじゃなくて、例えば遊水施設をつくるとか、学校の校庭を水がたまるようにするとか、いろいろあるようですね。あるいは水がしみ込むような道路にするとか、水路なども三方を全部コンクリートで囲むのではなくて、二方だけで下へ水がしみ込むような水路にするとか、これは農水省の関係かもしれませんが。そういう意味で、環境問題も含めて水の問題というのを総合的に考えていく、公共投資四百三十兆の使い方もそういうところに求めるといろいろ有意義な事業があるかと思いますが、総合的な治水対策が必要と思いますが、その考え方を伺いまして私の質問を終わります。

○定道説明員 お答え申し上げます。
 今先生がおっしゃいました、特に都市化が非常に激しい流域がまさしく問題でございまして、流出が大きくなる、下流から治水工事をやっていけばとても間に合わないという事態を招いている河川がございます。こういう河川につきまして、昭和五十一年でございますけれども、河川審議会の中間答申を得ておりまして、総合的な治水対策を推進しているところでございます。その中身は、先生も先ほどおっしゃいましたように流域を三つの区分に分けております。そして流出抑制あるいは盛り土抑制、あるいは市街化調整区域をできるだけ保持しようとか、そういう施策を展開しているところでございます。

○江田委員 終わります。


1990/10/05

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