1984/08/03

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101 衆議院・文教委員会 

臨教審について、著作権法の改正について


○江田委員 延長国会もいよいよ大詰め。しかし、臨教審の法案がまだ参議院で攻防が続いて決着がついていないということで、そういうときにまたこのあり得べからざる事件が起きた。大臣、御苦労なことでございます。

 参議院の方の臨教審の審議に差し支えない範囲で、しかし、若干聞いておきたいと思うのですが、この臨教審の委員の任命、今はまだ国会開会中ですし、審議中ですから、この国会中にということになるのでしょうが、しかし、どうも、閉会中ならば任命をしてその次の国会で事後的に同意を得なければならぬことになるのじゃないかということも言われておりますが、その人選は、開会中であろうが閉会中であろうが、いずれにしてもやらなければならぬ。その人選について、これは法案によりますと、「文部大臣の意見を聴いて、内閣総理大臣が任命する。」ということになっているわけです。この文部大臣の意見具申というのは、総理の方から、こういう人でどうだろうかということになるのですか、あるいは文部大臣の方から、こういう人でいかがですかと、こういくのですか。これはどうなるのですか。

○森国務大臣 今、先生からお尋ねの際にもお話がございましたように、ただいま臨時教育審議会設置法案が参議院で審議を、きょうも恐らく参考人の意見聴取をしていただいております。きょうにでも何とか国会の御意思をいただきたいというふうに私ども願っておるところでございます。したがいまして、まだ国会の判断が出ていない際に軽々に人選についてのお話を申し上げることは、極めて僭越であろうというふうにも考えておるわけでございますが、お尋ねの点を一般論として申し上げてまいりますと、総理への意見具申は、国民各界各層の意見が反映されますように、このことを基本といたしたい。したがいまして、国会でもまた先生にも御答弁申し上げましたように、父母や教師等の各分野、あるいは年齢構成、世代間のバランス、あるいは女性の登用などに配慮をいたしながら、個別に具体的に行うということになろうかと思います。法案が成立をいたしました後に、今申し上げましたような基本的な考え方に沿いまして文部大臣としての考えを固めたいとまず考えております。そして、必要に応じまして文部省の事務当局の意見なども聞くことを考えておるわけでございまして、事は教育改革に関することでございます、文教行政の任にあります、またこの法案の担当大臣として閣議でも決定をいただいております私でございますので、そういう中で、今申し上げましたような事柄も十分留意をしながら、私の方である程度の御人選を申し上げ、そして総理に意見具申をするというふうに考えております。

○江田委員 個別、具体的に文部大臣の方で人選をして、それを具申する、法案成立後に考えを固めるということで、もちろん、これはいろいろな人からいろいろと意見をお聞きになるわけでしょうね。その場合に、いろいろ新聞報道などで言われておりますが、何か政党の意見も聞く、各方面から推薦をいろいろ受けると、もう文部省レベルとして選べるのは二十五人のうち十人ほどしかいないのだと言って嘆いたとか嘆かぬとかいうようなことも新聞に書かれておったやに記憶しておるのです。そういう人選の手続、段取りというのがベールの中に包まれてしまっておるという気がするのですが、これはもうちょっとオープンにできないものなんですかね。

○森国務大臣 入選は慎重にいたさなければなりませんし、また、たびたび申し上げておりますように、国会で長い間、こうして衆議院、参議院を通じて各先生方からのいろいろ御質問も交えながら御意見も付されておるわけでございます。そうした国会の論議というものも十分踏まえながら私が判断をいたすということであろうと思っております。

○江田委員 今の状況で言いますと、これは国会開会中には同意を得るというのが困難で、事後的な同意ということになるケースもあり得るかと思いますが、私どもが賛成をいたしました修正部分ですとそれが可能にはなっておるわけですけれども、しかし、恐らく余り好ましいことではないのだろう。日々継続して行われる行政について、その継続性が途絶えると困るので、国会閉会中も人選だけは行える、ただし後に同意を得なければならぬ、そういう場合ならいざ知らず、本件のように新たに事を始めるという場合に、閉会中にもかかわらず任命をしてしまって後に同意というのは、余り好ましくないのだろうと思いますが、それてもやむを得ない場合もあろうかと思います。しかし、そういう場合にも、事後の同意となった場合に、国会の同意を得る前に答申を得るというようなことがあると、これはちょっといかがなものかなという気がするのですが、そういう事後の同意ということになった場合に、国会の同意を得る前に答申を得てしまうというようなことはあるのですか、ないのですか。

○森国務大臣 今の場合は仮定のお話でございますが、当然、委員会でどのように審議をし、どのように――例えば、中期、長期あるいは短期の中間的な答申というようなことなども想定をして今先生お尋ねになったのだと思うのですが、そういう先生のお立場でのお尋ねでございますが、これはやはり、会長を中心に委員の皆さんで、どのような論議を深めるか、あるいはどのようなプログラムでいくかということも、当然審議会でお決めをいただくということであろうかと思います。

 しかしながら、現実の問題として、委員の任命についても可能な限り速やかに国会での同意を得たいというふうに私は願っておりますが、仮に事前に同意が得られないということが出てきた場合には事後承認を得るということが法律で規定されているわけでございますので、そういう点につきましては、仮に事後承認を得られないということになってまいりますと、これは罷免をしなければならないということになりますから、その点、私といたしましては、その辺のことを十分に留意しながら人選をしなければならぬということになります。しかし、設置法そのものは三年間の期限でございまして、一日も早い審議を始めて、そして可能な限り速やかな取りまとめをするということがやはり国民の期待にこたえることであろうというふうにも考えております。したがいまして、確かに、同意を得ないままに仮に答申することはいかがなものかというふうなお尋ねでございますが、具体的にそのようなプログラムになるとは我々は考えられませんけれども、今先生のそうしたお話が、御意見があるということなども十分に審議会の皆さんが参考にされて運営をされるということになろうかと思います。いずれにしても、運営の細目といいますか規則は会長と審議会の皆さんでお決めになるということでございますので、十分留意されることであろうというふうに思います。

○江田委員 間違いのない運営をお願いしたいと思います。
 大臣も参議院の方の様子も気になられることでしょうから、もう一点だけ、ちょっと別の話ですがお伺いをして、後脚退席願うこともやむを得ないかと思いますが、その話は、実は著作権法の改正のことであります。

 技術革新によって新しい事態が著作権周辺に登場してきている。これにどう対応するかということが著作権法の関係者にとって恐らく焦眉の急の課題になってきていると思うのですが、この春、貸しレコードの関係では著作権法の改正をいたしました。しかし、これは貸しレコードというほんの部分的な事柄に対する対症療法的な改正で、もっと大きな対応が必要、とりわけコンピューターソフトについて、これは本格的な取り組み、検討をしなければならぬと思うのですが、大臣にこの点だけ伺っておきます。

 コンピューターソフト関係についていろいろ意見があるようですけれども、文部省サイドで、これは著作権がコンピューターソフトに成立をするんだ、したがって、著作権法の改正ということでこれに対応していくんだ、そういうお考えは堅持されておるのかどうか。各省との関係で、どうもそのあたりももううやむやになってしまっているということはないのかどうか、この点を伺っておきます。

○森国務大臣 コンピューターのみならず、私ども、この著作権に係ります現行法制定後十四年を経過いたしたわけでございますが、確かに、世の中の科学技術の進歩は目覚ましいものがございまして、当時として予想しなかった制度上の問題がたくさん生じておる、これも先生もう十分御承知で御指摘をいただいていることでございます。したがいまして、この辺の課題につきましては、著作権審議会において順次、小委員会を設けて検討いたしておりまして、それぞれ、緊急を要しあるいはまた客観情勢の整ったものから、制度的な対応を含めて、法律等も含めた必要な措置をいたしているところでございます。

 今お尋ねをいただきましたコンピューターソフトウェアにつきましては、私どもとしては終始、これはあくまでも著作権の法律で守られていくべきものである、また国際的にもそのような考え方を各国もとっておるわけでございます。なお、来年二月には国際委員会でこのことについて検討いたし、判断を下すということでもございますが、私どもといたしましては、従来とっておりましたように、こうしたコンピュータープログラムにつきましてはあくまでも著作権法で守っていくものであろう。今お尋ねのようにいろいろな御意見はございますけれども、私どもとしてはこの考え方を続いてとっていく、こういう考え方を申し上げておきたいと思います。

○江田委員 どうも大臣ありがとうございました。次の気になるところへどうぞお出かけになってください。

 新聞でセンセーショナルに、「著作権法か新立法か」、文化庁と通産省が対立して「縄張り争いの面も。」これは大分古い、ことしの二月十五日の新聞ですが、この通産省との差というのは一体どこにあるのか。これは裁定制度をどうする、登録制度をどうするというようなこともありますが、そういうことじゃなくて、物の考え方の基本として、通産省の方はプログラム権とかいうようなことを言っているようですが、例えば、人格権であるとか環境権であるとか日照権であるとか入浜権であるとか、今までの時代にそれほど考えられていなかった権利が、しかし事態の推移とともに、新たな権利として法的確信によって人々に支えられる状態が出てきた。どうもそういうような意味でのプログラム権というものの生成ということを考えておるようでもないようで、そうすると、しょせんこれは著作権の一つの対応としてのことを考えておるのかなというように感ずるのです。これは通産省に例えばいいのですが、文化庁としてプログラム権というものを一体どういうものとして把握をされていらっしゃいますか。

○加戸政府委員 文化庁の立場といたしますれば、人間の思想、感情を創作的に表現したものが著作物であり、それを著作権によって保護するという考え方で申し上げますれば、コンピュータープログラムも人間の思想を創作的に表現したものであるという考え方に立っているわけでございます。

 一方、通産省の考え方といたしましては、コンピュータープログラムがいわゆる産業技術、コンピューターの利用技術であるという点に視点を置きまして、そういった産業財としての保護というのが従来の著作権思想あるいは著作物理論には適合しないということで、いわゆる現在の著作権法制というものがコンピューター利用技術になじまないという観点から、プログラム権という御主張が出てきたわけでございますが、従来の工業所有権といった領域のものでもないし、著作権といった領域のものでもない、第三の権利だということの御主張をされてまいりました。

 当方といたしましては、そういった新たな分野での新たな権利の創設ということが、国際的にも存在しない、あるいは従来にないもの、独自な制度をつくるということは不可能ではございませんけれども、法理論的にもいかがかという問題もございますし、また実体的にも、プログラム権法の内容というものは、大体それほど著作権法のエリアとはかけ離れた考え方ではないし、具体的なプログラム権で規定しようとしている中身も実質的にはほぼ著作権法の領域と共通しているものではないか、そういう考え方で、当方は著作権法によるべきだという主張をしたわけでございまして、考え方はいろいろ差はございますけれども、実体的には私ども、もちろん保護期間を長くする、短くする、裁定制度を導入する、しないという実体的な問題はございますけれども、理論としましては、それほどの差のある権利の性格ではないのではないかというのが当方の理解でございます。

○江田委員 産業経済活動の新しい展開の中から出てきた新しい法律関係の態様であるということ、それはそうとしても、産業経済活動であるということと著作権ということは相入れないものだというわけでもないし、やはり新しい時代における著作権というものの新たな展開の一つの態様だということだろう、それがゆえに、従来の著作権法をそのまま持ってくるというのではなかなかなじまない点があるから、改正が必要だということだと思うのです。

 今までの著作権の公表後五十年あるいは死後五十年というのではいかにも長くて、今のこのコンピューターソフトウェアの目覚ましい変化、発展という時代には、とても五十年なんというのはなじまないのではないか、そういう意見もあるようですが、これはいかがですか。

○加戸政府委員 文化庁としましても、五十年の保護期間を主張いたしました理由は、日本が加盟しております国際的な著作権条約でございますベルヌ条約が五十年を最低の保護期間として規定しておることに基づくわけでございまして、著作権のエリアでまいります限り、条約を改正して保護期間の五十年が、例えば現在でも既に写真の著作物あるいは応用美術の著作物については二十五年でよいという規定もございますし、コンピューターの利用実態等を踏まえた上で保護期間の短縮ということは条約上可能でもございます。そういう意味で、国際的なコンセンサスとして条約の改正というのがあり得ると私は考えておりますが、少なくとも現在のまま、五十年ということが義務づけられている時点では、当面五十年でいくべきではないか。その後、国際的ないろいろな御相談の上、大勢が保護期間の短縮に向かうならば、我が国としてもそれに同調することはやぶさかでないと思いますが、それは将来の立法論と申しますか、条約改正論の話であろうかと考えております。

○江田委員 もうそれほど時間がありませんが、その他の著作権法関係の今の課題、一つは例の賦課金制度、これは先ほども同僚委員からの質問の中で、書籍のコピーに関する質問がございましたが、書籍に限らずいわゆるホームテーピングについて、一体ビデオデッキをどうするのかという問題があるわけで、この賦課金制度は一体どうなっていくのか。

 それから、映画の頒布権を一遍見直していかなければならぬのではないかということが、五十八年七月二十六日の著作権審議会第一小委員会の審議の中で出ているようですが、映画も八ミリ、十六ミリ、あるいは何ミリ、そういうフィルムにでき上がった映画だけではなくて、最近はビデオディスク、ビデオテープ、ビデオで映画がどんどん出回っていく、そして貸与という形がいろいろなところで出てくるわけで、この映画の頒布権はどう見直されていくのか。

 それから、データベース、ニューメディア、これも新しい検討が始まっているようですが、どうなっていくのか。

 それから、もう一つ、著作隣接権条約への加盟の問題、事柄がたくさんあるのですが、一つ一つ簡単で結構ですから、お触れ願って御答弁いただければと思います。

 とりわけ一つだけ。ビデオについて、これは貸与、レンタルという業態、裁判例も出ているようですが、このビデオという形になっている映画について、貸与という業態は成立させる方向で指導していくのか、それともそういうものは成立させないのか、これはどうなんでしょう。その点は具体的にお尋ねいたします。

○加戸政府委員 五つの御質問がございました。
 第一の、課徴金制度等の問題でございますが、著作権審議会の第五小委員会におきまして五十六年の報告をちょうだいしまして、五十七年にこの問題に関しまして懇談会を設置しまして、現在既に十六回の会合が持たれておりますけれども、この懇談会におきまして、課徴金を一つの方向、一つの解決の手がかりといたしました議論が進められている段階でございます。

 それから、第二の、映画の頒布権の問題でございますが、先生御指摘のように、昨年の第一小委員会での課題として積み残されているわけでございまして、なおこれは特にビデオ関係のものを中心といたしましたいわゆる映画の特性としての従来の伝統的なフィルムを前提とした頒布権をそのままでいいのかどうか、なお慎重に検討すべき課題だということで積み残されているわけでございます。

 それから、第三の、データベース関係でございますが、これにつきましては、著作権審議会に三月でございますが第七小委員会を設置いたしまして、分科会をもう二つ設けまして、ニューメディア関係、それからデータベース関係、この二つの分科会のうち、ニューメディア関係は既に四回、データベース関係は六回の審議を重ねておりまして、特にデータベースの方は、実態認識を踏まえた法律議論の段階にまで入っていっている状況でございます。なお精力的に検討いただきたいと考えております。

 それから、第四の、著作隣接権条約加盟の問題でございますが、当文教委員会におきます附帯決議も受けまして、早速本年の五月に第一小委員会でこの著作隣接権条約加盟の問題の審議をスタートさせました。ただ、御承知のように、一九六一年の隣接権条約はまだ二十六カ国の加盟でございまして、アメリカ、フランス等の有力国が入っていないという状況もあり、またそういった実態を踏まえて、十年後の一九七一年にそのうちのレコード部分だけ抜き出しました海賊版レコードの防止条約ができましたけれども、そちらの方は既に三十七カ国になっているというようなことから見ますと、隣接権条約へはなかなか入りにくいという国際的な傾向も若干あるのではないかという視点もございますが、なお鋭意御検討をお願いしたいと考えている次第でございます。

 それから、第五の、ビデオレンタル関係でございますが、先般新聞報道でも出ましたが、こういったビデオレンタルについての監視機構というものが設立されましたけれども、これの趣旨は、要するに、適法に契約を結んでレンタルすることは認めていこうというのが業界の方向でございまして、無断レンタルを防止しようということでございますので、正常なルートで正常な料金を払って営業として行うということは、基本的に権利者側も認める方向であろうと理解しております。

○江田委員 終わります。


1984/08/03

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