1984/07/03

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101 衆議院・社会労働委員会 

男女雇用機会均等法案について


○江田委員 委員各位の御理解をいただきまして、私たち最小会派ですが、三十分という質問時間をいただきました。大臣もそれから赤松局長も随分痛めつけられたのでお疲れでしょうが、ひとつ貴重な時間ですので簡潔にお答えを願いたいと思います。今の田中委員の質問の中にもあったのですが、私は、まず最初に、大臣には恐縮ですが、赤松局長の感想を伺いたいと思うのです。婦人差別の撤廃、男女の平等というのは大変に長い長い闘いの歴史があったと思うのですね。母系社会の時代というのは一部に一ときありましたけれども、大部分の歴史がやはり男の方が優位の歴史であって、その間にずっと、何とかして差別をなくしていきたい、男も女も同じ人間じゃないかということで闘いが続いてきた。日本も、戦前は民法では女子が無能力だ、あるいは参政権はない、あるいはまた、男は幾ら姦通してもいいけれども女は姦通すると罪になる、そういう時代があって、戦後改革、さまざまな法律の制度がたくさんできてきた。そして今こういうところに来ました。しかし、現実にはまだまだ男女の差別というものがある。

 こういう中で、女性に対する目がまだ非常に厳しい時代に大学を卒業なさって、いろんな差別の中で、雇用における男女の平等を実現する最先端の責任を負っている労働省というところに、働く女性として入省されてウン十ウン年ということなんだと思いますが、今も質問があったとおり、赤松良子さんというのは、私たちにとっても、もちろん全働く婦人にとってあこがれの的なんですね。

 ついこの間、三淵嘉子さんがお亡くなりになりました。私も前に裁判官をやっておって、やはり本当にすぐれた裁判官だと尊敬をしておりました。こういう場では男女の差別が全くない、それだけの実力を示してこられたわけですから。

 そこで、そういう赤松さんが、今担当の省におられて、この男女雇用機会均等法を提出をされてどういう感想をお持ちか。あなたの半生から見てというとちょっと長くなりますから、そのポイントのところだけちょっと伺いたいと思います。

○赤松政府委員 大変しゅんとするような御質問でございます。
 私は、長い間働いてきて、男女の差別というものは大変よくないものだというふうに思い続けてきたわけでございます。それから、国連の公使に行っておりましたときに、この差別撤廃条約が採択されまして、採択されたその瞬間に、日本政府代表として参加することができたのも大変喜びに思っているわけでございます。そのとき議場には大勢の女性の代表、女性ばかりではございません、この差別撤廃条約の採択を喜ぶ男性の政府代表も大勢おられました。その方たちと、非常に大きな感激で喜びを分かち合ったことは、今でもまざまざと記憶をしております。

 また、コペンハーゲンで日本政府代表が署名をいたしましたときの感激も忘れることはできないわけでございます。

 そして、その仕事を終わって労働省に復帰いたしましたときに、まさにこの条約を批准するための一番大きな、いわば難物ともいうべき雇用における男女の機会均等法を成立させるという任務に当たったことは、大変難しいと同時に生きがいでもあったわけでございます。いろいろ限界はございましたが、そのために私としてはベストを尽くしたつもりでおりまして、私がやめることによってもっといいものができるのならばいつでもやめたでございましょう。でも私はそうは思わなかったわけでございます。

○江田委員 御努力に敬意を表しますが、赤松さんにとって今思い返してみて、やっとここまで来たという思いもおありでしょうが、この男女の差別をなくしていく、女性の差別をなくして男女の平等を実現していく闘いは終わったんでしょうか、それともまだまだこれから続くのでしょうか。

○赤松政府委員 差別をなくすことは、これまでも長い歴史がございましたけれども、決して終わったわけではなくて、これからますます大きな仕事があるわけでございまして、まさにこの法律をてこにしてそれが進めやすくなるというふうに私は思っております。

○江田委員 この法案をてこにしてこの男女の差別をなくす運動か進めやすくなる、そうおっしゃいましたが、それじゃこの法案が男女の差別をなくするという目的から見て本当に十分なものができた、本当に満足すべきものができたというふろにお考えですか。それとも、現実にはいろんな束縛があります。だから、どこまでいけるかというのは非常に難しいですが、これから例えばこの男女の差別をなくしていく長い長い歴史が進んでいく中で、この法案で法律としてはもうでき上がった、こういうお感じですか。それとも、もっともっと事態を進めて、もっとすばらしい法律をつくるということが課題としてこれから残るんだとお感じですか。どちらですか。

○赤松政府委員 この法律は百点満点だとは決して思っておりません。いろいろな制約の中で現実に見合ったものにしなければならない、余りに現実と遊離したものではワークしないのではないかという考慮もございましたので、いろいろな点で不十分な点があることは審議会の答申の中にも言われているとおりでございます。したがいまして、審議会の答申にございますように、見直しを今後も引き続き行っていくべきものだというふうに思いますし、また条約の中にも、これらのことは常に科学的な知識に照らして定期的に検討していくべきものだというふうにも書かれていることにもかんがみまして、そのようなことはずっと必要だと思います。しかし、この法律があることによって、その進歩が現実により具体的になるというふうに私は信じております。

○江田委員 私も意見はいろいろありますけれども、私自身の意見で言えば、この法律がない方がいいというようなそんな法律ではないと思うのです。ただ、今の百点満点ではないにしても、もうちょっとこれよりいい点数がとれるのじゃないか。現実に今すぐ理想的な、男女の差別が全くない世の中をそのまま法律に移しかえたような法律ができる時代にはまだ日本は来ていないかもしれないけれども、もうちょっといい法律がそれでもできるのじゃないか。あるいはひょっとしたら、この法律は、確かにない方がいいというわけではないけれども、部分的にはこれは困るなあという内容を持っているという意見は今までもなくさん出されましたし、私もまたそういうような意見に同感の部分もあるわけです。

 婦人差別撤廃条約が目指している世の中と、この今の法律案が完全に実現された場合に予定される世の中の秩序と、これは同じでしょうか、どうでしょうか。

○赤松政府委員
 目指すところは同じではないかと思います。しかし、この法案はそれを一挙に実現するという方法はとっておりませんで、時間をかけてそれをスロー・バット・ステディーに目指しているというふうに考えております。

○江田委員 大臣は今のような点、どうお考えですか。
 例えば、私は、婦人差別撤廃条約では男女の差別は募集、採用、配置、昇進、あらゆる段階で禁止されているという、そういう秩序を予定していると思うのですね。しかし、この法律自体は禁止されているという秩序を実は予定をしていないのです。この法律はあくまで、そういうためにみんなで努力しましょうというところまでしか予定していない。だから、この法律というのは今の婦人差別撤廃条約への一里塚だということなのか。それとも、今の日本の社会だと、条約は条約だけれども、実際の秩序としてはこんなものですよというお考えですか。どうですか。

○坂本国務大臣 目指すところは、現在、特に日本におきましては婦人の差別のあることは事実でありまして、それには歴史的な長い経過もあったでありましょう。しかし、その差別を撤廃しようとして私どもはこの法案をつくっておるわけでございまして、今局長も申しましたように、これそのものが百点満点だと私も思いませんけれども、いや、百点でなくったって、仮に八十点だ、九十息だとしても、しかし、そういう理想に向かっての大きな跳躍台になるという点では私は歴史的な一歩だ、こう思っております。

○江田委員 いずれにしても、この法案がもう十分のものだ、ここまで来た、もうこれで、男女の問題は少なくとも法制度では、日本の社会で雇用の面においては法律の制度としてはもう終わった、そういうものではない。これはいいですね。そういう認識だけしっかり持っておいていただかないと困ると思うのですね。

 そこで、それならば、つまり婦人差別撤廃条約が目指すもののところまではまだいっていないのだとするならば、せめて目的とか理念ぐらいは、婦人差別撤廃条約が予定をしておる秩序、そういうものをうたいとげるというようなものであっていいんじゃないか。実際の規定についてはそれはいろいろあるでしょう、現実の日本の世の中ですから。皆さん方も、先ほどから話が出ておりますが、財界からの圧力もこれは私もあっただろうと思います。しかし、せめて目的、理念、ここはもっとはっきりしたものにした方がいい。

 私は、この「目的」の「もって女子労働者の福祉の増進と地位の向上を図る」というのは、これはやはりいただけないと思うのですね。福祉ということと男女が雇用の面において差別されないということとは同じなんでしょうか。福祉というのはあくまで、憲法の考え方で言うと社会的人権と言われるわけですね。ところが、差別をされないということは社会的人権なんでしょうか。もっと進んで憲法十四条の課題なんで、これはいわば自然的人権、つまり長い歴史の中で言えば、ロックだ、モンテスキューだという時代にまでさかのぼるそういう人権じゃないのですか。何か福祉についていろいろ言葉を言われているようですが、そういうものと違う、差別をされないということはもっともっと一もちろん社会的人権も今重要な課題ですが、その社会的人権のさらに基礎にある、どうしても侵し得ない人権だと思うのですが、どうですか。

○赤松政府委員 今まで申し上げたことと違う、変わりばえのする御答弁が余りできないので非常に残念でございますが、「福祉」の概念が広いということを御理解いただきたいと思います。そしてその「福祉」の概念の中に男女の均等な機会と待遇を確保するということが含まれ、そのことは婦人の地位の向上ともつながるということで、「目的」が書かれているわけでございます。

 勤労婦人福祉法の中にもその芽生えがあったわけでございまして、勤労婦人福祉法ははっきり福祉を目指した法律でございましたが、しかしその中にも、女性が「母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなく」という文言があったわけでございます。その文言があったことを受け、そしてさらに具体的な措置をつけ加えることによって、この法律を抜本的に改正し、具体的な措置を明らかにした、こういうふうに考えている次第でございます。

○江田委員 局長は、おわかりになっているとは思うのですが、なかなかおっしゃりにくいのかもしれませんが、三条ですね。この三条は、女子労働者に何を求めているのですか。

○赤松政府委員 三条もこれは今度の改正で書きかえられた部分でございますが、勤労婦人福祉法の場合は「勤労婦人は、勤労に従事する者としての自覚をもち、みずからすすんで、その能力を開発し、」云々とございましたが、新しい条文では「労働に従事する者としての自覚の下に、」というふうに今度の趣旨を取り入れた表現にし、また「その能力の開発及び向上を図り、」というふうに修文をしたわけでございます。

○江田委員 読んで字のごとしと言えばそうですが、二条と三条が基本的理念でしょう。二条は、いろいろ書いてあるけれども、結局中身はよくわからぬのですね。「女子労働者は、経済及び社会の発展に寄与する者」だ。経済及び社会の発展は男子だって寄与するわけです、女子ほどじゃないかもしれないけれども。「家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する」、こちらも女子以上に、あるいは男子の方が役割を果たしているとも言えるのですね。ここで女子労働者はこうこうであることにかんがみ、こう言ったって、男女の差は全然出てきていないのです。「母性を尊重されつつ」という点では、これは確かに女性、女子労働者ですがね。「性別により差別されることなく」、これは男子ももちろん差別されてはいけないのです。「その能力を有効に発揮して」というのは、何か有効に発揮して一生懸命働け、こう言われているような感じです。「充実した職業生活を営み、」、これも男子にも当たることです。「職業生活と家庭生活との調和を図る」、これも男子にも当たることです。二条の方は何も言っていない。ただ「女子労働者は」「配慮されるものとする。」だけしか言っていない。女子労働者は配慮されるものであるのだ。

 そして三条の方は、「女子労働者は、労働に従事する者としての自覚の下に、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。」、女子労働者というのは配慮されているんだからしっかり働きなさいよ、自分で自分の能力の開発及び向上を図って頑張りなさい、これが基本理念ですか。

 そうではなくて、差別は本来基本的人権にも反するのだ、あるいはまた人間の尊厳にも反するのだ、かつ経済及び社会の発展を阻害するものだ、だからすべての女子は雇用における機会及び待遇について差別を受けない、女子労働者に課せられることは、そういうような差別がある場合には進んでこれを直していく、これからは長い長い歴史の中で先輩が築いてきたこの女子の地位の向上というものを自分たちが担っていくんだ、そういう自覚のもとに差別をなくしていく営みに積極的に参加していかなければならぬ、こういうことでなければいけないのじゃないですか。

 本来婦人差別撤廃条約を日本で実現しよう、その理念を掲げようとするとき、この理念というのはまことにどうもお粗末きわまりないと思うのですが、いかがですか。

○赤松政府委員 均等法の二条は、前段で、家庭生活を含めた我が国の社会生活において女子の果たしている役割について述べた上で、後段で配慮事項を規定したものでございます。先生の御指摘のとおり、「現実に女子労働者が差別を受けていることにかんがみ」という規定の方法は確かにあり得ると存じますけれども、そういう方法をとりますと、後段の「職業生活と家庭生活との調和を図ること」というところの据わりか悪くなるということでございます。それで、家庭生活と職業生活の調和ということは、先生がおっしゃいましたように男子労働者にとっても重要なことであって、女子労働者についてのみ重要というふうに考えている趣旨ではございませんが、我が国の現状においては、女子がより多く家事や育児の負担を背負っているというのが現実でございまして、このことが女子の就業のあり方に大きな影響を与えているということも否定できませんので、女子労働者について、職業生活と家庭生活との調和を図ることがより容易になるような配慮をするということは、事実上の平等の促進という見地からも意味のあることで、そのような配慮がされるべきだということを第二条にも明定したわけでございます。その意味から申しまして、ただいま先生の御指摘のような「かんがみ」という表現よりは、現在ある表現の方がこの法律全体としては適切ではないか、このように考えておるわけでございます。

○江田委員 もう何か本当に気の毒になってくるのです。先ほどの公序良俗の説明でも同じなんで、公序良俗というのは時代によっていろいろ変わるのです。中身が変わるのです。こういう基本的理念を出されますと憲法十四条の中身がここまで小さくなってしまって、何だか今の日本の男女の差が、非常に激しい雇用の現場というのが当たり前なんだ、公序良俗というのは公の秩序、善良の風俗でしょう。今の世の中の常識というのはこんなものだからというので、これは公序良俗というような判断基準から見て、女性が差別されていることが何ら不思議ではないということになってしまう。そうではないのだという一つの基準をはっきり示す。女性が差別をされないということは権利なんだ。権利というのは一体何かというと、自然のままで置いておったら人間というのは弱肉強食になっていくわけです。だから、そういう力と力の対決だけではなくて、一つの価値をはっきり定立するのです。これは力と力の対決、自然の成り行きではなくて、こういう価値を我々はみんなで守るのだという、その価値の規範が権利なんです。そういう価値の規範をはっきりとこの基本理念で書いておくことによって、男女の差別はいけないのだ、憲法十四条が労働の場で生かされるのだということが公序良俗に初めてなっていくのです。私はこの点では本当に危惧します。

 さて、ちょっと話を変えまして外務省に伺いますが、労働基準法を手直しをすることが条約批准のために必要なのだ、手直しという言い方が皆さんの言葉であったかどうかちょっと忘れましたが、こういうお考え、この中身がなぜそうなのかということですが、男と女で差を設けているからいけないのだということなのか。それとも、今までいろいろな検討の結果、どうも女性に不合理ないわれなき労働の場における束縛を課している、そのことが女性が労働市場に出ていくについてハンディキャップになっているからいけないのだというのか。どちらなんですか。

○斉藤説明員 この条約の考え方といたしましては、いわゆる女子保護規定というものは、女子の採用とか昇進とかいう面において女子の利益を阻害する結果になるという認識のもとに、女子保護規定というのは究極的に改廃すべきものだという考え方に立っているものと思います。

○江田委員 今のお話し、それでいいですか。女子保護規定は改廃すべきものだ、それが外務省の見解でいいですか。

○斉藤説明員 ただいま申し上げましたのは、条約が目的としているところは、究極的には女子保護規定は改廃されるべきだということを申し上げた次第でございます。

○江田委員 外務省、男子についても労働時間の問題、あるいは深夜業の問題その他について、今の女子保護規定と同様の規制を設けるということはいけないのですか。

○斉藤説明員 この条約が問題にしておりますのは、男子と女子の間の差別の問題でございます。したがいまして、その差別がなくなるという限度におきましてそれをどの水準でなくするかということは、条約のあずかり知らぬところであります。

○江田委員 先ほどの説明と変わったわけですね。いいですか、変わったわけですね。

○斉藤説明員 私が女子保護規定と申し上げましたのは、女子を男子と区別をして特別の保護を与えている規定という趣旨で申し上げましたので、女子を差別して扱っているもの、これを女子保護規定と申し上げた次第でございます。

○江田委員 ちょっとよくわからないのですが、とにかく男子の労働条件についても、今の労働基準法にある女子に対するさまざまな規制と同様のものをつくれば、これは婦人差別撤廃条約の要請に合致することになる、これはいいですか。

○斉藤説明員 そのとおりでございます。

○江田委員 そうすると、女子についての労働条件についての規制を取り払うのか、それとも男子についての労働条件に新たないろいろな規制を加えるのか、どっちを選択するかというのは、どういう方向を向いていくかですね、どっちを歩いていくかということの判断、選択ですね。今、婦人差別撤廃条約が目指しているのは、そこはニュートラルですか、それともこういう方向があるじゃありませんか、家庭責任は男も女もどっちも負っているのだということを書いてありますね。家庭責任を果たすために、今の日本では家庭責任、現に婦人の方が重く肩にのしかかっているから、労働時間にしても、深夜業にしても、その他にしてもいろいろな規制がある。男も家庭責任を果たそう、そういうことになるならば、男の方にも労働時間を短かくする、深夜業をなくする、そういう方向を選ばなければならぬ、それが婦人差別撤廃条約の示している方向じゃありませんか。どうですか。

○斉藤説明員 条約の解釈に限ってお答えいたしますけれども、外務省の考え方といたしましては、この条約の目的としているところは婦人に対する差別の撤廃でございます。それをどういう手段で実現するかということは、労働政策上の問題になるかと存じます。

○江田委員 差別の撤廃といっても、みんなが奴隷になったらいいというものじゃないでしょう。やはりある種の方向があるんだ。一番最初にこの条約に書いてあるじゃありませんか。一番最初に国際連合憲章が出てくるのですね。「基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女の同権とに関する信念をあらためて確認している」、こう出てくるわけです。やはり一つの方向性を持っているわけで、とにかく男と女が全部、みそもくそも一緒になればいい、そういう条約と違いますよ。

 さて、時間がもうありませんので、最後に労働省の方に伺いますが、今私の言った婦人差別撤廃条約というのは、つまり一つの方向を持っているので、そのどちらの、今の婦人差別撤廃条約が目指しているような男も女もともに、例えば家庭責任も一緒に果たしていきましょうという方向を選択するのか、それとも雇用の場における使用者の御都合だけを考えて、本当にどんどんみんなが働け働けと、ただそれぞれの労働能力において、しかも労働者それぞれが自分の能力を向上させて働くことだけにいそしむ、そういう方向を目指すのか、これは一体どうなんですか。私は、労働省となれば、そういうただいたずらに労働強化につながる、働け働けという方向になっていくそういう道ではなくて、もしどうしても労働基準法に手をつけなければならぬとするならば、私は必ずしもそうは思わぬけれども、もしそうだとするならば、せっかく女子労働者にできている一つの保護、こういう労働こそが人間としての労働なんですよという労働についての一つの基準を、この際男子にも持ってくる、そういう方向で頑張るべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

○赤松政府委員 先生おっしゃいましたように、労働省は労働者の福祉の向上を任務としている役所でございます。したがいまして、男女の平等ということがより高い水準で果たされるということは望ましいことだと存じます。

○江田委員 今の答弁はかなり重要ですね。とにかく高い水準で果たされることは望ましいと、こうお答えくださったわけで、そのことはみんなでこれから実現をしていかなければならぬ課題だと思います。ひとつ労働省、頑張ってください。

 この男女機会均等法、平等法というのは歴史的な法律なんで、歴史的な第一歩を踏み出すに当たって、みんなで知恵を絞ってすばらしい法律にするように、労働省の方も、政府の方も自分の出したものにこだわることなく、みんなの知恵をひとつここで合わせていこうじゃないかという姿勢でこれからの審議に臨まれることを希望して、質問を終わります。


1984/07/03

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