1986/04/16

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104 衆議院・文教委員会


○江田委員 二十三日の第二次答申を前に控えて大変に御多忙のところおいでくださいまして、ありがとうございました。せっかくの機会ですから、私も短い時間ですが、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。

 今の子供たちの状況を一体どう認識をされているかということなんですが、例えばきのうの新聞の夕刊によりますと「少女、相次ぎ飛び降り」というので、十六歳の女の子がまず昨日の午前零時五分ごろでしょうか、神戸で飛びおりた、即死。午前八時前には今度は東京の杉並で高校二年生の女の子が飛びおりて重体。午前九時半ごろには盛岡で、これは中学三年の女の子が飛びおりて死んだというようなことですね。その前にタレント、アイドル歌手の飛びおり自殺があったり、そのしばらく前にもやはり同じようにタレントの自殺があったようですが、タレントに限らず子供たちの自殺が大分続いておるという。まあ連鎖反応的なものもあるでしょうけれども、しかし、それにしても子供たちが何か非常につらい環境に置かれているということが日本全国にあることがこういうことでうかがわれると思うのですが、今の子供たちの状況について基本的にどういう認識をお持ちか聞かせていただきたいと思います。

○岡本参考人 かつて新制作座の創立記念日のときに先生と同席させていただきまして、お話を聞いて大変感銘を受けたことがございましたですが、私、子どもがえげつないと申しますか、そういう気持ちにおいては先生と同じでございます。それがやはり私は、子供は大人の社会の端的にあらわれたものと申しますか、その意味で大変大人の責任を強く感じておる次第でございます。本当にえげつないと申しますか、子供の思い詰めた気持ちに対してはまことに痛ましい気持ちがいたしております。

 それにつきましては、私自身はやっぱり十分それにきめ細かく対応して、そういうことのないように努力いたすことは大変大事だと思っております、現実的には。しかし、基本的に大事なのは、やはりしつけと申しますか、子供のときからの鍛錬で、耐性というか、私は子供同士がけんかしておる状態なんか見ておりますが、それはやはりああいうもので徐々に耐性というかそういうものを獲得していくという過程があると思うのですね。それで、これはいじめに関連してもですけれども、私はそういうものが大変大事だということを痛感いたしております。

 要約すれば、現実的にはそういう子供の状況というものは本当に痛ましく、一日も放置できない。これに対してはできるだけきめ細かい対応が必要だけれども、同時に、基本的にはしつけというようなもの、これもやはり近代文明の大きな風潮に関係ありますけれども、そういうものをしっかり注目していかなければいかぬと考えております。

○江田委員 今のは新制作座の真山美保さんの、たしか子供たちがふびんだという言葉でしたね、会長と一緒に伺わせていただいたことを私も思い出しました。この子供たちのいじめも確かにその一つで、いじめの問題の根は深く広いというようなことを言っている今この瞬間にも、本当に大変に心を痛めている、悩みの出口が見つからなくてどうしていいかわからない子供たちがおるわけで、じっとしていられないという気持ちに教育改革に携わる者としてはならなければいけないのではないかと思います。

 耐性とおっしゃいます。そのことも一つ必要ですが、しかし、自分の気持ちを殺して何にでも耐えることができる子供を育てるのが本当にいいのか、こんなことはとても我慢できないと自分の意見を言える子供の方が本当は大切なんじゃないか、そんな気もします。

 それはさておいて、仮に今自殺を考えている子供あるいは自殺を考えているようなサインが見られるのではらはらしている親から臨教審に教育相談があったとしたら、どういう対応をとられますか、これは仮の質問ですけれども。

○岡本参考人 これは大変大事な問題でございますので、臨教審としては、先生の言われる子供の声を聞くという意味で、公聴会においても親に来ていただくとか、臨教審のヒアリングとしても学生生徒の話を聞くということに努めております。

 今、仮定の話で、臨教審にそういうなにがあったらどうするかということでございますが、かねてから教育委員会の活性化というものを期待して、それに答えてもらうより仕方がないと思っております。臨教審自体がそれに乗り出すわけにも、何もできませんので、そういうふうなことを考えております。

○江田委員 それはそうだと思うのです。臨教審が一つ一つの具体的な教育相談に乗るわけにはいかない、これは当たり前なんですが、そうした一つ一つの具体的な教育相談の中に今の教育現場の持っている大変な問題が噴出してきているわけです。

 恐らく会長は御存じだと思いますし、私も前に指摘したことがありますが、女性による民間教育審議会という自発的な団体がございまして、女性の皆さんが二十二人で会をつくって月に一度公開の審議会を開いて、ついせんだって四月に「教育改革提言」というのを出しているわけですが、この皆さんはおもしろい方法をとられたわけです。まず最初に、三日ほどでしたか、教育一一〇番というのを設けて、とにかく教育についての緊急の相談事をいっぱい受け付けた。そうすると、次から次へといじめの問題、教師の問題、学校の問題、いっぱい問題が寄せられたというのですね。その悲痛な叫びのような教育相談の中から今の教育の問題点をじかに皮膚で感じ取って、そこからスタートしてこの教育の改革を考えたというのです。そういう方法は臨教審では恐らくおとりになれないのかもしれませんが、しかし、一方でそういう方法も非常に大切だ。つまり、これは事態の認識の方法ですが、写真に撮るように全体を一寸一分食い違わないように認識するのも一つの方法ですけれども、まさに問題の所在というものをクローズアップして、そこをぐっと大きく認識することがより必要な正しい認識という場合もありますね。写真もいいけれども、絵画というのも事実を正しく認識する非常にいい方法なんで、今の教育、勉強のできる子もできない子も、学校が楽しい子もつらい子もいろいろいるというように認識するのもいいけれども、そうでなくて、本来学校は本当に楽しくなければならぬはずだ、ところがつらい思いをしている子供たちがかなりの数いる、その部分をしっかり認識することが大切だと思うのです。

 そういうところから始めておまとめになった女性民教審の皆さんの「教育改革提言」を臨教審の中で大いに生かしたらどうかという気が私はしておるのですが、まず、これはごらんになりましたか。

○岡本参考人 各方面からいろいろな提言はもらっておるわけでございますけれども、この提言につきましても、臨教審で全員に回しておりますし、私自身も拝読しておる次第でございます。

 それから、先生おっしゃいましたように、一つの例をはっきり目で見ることによって、本当にドライブといいますか問題解決の意欲が生まれるということは、私は大変痛感いたしておりまして、これは特に第三部会、中小学校教育のところでは、現場と個人に詳しく話を聞く努力を重ねておられる話をよく聞いておりますので、その点は先生のお説と全く同感でございます。

○江田委員 それと同時に、もう一つは、先ほども山原委員から「審議経過の概要(その3)」に難解な表現が随所に見られるというお話がありましたが、この女性民教審の「教育改革提言」は実に易しい文章で、別に高等教育を受けていない家庭の母親でもすいすい読める、そして心にずしりと響く内容になっておりまして、この表現方法などもぜひ参考にしていただければと思います。

 きょうはお忙しいところなので、時間がありませんのでこれで終わりますが、どうぞよろしくお願いいたします。


1986/04/16

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