1985/05/24

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102 衆議院・文教委員会

公立の障害児教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準等に関する法律案
公立幼稚園の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案


○江田委員 障害児教育の向上のためにいろいろと御努力をされて、さまざまな調査とそれから周到な配慮のもとにこういう議員提案をお出しになった提出者に、まず冒頭敬意を表します。それから、こういう議員提案をまじめにきちんと――もっとも、残っていらっしゃる委員の数はちょっと少ないようですが、議論をする当委員会のあり方について敬意を表したいと思います。

 それにしても、どうも七年間にわたって継続審査、廃案というのを繰り返して、四回質疑でいまだにさあどういうことになるかという状況は、確かに議員提案、真剣に議論をしておるというものの、ちょっと寂しい感じがするわけですが、まずこの提案者にどういう感想をお持ちか、これを伺っておきたいと思います。

○馬場議員 先ほどから御質問もあっておるわけでございすが、今江田委員おっしゃいましたように、この法律を必要とする障害児学校の現状というのは御存じのとおりでございまして、そういう意味で、その障害児の教育を維持向上させるという上からも、これは一日も早く成立させてもらいたいと思うのです。それが一つ。

 もう一つは、やはり先ほどから言いますように、この国会でもう七年間、四回にわたって審議して、これは通常の例であれば審議を尽くしておるわけでございますから、ぜひ採決をして通していただきたいのですが、その採決が行われないという点も問題だと思いますし、言われましたように、議員立法を大切にする、民主主義を大切にする、国民の意思を大切にするというそのルールがやはり踏みにじられておる、こういう状況でございます。
 私どもは、今度のこの国会でぜひ成立させていただきたいということを各党の皆様、委員の皆さん方にも心からお願いを申し上げ、一日も早く成立させていただきますように心からお願いいたしたいと思っております。

○江田委員 実は、これは専ら私の個人的な都合で質問の準備の時間が非常に逼迫しておりまして、きょうは余り綿密な質問の通告をせずに質問をするということになってしまっておるので、あるいはお答えの方も微に入り細にわたってということがなかなかいただけないのじゃないかと心配をしておるのですが、まず障害児の動向、盲・聾、肢体不自由、精神障害、いろいろあるわけですが、この動向というものが一体どういうことになっておるか、これを提出者の方に伺います。

○馬場議員 動向としましては、盲学校、聾学校、ここに進学します生徒の数は年々減少しつつある、こういう傾向と理解しております。しかし、肢体不自由児とかそのほか精神とかいろいろ、いわゆる養護学校に入る生徒はそんなに減少していない。特徴的なのは、重度の障害児あるいは重複児、これが年々ふえておる、こういう状況と把握いたしております。

○江田委員 それはどういう理由でそういうことになってくるのでしょうか。

○馬場議員 これはやはり養護学校の場合、義務制じゃなかったのが義務制になった、そういうこともございますし、それからやはり障害児教育というものの理解が国民の中に、さらにはそういう障害者を持っております親の中に理解が深まっていって、ぜひ学校で教育を受けさせたい、そういうこともあると思いますし、さらには、先ほどから出ております訪問教育というものは、これはまだまだ充実しなければならぬわけでございますが、そういう教育を受ける者も生徒として数えるわけでございます。そういう意味で、国があるいは国民全体が果たしてその障害者を差別していないのか、理解があるのかといえばまた問題があるわけでございますけれども、少なくともこの学校にあらわれた状況の中ではそういうこと等も考えられるのではないか、こう理解いたしております。

○江田委員 一方で、養護学校の教育が義務ということになって、養護学校へ入ってくるようになった。他方、社会の見る目も随分開けてきたし、親の方も外に出すことにそれほど心理的抵抗が、ないというところまでまだいかないでしょうが、随分薄くなってきたということで、障害児がどんどん出てくるようになった。そういうことがあるのかと思いますが、提出者の方で把握をされている障害児の動向、そしてその動向のよって来るゆえんについては文部省の方はどうお考えですか。

○高石政府委員 まず、傾向を申し上げますと、盲学校の場合を申し上げますと、昭和四十一年の数字は約一万。これが五十一年の段階で八千八百、そして五十九年は七千。それから聾学校につきましても、四十一年が一万九千二百八十。これが五十一年が一万三千三百四十二、それから五十九年が九千七百十六、こういう傾向を示しております。これら盲学校、聾学校への進学者数が減少しているのは、そういう者が少なくなっている、端的に言うと盲者、聾者の数が著しく減少の傾向を示しているということがこの数字にあらわれている傾向だと思います。

 それから、養護学校で申し上げますと、五十一年と五十九年との比較で申し上げますと、精薄が五十一年で二万一千四百四十六。これが五十九年で五万四百八十八、約二・五倍近くふえております。それから肢体不自由が、五十一年が一万七千七十三。これが五十九年が一万九千九百四十八。それから病弱が、五十一年が五千、五十九年が七千七百六。
 要するに、養護学校系統のものは就学義務を課したということを契機にしてふえているということでございます。したがいまして、教育の対象数が、盲・聾については減少し、養護学校は義務化に従ってそういう学校への進学の数がふえている、こういうふうにとらえているわけでございます。

○江田委員 この動向の理由として義務化のことだけをお挙げになりましたが、社会の理解とかこういう点はいかがですか。

○高石政府委員 社会の理解も深まっておりまして、従来養護学校という学校がなかったということで、行きたくても養護学校になかなか進められなかったというのが、義務化で整備された。したがって、そういう学校に自分の子供を就学させて適正な教育効果を上げてもらいたい、そういう親の理解、そして社会の理解と相まってこういう状況になっていると思っております。

○江田委員 もう一つ、先ほど提出者の方でお触れになったかどうか。重度それから重複障害の者が随分増加をしておるのではないかというようなことが言われておるのですが、この点はいかがでしょう。

○馬場議員 私どもの調査でもその重度・重複児の数がふえておりまして、そういう人々も幼稚部から小学部、小学部から中学部、高校部とだんだん上の方にもふえておる、こういう傾向に理解しておるわけでございます。これもまた、今まで就学の機会に恵まれなかったそういう人たちが、養護学校が義務化いたしまして、そして学校で学びたいということで親もだんだん出してくるようになった、こういうぐあいに理解しております。

○江田委員 文部省の方ではどう把握をされていますか。

○高石政府委員 重複障害児の児童生徒数を見ますと、これも四十七年当時は三千二百三十三が生徒であったわけでございますが、五十九年度では二万三千七百一ということで、重度障害児が養護学校で教育を受ける機会が著しく拡大しているというふうに見ております。

○江田委員 盲・聾の場合には、比較的ベテランの教師があれば、例えば先ほどからいろいろ問題になっておる健康被害であるとかいうような問題がそれほどないのかなと思いますが、養護学校、特に重度あるいは重複障害の子供がこれほど大変な、ある意味で爆発的増加というような事態の中で、先生方が随分苦労をされているのじゃないかという推測は簡単にできるわけです。これはいろいろなアプローチの仕方があると思いますが、盲・聾、それから養護学校、それからできれば普通の学校も参考に、教師というのは一体どの程度の期間一つの学校に勤めておるのか、養護学校を何年ぐらいお勤めで転勤をされるのか、こんなような調査があったらお教えいただきたいのですが。

○馬場議員 お答えをいたします。
 結論からいいまして、普通の小中学校、高等学校、それから盲・聾学校に比べまして、養護学校の先生方の一つの学校におります勤務年数というのは実はぐっと短くなっているわけでございます。先ほども申し上げましたように、本当に健康被害、これは肉体的にもあるいは精神的にもそういう被害が非常に多くなっておるというのも養護学校の特色でございまして、だから、長くおっては命がもたぬ、こういう形で転勤を希望されて出ていかれる、こういう傾向になっておるわけでございます。

 ここに一つの資料がございます。これを見てみますと、これは八一年の資料で少し古いわけでございますけれども、全国的に調査したのが出ておりますが、今申し上げましたように、盲学校、聾学校というのはいわゆるベテランの先生というのが非常に多いのです。ところが、養護学校では五割前後が、半数を超すぐらいの先生方が障害児教育経験年数が四年未満になっておるわけでございまして、先ほどちょっと健康のことを申し上げましたが、大体三年ぐらいで腰痛が非常にひどくなって転勤希望を出されるというのが非常に多くなっておる、こういうことでございまして、大体四年未満の先生方が養護学校では非常に多い、こういうことになっておるわけでございます。

 その理由というのは、先ほどから言っておられますように、介護なんかもするわけですから、非常に体の重い生徒なども手をとり足をとり体をとって教えなければならぬとか、その他に例を挙げれば数限りないわけでございますけれども、そういう状況の中で短くなっておる。これは障害者の教育にとっては非常にマイナスだ。こういう健康被害はないようにして、ベテランの先生が教えるという環境に学校もならなければいかぬのじゃないか、そういう意味でこの定数法の成立を望んでおるわけでございます。

○江田委員 今提出者の引用されました資料というのはどういう資料ですか。特定をしていただきたいと思います。

○馬場議員 これは教職員団体でございます日教組が全国的に調べました資料でございまして、八一年度全国規模の日教組の調査でございます。

○江田委員 私もその資料をいただいておりますが、これで見ますと、盲学校の場合が二十年以上のベテラン教師が一五・六%、十五年以上を全部足しますとざっと四〇%近く、聾学校も十五年以上が三五%強ですか、それに対して養護学校の肢体不自由児の場合が五年未満で四四%、その他の養護学校で五年未満が五七・七%というような極端な差を見せておるのですね。

 文部省の方はそういう実情は把握をされておりますか。

○阿部政府委員 教員調査等を行っておりますけれども、そこまでのデータとしては持っておらないと思います。ただ、勤務の継続年数でございますとか、そういったことを考えます場合に、勤労の強度が強いという御指摘もございますし、それもないことではないと思っておりますけれども、ただ盲・聾学校等と比較いたしますと、学校としての歴史が極めて浅い、できてから三年とか五年とかということでございますから、五年未満がほとんどであるということも当然のことであろうと思うわけです。それから新しく採用された教員をまずはそういった特殊教育諸学校にふなれなまま入れてしまうという人事異動上等の問題もあろうと思います。いろいろなケースがございますので、その数字からすぐ結論にというふうにはいかないと思っておりますけれども、そういう問題がいろいろあるということは承知をしているつもりでございます。

○江田委員 確かに、この数字からすぐに皆労働がきつ過ぎるからかわっていくんだということだけを結論づけるのは危険かと思いますが、しかし、そうした傾向があることは文部省の方も否定なさらないし、否定できない。そこで何とかこういう障害児教育現場にもうちょっと温かい手を差し伸べることが必要なんじゃないか、こういってこういう提案ということになったんだろうと思いますが、私も養護学校を訪ねてみたり、そこの先生方の話を聞いてみたり、また親や子の話を聞いてみたりして、こういう今の状態を何とかしていかなければならぬと思います。

 ところで、こうして議員立法をお出しのわけですが、どうもこの議員立法提出者が馬場先生、中西先生、佐藤先生で、あと賛成者の皆さんは日本社会党・護憲共同所属の会派の皆さんばかりです。ひとつこういうものをつくっていこうという場合に、いろいろな方法があるんだろうと思いますが、例えば俗に言う根回しというのですか、いろいろな会派をもう少し説得されて、提出者なり賛成者なりにもっと多くの会派の人たちを募るとか、そういう議員立法をいよいよ本当に成立させるために必要なさまざまの努力というのがあると思うのですが、どうもそうした点で、これはひが目かもしれませんが、ちょっと欠けておるのじゃないか。こんな言い方恐縮ですが、ひょっとしたら社会党と特別な関係にある日教組の皆さんの運動のためにやっているのじゃないかという、そんなような批判もあるいは出てくるかなという気がするので、この点についての御努力といいますか、これからどういう覚悟で御努力をされるかということを伺っておきたいと思います。

○馬場議員 例えば、今、日教組と出ましたけれども、私どもそういうところだけの意見を聞いて法律をつくったということよりも、本当に障害児教育の学校の現場の実態を十分把握いたしまして実はこの法律をつくり上げたわけでございます。最初、七年前に出しましたときには、日本共産党と私どもの社会党が共同で提案をいたした経緯もあるわけでございます。そしてまた、私どもとして、今言われましたように本当にすべての、最初の順序からいいますと野党ですか、これが賛成して共同提案していただくということが一番いいことだったとも思いますし、そういうことも実はしたいとも考えておるわけでございますが、いろいろのいきさつがございまして今回は単独になっておりますけれども、江田先生にもお願いして、この採決をするときにはひとつぜひ賛成していただきまして、各党賛成していただきまして成立していただきますように、そういう根回しはいたしますから、ひとつよろしくお願い申し上げておきます。

○江田委員 かしこまりました。
 ところで、どうも七年もこういうぐあいですと、何か次第に、ある意味の無力感といいますか、せっかくこういうものを出しても結局数の力でやられてしまうじゃないか、そんな感じもみんなの中に広がっていくんじゃないか。それはかえって議員立法というものの信頼を傷つけ、ひいてはそれが政治不信にまで行ってしまうんじゃないか、そんな心配もあるのですが、七年の間この法律を出してこういう運動をやっていることによって、これ自体が法律にまでならないとしても、しかし、障害児教育の特に教員の定数であるとか学級の定数であるとかいうような分野で何らかの前進はあったんじゃないだろうかという気がするのですが、これはいかがですか。

○馬場議員 さっき言いましたように、この前定数改善が行われたわけでございますが、私どもが最初法律を出しましたのは、実は全体的な定数改善が行われます前に出しているわけでございます。あの十二年計画の中で障害児学校の定数改善なんかも幾分行われておるわけでございまして、やはりこういうものを提起して、その中の一部分というのは法律ができないまでも文部省その他の方で前進させた部分はあるということは実は理解をしておるわけでございます。

 それから、もう一つは、言われましたように、やはり出したら何が何でも修正なんか一カ所でもけしからぬ、そういうような気持ちは全然ないわけでございまして、この段階では、ひとつこの辺でここだけを前進させてここは次に置こうかとか、そういう中身の修正というようなものは喜んで話し合って、まとまったところで前進させる、残った部分はまた後にするとか、そういう柔軟な態度というのは提案者の方も持っておるわけでございます。だから、今度の場合も、例えばここをこうしたら通せるじゃないかというようなお話とか詰めとか、そういうものも皆さんと、与党ともできればいたしまして、できるだけ現場の人たちが、我々の要望というのを国会がこたえてくれた、民主主義が生きているんだと思っていただけますようにやりたいと考えております。

○江田委員 この法律は、公立の障害児教育諸学校、現に今ある学校の学級編制と教職員定数に関することですが、こうしたことが大いに世間の議論になっていくというのは、やはり障害者の皆さんの、教育を受けたいという熱意、教育を受けようという努力が次第に向上してきておるということもあると思うのですが、私どものところに陳情が来ておりまして、視覚障害者のための教育関係のさまざまな団体、それから聴覚障害者のための教育関係のさまざまな団体の皆さんが一致して身体障害者高等教育機関をぜひつくってほしいという運動をもう随分長い間されているということなんですが、視覚障害、聴覚障害あるいはその他の身体障害の皆さんが普通の学校へ行くにもなかなか困難がある。そこで高等教育機関、せめて短大ぐらいはつくるべし、そういう要望も強まっていると思いますが、これは文部省の方に伺いますが、どういう動向に今なっておりますか。

○宮地政府委員 身体障害者の高等教育機関の準備状況についてのお尋ねでございます。
 御案内のとおり、身体障害者教育の進歩といいますか、また身体障害者の学習意欲といいますか、それの増大ということも受けまして、高等学校段階に引き続いてさらに高等教育段階でもいろいろな対応をすることが言われておるわけでございます。従来からも、一般大学に入りますことにつきましても、私どもいろいろ具体的にも予算措置その他で対応はしてきておるわけでございますが、特に身体障害者のための新しい高等教育機関の設置についても、先生御指摘のようないろいろ関係団体からも積極的な対応を陳情その他を受けておるわけでございます。

 従来の経緯でございますけれども、昭和五十二年度以来、予算的には調査の経費を計上いたしまして準備を進めてきておるところでございます。これまでの調査研究におきましては、視覚障害者と聴覚障害者を対象とする専門的な職業教育を行う三年制の短期大学を設置する基本構想がまとめられたところでございます。さらに現在創設準備室を――これは筑波大学に置いているわけでございますけれども、創設準備室を置いて、学識経験者によります協力者会議を設置して、従来の検討結果を踏まえて、具体的な学科の構成でございますとか規模など、さらに検討を深めているというような状況でございます。予算的な措置といたしましては、五十五年度からは設置調査経費、五十六年度からはさらに準備を進めるというようなことで、教官一名をそのために充てるというようなことを措置をし、五十八年度以来創設準備ということで進めてきておるわけでございます。関係者にいろいろ御意見がある点も私ども伺っておりまして、それらの点も十分踏まえながら積極的に対応してまいりたいと思っておりますが、現在財政状況大変厳しい状況下にございますが、私ども、創設準備の進捗状況といいますか、それの計画の具体的な中身を十分慎重に検討し、それらについては今後積極的に対応してまいりたい、かように考えております。

○江田委員 まだいろいろ伺いたいこともありますが、この身体障害者の皆さんもまた健常者と同様に、完全参加と平等、教育も受けられる、そして本当に人間らしい生涯を送れる、これはもう当然のことであって、これからもひとつ、我々も努力をする、文部省にも大いに努力をしていただくということにしたいと思います。
 これで質問を終わります。


○江田委員 教育の荒廃が叫ばれて何とか今の教育を立て直していかなければならぬというときに、教育の原点というのですか、一番最初の幼稚園教育、幼児教育について、何とかこれをもっとすばらしいものにしていくためにいろいろ知恵をお絞りになって公立幼稚園の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案を提出されました提出者の皆さんにまず敬意を表し、同時に、こうした議員提案の法律にもきちんと審議の時間を割いております委員長と同僚委員の皆さんに敬意を表します。もっとも、表する同僚委員の皆さんがかなり少ないようではありますが……。

 さて、実は、専ら私の責任でございますが質問の通告が十分できておらないところがありまして、あるいは微に入り細にわたってという答弁をいただくにはちょっと難しいところがあるのかと思いますが、できる限り提出者それから文部省の方でお答えを願いたいと思います。

 まず最初に、これは蒸し返しのような話かもしれませんが大臣にお伺いをいたします。
 幼児教育というものは一体何だ、どういうふうに認識をしておるのかということなんですが、結局幼稚園の教育は何をするのかがどうもはっきりしない。何か小学校の方から言わせれば、幼稚園で平仮名を覚えてくるとか算数の足し算を覚えてくるというふうなことはむしろやってもらわない方がいい、それは学校の方に任せてほしい。しかしどうも幼稚園の中では、実際にいろいろなそういう知識の伝達ふうなこともやっているところもあるようですが、一体幼児教育、特に幼稚園教育というのは何だと大臣はとらえていらっしゃるか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。

○松永国務大臣 個々の幼稚園では、今先生御指摘のように小学校一年生にやや似たような点まで教育をしておるところもあるようでございますが、私は、本来幼稚園というのは、まず子供が生まれて三歳ぐらいまでの間は主として家庭において、大部分の場合母親が言うなれば教師の役割を果たしながらしつけをする、あるいは母と子とのしっかりした愛情を基本にしてその他の分野にまで情操的な発達がなされる。そういう家庭における子育てを経て、三歳あるいは四歳、五歳の時代になりますと集団生活の中で協調性とか社会性などの芽生え、そしてまた特に大事なのは豊かな情操を培う、こういったことに重点が置かれるのが望ましいのではなかろうかと思うわけでありまして、人間として将来発達する場合の基本的な社会性、協調性あるいは豊かな情操といったものの芽生えをきちっと図っていくのが、幼稚園における教育の主たる内容ではなかろうかなと考えているわけでございます。

○江田委員 その社会性、協調性・情操の芽生えをつくっていくということですが、まさにそうだと思うのですけれども、子供が生まれてまず最初に、恐らくお母さんでしょうね、お母さんとの間で人間関係を持つというか人間の広がりをつくっていき、それが次第に家族に広がり、そして、やっと家族という一つの真綿でくるまれたような世界から外に出て世の中、社会に初めて出会う、これが幼稚園。子供がそうやって次第に社会化していく、社会的な存在になっていくということが非常に重要なんだろうと思うのです。ですから、幼稚園はそういう子供の社会との出会いの初体験。

 さて、そういう観点から幼稚園の学級編制の人数というものを考えることができないだろうか。教師が一体どのくらいの生徒を把握し得るのかということも一つの重要な観点でしょうが、もう一つ、子供の側から、子供が一体どの程度の人数と友達関係をつくり自分自身の周りのソサエティーをつくることができるか。幼稚園児に四十人の子供と友達になりなさいと言ってもなかなかできないのではないか、社会の初体験ですからもっと小さなところからスタートしていかなければならぬのではないか、そんなことを考えれば、幼稚園の学級編制、子供の定員というのはとても四十人なんというものではたまらぬということになるのではないかと思うのですが、いかがですか。

○高石政府委員 今御指摘のような観点も一つの観点かと思うのです。例えば小中高等学校の子供を引きかえに考えた場合、個人の適性、能力によって非常に違うと思うのです。それじゃ、小学校で四十人を相手にできるか、高校生で四十人全部と友達になれるかということになりますと。そういう意味で、一人の子供の友達の範囲というか、それは個性がありますのでなかなかそういう点での客観的な合理的な数字というのは出しにくいというふうに思うわけでございます。したがいまして、幼稚園における保育をやる際にグループをつくらせる、そのときに大体数人単位ぐらいという形でつくらせているわけでございまして、クラスをそこまで落としていくというのは事実上非常に困難、やはり財政の状況とか歴史的な沿革によってある程度決められているというふうに思うわけでございます。

○江田委員 財政状況も考えなければならぬこともわかっておりますが、いろいろな考え方があると思うのです。いろいろな要素から総合勘案して決めていくのだろうと思うのですが、小学校でさえ四十人あるいは四十人をもっと割った数にしていきたいというのに、なぜ一体――幼稚園というのはその小学校よりももっと小さいわけですね。恐らく小学校でも、低学年と高学年で適正な学級編制の人数というのは違うと思うのですが、小学校で四十人というのに、なぜ幼稚園は同じような四十人でいいのか、小さな子供の場合はもっと少ない人数の方がいいのではないか。それは目が届かないからということもあるけれども、子供自身の方も少ない人数の方が社会化ということを達成していくためにその第一歩として妥当なんじゃないか、そんな考え方ができるのではないかと思うのですがね。

○高石政府委員 原則的にはそういう考え方に私も同感でございます。
 そこで、もう一つは、小中学校の場合には義務教育国庫負担ということで国の負担制度とかかわり合っているというような問題、しかも義務教育ですから、すべての市町村に児童生徒がいる数は全部地方公共団体は責務として整備していかなければならない、そういうようなことで、ある意味では国の基準に従って財源措置をし、国のそういう改善に従って条件整備をしていくというような仕掛けにしているわけですね。公立幼稚園の場合には、給与は市町村負担であるということ、しかも幼稚園の数も市町村によって非常にばらつきがあるというような実態、そして地方交付税で財源措置をしていくということで、地方交付税上の財源措置は毎年努力をして少しずつ改善をしてきているわけでございます。

 それから、標準の決め方も、四十人以下を原則とするということで、四十人で輪切りしてそれで全部編制しろという厳しい原則ではない。したがって実態は、三十人のところもあるし三十五人のところもあるというような状況にあるわけですね。したがって、小中学校の場合における具体的な政策展開と幼稚園における場合の対応策というのは、基本的立場に若干差があるということが一つあるわけでございます。

 そういうことで、現在は地方交付税上による財源措置を充実することを通じて実質的に幼稚園の教育内容を高めていく、こういうことになっておりまして、そのネックになる原則がまだ四十人以下ということで、そこが改められていないのは問題だという指摘でございますので、そういう点については、今直ちには実現できないけれども、将来の方向としては十分そこを踏まえて考えていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。

○江田委員 私は財政のことをお尋ねするというふうにあらかじめ申しておきましたけれども、まだ財政のことは尋ねていなかったのですが、何かそっちの方までもうお話が入っているようです。

 昨年五月十八日にこの委員会で公立幼稚園の学級編制及び教職員定数法について質疑をいたしましたが、そのときに、例えば一クラス一つの国となっている幼稚園の数とか、クラスの数と先生の数とが同じ幼稚園がどのくらいあるかとか、そうしたことを伺いましたが、その後一年たって、去年の数字と大分違った数字になってきておりますか、あるいは同じですか。どちらですか。

○高石政府委員 若干の違いがありますが、ほとんど同じでございます。

○江田委員 それから、幼稚園の教育のやり方も、例えば昔ならば一斉に始業時間があって、「チイチイパッパ」か「むすんで ひらいて」か知らぬけれども、そんなことを一斉にやってクラス運営をしていたのだろうけれども、最近はそういうことから次第に変わってきて、小さなグループごとにさまざまなことをやっている。あるグループは砂場で遊び、あるグループは縄跳びをやり、そういったくさんのグループがそれぞれにいろいろなことをやっている、教師はそれを全部に目を届かしている、そういう教育のやり方に変わってきておって、それだけ幼稚園運営というのは、教師にとってもちろん非常にバラエティーのあることになりますが、同時に大変な仕事ということにもなっている。これも恐らくこの一年の間に変わったことはないと思いますが、どうですか。

○高石政府委員 方向といたしましては、先生おっしゃるように、学級単位で活動するというよりも子供たちのグループ単位での活動という方向に流れているということで、そういう方向での実践活動が盛んになっているというふうに思っております。

○江田委員 そういうことを基礎に、もう既に大勢の同僚の委員の皆さんからお話がございましたが、公立幼稚園の学級編制それから教職員の定数をもうちょっと本当に幼児教育を考えた内容にしようじゃないかという法案が出されているわけですが、去年の質疑では、当時の森文部大臣は、この定数の問題になると財政の判断が非常に重要であるということでございまして、そこで財政のことを伺いたいと思うのです。

 まず、幼稚園教育にかける公的支出というのはどういう仕組みによって出されるのか、国立の幼稚園の場合、公立の幼稚園の場合、私立の幼稚園の場合、それぞれに国なり都道府県、市町村なり、どういう仕組みでこの公的支出が出されていくのかということを、これはもう恐らく基礎の基礎でしょうから、教えていただけませんか。

○高石政府委員 まず、公立幼稚園について申し上げますと、公立幼稚園を市町村がつくるわけですが、その市町村がつくる施設設備それから人件費、これは市町村が負担しなければならない。そして、その市町村がつくる施設設備、人件費に必要なものは地方交付税によって財源措置をしていくということで、国からといいますか、文部省が直接市町村に対して補助しいるのは施設設備についてでありまして、人件費については地方交付税による財源措置である、こういうふうになっております。

 それから、私立幼稚園は私立幼稚園の設置者が経費を負担し管理する、そしてそれに必要な保育科、入園料を保護者からいただくというのが原則であります。それに対して国は、法人立の幼稚園であれば経常費補助というような形で一定割合の助成が県を通じて行われるわけであります。その県が行う経常費助成に対して国が私学助成で県に対して助成していくというような仕組みでございます。

 それから、公立、私立を通じて経済的に就園させることが困難な父兄に対しては就園奨励費補助というのを出しているわけであります。その就園奨励費補助は、市町村の事業として出しているわけでございます。市町村が予算を計上し、その一部、三分の一でございますが、国が補助金を交付するというような形で就園させる親たちの負担を経済的に軽減していく、こういう仕掛け、これが大まかな仕掛けでございます。

 国立の場合は施設設備をつくるのは国がつくるわけで、それに対して一定の保育料、入園料を取るわけでございます。

○江田委員 それぞれに今年度の予算で幾らになっておるかというのはおわかりですか。

○高石政府委員 今申し上げた経費全体がどれくらいになるかということはちょっとここではわかりません。国が直接助成をしている幼稚園就園奨励費、これは百三十三億五千万でございますし、それから、施設設備に対しての公私立に対する助成が行われておりますが、これが私立の場合二十二億、公立の場合十七億程度の補助を行っているわけでございます。

○江田委員 公立の幼稚園の人件費に対する地方交付税による財政措置、それから私立の幼稚園に対する県を通じて行う私学助成、これはわからないのですか。

○高石政府委員 地方交付税の交付税の計算の仕方として、標準団体をつくりましてそこにいろいろな補正を加えるものですから、一定規模の何園ある幼稚園でどうだという数字を押さえて議論しないと、ちょっと的確な数字はわかりません。ただ、一人当たりの給与単価であるとかそういうのはわかるわけでございますけれども……。園長の場合に年額五百三十万、教頭の場合三百六十七万、一般教員の場合が三百二十九万、その他の職員三百十八万、これが交付税上の積算の基礎になっております。

○江田委員 今のは標準団体の行政経費の積算の基礎ですね。それを積算基礎として、そして教育費単位費用を出して、これを人口とかその他の係数で掛けて基準財政需要額を出すわけですか。そういうものを基礎にして後はいろいろな修正をして交付税額を決める、大体そんな感じで理解してよろしいのですか。

○高石政府委員 仕組みは御指摘のとおりでございまして、参考のために申し上げますと、昭和五十七年度における幼稚園関係の基準財政需要額は約一千億と一応出されているわけでございます。

○江田委員 昭和五十七年度の基準財政需要額というのは一千六十億四千六百十九万一千円、これがそうですね。今の数字は恐らく五十七年度地方教育費の調査報告書で自治省が算定された数字だろうと思いますが、これが五十四年度のときには出ていなかったですね。五十四年度から五十七年度に三年経過することによってこういう数字が出てきたというのは、何か特に事情があるのですか。

○高石政府委員 この調査報告は、五十七年度から実施するということで五十七年度に初めてこういう具体的なものが自治省から発表されるようになったのでございます。したがって、以前の数字はないわけでございます。

○江田委員 調査報告自体は五十四年度もあったのじゃありませんか。

○高石政府委員 そのもの自体はありましたが、幼稚園部分としてこういうふうに分けて出されたのは五十七年度からでございます。

○江田委員 幼稚園部分を基準財政需要額を算定してみることは可能であることがこれではっきりして、現に出されているわけですが、これを見ますと、これはどういうことなのですか。全国では基準財政需要額一千六十億と比較をして実支出額が一千八十九億ですから、一・〇三基準財政需要額よりも実際に支出した幼稚園に対する支出は多いということになります。しかし、中を見ますと随分でこぼこがありますね。一番ひどいのはどこでしょう。山梨県なんというのは基準財政需要額が五億五千二百万、ところが実支出額は八千八百九十万、指数で〇・一六、基準財政需要額の〇・一六のものしか実際には幼稚園に支出をしていない、そういうところがほかにも、栃木で〇・一七、長野が〇・二〇、大変な数字になっているのですが、どういうことでこんなに大きな格差が出るのですか。

○高石政府委員 私もこの数字を正確に分析しておりませんのでちょっとわかりませんが、感じで申し上げますと、公立幼稚園の数が著しく少ない地域が下回っているのではなかろうか、こういうふうに推測しております。

○江田委員 確かに、基準財政需要額の額が少ないところほど実支出額が少なくて比率が小さい、そして基準財政需要額が多いところは比率も高くなっているという点があるので、公立幼稚園の割合が少ないあるいは保育所と幼稚園との割合ということも関連をしているのかもしらぬけれども、それでも密度補正で補正されているのだろうと思うのです。にもかかわらずこんなに、〇・一七から多いところは一・三六とかいう大変な差が出てくるというのは、財政が問題だからこういう公立幼稚園の措置ができないのだという割には、何か財政が余りにもお粗末といいますか、幼稚園の方の財政の中身について、今の交付税の中身について、前々から御指摘があるようですけれども、例えば算定基礎にしても、市町村分、小学校、中学校、高等学校とその他の教育費で幼稚園分を算定基礎の中に入れていらっしゃる、それに対応して単位費用の方も市町村分のその他の教育費の中に幼稚園が混在してしまっている、したがって幼稚園というものがどういうふうに交付税で財政措置をされておるのかよくわからないという状態になっておって、そこで財政にどこにネックがあるのかというのが詰めていくとさっぱりわからぬことになってしまう、そんな状況があるように思うのですが、違いますか。

○高石政府委員 御指摘のように、その中身は、我々自身もまだ十分勉強しておりませんで分析が不十分な点がございます。それから、これはいろいろ複雑な仕掛け、仕組みになっているものですから、自治省から一定の資料をいただかないとなかなか精読できないというようなところもございます。いずれにいたしましても、この問題については今後十分勉強していかなければならないと思っております。

 そして、なお、地方交付税上も幼稚園分は独立した費目で積算をしてもらえるように文部省としてはお願いしてまいりたいということで、今までも要望を続けてきておりますが、今後もそういう要望を続けてまいりたいと思っております。

○江田委員 今の最後の、要望をされているということですが、積算基礎は文部省の方でお出しになるのじゃないのですか。ですから、文部省の方が算定基礎について、市町村分は幼稚園を独立させれば、それで算定基礎だけは独立するのじゃないですか。そうでもないのですか。

○高石政府委員 これは最終的には自治省が決定するわけで、文部省はそれに対して要望していくということでございまして、文部省の要望がなかなか通らないということがいっぱいでございます。

○江田委員 ひとつ文部省、大いに頑張っていただかなければいけませんが、冒頭申し上げましたとおり、私の方も十分に通告をしておりませんでしたし、まだ勉強も十分でないので、ひとつ一緒に勉強していただきたいと思います。

 提出者に伺いますが、財政上の理由でこれが困難であるということなんですが、しかしどうも、どういうふうに財政上の理由なのか、大ざっぱには何かそれは確かに人をふやすのだから金がかかるだろうということかもしらぬけれども、細かく詰めるとわからないのですね。そういう今の幼稚園財政ということについてどういうお感じをお持ちになり、さらに、提出者としては財政上の問題ということについてどう解決の提案を用意されておるか、この点を伺っておきたいと思います。

○中西(績)議員 先ほどもちょっとお答えをいたしましたけれども、財政上の問題として大変困難だということで、今まですべて文部省の方からは退けられるという態勢で進んできたわけでありますけれども、それでは実質的に財政問題だけかということで絞っていきますと、私はそうでもないと思います。

 と申しますのは、先ほどもちょっと触れましたけれども、二十年にわたる幼稚園教育振興計画を出しまして、あれは五十七年で終了したのではないかと思っていますけれども、この間における状況というのは、大体園児が増加をする時期、そしてしかも、希望しても幼稚園に入園できなかったという状況の中でたくさんの幼稚園を設置する。したがいまして、地方自治体にもそのことを要請をしたけれども、地方自治体の進展が余りないということもありまして、私立幼稚園が大変たくさんの数を占めるに至っています。それもまた一つの理由としておるようでありますけれども、先ほど私が申し上げましたような状況から勘案しますと、私立幼稚園の場合におきましてもそれが大きなネックになっておるとは思われません。

 したがいまして、地方財政並びに国の財政ということに先ほどからの論議のように絞られてくるのではないかということになってまいりますと、じゃ果たしてそうだろうかということになりますと、先ほど私が説明申し上げましたように、もともと基準財政額をはじき出す基本になるべきもの、あくまでも小中学校の場合にはちゃんと法律で規定されておりますから、それを基準にし、しかも各市町村に固定された数が全部配置されておる。ところが、この場合には市町村によりまして大変な格差がある。したがって、その面からの計数上非常にはじき出しにくいというような意味のことも昨年自治省あたりは言っておったようでありますけれども、その背景になる基本的な法律がないということがやはり大きな問題点として指摘をされておりますだけに、やはりそうした法律をまず私たちがつくる、その上に立って具体的に各市町村段階におけるこうした内容を固定化させあるいは拡大をさせていくということ、このことが今一番重要ではないだろうか。そうした中で、今言われるような財政の問題につきましても、確かに行政改革論議からいたしますと、財政的には大変厳しいということが指摘されていますから困難だろうと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、予算をどのように私たちが最も効果的に使っていくかということを考えてみた場合に、財政問題一本でこのことを退けるという理由にはなり得ないのではないか、私はこう考えております。したがいまして、これから後、文部省の皆さんにも、具体的に自治省に対してこれを要請する場合の姿勢、構え、そこをやはりすっきりしていただきまして、強い姿勢でやはり要請をすると同時に、先ほども申し上げましたように、法律がなければ可能な部分から少しでも省令を変更するなりして実施をしていく、こういうように考えていただければ一定の前進を図ることができるのではないか、こう考えております。

○江田委員 子供たちが最初に社会というものを知る、社会性のいわば芽はえの非常に重要な場所が幼稚園ですので、そこがゆがんでおったら、これから失いい社会人になるわけはないので、我々も大いに頑張らなければならぬし、文部省もひとつ大いに努力をしていただきたいと思います。
 質問を終わります。


1985/05/24

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