1986/04/10

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104 衆議院・大蔵委員会,文教委員会,運輸委員会,建設委員会連合審査会


○江田委員 補助金一括法の連合審査会で、今補助金一括削減ということで各地方財政が非常に揺らいでいるところですが、ちょうど竹下大蔵大臣がG10からお帰りになったわけで、地方財政も含め国の財政経済全体が大きく揺らいでいるその根本のところに通貨の動揺ということがあると思うのです。ちょうどお帰りになって直ちにでも、時差ぼけはなれていらっしゃるから大丈夫だろうと思いますが、早速ですがG10のことについて伺っておきたいと思います。

 まず、百八十円をさらに超えるというような、百七十円台という円高の状態、これは国際経済秩序をつくっていく上で一定の必要性もあるかとも思いますが、しかし、日本経済自体は今これで大変に困っておる、首をつらなければならぬような人たちまで出てきているという状態なので、大蔵大臣としては、一方、世界で大きな経済を占めるようになってきた日本経済が世界経済の中でどう行動するかということと同時に、国内の経済もきちんと運営していかなければならぬという立場上、今の円高というものが一体どこまで追い詰められていくのか、各国に一定の理解を求める努力をされるべきであったと思いますが、ワシントンでどういう努力をされ、それがどう実ってきたかということをひとつ御報告いただきたいと思います。

○竹下国務大臣 どうも済みませんでございました。お許しをいただきまして先輩である江崎大臣に臨時代理を今の瞬間までお務めいただきまして、本当にありがとうございました。

 四月七日の本委員会から出発させていただきまして、それで十日までということになるわけでございます。十カ国蔵相会議に出席をして、さらにベーカー財務長官を初めサミット参加国、と申しましてもフランスはまだ大蔵大臣がお見えになっておりませんでしたが、お会いをいたしてまいりました。

 十カ国蔵相会議では、最近における為替相場の動向と金利の低下、それからさらには石油価格の下落、こういうことを踏まえて、主として国際通貨制度とそれに対する開発途上国の債務累積問題、これの議論が中心でございました。私が昨年まで議長でございましたので、十カ国蔵相会議の基本的な考え方として為替相場は安定しなければならぬということ、それから、それがためにはやはり介入も時にはもとより必要にしても、基本的には各国の政策調整が必要だ、そこで、そのために多角的サーベーランスと申しまして、相互監視をより強力にやろうではないか、こういうことが話の中心でありました。

 そして累積債務問題については、ベーカーさんの提案というのがございますが、さらに日本側から先進国の果たすべき役割についても提案をいたしておりますので、これがともどもに支持され、そしてそのことは率直に翌日、きょう行われております暫定委員会へ持ち込んで、その推移はまだ私も聞いておりませんが、暫定委員会は開発途上国もいらっしゃいますけれども、そう大きな変化があるとは思っておりません。ベーカー財務長官とは為替相場、国際通貨制度、経済政策等について意見交換をいたしましたが、為替相場については、双方が為替相場というのは安定するのが何よりも好ましいという点においては完全に合意を見たところでございます。

 それから金利問題につきましては、ロンドンG5のときに、環境は熟しておるという認識をして、その後アメリカも日本も行ったわけでございますが、公定歩合の引き下げが日本銀行で行われたわけでございます。それの推移を見ようではないか。率直に申しまして、住宅金融公庫とかそういう中小企業の円高対策なんかの金利が最終的に決まったのは恐らくきのうぐらいでございますから、決まったばかりだからもうちょっと推移を見ようではないか、こういうことでございました。

 特にその後のG10の会合でも、通貨問題についてはかって特定の国が主張しておりましたいわゆるターゲットゾーン、これを設けようという考え方は非常に少なくなってきておるというふうな印象を受けてまいりまして、引き続き今度サミットでお会いをして首脳国の大蔵大臣で意見交換を行っていこうということでこちらへ帰りましたので、お互いがいつも、どれくらいが適当だとかそれは双方言わないことになっておりますが、とにかく日本の急激過ぎた話もいたしますし、安定さすことが大事だというのは特に西ドイツを含め我々の完全に合意したところではないかというふうに考えております。

○江田委員 どのくらいが適当かというのは相互に言わないことにというお話ですが、新聞報道によると、大蔵大臣がベーカー財務長官に百八十円がもっと安くなっていくようなことでは日本経済も大変なんだというようなことで理解をお求めになった、そういう報道もあるようなんですが、いかがですか。

○竹下国務大臣 現状、日本の中小企業、なかんずく韓国等と競合するような繊維でございますとか、陶磁器でございますとか、おもちゃでございますとか、洋食器でございますとか、そういうものは決定的打撃を受けておるということについて私からるる説明をいたしました。若干回数もふえておりますので、こんなことを委員会で申し上げるべきではなかろうと思いますが、円は上がって、私は「登」でなく下がった、こういう話も割合巧みに英語に訳せたようでございまして、そういう主張をしたことは事実でございます。

○江田委員 やはり余り円が高くなり過ぎるということは、国際経済の秩序のために日本が受けるべき犠牲といいますか自制といいますか、これはもちろん必要ですが、新しい国際経済秩序ができつつあるというときなので、G10の国際通貨監視体制というものが余り強くなり過ぎてもまた困るかと思うのです。先ほどのターゲットゾーンの主張は少なくなったという印象をお持ちだということですと、そうした心配はお持ちになっていないということなんですか。

○竹下国務大臣 相互監視というのは、相場を対象にしてやるということでなく、いわばお互いの経済情勢。これはアメリカには、もっと赤字を削減したらどうですかとか、内政干渉にわたらないような状態になるものですから。複数の国になりますと、お互いがフリーディスカッションになりますから、日本の場合はもっと市場開放をしろとか内需拡大をしろとか、それについて私から、聞いておりました総合経済対策、江崎先生の方でまとめていただいたものをるる話しましたり……。ただ円高差益還元については、いわゆる料金がちゃんと法定で決まる制度がない国には初めは何のことかわからなかったようですが、るる説明しておるうちに理解を得たつもりでございます。

○江田委員 私に許されております時間は十分ということで、もう九分程度がたってしまいました。きょう文部大臣にお越しをいただいたのでお尋ねをいたします。

 今の円高の問題でいろいろ困っている者がたくさんおると思いますけれども、私も留学の経験があるのですが、円建てで奨学金をもらっている留学生はまだいいけれども、それぞれの自国の通貨で奨学金をもらっている皆さんというのは日本の事情でえらいことになったということだろうと思うのですね。円高の緊急対策の中で、東南アジアその他の国々の通貨で奨学金をもらっている皆さんに対する緊急の生活の補助といいますか援助といいますか、こうしたものをぜひ考えなければならぬのじゃないかと思いますが、文部省として大蔵省にそのことをぜひ要求してはどうかと思う。

 そのことと、大蔵大臣お話し中でしたが、今の外国の通貨で建てられております奨学金をもらっております奨学生たちが円高によって大変な目に遭っている状態に対して、文部省の方で何とかしてやれという要求があった場合に、ぜひそれをお考えになるべきじゃないかと思いますが、いかがでしようか。

 文部大臣の方から先にお答えください。

○海部国務大臣 御指摘のように、国費留学生には円で支給しておりますから、これは別だと思いますが、私費留学生の方はもともと本国からの送金で生活をしていらっしゃるわけですから、急激な円の価値の変動というものは相当な影響が及んでいるだろうということは想像にかたくございません。

 したがって、全般の対策として、やはり私費留学生に対してかねてから先生からも手厚い対策を考えたらどうか。医療費などの八割補助の問題などもそういうところからスタートしておりましたが、最近民間の団体から昨年もことしも奨学金を行う団体がどんどん自主的に出てきておりますことと、それから文部省としても、日本国際教育協会の学習奨励費を私費留学生にも月々四万円ですが出すように、それをさらにふやしていくように今努力をしておる最中ですが、急激に足元から起こったきょう現在の対策をどうするかということになりますと、これは一遍慎重に勉強して、そういう制度も経験も今日までほとんどなかった文部省でございますから、一年単位のことしか考えていなかったというのが正直に言った現状でありますので、よく勉強し、研究させていただこうと思います。

○竹下国務大臣 文部大臣からよく勉強し、研究させていただきたい。それに尽きると思います。

 実際問題が、五十三年でございましたかの円高のときに私、あっせんをいたしまして政令でいわゆる外国勤務の人の月給を上がり下がりの場合調整する措置をとったことがございますが、何か知恵があれば私も文部省と十分対応してみたいと考えております。

○江田委員 大蔵大臣、お疲れさまでした。どうぞゆっくりお休みください。
 終わります。


1986/04/10

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